英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第174話
その後ロイドは仲間達と共に協力し合い、終点に到着した。
~戒の領域・最奥~
「―――至ったか。」
最奥に到着したその時、聞こえてきた声を聞いたロイド達は声の主―――アリオスに近づいた。
「―――アリオスさん。」
「もう、あの長官の格好はしてねぇんだな……?」
「クロイス氏の要請とはいえ、元々、無理のある人事だからな。独立国の無効宣言があった以上、俺にあれを着る資格はない。」
ランディの問いかけにアリオスは静かな口調で説明し
「……アリオスさん。今、クロスベル……いえ、ゼムリア大陸がどのような状況になっているのかご存知ですか?」
エオリアは真剣な表情で尋ねた。
「―――エオリアか。お前がロイド達と共に”ここまで”来るとは予想外だった……まさかお前が俺を阻む者になるとはな…………」
エオリアに見つめられたアリオスは答えた後エオリアを見つめ
「―――私はクロスベルの遊撃士として……そして己の無力感を救ってくれたセリカさんの為に、例え相手が貴方でも刃を向けさせてもらいます……!」
見つめられたエオリアは決意の表情でアリオスを見つめていた。
「フッ……なるほどな……お前が行方不明になった要因にまさかセリカ殿達が関係していたとは……想定外だ。それにセシル。やはりお前も来てしまったのか。」
「……ええ。今度こそガイさんの件の”真実”を答えてもらいますよ。」
「………………」
セシルに見つめられたアリオスは目を伏せて黙り込み
「……………………やはりお前達も俺を阻むか、ルファディエル……それにフェミリンス。」
すぐに気を取り直して厳しい表情でルファディエルとフェミリンスを見つめ
「その様子だと随分前から、私の事を警戒していたようね……」
「――――当然ですわ。”人の身”で因果を操る不相応な事を……”神”が許すと思っているのかしら?ディーター・クロイスが”六銃士”に殺されたのも、”人の身”で因果を操ろうとした愚か者の末路と言ってもおかしくありませんわ。」
見つめられたルファディエルとフェミリンスは厳しい表情で答え
「……確かにあの者の死もまた自然の”理”と言ってもおかしくはあるまい。過去、”至宝”を悪用しようとした者達は例外なく何らかの形で”裁き”を受けている。」
「…………」
フェミリンスの答えを聞いて頷いて呟いたツァイトの話を聞いたエリィは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「……何だと?クロイス氏が……?まさか…………」
フェミリンスの話を聞いたアリオスは信じられない表情をした後ロイド達を見つめ
「―――今のクロスベルは局長……いや、”ヴァイスハイト皇帝”と”ギュランドロス皇帝”が宣言した通り、”クロスベル帝国”になり……ディーター・クロイスは二人に”処刑”された。」
「……そしてメンフィルとクロスベルの連合軍によって二大国は本日、滅ぼされる事になるであろうな……」
「なっ…………!?―――!?まさか貴方は…………”光の剣匠”―――アルゼイド子爵!?何故ここに…………」
ダドリーとヴィクターの説明を聞いて驚き、そしてヴィクターを見て信じられない表情をした。
「………様々な理由により彼らと共に此度の決戦に同行させてもらった。―――このような形でそなたと邂逅する事になるとは非常に残念だ……”剣仙”殿が誇っていた弟子の一人にしてあのカシウス卿の弟弟子……それもトヴァル殿やバレスタイン教官も尊敬していた遊撃士であったそなたが今回のような大悪事に手を染めるとはな…………」
「……………………今の私は国防長官でも、遊撃士でもなく……ましてや八葉の剣士でもなく……ただの無類の剣士としてここに立っている……そう思って頂いて結構です。」
ヴィクターの問いかけを聞いたアリオスは静かな表情で答えた。
「マクレイン……」
「どうしてそこまで……」
「……律儀すぎです。」
アリオスの答えを聞いたダドリーは真剣な表情になり、エリィは複雑そうな表情で疲れた表情のティオと共にアリオスを見つめていた。
「……はは、参ったな……聞きたい事が色々ありすぎて整理できていないんですけど……まずは”答え合わせ”をしても構いませんか……?」
その時ロイドが苦笑しながら一歩前に出てアリオスを見つめて尋ね
「ああ―――元よりそのつもりだ。聞くがいい……ただ一つのことを除いて全てに答えよう。」
