英雄伝説~光と闇の軌跡~番外編 語り継がれなかった軌跡篇
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外伝~”嵐の剣神”誕生秘話~前篇
”D∴G教団事件”をロイド達と共に解決してエステル達がクロスベルから去る数日前、エステル達はミシェルにある提案をされた。
~遊撃士協会・クロスベル支部~
「模擬戦?セリカ相手に??」
ミシェルの提案を聞いたエステルは首を傾げ
「セ、セリカさん相手に模擬戦って………」
「え、えっと……戦う人は御愁傷様としかいいようがないよね?アハハ………」
「むしろ”神殺し”に挑む方が哀れとしか言いようがないですわ……」
勝負の結果や”人”の身では決して敵わない”神殺し”であるセリカに蹂躙されるアリオス達の様子が目に浮かんだヨシュアは表情を引き攣らせ、ミントは大量の冷や汗をかいて苦笑し、フェミリンスは憐みの目でアリオス達を見回し
「時間の無駄としか言いようがないの。」
「一体どなたが主の相手をするんでしょうね?」
レシェンテは呆れた表情で溜息を吐き、リタは苦笑しながらアリオス達を見回し
「………何故、俺の腕を見る必要がある。俺の強さは”D∴G教団”事件の際にお前も見たと思うが。」
無駄な戦いはしない主義のセリカは眉を顰めて無駄な提案をした張本人であるミシェルを見つめて尋ねた。
「それは勿論、こっちとしても正確な戦力を知っておきたいのよ。……まあ、あの事件で街に放たれた悪魔達を短時間で一掃した事からして、最低でもアリオスクラスだとは思っているけどねぇ……」
悪魔達を一掃したセリカの戦いを思い出したミシェルは苦笑しながらセリカを見つめていた。
「た、短時間であの悪魔達を一掃……!?」
「し、しかも最低でもアリオスさんクラスって……」
ミシェルの話を聞いたリンとスコットは信じられない表情をし
「……まさかとは思うけど、フェミリンスさんみたいに神様だとか?」
「……さすがにそんな”規格外”が次々と現れるとはとても思えんが……」
圧倒的な力からフェミリンスを思い浮かべたエオリアは表情を引き攣らせながらセリカを見つめ、その話が信じられないヴェンツェルは疲れた表情でセリカを見つめていた。
「あ、エオリアさん、それ当たり。」
「正確には違いますが、”神”の身である事には違いないですわね。」
「ええっ!?」
「ほ、本当に”神”なのか……!?」
ふと口に出した自分の予想が当たっていた事を指摘したエステルとフェミリンスの答えを聞いたエオリアは驚き、スコットは信じられない表情でセリカを見つめ
「確かセリカさんはレウィニアという国の客将なんだよな……?」
「”神”を客将にしている国って普通に考えてありえなくないかい?」
エステル達の説明――――セリカがレウィニア神権国の客将である事を思い出したヴェンツェルは驚きの表情でセリカを見つめ、リンは疲れた表情で溜息を吐いた。
(クク、確かに一理あるな。)
「――――レウィニアは基本王族が納めている形だが真の主は土着神――――つまり”神”である”水の巫女”だ。そして俺は”水の巫女”とは盟友同士の関係の為、客将という形でレウィニアに滞在している。よってレウィニアの貴族や王族共は俺に指示できる権利はない上、”水の巫女”が出す依頼を受けるかどうかも俺の判断に任せられている。」
レウィニア神権国の話を信じられない様子でいるゼムリア大陸の人々にハイシェラは口元に笑みを浮かべ、セリカは静かな表情で説明した。
「つまりアナタは”国”どころか”神”すらも命令できない立場なのね………」
「神様が直接納めている国ってどんな国なのかしら?」
「というかフェミリンスといい、セリカさんといい、異世界には何でそんなに”神”がいるんだ!?」
説明を聞いたミシェルは表情を引き攣らせ、エオリアは不思議そうな表情をし、異世界の非常識さにスコットは疲れた表情で指摘し
「フフ、水が綺麗な国ですよ。」
「まあ、世界広しと言えど、セリカを受け入れる”神”等、”水の巫女”ぐらいじゃろうな。」
ミシェル達の反応を見たリタは微笑み、レシェンテは苦笑いしていた。
「フェミリンスさんの時から疑問に思っていたが……何故エステルは異世界の神々と知り合い同士なんだ?」
「しかもわざわざ力を貸しに異世界からはるばる来た上、あんたの頼み――――あたし達の仕事の手伝いまで引き受けてくれるぐらい親しいし……一体何があったんだい?」
