英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第177話
~戒の領域・最奥~
「………………………」
アリオスから3年前の真相を聞いたダドリーは複雑そうな表情で黙り込み
「「……………ガイさん………………」」
「……最後の最後までガイらしかったようね………」
セシルとティオは涙を流して辛そうな表情になり、ルファディエルは目を伏せて呟き
「……そんな事が……」
「……因果な話だぜ。」
エリィは複雑そうな表情で呟き、ランディは疲れた表情になり
「―――だからこそ、この”領域”ですか。」
「………多くの罪の意識に囚われた”自戒”か…………」
「アリオスさん…………」
「………………」
フェミリンスとヴィクターは静かな様子を纏って呟き、エオリアは複雑そうな表情でアリオスを見つめ、ツァイトは目を伏せて黙り込み
「……ありがとう。兄貴の最期を教えてくれて。」
ロイドは目を伏せて呟いた。
「……礼を言うな……イアン先生は……多分、揺らがないだろう……そして……キーアの決意も固いようだ……二人を崩せるかどうか……お前達の全てをぶつけてみろ……」
ロイドの言葉を聞いたアリオスは目を伏せて呟き
「……わかりました。」
ロイドは重々しい様子を纏って頷いた。
「………アリオスさん。今ここで貴方に一つだけ教える必要がある事を言っておきますね……」
「……一体何だ……?」
目を伏せて呟いたセシルの言葉を聞いたアリオスはセシルを見つめ
「――――シズクちゃんを拘束しようとしたリウイさん達に頼んで、シズクちゃんは私とリウイさんの娘として引き取りました。このままシズクちゃんが貴方の娘であり続ける事は、あの娘の将来が暗い未来になる事は目に見えていました。既にシズクちゃんからも了承してもらい……エルファティシアさんに事情を説明して現状のクロスベルの法律を司るヴァイスさん達の仲間の方――――フェルアノさんに手続きを取ってもらいました。ですから今のシズクちゃんは貴方の娘ではなく……私とリウイさんの娘です。」
「なっ!?」
セシルの説明を聞いて目を見開いて愕然とした表情でセシルを見つめ
「なるほど……………これがお前なりの”裁き”か、セシル………俺にとって最も痛手となる所を突いてくるとは………………」
すぐに気を取り直して重々しい様子を纏って目を伏せて呟いた。
「………言っておきますけど、あの娘を引き取ったのは”復讐”の為ではありませんし、拘束しようとしていたのはリウイさん達の判断です。私がその事を知ったのはあの娘がリウイさん達によって拘束されようとした時だったのですから。私はあの娘を看護師としてずっと世話していた立場として、シズクちゃんの将来を考え……あの娘を自分の”娘”として引き取る事にしたのですから。」
アリオスの言葉を聞いたセシルは静かな表情で答え
「そうか………フッ………確かにお前の言う通り、シズクが今回の事件を引き起こした元凶の一人である俺の娘である限り、あの娘に明るい未来は訪れないだろうな………………ガイが死んだ原因の一人である俺が頼むのは図々しい事だと承知している……どうかシズクの事を頼む…………」
「……………はい。」
頭を深く下げたアリオスの言葉にセシルは頷いた。するとその時ロイドがアリオスに近づき
「―――――元クロスベル独立国、国防長官アリオス・マクレイン。クロスベル帝国法に基づき、”ガイ・バニングス殺害事件”に関与した容疑並びに捜査妨害、傷害、騒乱、不法侵入並びに不法占拠などの数多の容疑で逮捕する…………!」
警察手帳を出して宣言した後、アリオスの両手に手錠をかけた!
(ガイ…………)
自分に手錠をかけたロイドを見つめたアリオスはロイドの背後にガイの幻影が見えて驚き
「……それでこそ貴方よ、ロイド………………」
「…………………………拘置所で今までの自分の行いを見つめ直して来い、マクレイン。」
「……クロスベルの為に今まで誰よりも多くの依頼を請けて解決して頂き……ありがとうございました、アリオスさん………………」
ロイドの行動を見たルファディエルは静かな表情で呟き、ダドリーは目を伏せて呟き、エオリアは頭を下げて言った。
「フッ……………やはり兄弟だな…………」
そしてアリオスは静かな笑みを浮かべて呟いた後気絶して地面に倒れた!すると結界が解けると同時にアリオスの背後に転移魔法陣が現れた!
