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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第3章:再会、繋がる絆
  第61話「傷ついてでも動く」

 
前書き
王牙にも出番をやりたい。(踏み台としてだけど)
 

 






       =優輝side=







   ―――....夢を、見ている...。





「....父さん...母さん....。」

 夢の中の自分は、中学生だった。
 誰もいなくなった、他にも誰かがいた家の中で、僕は泣いていた。

   ―――これは...前世の...。

 そう。その光景は、まさしく僕の前世のもの。
 中学時代に両親を亡くし、一人で生きていくことになった時だ。



「電気代、水道代、食料に生活用品....えっと、他には...。」

 場面が変わり、学校にて僕は一つのノートに何かを書いていた。

「優輝君?何を書いているの?」

「ん?あー、家計簿...ではないな。まぁ、家計に関するメモって所か。」

 そこに一人の男子生徒が話しかけてくる。
 “祈巫聖司”。この中学からの僕の親友で、色々お人よしな奴だ。

「...もしかして...。」

「...僕は一人で暮らす。あんな親戚共の所には行かないからな。」

「そっか...。」

 親戚はどいつもこいつも両親の遺産狙いで近づいてきた。
 狙われる程の遺産はあるため、そいつらを突っ撥ねて僕は一人暮らしをすると決めたんだ。





「よっ、聖司。この前言ってた新巻、持ってきたぞ。」

「あ、ありがとう優輝君。...優輝君はいいの?」

「ん?僕はもう読んできたし、いつまでもベッドの上は暇だろ?」

 さらに場面は進み、ある一室で僕と聖司が会話していた。
 ...聖司は高校のある時、急病で入院した。

 人当たりの良い性格だったから皆心配していて、僕がよく代表してお見舞いに来ていた。

「...災難だな。高校を中退って言うのは。」

「仕方ないよ...。結構やばい病気らしいから...。」

「仕方ない...か。まぁ、退院したら教えてくれよ?色々頼ってもいいからさ。」

 そう。僕はこの時聖司にそう言った。
 それからは、受験の事や、家計などで色々忙しくなり、見舞いの頻度が下がっていった。

 そして、受験前の見舞いで“受かってくる”とか言って、それからしばらくして...。





   ―――...その時には、既に取り返しがつかない状況だった。





「っ!?」

「っと!?」

 それはある日の大学からの帰り。角を曲がった所で誰かとぶつかった。

「す、すいません....って、え...?」

「ぁ....優輝、君....?」

 その誰かとは、聖司だった。
 普通に私服を着ていたのだが、その姿はボロボロで、裸足だった。

「まさか...聖司...なのか?」

「ぁ...ぅ....。」

「いつ、退院していたんだ?それに、その恰好は....。」

 最近は忙しくて会えなかったから色々聞くが、聖司は答えない。
 それどころか、何かに極端に怯えている。

「...なにがあった?」

「ぁ..ごめ....僕に、近づいちゃ....。」

「え、どうして....っ!」

 とにかく何があったか聞こうとして、僕は聖司の背後から見える人物に気づいた。
 それは女性だった。ただし、髪を振り乱し、手に包丁を持っていた。

「まさか...!」

「ひっ....お母さん....!」

「下がれ!聖司!」

「優輝君...!?」

 何があったかを聖司の言葉から察し、すぐに庇うように前に出る。
 手に持っているのは鞄だけ。だけど、これでも包丁ぐらいなら...!
 そう思い、僕は迫ってくる聖司の母親に対して身構える。

