Ｔｈｒｅｅ　Ｒｏｓｅｓ

「その座はです」
「孤独ですね」
「そうなのです」
「友情も愛情もない」
「至高の座なのです」
「至高であるが故に孤独ですか」
「唯一の座です」
　まさにというのだ、司教は孤独をこうも言い替えた。
「その座なのです」
「王家の者ならば」
「はい、特に王になれば」
「そうなのですか」
「そして私はです」
　司教はマイラにこうも言った。
「マイラ様に是非です」
「王にですか」
「なって頂きたいのです」
「そうですか」
「この国の為、王室の為」
「そして民の為にですね」
「はい、全ての為にです」
　まさにというのだ。
「王家の者としてです」
「王に、ですか」
「そして必ず」
「子もですね」
「もうけて下さい」
「その子はロートリンゲン家の血が入っていますが」
　マイラもロートリンゲン家のことは知っている、この家が婚姻によりその勢力を拡げていった家であることをだ。
　だがそれでもだとだ、司教は言うのだった。
「ですがエヴァンズ家の方です」
「だからですか」
「はい、何があろうとも」
　絶対にというのだ。
「お子をもうけられて下さい」
「エヴァンズ家が正しい姿になる為に」
「まさにです」
「だからですか」
「宜しくお願いします」
　このこともというのだ。
「是非共」
「わかりました、それでは」
「はい、エヴァンズ家の為に」
「王の座に就き」
「血もつながれて下さい」　
　司教はマイラの教師というよりかは家臣となっていた、その家臣忠実なそれとしてマイラに対して話していた。
「このまま」
「旧教の王家として」
「そうです」
「それが私の役目なのですね」
「左様です、旧教の為にも」
「わかりました」
　目は正面を向いていたが表情はない、その顔で答えた。
「それでは」
「その様にお願いします」
　司教は王家の者ならばそれが当然と思っていた、だがマイラは。
　ここでだ、己の思うことをあえてこう表現したのだった。