「………………」
気絶したアリオスをロイドは複雑そうな表情で見つめ
「ロイドさん…………」
ティオはその様子を心配そうな表情で見つめていた。
「はは……これでやっと……兄貴に届けた気がする。ありがとう……みんなのおかげだよ。」
気を取り直したロイドは笑顔でエリィ達を見つめ
「はは……何言ってるんだっつーの。」
「……ロイドさんの意志がアリオスさんという”壁”を突き崩したんだと思います。そしてガイさんの死という過去の暗闇に光を当てた………」
「ええ……私達はその手伝いをしただけだわ。次ばかりは手伝いなんて言っていられないけど……」
ランディは静かな笑みを浮かべ、ティオは静かな表情で語り、エリィは口元に笑みを浮かべた後複雑そうな表情をした。
「ベルお嬢さんにイアン先生、それにキー坊か……」
「………次で全てが終わる時か。」
エリィの言葉を聞いたランディは複雑そうな表情で呟き、ヴィクターは目を伏せて呟いた。
「………最後の”領域”も解放した。とりあえず………拘束したアリオスさんを”メルカバ”に連れて行って、休憩した後全員でマリアベルさん達に挑もう。」
「ええ、それでいいかと。次の戦いで全てが終わるのですから戦力の出し惜しみは必要ありません。」
そしてロイドの提案を聞いたフェミリンスは静かな表情で頷いた。その後ロイド達は”領域”を出て、メルカバに戻ると意外な人物が待ち構えていた。
~神域~
「うふふ……”風の剣聖”にも勝利するなんて、随分成長したわね♪その調子だと近い内、レンどころかプリネお姉様達の”領域”に追いつくかもね♪」
ロイド達がメルカバやカレイジャスが停泊している場所に近づくと聞き覚えのある少女の声が聞こえ
「へ………」
「この声は………」
声を聞いたロイドとエリィは呆け
「レンさん!?」
ティオは驚きの表情で声を上げた後ロイド達と共に”パテル=マテル”の傍で自分達を見つめるレンに近づいた。
「あら♪ここで再びレンちゃんと会えるなんて、これも運命かしら!?」
「エオリアさんは黙っていてください。話が進みません。………理由とか聞く以前に疑問なんですが……どんな手段でここまで来たのですか?」
レンの姿を見たエオリアは嬉しそうな表情になり、エオリアの言葉を聞いたティオはジト目でエオリアを見つめて指摘した後レンに視線を向けて尋ね
「あら、そんなの勿論”パテル=マテル”に乗せてもらってここまで来たに決まっているじゃない♪」
「ええっ!?」
「そういやそのデカブツ、飛行能力もあったよな………」
「いくら飛行能力があるとはいえ、人形兵器でこのような未知の場所に来ないぞ、普通は………」
レンの話を聞いたエリィは驚き、ランディは疲れた表情で呟き、ダドリーは呆れた表情で溜息を吐いた。
「それでレンがここに来た理由だけど………勿論ロイドお兄さん達に力を貸す為に決まっているじゃない♪」
「へっ!?」
「ゼッテー、裏があんだろ……」
「というか次で決戦と言う時に合流して来るなんて、どう考えてもタイミングを見計らっていたとしか思えません。」
レンの説明を聞いたロイドは驚き、ランディは疲れた表情で呟き、ティオはジト目でレンを見つめて言った。
「クスクス♪今はそんな些細な事はどうでもいいでしょう?それより戦力の増加は喜ぶ事でしょう?マリアベル・クロイスとイアン・グリムウッドはディーター・クロイスと同じ”教団”と繋がっていた黒幕なんだから、”教団”に恨みがあるレンがお兄さん達に力を貸すことも当然の事だし。」
「……………………」
小悪魔な笑みを浮かべて言ったレンの言葉を聞いたエリィは複雑そうな表情で黙り込み
「………確かに君の加勢は心強いけど……一つだけ約束してくれ。」
ロイドは目を伏せて呟いた後真剣な表情でレンを見つめた。
「?何かしら。」
「マリアベルさんとイアン先生を”絶対に殺さない事”………これだけは絶対に守ってもらうぞ。あの二人には法の元で”裁き”を受けてもらうんだからな。」
「ロイド………」
真剣な表情で言ったロイドの言葉を聞いたエリィは驚きの表情でロイドを見つめ
「ハア………相変わらずお人好しねえ。別にいいわよ?どうせ拘束して法の”裁き”を受けさせた所で”処刑”が執行される事は決定しているようなものだし♪」
レンは呆れた表情で溜息を吐いた後凶悪な笑みを浮かべた。
「………クロスベル帝国が建国されて日が浅く、法もまだ定まっていないのにレン姫は何故そう思えるのですか?」
レンの言葉を聞いたヴィクターは静かな表情で尋ね
