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真田十勇士

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巻ノ五十七 前田利家その二

「槍の又左、そしてこちらの者がな」
「奥村助右衛門と申します」
 その小柄な男も名乗った、小柄であるが顔立ちは悪くない。
「以後お見知り置きを」
「はい、こちらこそ」
「宜しくお願いします」
 二人も応える、そこには景勝もいるが。
 彼は今も寡黙だ、そしてだった。
 二人は利家と主に話した、話せばだ。
 利家は気さくで陽気な男だ、それで軍議もだ。
 彼と兼続で話をしていた、その中で利家は信之と幸村に問うた。
「それでじゃが」
「はい、我等もですか」
「考えをですか」
「聞きたい、このまま関東に入るが」
 そこでというのだ。
「御主達はどう思う」
「はい、我等はです」
「忍城が問題やと思います」
 二人は自分達で話したことを利家に話した。
「あの城にいる甲斐姫という姫君です」
「あの姫君が問題かと」
「ふむ、それではだ」
 二人の言葉を聞いてだ、利家はこう言った。
「上杉殿、直江殿と同じ考えか」
「そうなのですか」
「そうじゃ」
 こう信之に答えた。
「まさにな」
「ですか、それでは」
「ここは」
「忍城が問題であるな」
 利家は強い声で言った。
「あの城は只でさえ堅城というし」
「平城ですが」
 兼続がここで言った。
「しかしです」
「三方が沼地でじゃな」
「大層攻めにくい城です」
「・・・・・・・・・」 
 景勝も無言で頷いてそうだと意思表示をする。兼続もさらに話す。
「ただでさえ」
「そこにそうした姫がおる」
「ですから」
「余計にじゃな」
「はい、難攻不落かと」
「そうか、やはりな」
「他の城ならともかく」
 こう言うのだった。
「あの城はです」
「簡単には陥ちぬか」
「そうかと」
 兼続は利家に話した。
「やはり」
「そうか、ではな」
 利家は兼続の話まで聞いてだ、そしてだった。
 腕を組み考える顔になりだ、上杉に顔を向けて言った。
「上杉殿、よいか」
「何ですかな」
「それがしの考えを話したいが」
「それなら」
 景勝は利家に一言で応えた。
「お願い申す」
「では」
 景勝に言われてだ、そしてだった。利家は自分の考えを述べた。
「忍城は放っておいて」
「そのうえで」
「他の城を攻め落としていこう」 
 こう言うのだった。 
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