百人一首
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95部分:第九十五首
第九十五首
第九十五首 前大僧正慈円
自分のことを知れば。身の程を知れば。
決してこんなことは思えない。こんなことは言えない。それはわかっているのだけれど。
それでも思わずにはいられず。願わずにはいられず。
この墨染の法衣を着て。そこから袈裟を着て。そうして修行に励む日々を送っている。
この比叡山にはその為にいる。永遠の聖地とも言っていいこの山に。
この世の人々を救いたい。心を落ち着かせてあげたい。そう思っているから。
だから俗世を出てそのうえで山に入って修行を積んでいる。修行を積んでそうして人々を助けてあげられれば。そう願っているから。だから今は僧となっている。
この決意。確かなものだと思っている。だからこそ今この決意を歌にすることにした。誰かに見せたいわけではなく自分のこの決意を自分に見せて揺らぐことがないように。
おほけなく 憂き世の民に おほふかな わが立つ杣に 墨染めの袖
この法衣はただ着ているわけではない。その心があってはじめて着られるもの。それはよく忘れられてしまうこと。自分もまた同じでいつも忘れそうになってしまう。けれどその気持ちを戒めてこの世で悩み苦しむ人々の心を救う為に。その為に比叡山にいるのだから。決して忘れまいと誓い歌を詠ったのだ・
第九十五首 完
2009・4・10
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