尋ねられたアリオスは頷いて答えた。
「それでは…………辛いことを聞くようで申し訳ありませんが……5年前の”事故”について教えてもらえませんか……?」
「ああ……もはや隠す必要もあるまい。5年前、東通りで起きた運搬車の爆発事故……お前達も気付いているように、あれはエレボニアとカルバードの諜報戦の結果として起きたものだった。」
「やはり…………」
「何の罪もない民人まで巻き込むとは愚かな事を……」
「……権力争いで真っ先に巻き込まれて被害を受けるのはいつも”弱者の立場”である民なのはどの時代も同じですわ……」
アリオスの話を聞いたエリィは複雑そうな表情をし、ヴィクターとフェミリンスは重々しい様子を纏って呟き
「……………………」
ダドリーは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「フフ、当然一課ではその事実を把握していた筈だな?そしてエレボニア・カルバード派に配慮した上層部の判断で、当然のように握りつぶされたわけだが………その事自体に失望はあっても今更恨みはない。」
「……言葉も無い。」
「アリオスさん……」
アリオスの話を聞いたダドリーは疲れた表情で呟き、エオリアは複雑そうな表情をしていた。
「……それでアリオスさんの奥さんとシズクちゃんは……」
「ああ……サヤの命は失われ、シズクの光は奪われた。」
複雑そうな表情をして呟いたティオの言葉を聞いたアリオスは重々しい様子を纏って頷き
「……アリオスさん。何故、一度は眼が見えるようになったシズクちゃんを退院させなかったのですか?あのまま眼鏡をかけていれば、普通の生活ができたのに…………」
「……あれは俺の”我”を通した愚かな結果としか言いようがない。シズク自身は満足していながらも、俺は満足できなかった…………その結果が以前の手術の結果だ。」
「……………………」
「……視力がわずかとはいえ、戻っただけでも”奇蹟”だというのに、欲を張ったからそのような結果になったのだ。」
自分の問いかけに答えたアリオスの答えを聞いたセシルは疲れた表情で黙り込み、ツァイトは厳しい表情で呟いた。
「……もしかして今回の事件を起こした原因の一つはシズクちゃんの眼を治す為ですか……?」
そしてエオリアは複雑そうな表情で尋ね
「……それも要因の一つにはある。シズクの眼を治すにはもはや”奇蹟”に頼るしかないのだからな…………その”奇蹟”を持っていながらも、特定の人物達の為にしか使わない”女神”もいるようだがな…………」
尋ねられたアリオスは答えた後真剣な表情でフェミリンスを見つめ
「……私に責任転嫁までするとはつくづく愚かな男ですわね。―――”神”は全ての人々に対して平等でなければなりませんが……”神”とて心がある存在。私がエステル達に助力しているのはあの娘達にあの娘達が生きている間では返し切れない恩があるだけの事。」
見つめられたフェミリンスは呆れた表情で答えた後真剣な表情でアリオスを見つめ
「なっ!?エステル達が”神”が”恩”と思うほどの事をしただと……!?」
フェミリンスの話を聞いたアリオスは信じられない表情をし
「”神”が特定の者達に助力するのはそれ相応の理由があるのです。元は一流の捜査官だったというのに、そんな簡単な事も推測できないとは………やはり己の欲の為に信頼を寄せられている者達を裏切り、邪悪なる道に走った愚か者ですわね。」
「……………」
フェミリンスに蔑まれ、厳しい表情でフェミリンスを睨んだ。
「あれから5年……両国の諜報機関が整備された事に加えて、メンフィル帝国まで関わって来た事で無為な破壊工作は無くなったが………数十年に渡る暗闇の結果、サヤたちと同じような被害者は少なからず出ていた。ロイド――――お前の両親やイアン先生の家族も含めてな。」
そしてすぐに気を取り直したアリオスは説明を続け
「!?」
「なんだと……!?」
「ロ、ロイドのご両親が!?」
「……初耳です…………」
「わ、私も初めて聞いたわ…………」
アリオスの口から出た予想外な事実を聞いたロイドは目を見開き、ランディやエリィ、ティオは驚き、セシルは戸惑い
「………………」
ルファディエルは真剣な表情で黙っていた。
「フッ……動じないという事は…………まさかその件までお前は知っていたのか?」
ルファディエルの様子を見たアリオスは静かな笑みを浮かべて尋ね
「へ…………」
アリオスの問いかけを聞いたロイドは呆けてルファディエルを見つめ
