死にゆく街
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第二章
「フランスでした者はいるそうですが」
「あの国で」
「ミシェル=ド=ノートルダムといいましたか」
キャロルはその医師の名前を出した。
「確か」
「ノートルダムですか」
「そういいました、元はヘブライの者だったとか」
即ちユダヤ系だというのだ。
「その者がそうしているそうですが」
「そうですが」
「しかしです」
キャロルはポストリッジにさらに話した。
「それが出来るのは彼ならばで」
「このロンドンにはおらず」
「そしてまだです」
「まだとは」
「どの街も今のロンドンよりは」
この黒死病の者で溢れ返ってしまっているこの街よりはというのだ。
「ましらしいので」
「だから出来たのですね」
「最早です」
今のロンドンはというのだ。
「手遅れかと」
「酒と火を使おうとも」
あまりにも多く使わねばならない為に用意する時点で難しくしかもそれを行えるだけの指導力の持ち主も街にいない状況ではというのだ。
「無理かと」
「そうですか」
「ですから最早」
「このロンドンは」
「腐りそして」
そのうえでというのだ。
「果てていくだけかと」
「そうなりますか」
「黒死病の者は増えていくばかりです」
汚物と鼠達に塗れ建物、貧しい者達が家や物置に使っている木々でさえも腐ってきているこの街ではというのだ。
「それでは」
「もう、ですか」
「どうにもなりません」
「そして我々もですね」
「この街にいますので」
黒死病に覆われているロンドンの中にいるならというのだ。
「ですから」
「そうですね、しかしです」
「牧師様はそうなってもですね」
「私はこの街にいよと神に命じられました」
こう考えているからこそというのだ。
「ですからここを離れません」
「例え黒死病になられようとも」
「そのつもりです」
「そうですか」
「はい、逃げません」
こう言うのだった、そしてだった。
ポストリッジは実際にロンドンに残り続けキャロルも同じだった、二人は二人の出来ることをしていはいた、神に祈り黒死病の者達を観ていた。そうした者達を共に助けていた。
しかしだ、そうしていてもだった。
黒死病の者達は増え続けていた、最早それはどうにもならかった。
しかしだ、その中でだった。
街の中に火が起こった、その火は瞬く間に燃え上がり。
ロンドンを覆った、ポストリッジもキャロルもその火から逃げた。
ロンドンはその殆どが燃えてしまった、ここでポストリッジは投げ出された者達を見て驚いてこうしたことを言った。
「あれだけの火事だったというのに」
「はい、しかしですね」
「死んだ人は少ないです」
「異常なまでに」
「これは神の御業です」
ロンドンを焼き尽くした火災だったというのにというのだ。
「焼け出された人は多いですが」
「全くですね」
「確かに街は焼け落ちましたが」
ロンドンという街自体はだ。
「しかし」
「それでもですね」
「これはです」
まさにというのだ。
「神の御業です」
「神が羊達を救われましたね」
「まさに」
ポストリッジとキャロルは二人で話してだ、犠牲者が驚くまでに少ないことに神に感謝した。そのうえで街を見回ったが。
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