英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第179話
~最果ての道~
「クスクス……おかしなことを言いますわね?―――――”貴方たちだって三度、それに助けられています”のに。」
「へ………?」
「た、助けられたって……」
妖しげな笑みを浮かべて言ったマリアベルの話を聞いたランディとエリィは呆け
「―――そういう事ね。ロイドお兄さん達は何らかの要因によって”三回死んで”、”覚醒したキーアの力で死んだ原因となった因果を操作され、今ここにいる”のね。」
レンは納得した様子で頷いた。
「あ、あんですって~!?」
「じゃあ僕達がロイド達と出会った事すらも……!」
「―――その可能性は高いですわ。」
レンの話を聞いたエステルは驚きの表情で声を上げ、ヨシュアは真剣な表情で声を上げ、フェミリンスは静かな表情で頷いた。
「ね、ねえ……じゃああたし達の存在すらもそうじゃないのかな……?」
「ええ………因果を変えるという事は生まれる子供を変える事もできるでしょうね……」
「ただ私達の世界はこちらの世界と繋がっていませんでしたから、そこまではできないと思うのですが……」
不安そうな表情で呟いたシャマーラの言葉を聞いたエリナは重々しい様子を纏って頷き、セティは考え込んでいた。
「ウフフ………”殲滅天使”の言う通り既に三度、大規模な現実の改変が行われているのです。あなた方が、”暴走したヨアヒムに殺されてしまった”と”ガレリア要塞の列車砲が帝国解放戦線によって起動してオルキスタワーに直撃し、その結果あなた達が殺されてしまった”という現実の改変が。……まあ、”3度目”についてはキーアさんも教えてくれませんでしたが。」
「…………………」
「…………マジ…………なのか………?」
マリアベルの説明を聞いたエリィは複雑そうな表情で黙り込み、ランディは目を細め
「それじゃあ、あの時空砲だったのは………」
「君のお蔭だったの~!?」
「……なるほどね。”事故防止の為の最初は空砲という設計がされてある因果へと操作した”のね……」
フィーは信じられない表情をし、ミリアムは混乱した様子で声を上げ、サラは真剣な表情で幹に埋まっているキーアを見つめた。
「………”最初の時”、ロイド達はエステル達やレンとそんなに仲良くならなかった……それが原因で4人だけで乗り込んで……あの子の助言もないまま結局……」
「―――なるほどね。確かにあの時レンが忠告しなかったら、お兄さん達は殺されていたでしょうね。ツメが甘いエステル達がいた所で同じ結果だったでしょうし。」
キーアの説明を聞いたレンは頷き
「あ、あんですって~!?」
「エステル、落ち着いて。」
「まだ話の途中だよ~。」
レンの話を聞いたエステルはジト目でレンを睨み、呆れた表情のヨシュアは苦笑しているミントと共にエステルを諌めた。
「そして”二度目の時”は最初撃った時は”空砲”にして、リィン達―――”Ⅶ組”にギリギリ阻止してもらうようにしたの。」
「お、俺!?」
「兄様がアリサさん達と一緒に……………」
ロイド達の傍にいるキーアの説明を聞いたリィンは驚き、エリゼは呆け
「た、確かに私達が阻止したタイミングはほぼギリギリだったわよね……?」
「ああ……あの時は本当に間一髪だったしな……」
アリサは不安そうな表情で呟き、ガイウスは重々しい様子を纏って頷いた。
「あら…………まさかとは思いましたが貴女は………―――――未来のキーアさんなのですね?」
一方マリアベルは目を丸くした後妖しげな笑みを浮かべ
「何……!?し、しかし……それなら何故この時代に……いや、それ以前に今こうして彼らと共にいるのだ……!?」
マリアベルの言葉を聞いたイアンは驚いた後信じられない表情でロイド達の傍にいるキーアを見つめた。
「……………そして”3度目”は………ロイド達が”マリアベル達からキーアを助けて”、その後エレボニア帝国に支配されたクロスベルを独立させて………結婚したロイドとエリィが新婚旅行の為に飛行船に乗った際……独立したクロスベルをよく思っていないエレボニア帝国の過激派のテロによって………”飛行船が爆破されてロイド達が殺される未来”を識って………因果を操って世界の勢力を最初から変える為に……このゼムリア大陸をも圧倒できる戦力と国力を持っていて……”神”の力すらも扱える人達もいるけど、決して力に溺れず”共存”を目指しているメンフィル帝国がある世界を繋げ……ロイド達とメンフィルの人達が関われるようにイリーナを”本来なら存在しなかった”エリィのお姉さん――――”イリーナ”に生まれ変わらせ………そしてロイド達を恨む人達が現れないような政治をしてくれる人達――――ヴァイスハイト達を転生させて、この時代に現れてロイド達の味方をしてくれるようにしたの………」