「ええ。以前ロイドと共に捜査一課に一時的に配属された時に過去の事件の資料は全て頭に入れたわ。その時の資料にあった”事故”の被害者でロイド達の両親がいたのも覚えているわ。」
尋ねられたルファディエルは頷いた。
「何だと?全く……相変わらず油断も隙もない女だな…………」
一方ルファディエルの答えを聞いたダドリーは眉を顰めた後呆れた表情で溜息を吐いた。
「あら。今後起こる事件解決の為に”情報”を仕入れるのは当然でしょう?」
「まさに異名通り”叡智”よね……幾らさまざまな事件に関わっている遊撃士(私達)でも全ての事件を覚えていられないわ。」
笑顔で答えたルファディエルの答えを聞いたエオリアは苦笑していた。
「俺の両親は……15年前、就航したばかりの飛行船の事故で亡くなっている……俺は物心ついたばかりでほとんど覚えていないけど……じゃあ、その時に……イアン先生の家族というのも?」
「ああ、奥さんとお子さん二人がそれに乗っていたと聞いている。俺にはシズクが残されたが……全てを失った彼の嘆きと哀しみは想像もつかないくらいだろう。そしてその時、ガイとイアン先生も同じ遺族として知り合っている筈だ。」
「…………………」
自分の問いかけに答えたアリオスの話を聞いたロイドは真剣な表情で黙り込み
「その情報は一課でも把握されていなかった……」
ダドリーは疲れた表情で答えた。
「……そして5年前の事件の後、俺は警察を辞め、遊撃士協会の門戸を叩いた。警察への失望、シズクの入院費用の捻出、色々と理由はあったが……単にサヤを失った哀しみから逃れたかっただけかもしれない。その気になれば幾らでも遊撃士の仕事に没頭することでな。」
「アリオスさん…………」
そしてアリオスの説明を聞いたロイドは真剣な表情で黙り込み
「ずっと疑問に思っていた事があったんです。どうしてディーターさんたちと貴方の存在が結びつくのかと。」
次の質問をアリオスにした。
「ほう……?」
ロイドの質問を聞いたアリオスは目を丸くし
「……確かにおじさまやベルは経済や金融、クロイス家に関係する教団の情報には詳しそうだけど……」
「エレボニアとカルバードの水面下での暗闇……そのあたりの事情にまで通じているのは違和感があるな。」
「お互い接点が無い両名……なのに大統領になったディーターさんはアリオスさんを国防長官に指名した……」
「……なるほど、そう言う事か。その両者を結びつけたのがイアン先生だったという訳か。」
エリィ達の話を聞いたダドリーは推理し
「互いの欠点を補うため……そして利害が一致しているからか……」
「各方面の情報に詳しい者だからこそ、できた事ね……」
ヴィクターとルファディエルは真剣な表情で呟き
「ええ……―――違いますか?」
ダドリー達の話に頷いたロイドはアリオスを見つめて尋ねた。
「フフ……その通りだ。警察時代、お前達と同じく、俺とガイもイアン先生の情報には随分と助けられたものだった。教団のロッジ制圧作戦でも民間のアドバイザーとして協力していたくらいの情報通だ。そして遊撃士になった後も……彼とは頻繁に情報交換していた。一方で先生は、IBCの法務を通じてクロイス父娘と昔から親交があった。そして――――あらゆる情報と要素は先生のところに集約・統合され……クロイス氏は彼に誘導されるまま、様々な政治工作と”至宝”の力によるクロスベル独立を成し遂げた。その裏で、彼とマリアベル嬢によって真の計画が進められているとも知らずに。」
「真の計画…………」
アリオスの説明を聞いたロイドは真剣な表情になり
「『碧き零の計画』ですか……」
エリィは複雑そうな表情で呟いた。
「そう……サヤたちの事故についても先生はいち早く真相に気付いていた。そして俺に事情を打ち明け……俺も計画に協力する事となった。これが経緯だ。」
「……………………」
アリオスの答えを聞いたロイドは考え込み
「全てはイアン先生とマリアベルさんの掌の上……」
「…………とんでもねぇ話だぜ。」
ティオは疲れた表情で呟き、ランディは目を細めて呟いた。
「……これも同じく、疑問に思っていた事ですが……キーアを”太陽の砦”の地下から連れ出したのはアリオスさんですね?そして”黒の競売会”に出品されるローゼンベルク人形と入れ替えたのも。」
「そ、そういえば……」
「確かにその問題も完全には明らかになっていませんね。」
ロイドの質問を聞いたエリィは目を見開き、ティオは疲れた表情になり
