百人一首
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82部分:第八十二首
第八十二首
第八十二首 道因法師
儚い恋なのはわかっている。それは自分自身が最もよくわかっていること。
長い年月あの人だけを見てきた。あの人だけを恋慕い続けそうして生きてきた。
もうどれだけ恋慕い続けてきたのか。自分でもわからなくなってきた。
それだけ長い年月慕い続け。命だけは耐えている。それだけはある。
けれどその命があるということそのこと自体が耐えられないことで。そのこと自体が悲しみで。
涙は堪えることができず。ただただ流れてくるだけ。とめどもなく流れてくるだけ。
それを抑えることもできず。流れるのに任せるだけだった。
恋とはこういうものなのか。儚い恋とはこういうものなのか。そのことを思いまた涙を流す。涙だけが流れるだけで。生きていても悲しみと儚さだけを知る。そんな恋だ。
そんな儚い恋を知り辛い中で生きていて。このいたたまれない気持ちを歌にした。悲しい気持ちもまた歌を作ってくれる。このこともまた知ることになった。儚い恋は様々なものを自分に与えてくれた。望んではいないものばかりだけれど。
思ひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり
歌ってみても心にあるのは悲しみばかり。涙は相も変わらず流れ続けている。この悲しみを抑えることはどうにもできずやはりただただ泣くばかり。辛い恋を今まで続けてきた。それは今日もこれからも続いていく。悲しみは終わることがない。この儚い恋を続けている限りは。
第八十二首 完
2009・3・28
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