「させない...!」

「死ねぇえええ!!」

「優輝君.....!」

 叫びながら突き出される包丁に対し、鞄で防ごうとして....聖司に突き飛ばされた。

「なっ....!?」

「が....ぅ.....。」

 申し訳ないと言った顔で聖司は僕を見て、そのまま庇って刺される。

「あんたなんかに....幸せなる権利なんてないわよ....!ここで死になさい...!」

「っ、あ......。」

 呪詛のように聖司の母親はそう言い、聖司はそのまま仰向けに倒れる。

「聖司...!?くそっ....!」

「あ...はは...やったわ...やって....っ!?」

「お前....!このっ...!」

 狂ったように笑う聖司の母親に対し、僕は蹴りを放つ。
 それで包丁を叩き落し、そのまま一本背負いをして無力化する。

「誰か!警察と救急車を!」

「...ぁ...優...輝....君.....。」

 人が集まってきていたので、他の人に救急車を頼み、僕は応急処置に当たる。

「聖司!しっかりしろ!くそっ...!なんでこんな事に...!」

 刺された箇所を抑え、必死に止血しようとする。
 ...しかし、とても衰弱しているようで、それだけでは助かりそうにない。

「...も..ぅ、無..理....だ...。」

「聖司....どうしてここまで衰弱して....っ、そう言う事か...!」

 言っている途中で、大体察してしまう。
 詳しい事は分からないが、ずっと虐待を受けていたのだ...と。

「くそっ...!くそっ...!聖司!しっかりしろ!」

「...ぁ...ぅ....。」

 徐々に弱まっていくのを手で感じながら、必死に助かってほしいと願う。

「....優輝...君...。巻き込んじゃって...ごめん...。」

「聖司...?聖司!!」

 ....だけど、無常にも聖司の心臓は、そこで止まってしまった。

「....おい....嘘だろう....?」

 目の前で、命が消えた。その事に僕は茫然自失となる。

「聖司...!聖司...!...っ、ぁああああああああああああああああああ!!!」

 親友を喪った。その事に僕は声の限り慟哭を上げた。
 どうして気づけなかった。どうして救えなかった...と。















「.........。」

 ...目を、覚ます。そこは夢で見ていた光景じゃない。どこかの部屋だった。

「あ、目を覚ました?」

「....えっと...那美さん...?」

 僕が目を覚ましたのに気づき、那美さんが声をかけてくる。
 ...はて、どうして那美さんが?

「ここは....。」

「ここはさざなみ女子寮の私の部屋。...久遠に連れられて発見した時は、驚いたよ。」

「...そういう、事ですか...。」

 つまりは、久遠と那美さんによってここに連れられ、僕らは手当てされたようだ。
 ...っと、椿と葵は?

「二人の症状はもっとひどいから、まだ目を覚まさないんだけどね...。」

「...無事...ではないけど助かったのか...。」

 偽物にやられ、挙句適当な場所に転移だ。
 もし久遠に見つからなかったら、そのまま死んでいたかもしれない。

「ぐっ....!」

「だ、ダメだよ動いたら!な、内蔵が傷ついているみたいなんだから...!」

「...あぁ、道理で...。」

 それだけじゃない。リンカーコアが9割以上損傷しているしな。

「....あれ?リヒトとシャル、それにシュラインは...?」

 ふと体を探ってもどれも見当たらない。

「あ...それなら...。」

「ん?起きたようだね。どうだ?調子は?」

 那美さんが何か言おうとして、誰かが部屋に入ってくる。
 銀髪のショートカットの美人さんで、傍らには....!

「シュライン!」

「ああ、返しておくよ。粗方事情も聴いたしね。」

「え....?」

 事情って事は...主に魔法やジュエルシードの事をか?

「ほら、前に私が事件に巻き込まれたでしょ?その時の事もばれてて...。」

「HGS...って知っているか?」

「一応は....。」

 確か、大まかに言えば超能力みたいなものだったな...。

「まぁ、それで心を読んでな。それで私も粗方な事は知っている。」

「...それで、リヒトとシャルとシュラインを...。」

「大事な相棒みたいだしね。丁重に扱ったよ。」

 確かにリヒト達に傷は一つもついていない。...元々滅茶苦茶頑丈だから当然だけど。

「...っと、名乗ってなかったね。リスティ・槙原だ。刑事をやっている。」

「刑事...。」

 何気に刑事に会うのは初めてだな。...時空管理局も一部はある意味刑事か?