「ああ、その通りだ。そてに関しては先生ではなく、マリアベル嬢の主導だったがな。どうやら彼女はヨアヒムの動きを完全に把握していたようでな……彼女の転移術で俺達は容易く最下層の祭壇に辿り着き、あの子を揺藍から解放した。そして俺は、レミフェリア方面から運ばれてきたローゼンベルク人形とあの子をすり替えた。そのローゼンベルク人形自体もルバーチェ側に気付かれないようにマリアベル嬢が用意したものだがな。」
アリオスは頷いた後説明をした。
「……そんな事まで……」
「……だからあの日はギルドに帰って来なかったのですね……」
アリオスの答えを聞いたエリィは信じられない表情をし、エオリアは複雑そうな表情で呟き
「……待て。その説明だと女神像と入れ替わったエルファティシア・ノウゲートの件はどうなる?」
ある事に気付いたダドリーは真剣な表情で呟いた。
「あ……!」
「そういや、そっちもあったな……!」
「……唯、あのエルフ王は過去の時代の者だという話ですが……」
ダドリーの言葉を聞いたエリィは目を見開き、ランディは厳しい表情で呟き、フェミリンスは真剣な表情で考え込んでいた。
「―――悪いがその件についてはわからない。あの件については俺もあの事件の後に知った。……まあ、マリアベル嬢は何か知っている様子だったが……」
「ベ、ベルが!?」
「一体どうして…………」
アリオスの答えを聞いたエリィは驚き、ティオは信じられない表情をした。
「―――その件については大体予想はできているわ。私やメヒーシャたちが貴方達の前に現れたように…………エルファティシアも”キーアの力によって”連れて来られたのだと思うわ。」
「へっ!?」
「キ、キーアちゃんが!?」
静かな表情で答えたルファディエルの説明を聞いたロイドとエリィは驚き
「……まさか。”並行世界で既に覚醒したキーア”が”至宝”の力を使ったのか……?」
ツァイトは真剣な表情でルファディエルに尋ねた。
「ええ、その可能性が一番高いと思っているわ。―――下手をすれば異世界の者達―――メンフィルや”英雄王”達、そして”六銃士”や彼らの仲間達が一斉に転生してこの時代に……このゼムリア大陸に現れたのも”キーアの力”なのかもしれないわ。」
「なっ!?」
ルファディエルの推理を聞いたロイドは驚き
(………因果の操作で”あの時の戦い”で死んだはずの私達を蘇らせると共にこの世界に呼び寄せたのか………)
(確かにその可能性が一番ありえそうだな……)
(クク、なるほどねえ?つまりあのガキは下手したらあたい達の命の恩人って訳かい?)
(くかかかかっ!まさか悪魔が”神”に命を救われるとはな!)
メヒーシャとラグタスは重々しい様子を纏って呟き、エルンストは口元に笑みを浮かべ、ギレゼルは陽気に笑った。
「で、でも……どうしてキーアちゃんがそんな事を……?」
その時エリィは不思議そうな表情で呟き
「―――以前ツァイトがロイドに説明し……貴女達にも説明した話があったでしょう?”幻の至宝”は高度な人格を持ち……因果を操る能力を持っていた事を。」
「!!つまり”異世界の者達を呼び寄せる事”が”正しいと思った”のか…………!」
ルファディエルの推理を聞いたツァイトは目を見開いた後真剣な表情で呟いた。
「!?」
「キー坊が…………」
一方ルファディエルの推理を聞いたロイドは目を見開いて息を呑み、ランディは呆けた表情になり
「そうなると……私がティナの転生した人物である事やティオちゃんに翼がある事……イリーナさんが生まれ変わってエリィさんのお姉さんになって、リウイさんと再会できた事もキーアちゃんの力という事になるわね……」
「その可能性も高いと思いますわ…………でなければ、何の前触れもなく異なる世界同士が繋がる等、普通に考えてありえませんわ。(そして私が”影の国”に巻き込まれ、エステル達に救ってもらえた理由も恐らくは…………)」
「「……………………」」
セシルとフェミリンスの話を聞いたエリィとティオは複雑そうな表情で黙り込み
「とんでもないわね…………」
「…………まさに”神の奇蹟”だな……」
エオリアとヴィクターはそれぞれ重々しい様子を纏って呟き
(………という事は”彼女”にとって彼ら……いや、特務支援課が有利になると思われる状況にしたのか…………だとすれば、俺やマリアベル嬢達は彼らの”踏み台”――――つまり”必ず彼らに敗北する運命”という因果を作ったのか…………)
ある事に気付いたアリオスは真剣な表情でロイド達を順番に見回した………………
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