「あら、普通に考えたらそうなる事は判り切っている事じゃない。仮初の平和であったゼムリア大陸を戦乱へと導き………ゼムリア大陸の中でも最低、最悪の組織”D∴G教団”を操っていた真の黒幕かつ支援していた件………そして独立国の件やそれまで暗躍していた事全て含めたら、どう考えても”処刑”の判決になるわよ?ヴァイスお兄さん達だって、あの二人を許すつもりは毛頭ないし……何より”元”エレボニアとカルバードを含めた”クロスベルの民達”が”処刑”以外の判決で納得するのかしら?”風の剣聖”だってシズクの頼みがなければ、同じ判決が下されたと思うわよ?」
「確かにその通りですわね。ディーター・クロイス達は余りにも罪を重ねすぎました。到底生きて贖える量とは思えません。」
「その罪を贖えるとすれば、あの者達の命を奪う事しか考えられんな……」
「アリオスさん達はゼムリア大陸を戦乱に導いた元凶だものね………」
「「「………………………………」」」
レンの話を聞いたフェミリンスとツァイトは頷き、エオリアは静かな表情で呟き、ダドリーとエリィ、セシルは複雑そうな表情で黙り込んだ。
「……それでも。………それでも俺達は二人を”逮捕”し……法の裁きで罪を償ってもらう。それが”クロスベル警察”としてやるべき事だ。」
その時ロイドは決意の表情でレンを見つめて呟き
「……だな。」
「……ですね。あの人達にはちゃんと責任を取ってもらわないと。」
「フッ、根本的な所は奴と一緒だな……」
ロイドの言葉にランディとティオはそれぞれ頷き、ダドリーは静かな笑みを浮かべた。
「はいはい、わかったわよ。”レンは”あの二人を殺さない事を約束するわ。(クスクス♪まさか”七耀教会”がマリアベル・クロイスを”外法”認定した事になっているとは知らないでしょうしね♪まあ多分、その時になったら元”外法狩り”の神父のお兄さんの出番でしょうしね♪)………ああ、それと………――――1時間前、パパ達から連絡があったわ。エレボニアとカルバードの帝都並びに首都を完全に制圧し終え………エレボニアとカルバードは滅んだわ。」
一方レンは呆れた表情で答えた後口元に笑みを浮かべてロイド達を見つめて答え
「なっ!?」
「ええっ!?」
「オイオイオイ……!幾ら何でも早すぎねえか!?敵国の……それもエレボニアとカルバードほどの大国の本拠地をそんなあっさりと制圧するなんて……!」
レンの話を聞いたロイドとエリィは驚き、ランディは信じられない表情で声を上げた。
「あら、当然の結果じゃない♪メンフィルが力を貸している上……現代の導力兵器では決して敵わない兵器を使っているし……しかも両国とも内戦で外に目を向けている暇もなかったでしょうし♪」
「………という事は今日から西ゼムリアの大国―――”クロスベル帝国”としての日々が始まるのね………」
レンの説明を聞いたエオリアは重々しい様子を纏って呟き
「………レン姫。バルフレイム宮に軟禁されているユーゲント皇帝陛下達はどうなったのでしょうか?」
ヴィクターは目を伏せて黙り込んだ後真剣な表情でレンを見つめて尋ねた。
「エレボニア皇帝夫妻?プリシラ皇妃は保護されたらしいけど………ユーゲント皇帝は死亡が確認されたそうよ。」
「!!」
「なっ!?」
「そ、そんな!?」
「まさか……局長達が殺ったのか?」
レンの答えを聞いたヴィクターは目を見開いて息を呑み、ロイドとエリィは信じられない表情で声を上げ、ランディは目を細めて尋ねた。
「違うわよ。まあ、死因が病死ではなく他者による殺害である事には間違いないけど………――――――ユーゲント皇帝は死後硬直や死体の腐敗状態から判断して、最低2週間以上は経っていたそうよ。」
「2週間以上って………」
「……ヴァイスさん達がエレボニアに攻め込んだ日を考えると………どう考えても死亡した時間と合いませんよね……?」
レンの話を聞いたロイドは驚いた後考え込み、ティオは戸惑い
「……2週間前って言ったら帝国はまだ内戦状態でしょう?…………あ。もしかして………!」
「―――”貴族派”が陛下を手にかけたのか……!」
考え込んだ後ある事に気付いたエオリアは声を上げ、ヴィクターは厳しい表情で呟いた。
「!!」
「………なるほど。そう言う事か………ユーゲント皇帝は”貴族派”が抹殺しようとしていた”鉄血宰相”を擁護していたとの事だからな……」
ヴィクターの言葉を聞いたロイドは目を見開き、ダドリーは重々しい様子を纏って呟き