「!!」
「お、お姉様が”本来なら存在しなかった”………?」
自分達の傍にいるキーアの説明を聞いたロイドは目を見開き、エリィは呆け
「じゃ、じゃあまさかわたしに翼があったり、”影の国”に巻き込まれたのも………」
「うん………………ティオがエステル達やリウイ達と仲良くなって、いざという時にティオ達を助けてもらう為だよ………」
不安そうな表情で呟いたティオの言葉に幹に埋まっているキーアは頷き
(なるほどな……あのメンバーの中で他のメンバーと比べると”縁”が薄いティオちゃんがなんで巻き込まれたんか疑問やったが……そう言う事やったんか。)
「信じられない………女神すらも超えているなんて………」
「そうですね………世界を創り変えるなんて事は私の力では不可能です。」
キーアの話を聞いた気配を隠しているケビンは真剣な表情になり、信じられない表情で呟いたリースの言葉にエイドスは静かに頷いた。
「うふふ……素朴な疑問なのですが……何故この場に未来のキーアさんが現代のロイドさん達と一緒にいるのかしら?」
その時マリアベルは怪しげな笑みを浮かべて尋ねたが
「………ロイド達を手伝う為だよ。それに………”未来のキーアが今ここにいる時点”で、”マリアベル達が敗北する事が決定している未来”もわかっているんじゃないの……?」
「………何ですって……!?紛い物の分際で随分と大きな口を叩きますわね…………!」
「馬鹿な………一体何故………」
真剣な表情で答えたロイド達の傍にいるキーアの話を聞いて厳しい表情でロイド達の傍にいるキーアを睨み、イアンは狼狽え
「ベル!今の言葉、取り消しなさい!」
「人を紛い物扱いするなんて、彼女は本当に僕達と同じ人間なのか?」
「むしろ”魔女”って言った方がしっくりくる。」
「まあ、実際古代の錬金術師だからその通りだよね~。」
「…………………」
マリアベルの言葉を聞いたエリィは怒りの表情でマリアベルを睨み、マキアスは厳しい表情でマリアベルを睨み、フィーは静かに呟き、フィーの言葉を聞いたミリアムは頷き、エマは複雑そうな表情で黙り込んだ。
「フン………キーアさん、今の話は一体どういう事ですか?」
エリィ達に睨まれたマリアベルは鼻を鳴らした後幹に埋まっているキーアを睨んで尋ね
「…………………」
尋ねられたキーアは黙り込んでいた。
「…………………」
キーアの様子を見たマリアベルは唇を噛みしめてキーアを睨んでいたがすぐに気を取り直してロイド達を見つめて説明し始めた。
「この”碧の大樹”――――キーアさんの力を増幅し、七耀脈を通じて世界”そのもの”とリンクできる神樹があれば……悲劇を回避できるどころか、先程先生が仰っていたレベルで現実を改変する事が可能なのです。」
「………!」
「それがこの”大樹”の力……」
「………オイオイ………シャレになってねぇぞ……」
「め、滅茶苦茶だ………!」
「………だがそれはあまりにも人々が紡ぐ歴史を愚弄している行為だぞ………」
マリアベルの説明を聞いたロイドは目を見開き、ティオは真剣な表情になり、ランディは厳しい表情で呟き、マキアスは信じられない表情になり、ヴィクターは怒りの表情でマリアベル達を睨んだ。
「うふふ……素敵でしょう?こんな”素敵なもの”があればもう何も恐くない……!世界の全てに幸福を与え、哀しい思いをすることもない!人はあらゆる不安から解放され、”善きもの”だけを追求できる!まさしく錬金術の奥義――――大いなる秘宝(アルス=マグナ)というものですわ!」
「教授どころかヨアヒムだってここまで狂っていなかった気がするわ………」
「そうだね。まさか彼らを超える狂人がいるなんてね。」
「何であんな考えができるんだろうね……?」
嬉しそうな表情で高々と叫んだマリアベルの言葉を聞いたエステルは呆れた表情で答え、ヨシュアはエステルの言葉に頷き、ミントは不安そうな表情で呟き
「ベル……貴女は………」
「貴様………!どこまで俺達――――”人”の存在を愚弄するつもりだ!?」
エリィとユーシスは怒りの表情でマリアベル達を睨んだ。
「………―――イアン先生。本当にそれで、いいんですか?」
するとその時考え込んでいたロイドは真剣な表情で尋ねた。
「…………………何事にも備えは必要だ。人間の歴史は、あやゆるリスクにどう対処するかの歴史でもある……そしてキーア君はそれを制御できる素晴らしい力を持っている。それは否定のできない”事実”だ。」
