聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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159部分:第二十話 力と正義その七
第二十話 力と正義その七
「今よりもだ」
「今アーレスの軍勢の戦力は狂闘士だけです」
「今のところは、だな」
「その通りです。そしてアーレスの第一の腹心であり実の妹である争いの女神エリス」
エリスの存在もまた語られる。
「彼女もいますが」
「エリスは実質的にはそれ程動きはしない」
そのことがわかっているといった今のシオンの口調だった。
「あの時は聖域に来たが」
「あの時はおそらく特別でしょう」
シャカはそう読んでいるのだった。
「我々を。一気に倒す為に」
「あえて来たというのですね」
「私はそう見ている」
シオンはまた述べた。
「そのようにな」
「そうですね」
そしてその見方はシャカも同じだった。
「エリスは今アーレスに代わりトラキアを治めています」
「あの時はまず一気に我々を倒すつもりでした」
そうだったというのである。
「聖域にはまだ充分な黄金聖闘士がいませんでした」
「いるのはサガとアイオロスだけだった」
その二人だけだったというのだった。これは事実だった。シャカ達が聖域に到着するその時まで聖域にいる黄金聖闘士はこの二人だけだったのだ。
「あの時攻められればだ」
「かなり苦しかったのは間違いなかったかと」
「だがそれは果たせなかった」
他ならぬシャカ達が聖域に到着したからだ。そのときはそれにより一気に戦局が逆転した。彼等はその時のことを話すのである。
「そしてエリスはトラキアの宮殿に戻った」
「その通りです」
その時のことも話す彼等だった。
「従ってこれからはです」
「動くことはない」
このように話が進んでいく。
「従ってな」
「そうなります。今我々はエリスが動くことだけは安心することができます」
「若し動けばだ」
シオンの声がまた険しいものになった。
「我々は今まで以上に辛いことになるだろう」
「その通りです。またあの四人の神々が蘇れば」
「エリスが動き出した場合以上に厄介だ」
シオンはこう分析していた。
「かつてのアーレスとの聖戦において我々は彼等にもかなり苦しめられた」
「その様で」
「伝承に残っている通りだ。ハーデスとの戦いに匹敵する激しい戦いだった」
そう言い残されている。文献にも書かれているのである。
「そして最後は」
「ライブラの十二の武器をはじめて解放し」
「そのうえで勝利を収めた」
聖闘士は武器を持つことが許されない。アテナは素手で戦うことをよしとしている。しかしその彼女がそれを許可したということはそれだけ事態が深刻だったということに他ならない。
「それだけの激しい戦いだった」
「それをそうさせたのが彼等です」
「そう、あの四人の神々だ」
また彼等のことを話す。
「彼等の力。決して侮ることはできない」
「では教皇」
シャカの目は閉じられたままだった。しかしその小宇宙が黄金色に沸き起こっているのが見える。
「若し彼等が出て来た場合には」
「頼めるか」
「無論です」
シャカの返答はすぐだった。
「それが私の務めです」
「そうか。頼めるか」
「より言わせて頂ければ私達のです」
シャカはすぐに己の言葉をこう言い替えてきた。
「私達の務めです」
「黄金聖闘士のだな」
「はい」
シャカはまたシオンに対して答える。
「その通りです。それこそが我々の」
「そうだったな。その為に御前達がいる」
己に向けて顔をあげてきたシャカに述べたのだった。
「そして私もな」
「教皇もですか」
「そうだ。私もだ」
己もだという。その言葉は決して嘘ではなかった。嘘の響きはそこにはなかった。
「私もまた。その為にいるのだ」
「教皇もなのですか」
「前教皇セージは先代キャンサーであるマニゴルドと共に死神タナトスと闘い壮絶な戦死を遂げられた」
その時のことは彼が最もよく覚えていることだった。この時聖域は彼と童虎の二人しか生き残らなかった。そこまで激しい戦いだったのだ。
「そして私もまた」
「命を捨てる覚悟がおありなのですね」
「その通りだ。御前達と同じだ」
またシャカ達と同じだと告げた。
「私もまた。必要とあらば闘う」
「では。その時には」
「いいか。くれぐれも言っておく」
シオンのシャカへの言葉はまだ続いていた。
「これから私に何があろうとも」
「教皇、その時は」
「この世界とアテナを頼む」
こうシャカに告げたのだった。
「くれぐれもな。いいな」
「はい、わかりました」
「それではだ」
シャカは物静かにシオンの言葉に頷いた。そうしてそれに応えたシオンは最後に彼に告げたのだった。
「処女宮に戻るといい」
「それでは」
「何時アーレスの軍勢が来てもいいようにな」
「御意」
シャカは最後にシオンに頭を垂れて場を後にした。シオンは一人で暫く考えごとをしていたがそれも終え玉座から姿を消した。こうして彼等はそれぞれの場所に戻ったのだった。
第二十話 完
2009・3・30
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