「―――主犯はアルバレア公爵とカイエン公爵。どうやら二人の親族とアルフィン皇女並びにセドリック皇子との政略結婚を迫っていたらしいんだけど……肝心のユーゲント皇帝は首を縦に振らず、”鉄血宰相”の擁護や内戦を止めるように説得しようとし……業を煮やした2人に殺されたらしいわ。」
「それは……………」
「………………………陛下の命を奪った不届き者の二人はどうなったのですか?」
レンの説明を聞いたエリィは複雑そうな表情をし、ヴィクターは目を伏せて呟いた後目を見開いて真剣な表情で尋ねた。
「ヴァイスお兄さんと、皇帝夫妻を保護する為にお兄さん達と一緒にバルフレイム宮を攻めたゼクス中将の手によって討ち取られたわ。」
「………そうですか……………オリヴァルト殿下達はその事は既に知っておられるのですか?」
「ええ。―――ああ、ちなみにこの件は緘口令がしかれているから絶対に誰にも話さないでよ。」
「……どうしてかしら?せめてエレボニアの人達には知らせるべきだと思うのだけど………」
ヴィクターの質問に答えたレンの話を聞いたセシルは不思議そうな表情で尋ねた。
「オリビエお兄さん――――――――――オリヴァルト皇子の強い希望よ。新たな未来が待っているエレボニアの民達に新たな憎しみを持たせない為と……何も知らないアルバレア家やカイエン家の親族たちを守る為だそうよ。」
「あ………!」
「オイオイオイ………!”アルバレア”って事は……!」
「ああ………オリヴァルト殿下はユーシス達が迫害されると思って、彼らを守ろうとしているのか………」
レンの説明を聞いたエリィとランディは声を上げ、ロイドは真剣な表情で頷き
「………………その事実、ユーシス君は知っているのですか?」
ヴィクターは黙り込んだ後真剣な表情でレンを見つめて尋ねた。
「ええ、既に”Ⅶ組”の人達全員を集めてその人達だけに知らせて、決して誰にも話さないようにする事を言い含めてあるわ。まあ、ユーシスお兄さんはその事を知った時、”Ⅶ組”の人達にしばらく一人にしてくれって言って、その場から去ったけど。」
「そうですか……………」
レンの答えを聞いたヴィクターは頷いた後目を伏せて黙り込み
「ユーシスさん……大丈夫かしら?」
「――――父親が”貴族”が仕えるべき”皇”をその手にかけたのですから、色々と思う所はあるでしょうね。」
「血縁者が”皇”をその手にかけた罪はあまりにも重いからな……国にもよるが、最悪の場合一族全員打ち首になってもおかしくないぞ………」
心配そうな表情で呟いたエリィの言葉にフェミリンスとツァイトは目を伏せて呟き
「……今は彼を信じるしかないな。それに彼も仲間がいるだろう?」
「……だな。今日出会ったばかりの俺達がどうこう言うより、一緒に戦ってきた奴等が何とかするだろうしな。」
ロイドの提案を聞いたランディは頷いた。
「ちなみに”鉄血宰相”はどうなったのかしら?」
「”鉄血宰相”はオリヴァルト皇子によって討伐されたわ。」
「オ、オリヴァルト殿下がオズボーン宰相を!?」
エオリアの疑問に答えたレンの話を聞いたエリィは驚き
「殿下も殿下で決着をつけたのか………」
ヴィクターは重々しい様子を纏って呟いた。
「つーかよ。あんな”怪物”だと死んでも化けて出てくるんじゃねえか?」
「た、確かに………」
「殺しても死なない人に見えましたものね………」
疲れた表情で呟いたランディの言葉を聞いたロイドは表情を引き攣らせ、ティオは疲れた表情で頷いた。
「まあ、それはともかく……ユーゲント皇帝は世間では”病死”した事にして知らせるから、くれぐれも誰にも話さないでよ?もし話したらお兄さん達が捕まっちゃうかもしれないんだからね?」
そしてレンは口元に笑みを浮かべてロイド達を見つめて呟き、レンの言葉を聞いたロイド達全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「だったら教えないで下さい。」
「ったく、そっちこそ緘口令がひかれているのに教えていいのかよ?」
ティオはジト目で指摘し、ランディは呆れた表情で呟き
「クスクス♪レンは”皇女”だから、特別にいいのよ♪それにお兄さん達の事を信用しているしね♪」
二人の言葉を聞いたレンは小悪魔な笑みを浮かべて言った。
その後アリオスをメルカバに預けたロイド達は休憩や準備を終えた後全員で終点に向かい…………最上階へ向かう昇降機に乗って最上階に向かい始めた……………
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