英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第173話
~業の領域・最奥~
「……クク……まさかあんな”足場”で……そこまで踏ん張るとは……だが……それもまた今の貴様の力か……」
地面に膝をついたシグムントは口元に笑みを浮かべてランディを見つめ
「……ああ……悪いが貫き通させてもらう……アンタと親父には……不義理をしちまうけどな……」
ランディは疲れた表情で答えた後目を細めた。
「クク……今さらなんだ……?……それに一番の不義理はけじめも取らずにのうのうと流れていたことだろう……一言も言わなかったが……兄貴も心配していたぞ……」
ランディの答えを聞いたシグムントは苦笑しながらランディを見つめ
「……そうか……親父が……」
シグムントの答えを聞いたランディは複雑そうな表情をした。
「クク……だが……少しは兄貴に顔向けできる顔になったようだ…………その強がりが……どこまで……貫き通せるか…………これからの生き様で……証明……してみせろ…………」
そしてシグムントは口元に笑みを浮かべて呟いた後地面に仰向けに倒れて気絶した!すると周囲の溶岩がなくなると共にシグムントの背後に転移魔法陣が現れた!
「……あ…………」
「……か……勝った…………?」
その様子を見ていたロイドとエリィは呆けた後一部の仲間―――エイドスとランディ、エルンストを除いた仲間達と共に地面に膝をついた!
「……はあはあ……さすがに今回はわたしも疲れました…………」
ティオは息切れをし
「今でも信じられないよ……よくあの”赤の戦鬼”に勝てたね……」
「ん…………今だけは女神に感謝かも……」
ヨシュアは疲れた表情で呟き、フィーは頷いた後エイドスに見つめ
「フフ……皆さんが協力し合った結果が勝利へと導いただけですよ……」
フィーに見つめられたエイドスは優しげな微笑みを浮かべ
「クク……久しぶりに骨のある戦いだったよ!」
エルンストは口元に笑みを浮かべていた。
「ったく、叔父貴との戦いまで楽しむなんてとんでもねえ戦闘狂だぜ……………………」
エルンストの言葉を聞いたランディは目を細めて呟いた後一歩前に出てシグムントを黙って見つめていた。
「……何だかんだ言って……”家族”だったんだな……?」
「ランディさんのこと……心配していたみたいですね。」
「ああ……わかってたさ。荒っぽいのはウチの一族の流儀みたいなモンだからな……」
ロイドとティオの言葉にランディは疲れた表情で頷き
「……だが……これで何とかけじめは付けた。」
すぐに明るい表情になった。
「”領域”も解放できたみてぇだ。とりあえず……門の所まで戻るとしようぜ。」
「そうね……」
「お疲れ、ランディ。」
「お疲れ様でした……」
「ハハ、そっちこそな。」
そしてロイド達は転移魔法陣の中に入ってその場から転移した。その後メルカバに戻り、休憩した後メンバーを編成し直したロイドは仲間達と共に探索を続け、終点らしき広間に到着した。
~神域・終点~
「ここは…………」
「……どうやらここが”神域”の終点みたいだな……」
周囲の景色を見たエリィは呆け、ロイドは呟いた。
「”領域”への門がありますね……」
「奥には”結界”か……」
「……こんな場所に”領域”があるという事は……」
「…………………」
ダドリーの言葉に続くようにロイドは目を伏せて門に近づいて結界に触れた。すると
―――来たか。
なんとアリオスの声が聞こえてきた!