尋ねられたイアンは眼鏡をかけ直して淡々と答えた。
「その結果、キーアをそんな場所に押し込める事になったとしても……?かつての”幻の至宝”はやがて心を病み、自らを消すという結末に至ったと聞いています。あなた方は本当に……一人の女の子にそんな重責を押し付けるつもりなんですか?」
「………”幻の至宝”よりも幼いキーアではとても耐えられんぞ……!」
ロイドの言葉に続くようにツァイトは厳しい表情で答え
「……………」
イアンは黙り込んでいた。
「ロイド、それは――――」
「うふふ、そうならないようにわたくし達がいるわけですわ。キーアさんに世界改変の責任を全て押し付けるのではなく……先生のような有識者が”より正しい方向”へ世界を変える道標をアドバイスしてゆく……それならば話は別でしょう?」
「…………………」
マリアベルの説明を聞いたロイドは呆け
「み、民主主義的なプロセスを全て否定するというの……?」
「……それどころか絶対王政すらも否定しているぞ……!」
「無茶苦茶としか言いようがない……」
「私もかつてはこのような外道共と同じ類だったと思うと恥としか思えませんわ。」
「クロイス家がそこまで墜ちるなんて………」
エリィとユーシスは厳しい表情で声を上げ、フィーは静かな表情で呟き、フェミリンスは不愉快そうな表情をし、エイドスは悲しそうな表情をした。
「……民主主義や絶対王政の弊害はエリィ君達も良く知っているはずだ。ともすれば衆愚政治に陥り、大切なことを迅速に決めることもままならなくなってしまうシステム……クロスベルに限らず、どこにでも見られる現実ではないのかね?」
「………それは………」
「…………………」
イアンの問いかけにエリィは複雑そうな表情で言葉を失くし、ラウラは複雑そうな表情で黙り込んだ。
「それに私とて、自らの知見だけをキーア君に提示するつもりはない。マクダエル議長のような有識者にもいずれ協力を要請したいと思っている。ディーター君もまた、マネジメントという観点から改めて役に立ってくれるだろう。”六銃士”やリウイ陛下達は……あれは駄目だ。あの者達は自らの欲望の為に動いている。逆に――――君達には私達の試みに協力して欲しいのだ。」
「リウイ達が夢見る”理想”やその”理想”の為にどれだけ苦労したかも知らずによくそんな事が言えるわね…………」
イアンの話を聞いてロイド達が黙り込んでいる中、カーリアンは怒りの表情でイアンを睨んだ。
「新たな時代を拓くためには君達若者の意見も必要だ。そして君達ならば……ここに辿り着いた君達ならば、これからの時代に何が必要なのか身をもってわかっているに違いない。どうかね、この提案は?」
「……そ、そんな事………」
(妄言に耳を傾けるな、ティオ!あれはただの悪魔の誘いだ!)
「クソ………変に説得力がありやがるが……」
(ハッ!あたいはそういう”選ばれた奴等”ってのが一番大っ嫌いなんだよ!)
イアンの提案を聞いたティオは不安そうな表情をし、ラグタスはティオに忠告し、ランディは唇を噛みしめ、エルンストは不愉快そうな表情をした。
「……………イアン先生。結局、先程の質問にはまだ答えてもらっていませんよ?先生は――――”本当にそれでいいんですか”?」
その時複雑そうな表情で考え込んだロイドは真剣な表情で尋ねた。
「あらゆるものには”尊厳”がある。人にも、社会にも、歴史にも。間違っていたり、悲劇を生み出す結果に繋がったとしても………”それを無かったことにする”のは関わった人達の”尊厳”を犯すことだ。例えば、悲劇から立ち直ることで強さを手に入れる人がいるように……本当は……先生にもわかっているんでしょう?」
「ロイド……………(ガイさん、見ていますか?成長した今のロイドを……)
(フフ、それでこそ私が”守護”すると決めた”英雄”よ……)
ロイドの問いかけを聞いたセシルとルファディエルは優しげな微笑みを浮かべ
「………………………」
イアンは黙り込んだ。
「………確かに……人は時には間違いを犯してしまう存在……」
「だが、その過ちを無かったことにしていては、成長することもできない……」
「……共に学び、力を合わせ、前に進んでいくことの意味………」
リーシャとワジが呟いた言葉に続くようにティオが呟き
「確かに、そいつがバッサリと切り捨てられちまうってわけだな。」
ランディは口元に笑みを浮かべて頷いた。
「…………………」
イアンは黙り込み
「……………ロイド………」
