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三軒隣

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第五章

「遠いっていうんだね」
「俺の感覚としては」
「日本人の感覚としてはだね」
「三軒隣とかすぐとか言っても」
 それがというのだ。
「日本の感覚だと歩いて、ですから」
「よく日本人に言われるよ」
「ですよね、やっぱり」
「けれどね」
「それが、ですか」
「こっちじゃそうなんだよ」
「オーストラリアだと」
「特にこの辺りはね」
「人が少なくて」
「そうだよ、近くとかすぐっていうのはね」
「こんな感覚なんですね」
「そうなんだよ、実はね」
「そのことがわかりました」
 げんなりしたものを顔に見せつつだ、翔平はロバートに答えた。
「日本の感覚じゃないんですね」
「その場所その場所でね」
「感覚があるってことですね」
「そうだよ、距離についてもね」
「そうですか」
「そう、それじゃあ今から」
 ロバートはにこにことしながらだ、あらためて翔平に話した。
「ウルルに行こうか」
「はい、それじゃあ」
「凄いよね」
「そうだよね」
 翔太と翔悟がここで言った、平たく広いその岩山を見てだ。
「この目ではじめて見たけれど」
「違うよね」
「実際にこの目で見たらね」
「迫力あるよね」
「ああ、目で見て実際に感じる」
 翔平は弟達の言葉を受けても思った。
「そうすれば本当にわかるな」
「お兄ちゃん何か難しいこと言ってる?」
「そんなこと考えてる?」
「いや、御前等も十年位経ったら普通に考えることだよ」
 成長すればとだ、翔平は自分の弟達に返した。自分が小学生の時はこうしたことを考えなかったなと思いながら。
「これはな」
「十年なんだ」
「僕達があと十年経ったらなんだ」
「考えることなんだ」
「そうなんだね」
「ああ、そういうことだよ」
 こう言うのだった。
「それじゃあな」
「うん、今からね」
「ウルル登ろうね」
 三人はロバートの案内を受けてだ、そのうえで。
 ウルルを登った、そうして両親と弟達の今の家に戻ったが。
 翔平は食事の時にだ、母が焼いてくれたマトンのステーキ、三百グラムが二枚あるそれを食べつつこう言った。
「わかったよ、何かと」
「悟った顔だな」  
 父はこう言った我が子に笑って返した。
「いい顔だぞ」
「そんな顔になってるか?今の俺」
「ああ、なってるぞ」
 実際にというのだ。
「色々わかったみたいだな」
「ウルルをこの目で見たけれどな」
「それだけじゃないな」
「何ていうかな」
 こう言うのだった、家族に。
「距離とか感覚ってのがわかったよ」
「すぐって言ってもな」
「ここの感覚での話だな」
「そうだ、日本の感覚にしたらな」
「遠かったよ」
「そうだっただろ」
「ヘリで行くなんてな」 
 それこそというのだ。 
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