「...行くつもりだろう?」

「...なんと言っていましたか?」

 ふとリヒト達に目を向けてから、リスティさんはそういう。
 ...僕がもう動こうとしているのを察していたか。

「...どんなに傷ついても動く困った主だって聞いたよ。」

「.....自覚はしてます。」

 苦笑いしながらそう返事する。

〈自覚しているなら改善してください。〉

「そのうちな...。」

 拗ねるようなリヒトにそう答えながら、体の調子を確認する。

「(...体は過激な運動には厳しく、魔力は絶望的...だけど、霊力は無事...か。)」

 ならば。と、僕は霊力を回復促進に回しながら立ち上がる。

「行くよ。椿、葵。」

「っ...まだ癒えきってないのに無茶言うわね...でも、わかったわ。」

「あたしも動けるよ...。」

 いつの間にか目を覚ましていた二人に声をかける。

「...驚いた。骨は折っていたはずだが...。」

「生憎、普通ではないのよ。私たち。」

「霊力もまだあるし、少し体を動かせば調子も戻るかな。」

 体を少し動かし、二人は調子を確認する。

「....止めはしない。元々私たちには手が出せなさそうな事だ。」

「...そうしてくれると助かります。...これは、どうやら僕がやらなきゃダメみたいなんで。」

 目を瞑り、ただ僕らが通り過ぎるのを待つリスティさんと、わかっていても不安そうな那美さんを通り抜け、僕は部屋を後にする。

「...助けてくれてありがとうございました。」

「....頑張れよ。」

 最後にそう言って、僕らはさざなみ寮を後にする。
 時刻は昼で、一応僕らはひっそりと出て行った。

「...ところで優輝。これからどうするつもり?」

「...何がだ?」

 少し歩いた所で、椿がそう聞いてくる。

「...言っても無駄でしょうけど、私たちはまだ満身創痍よ。この状態でジュエルシードを集めるつもり?」

〈私からもそれはおすすめできません。マスターを助ける前に貴方が死にます。〉

「分かってるさ...。」

 今の僕らは回復が追いついていない。
 おまけに魔力も扱えないから、全て霊力で補う必要がある。
 ...でも、全てを賄えるほど僕の霊力は多くない。

「以前、二人は言ってたよね?霊脈があるって。」

「...ええ。言っていたわね。」

 それは僕が椿と葵に霊術について教わっていた時についでに教えてもらった事だ。
 星の力の一端を扱う霊力には、“霊脈”と呼ばれるパワースポット的な場所がある。

「...そこを利用すれば早く回復できる。」

「...そういうこと。」

「つまり、八束神社に向かうんだね?」

 ついでに言えば、海鳴市の霊脈は八束神社の所にある。
 これは椿と葵が事前に調べて知っていたらしい。

「...ちょっと、偽物についても考えたいからね。」

 色々と整理がついていない事もある。それについても考えたい。







「これをこうすれば....。」

「...ここからなら街も一望できるしちょうどいいわね。」

 御札を置き、霊脈から霊力を受け取りやすくする。
 そして、神社の縁側に座りながら情報を整理する。

「まず...偽物についてだな。」

「....そうね。」

 ジュエルシードを核とし、僕をコピーした偽物。
 強さや正体もそうだし、あの後どうなったのかも気になる。

〈...それについては私から言います。ある程度予想がついているので。〉

「そうなのか?じゃあ、聞くよ。」

 シュラインがそう言ったので、まずはシュラインの話を聞く事にする。

〈優輝様方も予想はついていると思いますが、あの偽物は優輝様のリンカーコアを吸収し、その性質をコピーする事で霊力以外のほとんどを扱えるようになっています。〉

「...ああ。リンカーコアは吸い取られた感覚だったからな。」

 これは少し考えればわかる事だった。

〈また、あのような結果になったのは、フュールング・リヒト。貴女にずっと収納されていたからです。〉

〈...私に、ですか...?〉

 それはちょっと気になる事だった。
 確かに僕は記憶を改竄される前にリヒトにジュエルシードを収納していた。
 ずっとリヒトの中にあったとはいえ、一体どんな関係が...。

〈...貴女とシャルラッハロートは最も優輝様の身近にいる存在です。つまり、優輝様の感情・精神・意志などを最も受ける訳でもあります。〉

「...それは一体、どういう...。」

〈.....“感情”。...それが原因です。〉

「っ...!」

 その言葉を聞いて、ハッとする。
 そうだった。ジュエルシードは元々天巫女が生み出したモノ。
 感情に左右されるのであれば...!