幹に埋まっているキーアは驚きの表情でロイド達を見つめていた。
「―――キーア。俺達と一緒に帰ろう。もうこれ以上、俺達のために無理をする必要はないんだ。現に今俺達の傍にいる未来のキーアも無理は止めて俺達と共にいるらしいぞ?」
「また”いつも”みたいに、ロイド達と一緒に鍋パーティーをする方がずっと楽しいよー?」
「……………っ……………!」
優しげな微笑みを浮かべたロイドとロイドの傍にいるキーアの言葉を聞いた幹に埋まっているキーアは泣きそうな表情をし
「……前に何度か俺達が命を落としたという時も………辛くて、苦しくて……哀しい思いをさせてたんだな。ゴメンな、キーア。俺達が不甲斐ないせいで……」
「そ、そんなことない……!あれはキーアが勝手にやったことだから……!だからロイドが謝ることなんて―――」
「だったらキーア。どうしてずっと浮かない顔をしているんだ?」
「………!」
ロイドの指摘を聞いた幹に埋まっているキーアは目を見開いた。
「キーアも気付いているんだろう?俺達の死を哀しむあまり、因果律ってのを操作して現実を変えてしまったこと……―――それがやっぱり”ズル”だったってことを。」
「……………ぁ…………………」
真剣な表情のロイドの言葉を聞いた幹に埋まっているキーアは呆けた後黙り込み
「キーア………」
「ま、死んじまう結末が良かったとはさすがに言えねぇが……それでも”反則技”ってのはどうしても言えちまうかもな。」
ティオは辛そうな表情でキーアを見つめ、疲れた表情で答えたランディは口元に笑みを浮かべ
「……まあ、確かに私達メンフィルや”神殺し”達まで関わらせて、ロイド達の味方にするのは確かに”反則技”としか言いようがないけどねえ?」
「……カーリアン様、少しは空気を読んで下さい。」
苦笑しながら言ったカーリアンの言葉を聞いたエクリアは呆れた表情で指摘し
「アハハ……それを言ったらあたしもそうなるかな?パズモ達やラピス達の事も”反則技”のように強すぎるし。」
「エステル……君も空気を読んで発言した方がいいよ。」
(フフ……例え因果律を操作が原因でも、私達の協力を取り付けたのは貴女の人柄と努力によるものですよ、エステル……)
カーリアンに続くように苦笑しながら言ったエステルの言葉を聞いたヨシュアも呆れた表情で指摘し、フェミリンスは優しげな微笑みを浮かべてエステルを見つめていた。
「……イアン先生、ベル。それについては……”政治”も同じだと思います。時には王道ではなく、邪道が必要になる時もあるでしょう。ですが邪道を前提とするのはやはり間違っています。
「………エリィ君……………」
「…………………」
一方エリィの言葉を聞いたイアンは複雑そうな表情をし、マリアベルは厳しい表情で黙り込んだ。
「キーアちゃんと言う個人の超越的な力に頼る事……それは、もはや政治ではなく、ただの神頼みとしか思えません。困難な状況を、しかるべき手続きと対話のプロセスによって乗り越え、全員の問題として解決してゆく………それが”真の政治”だと思います。」
「うむ。女神もそう言う世界を望んだからこそ、私達”眷属”を”盟約”で縛ったのだ。」
「そう……全ては自分達の力で道を切り開く為に……」
エリィの言葉にツァイト、エイドスはそれぞれ続き
「多分、キーアの力が無ければクロスベルが深刻な危機に直面する可能性は高いと思います。大陸全土の混乱、経済危機………そしてもし局長達がエレボニアに攻めていなければ、エレボニアは内戦が終了しだい、クロスベルに牙をむくでしょう。――――それでも俺達は。キーアに全てを押し付けるのが正しい選択だとはとても思えない。与えられるだけの奇蹟に頼ったら俺達自身が成長できないから……だから苦しくても……今は”筋”を通すべきだと思うんです。」
「………ロイド………」
「…………………」
ロイドの言葉を聞いた幹に埋まっているキーアは複雑そうな表情をし、イアンは黙り込んだ。
「――――――クロイス家の末裔とその者に手を貸す哀れなる墜ちた人の子よ。貴女達の”負け”です。”人”は”至宝”を前にして”真なる答え”に辿り着きました。”真なる答え”に辿り着けなかった貴女達では到底人々を幸せにする事は出来ません。貴女の祖先ですらもいつか私が望む世界――――人々が”神”や”奇蹟”に頼らず、人々の手によって紡がれる世界を創る事を夢見ていたのですよ?」
するとその時エイドスは静かな表情で一歩前にでてマリアベル達を見つめて問いかけた…………………!
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