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百人一首

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46部分:第四十六首


第四十六首

                 第四十六首  曾禰好忠
 恋の行方がわからなくなってしまった。
 少し前までは自信を持てていたのに。どうなっていくのか、自分の中では確かなものがあると思っていた。
 けれどそれはただの思い込みに過ぎなかった。そのことを今心の中で悲しみと共に噛み締めている。そうなってしまったと言えばそれは感傷になってしまうだろうか。
 今ではどうなるか全くわからなくなってしまった。どうなってしまうのか、自分には全くわからなくなってしまった。
 それを例えるとするとまさにこれは。梶を失って彷徨う小舟。
 まさにそれで。ただ彷徨うばかり。
 ゆらゆらと揺られるだけで。波と波の間を漂うばかり。
 どうなってしまうのかは全くわからないし。流れていくのかどうかさえもわかりはしない。
 そこに漂っていて。不安定に浮かんでいるだけ。
 そんな自分のことをあの人はどう思っているのか考えてみても。やはり漂うようにわからないので。困惑してしまうことしきりだ。
 けれどこの気持ちは歌に託したい。そう思って今は詠った。この歌を。

由良の門を 渡る舟人 かぢを絶え 行方も知らぬ 恋の道かな

 歌にした今の自分自身。あてもなく漂い彷徨う自分を。恋の道に迷ってしまって漂うばかりになってしまった。そんな自分の今の気持ちを。歌にしてみたがやはり彷徨い続けるのだった。


第四十六首   完


                   2009・1・29
 
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