平成ライダーの世界
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第八章
その時の彼の言葉は非常に辛いものでした。俺はただ幸わせになりたかっただけなのに、こう言って鏡の中に消えていきました。その結末は自業自得ですがそれでも悲しいものでした。深く考えず何かをすればどうなるか、そうしたものも教えてくれる悲惨な結末でした。
香川や仲村、そして佐野を殺した東條ですが彼は北岡が見ても最悪と言うべき人間でした。北岡はその時病が進みその中でライダーというものに対して深く考えるようになっていました。その彼がライダーバトルで残るのは浅倉やその東條の様に人間と呼んでいいのかわからない存在ではないのか、と考えるようになりました。
その東條は英雄になりたいと考えていました。おそらく何かしらの強烈なトラウマがあったのでしょう。
しかしだからといって彼の行動は許せるものではありません。仲村を殺した時はその発言に城戸が激怒しています。この時の発言は明らかに自分だけしかない人間の発言です。背信行為を続ける人間というものは一見他人に対して申し訳ないなどと言いますがその実は自己弁護を繰り返すものです。僕は実経験で実際に東條に非常によく似た人間を一人知っています。本当に彼の様に背信行為を繰り返し他人からどう思われても自己弁護を繰り返し破廉恥な行動を繰り返します。ただ僕が知っている人間は人並みの知能すらあるのかどうかが疑問な輩でした。このまま放っておいたらやがて大変なことをして破滅するのは必定と思い離れましたが今はどうなっているのか知りません。東條の結末は僕が離れる前のその輩とほぼ同じでした。
東條は自分が英雄になる為に仲間を後ろから攻撃し倒していきます。よく見れば東條は常に相手を後ろから狙っています。浅倉や北岡ですら正面から戦うのに彼は常に後ろから狙います。それで必殺技を出すのですから何が英雄でしょうか。
人間としての区分は明らかにサイコパスです。人格障害者としか言えません。どれだけ人を裏切ってもどんな卑劣なことをしても平気です。彼は英雄ではなく人格障害者に過ぎませんでした。
そして北岡に英雄は周りから認められるものであり自分がなろうというものではない、その時点で御前は駄目だ、と言われそのうえで狂います。最期には我を失い彷徨いそのうえで親子をトラックから助けて死にます。そこで新聞の片隅に英雄と書かれます。そうした意味で彼の望みは達成されました。しかしこれは脚本を書いていた小林靖子の皮肉ではないか、とさえ思います。
東條は平成ライダーの中でもとりわけ後味の悪いキャラクターでした。その彼の行動は決して許せません。最終回でも出ていますが自己中心的な面が見られます。そうした人物でしかないということでしょうか。
その次に仮面ライダーベルデこと高見沢逸郎のことをお話させて頂きたいと思います。彼は大グループの総帥であり地位も権力もある紳士です。まさに一見すると完璧な人間ですが井上敏樹特有の癖の強いキャラクターでした。その素顔は権力志向が強く貪欲であり目的の為には手段を選びません。城戸に見せた素顔は剥き出しの闘争心が見られるものでした。人間は皆ライダーといいますが彼は悪い意味で人間でした。謀略家であり権力志向の塊でした。その更なるものを手に入れる為にそれで戦っていました。そうした意味では佐野と同じなのですが佐野とは決定的な意味で違います。覚悟が違うのです。
そしてその為に城戸や秋山を他のライダー達を巻き込んで倒そうとします。その時殆どのライダーを引き入れていますがここで述べさせてもらうとです。
浅倉や後述の霧島美穂の様な人物は絶対に他人にはつかないでしょうし北岡、芝浦、須藤等は何時裏切るかわかりません。佐野もです。オーディンはそもそもそうした存在ではありませんしリュウガもです。東條は問題外でしょう。従って高見沢といえど龍騎の世界では覇権を策謀やカリスマだけで握ることは非常に困難だと思われます。まず浅倉はそうした策謀やカリスマが通用する世界に生きていません。彼は完全な野獣だからです。
高見沢に話を戻しますと彼は確かに卑劣で貪欲ですがルールは守っています。つまり人間のルールの中で卑劣で残忍なのです。知能犯とも言えますがそれでも人間です。人間から逸脱してしまっている浅倉やサイコになっている東條とはそこが違います。必要だからこそ悪を、人の世での悪を為す存在なのです。
この人のルールですが霧島も同じです。彼女ははじめての女性ライダーであり非常に注目されています。仮面ライダーファムはその姿や戦闘スタイルも非常に美しく映画版において非常に目を引く存在でした。
その彼女は可憐な容姿とは裏腹に結婚詐欺師でした。しかしそれは浅倉により殺された姉を救う為のお金を手に入れる為でした。そしてその為に仮面ライダーにもなります。彼女は姉の為に悪をしていました。
そこには覚悟もあり何があっても姉を救いたいと考えていました。しかしそこで城戸と会いその心を知り自分のことを振り返ります。自分のやっていることは間違っている、姉を救う為とはいえ、と考えるようになっていきます。彼女はリュウガにより倒されてしまいますがそれでもそうしたものを見せた、人間としての悪を為すに至る追い詰められたものと反省を描いたキャラでした。彼女もまた平成ライダーを考えるうえで重要なキャラクターでした。
この世界にはリュウガもいます。彼の場合は城戸の正反対の心を持つミラーワールドに巣食う者でした。ある意味において城戸と同じです。しかし根本によって違います。城戸の様な清廉な人間が裏返しになればどうなるか、そして城戸も一歩間違えればそうした存在になるということでしょう。オーディンが神崎の代理であるならばリュウガは城戸、人間の暗黒面、そしてミラーワールドの闇の部分を映し出したキャラクターでした。
龍騎は非常に多くの人間が錯綜した世界でありました。この複雑さ、そして絶対の正義はないということが平成ライダーの世界です。そうした意味で平成ライダーが確立されてきた作品と言えるでしょう。その象徴とも言えるのが城戸であり秋山でありそして浅倉でした。浅倉は野獣の様な、まさに人の世界から外れた存在であってもライダーとなることがある、それを見せてくれたキャラクターでした。平成ライダーのカラーは本当に彼が決定したと言っても過言ではないでしょう。
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