〈...簡単に言えば、あのコピーの正体は優輝様の“負の感情”です。心の奥底に燻っていた暗い感情が、収納されていたジュエルシードに蓄積されていったのです。〉

「.....なるほど...な...。」

 “負の感情”...それなら僕の偽物があそこまで攻撃的になるのも納得だ。
 ...まだ、理由までは分かり切ってないけど。

「....自分の胸に聞けっていうのは、そういう事か...。」

「何か思い当たる節があるの?」

 偽物が言っていた事を思い出して、ふと一つの事に思い当たる。

「生憎、自覚はしていない。...だけど、未だに心には残っているんだろう。...緋雪の事だ。」

「...!そういう事...。」

 確かに僕は緋雪の事に関してはちゃんと割り切っている。
 だけど、無意識にまだ後悔とかをしているのだろう。

「となると偽物の目的は...緋雪の蘇生か?」

 緋雪(シュネー)のように復讐で世界の全てを壊すのならば、結界をそのままにせずに解いてそこらじゅうに被害を出していただろう。
 今だって破壊の後が見受けられないのならば、その線は薄い。

「蘇生って...。」

「...僕の魔法であれば可能だ。魂を呼び寄せる魔法もグリモワールに載っているからな。」

「そっか...創造魔法...。それで、肉体を...!」

 唯一の問題である魔力も、ジュエルシードで補うのだろう。

「僕の無意識な願いが、形となった...って訳か。」

「優輝....。」

 ...でも、そんな事をしても緋雪が喜ぶとは思えない。
 そんなのは、いくら“負の感情”で具現化した偽物でもわかるはずだが...。

「...ともかく、偽物の相手は僕がするべきだな。」

「相性的にも、存在的にも?」

「...無茶は、しないでよね。」

「分かってるさ。」

 止めはしないのは二人も分かっているのだろう。...あれは僕が倒すべきだって。
 責任を感じているのもあるけど、何より少なからず僕にも迷いがあったという事だ。
 なら、それにケジメを付けないとな。

「....あ、そういえば偽物が現れる前にシュラインは言ってたよな?“負の感情”に呑まれるとかなんとか...。僕の場合は大丈夫だったのか?」

〈その事ですか。...一言で言えば、優輝様の“負の感情”とマスターの“負の感情”の強さが違いすぎたからです。...所詮は無意識下での感情ですしね。〉

「そういうことか...。」

 おそらく、僕程度では足元にも及ばないのだろう。
 ...一体、どれだけ一人で抱え込んでいたんだ...。

「僕らを殺そうとしたのは、絶対に邪魔してくるから...って所か。」

 おまけにオリジナルである僕が負傷しているんだ。またとないチャンスだったのだろう。
 ...まぁ、だったらどうして確実に殺さずに転移させたのかがわからないが。

「...っていうか、アリシアは...。」

「少なくとも、あたし達と一緒に転移させられた訳じゃないよ。」

 ずっと気になっていたアリシアについて聞くと、葵がそう答えた。

「...結界に取り残されたか...。」

「偽物が殺す気なら、アリシアはもう...。」

 思わず手に力が籠ってしまう。...既にどうしようもない事だ。
 もしかしたら、なのはとかが駆け付けてくれてるかも....と言うのは、高望みか。

「くそっ....!」

 どうしようもなかった....なんて僕の言い訳だ。
 僕らがアリシアに気づいていれば、偽物が現れる前になんとかできたのだから...。

〈落ち着いてくださいマスター。...今は、先の事を考えましょう。〉

「っ、ああ...。そうだな...。」

 落ち着け。冷静になれ。
 これ以上、犠牲者を出してはいけない。そのためにも...!

