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Blue Rose

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第二十二話 心と身体その十八

「そうしたのよ」
「そうなんですね」
「ええ、それとね」
「それと?」
「あの子が療養所を出たら」
 その時のこともだ、優子は龍馬に話した。
「いいわね」
「はい、俺達は」
「あの子、その頃はあの娘ね」
 性別のことも話した、くすりと笑って。
「あの娘にも会えるわ」
「そう出来る様になりますね」
「そうなるわ、もう少ししたらよ」
「会えますね、あいつに」
「その時が楽しみよね」
「はい、長崎は遠いですけれど」
 神戸からだ、龍馬は神戸から長崎の距離のことも話した。
「会いに行けますね」
「療養所にいる時は無理でも」
「それでもですね」
「もうすぐよ」
 それこそというのだ。
「だからいいわね」
「はい、行きましょう」
「それであの娘と一緒に長崎も歩いて」
「楽しめますね」
「そうしましょう」
「是非、ただ」
 ここでだ、龍馬は少し残念そうな顔になり優子に言った。
「あいつとはずっと一緒にいましたけれど」
「そうよね、お友達としてね」
「今もそうですけれど」
「いつも一緒にいられないことは寂しいわね」
「はい」
 どうにもという返事だった。
「そう思ってます」
「私もよ、ずっと優花と一緒だったからね」
「優子さんは俺以上にですね」
「そうなるわ、家族だったから」
 血を分けた肉親、姉であったからだというのだ。優子は姉として優花に想いを感じてそのうえで言ったのである。
「お家に一緒に住んでいたから」
「住んでいて」
「あの子と離れて」
「寂しいですか」
「寂しい感じはね」
 それこそとだ、優子はその目で言った。
「そう思うわ」
「俺以上にですね」
「そう思っているわ、けれど龍馬君もよね」
「はい、どうしてもです」
「寂しい気持ちはあるわね」
「またあいつと一緒に遊んだり学校で話をしたりしたいですね」
 日常、その時を過ごしたいというのだ。
「二人で」
「私もよ、早くまた一緒に暮らしたいわ」
「どういった形で暮らしますか?」
「もう姉と弟じゃないから」
「妹、ですか」
「それは無理ね」
 優子は少し苦笑いになって龍馬に答えた。
「やっぱり」
「周りに気付かれるからですか」
「私にいるのは弟だけってね」
「皆知ってるからですね」
「生き別れだったとかおかしいでしょ」
「確かに」
 そう言われるとだった、龍馬も頷いた。
「それは普通ないですね、生き別れは」
「そうでしょ、現実にはね」
「まして優花がいなくなってだから」
「じゃあどうしますか?同居はしたいですよね」
「絶対にね、だから優花は留学したことにでもして」
 そしてというのだ。
「従妹が来たとでもしておくわ」
「そうしますか」
「ええ、優花は名前も変わるから」
 表に出ているそれがというのだ。
「だからね」
「そうして別の人としてですか」
「また優花と一緒に暮らすわ」
「そうされるんですね」
「そう考えてるわ」
「何かと面倒なことが多いですね」
「そうね、けれどそうしたことも受け入れているから」
 優花の身体のことがわかってからもとだ、こう龍馬に話すのだった。
「やっていくわ」
「そうしてですね」
「ええ、また一緒に暮らせるようにするわ」
 この願いは変わらなかった、そしてその願いの為に動くのだった。それは龍馬も同じで。
 淀みのない顔でだ、優子に言った。
「俺もです」
「友達としてよね」
「あいつとまた一緒にいます」
「そうしていくようにね」
「努力していきます」
「そうしてね、じゃあ長崎にはね」
「行きましょう、別々になっても」
 長崎に行って優花と会うことも楽しみにしていた、二人は二人でこれからのことを考えてた。優花とのことを。


第二十二話   完


                           2016・5・22 
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