「アハハ………”影の国”がきっかけになって親しくなったんだ。」
「”影の国”………!」
「………確か”輝く環”の件が終わって半年後にお前達が巻き込まれた事件か。」
エステルの口から予想もしていなかった自分達も知る事件を知ったミシェルは驚き、アリオスは静かな表情で語った。
「フフ、懐かしいですね……」
「うむ。しかしこのクロスベルで共に戦ったヴァイスハイトやティオと再会するとは思わなかったがの。」
「ハアッ!?ヴァイスハイトってまさか……クロスベル警察局長になった”六銃士”の”黄金の戦王”!?」
「しかもティオちゃんも”影の国”に巻き込まれたですって!?」
「思いがけない人物達の名前まで出てきたな………」
リタとレシェンテの会話から出てきた予想外の名前にミシェルとエオリアは声を上げ、ヴェンツェルは信じられない表情をしていた。
「アハハ……ヴァイスさんと再会した時はあたし達もビックリしたけどね~。」
「まあ、あの人はねえ……?」
「再会できたこと自体が”ありえない”と言ってもおかしくありませんわ。」
「アハハ……異世界は本当に不思議な事だらけだよね……」
ミシェル達の反応を見たエステル達はそれぞれ苦笑いをしていた。
「――――話を戻すが……正直俺は誰かのサポートをするより、独自で動いた方がやりやすいが。世界を放浪していた時はその町の斡旋場が出している依頼を請けて報酬をもらっていたしな。」
「へえ………異世界でもギルドみたいな所はあるのね。」
「まあ、遊撃士協会みたいな組織ではないがの。」
「斡旋場の仕事は個人が出した依頼を紹介する事だけですからね。遊撃士協会のように無償で人々を守ったり、国際的な組織でもありませんから。」
セリカの話を聞いて目を丸くしているミシェルにレシェンテとリタはそれぞれセリカの説明を捕捉した。
「ミシェル、セリカ殿の相手はやはり俺がするか?」
「……そうね。お願いするわ。」
そしてミシェル達は模擬戦を見学する為に街道に向かった。
~東クロスベル街道~
「それじゃあ二人とも、用意はいい?」
「ああ。」
「いつでも構わん。」
街道の空けた場所で向かい合った二人はそれぞれの武器を構え
「頑張って下さい、主~!」
「ほどほどにしておくのじゃぞ、セリカ!」
リタとレシェンテは応援の言葉をそれぞれセリカにかけ
「セリカ!お願いだから絶対に!手加減して戦ってよね!」
ヨシュア達と共に模擬戦を見学しているエステルは大声で叫び
「―――――わかっている。元からこの戦いで本気になるつもりは最初からない。」
(クク、しかも奴とは”影の国”で戦っているから手の内も最初からわかっているだの。)
エステルの叫びを聞いたセリカは静かに頷き、ハイシェラは口元に笑みを浮かべていた。
「………………………」
エステルの直接的な言い方でセリカに絶対に敵わない事を指摘されたアリオスは一切動じずセリカの一挙一動を警戒し
「エステル……少しは言い方ってものがあるだろう……?」
「アハハ……ママらしいと言えばママらしいけど……」
「まあ、”神殺し”の力を知っているのですから仕方ないですわ。」
ヨシュアは疲れた表情で溜息を吐き、ミントは苦笑いし、エステルの言葉が当然と理解しているフェミリンスは静かな表情で頷いた。
「ア、アリオスさん相手に手加減って………」
「本当にそんなに強いのかねえ?」
「………だが、フェミリンスさんの件もある。」
「ええ………一体セリカさんはどれ程強いのかしら?あの独特の剣の構えからしてアリオスさんと同じ東方風の剣士に見えるけど………」
一方エステルの言葉が信じられないスコットは表情を引き攣らせ、リンは疑わしそうな様子でセリカを見つめ。フェミリンスとアリオスの模擬戦を思い出したヴェンツェルの言葉に頷いたエオリアはセリカの構え――――”飛燕剣”の構えを見て考え込んでいた。
「ハア………異世界は非常識な存在だらけだけど、そんな存在と親しくなるエステルの方が非常識に思えてきたわ。……まあいいわ。――――それでは模擬戦、始め!」
「八葉一刀流、二の型奥義皆伝、アリオス・マクレイン………参るっ!!」
「―――来い。”世界の禁忌”と伝えれられる”神殺しセリカ・シルフィル”の力の一端を見せてやる。」
そしてミシェルの号令によってセリカとアリオスは模擬戦を開始した……!
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