「(僕らの現状はあまり良くない。僕らの傷は癒えていないし、僕は魔法を使えない。)」

 現状を把握し、どう行動を取るか考える。
 今魔法が使えるのは葵だけだ。椿も微量の魔力を持っているが扱えないしな。
 霊力も回復に回しているから全快はしていない。

「(霊脈をフル活用すれば葵ならものの十分ほどで傷も完治するだろう。椿も一時間ぐらい。...僕でも数時間でリンカーコア以外は治るな。)」

 霊脈の力は凄まじい。あれほどの重傷もこんな短時間で治せるのだから。
 ちなみに、霊力と魔力は別のため、リンカーコアまでは治せない。

「(目下の目的は傷の完治とクロノ...管理局への連絡。...後食事だな。)」

 少し腹の虫が鳴ったので目的を一つ付け加える。

「かやちゃん...ここなら...。」

「...そうね。手段の一つとして考えておくわ。」

「無理はしないでね?...“憑依”が使えたらなぁ...。」

「ないものねだりをしても仕方がないわ。」

 ふと、椿と葵を見てみれば、霊脈を調べながら何か会話していた。

「どうかしたのか?」

「ん?えっとね、ちょっとした裏技かな?」

「裏技?」

 霊脈と関係あるのだろうけど、一体どういう...。

「...優輝の偽物は強敵よ。それは優輝もわかってるわね?」

「ああ。霊力が使えないなんて関係ない程に厄介だ。...魔力もほぼ無尽蔵だしな。」

 様々な術式が載っているグリモワールもコピーはされていない。
 しかし、以前に僕は読み漁り、その記憶を偽物はコピーしている。
 そのため、グリモワールにある術式も一部は使えるだろう。

 ...最も厄介なのは導王流と創造魔法なんだけどね。

「...それに対抗するための切り札よ。」

「それは一体...。」

「.....“神降し”よ。」

「っ....!」

 神降し...神をその身に宿す事だ。
 主に巫女や神主がする事で、神を降ろす事でその力の一端を扱う事ができる。
 ...つまり、神の力を使って偽物を倒す...と?

「...でも、椿は式姫だろう?僕だって霊術使いなだけで、神主でも...ましてや厳密には陰陽師でさえないんだけど。」

「そうね。...でも、分霊で式姫な私でも“(しるべ)”にはなれるわ。」

「そこから優ちゃんが本体を降ろせばいいんだよ。神主じゃなくてもできるよ。」

 二人は簡単にそう言ってのけるが、色々と気にするべき事が...。

「...その場合、椿はどうなるんだ?」

「...やってみない事には、わからないわ。実際に降ろすまで...契約するまでは普通でいられるけど、降ろした際には....少なくとも、何も行動はできないわね。」

「死ぬ訳では...ないんだな?」

「そのはずよ。神降しをやめれば、元に戻るはず。」

 つまり、神の力を使う代わりに少なくとも椿は戦えなくなる訳だ。

「色々と準備も必要だから、出直す必要があるけどね。」

「とりあえず何か食べないと...。」

「....だな。」

 霊脈と僕とのパスを繋げ、まずは自宅に戻るとする。
 クロノへの連絡もそれからでいいだろう。







「....繋がらないね...。」

 家に着き、昼食を取ってから葵がクロノと通信を繋げようとするが、中々繋がらない。

〈...どうやら、何らかの妨害を受けているようです。〉

「...どう考えても偽物の仕業か...。」

 どうやったか詳しくは分からないが、偽物が原因で通信が妨害されているみたいだ。

「援軍は頼めないって訳か...。」

「でも、魔力反応とかで他の人が気づいているかも?」

「それまでは僕らだけって訳だな。」

 ...なんだろうか。偽物が妨害程度で終わらす気がしない...。
 曲りなりとも僕の偽物だ。相当用意周到に仕掛けを施しているはず...。

「...嫌な予感がする。早めに行動しよう。」

「...そうね。司もいつまでも無事とは限らないわ。」

 そうと決まればすぐに支度して八束神社に向かう。
 作り置きしておいた魔力結晶と御札も全部持って行くか。















   ―――...待っててくれ司さん...必ず、その心を救って見せる...!













 
 

 
後書き
霊脈…星の所々にある人間でいう血管みたいなもの。星の力(この場合主に霊力)を受ける事ができ、テレビなどでパワースポットと呼ばれている場所の半分以上は霊脈がある。
 霊脈の恩恵をフルで活かせば、奇跡に近い現象を起こす事もできる。

神降し…名前通りその身に神を降ろす事。
 降ろす神と契約を事前に結んでおき、その身に降ろして力を行使する事ができる。
 降ろした際に、降ろした神の姿の一部が反映される。

とらハは詳しく知らないのでちょい役的な感じで使うだけです。久遠(with那美さん)ぐらいしか大きくは関わりません。
また、口調などの違いは大目に見てくれると助かります。 
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