「……アリオス、さん。」
「……………………」
アリオスの声を聞いたロイドは真剣な表情になり、エオリアは目を伏せて黙り込み
「アリオス……かの”風の剣聖”か……」
「「……………………」」
ヴィクターは重々しい様子を纏って呟き、セシルは真剣な表情で黙って目を細めているフェミリンスと共に門を見つめていた。
フ……まさかあの戦鬼を破るとはな。もはや初めて会った時の覚束なさは無さそうだ。―――言葉は無用。我が”領域”の果てで待つ。
そしてアリオスの声が聞こえなくなると、門の結界が消えた。
「……遂に来ちまったか。」
「ええ……私達特務支援課の最大の競争相手にして目標……」
ランディとエリィは疲れた表情で呟き
「そしてかつての遊撃士協会・クロスベル支部のエースにしてS級に最も近い”最強”のA級正遊撃士…………」
エオリアは複雑そうな表情で呟いた。
「……思えばわたしたちが知り合った時からの縁ですよね。」
「ああ………ジオフロントに潜ってリュウたちを助ける時に危ない所を助けてもらって……」
「……なるほどな。」
「その様子が思い浮かばれるな……」
ティオの言葉に頷いたロイドの話を聞いたダドリーとツァイトは口元に笑みを浮かべた。
「―――行こう。アリオスさんが待っている。」
「ええ……!」
「合点承知だぜ……!」
ロイドの号令にエリィとランディは頷き
「――――ここからは私も手伝うわ、ロイド。」
「ああ……頼む、ルファ姉。」
ロイドの傍に現れたルファディエルの言葉にロイドは力強く頷いた後仲間達と共に転移魔法陣の中に入り、新たな”領域”に入った。
~戒の領域~
「こ、ここは……」
領域の景色を見たセシルは戸惑い
「ここがマクレインの内面……」
「無数の”戒め”……ですわね……」
ダドリーとフェミリンスは真剣な表情で呟き
「……アリオスさんらしいわね。」
「……”風の剣聖”は一体どれほどのものを背負っているのだ……?」
エオリアは複雑そうな表情で、ヴィクターは重々しい様子を纏って呟き
「…………ったく……抱え込みすぎなんだっつーの……」
ランディは疲れた表情で呟いた。
「………………”赤の戦鬼”もケタ違いだったけど今度の相手は背負っている物が違う。多分……”鋼の聖女”以上に厳しい戦いが待っているはずだ。だが――――俺達もここで退くわけにはいかない。キーアを取り戻すためにも……全ての真実を明らかにするためにも。そして……シズクちゃんとの約束のためにも。俺達の全身全霊をもって剣聖の”領域”に挑もう……!」
そしてロイドは仲間達を見回して号令をかけ
「「「「「ええ……!」」」」」
「はい……!」
「おお……!」
「「うむ……!」」
「承知……!」
ロイドの号令に仲間達はそれぞれ力強く頷いた!
(遂にここまで……3年前のあの日に辿り着いた。兄貴……待っててくれ。あの日の闇を……きっと照らし出してみせる!)
そしてロイドは仲間達と共に探索を開始した!
~同時刻・業の領域・最奥~
「グッ…………!?」
ロイド達が探索を開始したその頃、気絶していたシグムントはうめき声を上げた後起き上がった。
「っつ!?……クク…………思ったより身体に響いているな……少し見ない内に随分と成長したものだ……」
起き上がったシグムントは身体に伝わる痛みを感じて口元に笑みを浮かべた。するとその時
「うふふ……さすがはカーリアンお姉さんと互角以上に戦った人の息子だけはあるわねえ?」
少女の声が聞こえてきた!
「!?」
声を聞いたシグムントが警戒の表情をしたその時、ズブリと音がした後シグムントの胸から大鎌の刃が生えた!
「……な…………」
自分の胸に生えた大鎌の刃を見たシグムントは呆け
「ゴホッ!?い、一体何が……!?」
口から大量の血を吐いて信じられない表情をして周囲を見回した。
「!?き、貴様は……”殲滅天使”!!い……いつの間に……俺の背後に……ガハッ!?」
周囲を見回したその時、自分の背後で自分の身体に大鎌の刃を貫かせている張本人――――レンを見たシグムントは目を見開いた後再大量の血を吐いた!
「クスクス♪本当に、アーツって便利よねえ?自分の姿を消す事もできるのだから♪おかげで、いくら戦闘で疲労しているとはいえ、あの”赤の戦鬼”の背後を簡単に取れるものね♪」
「!!!」
凶悪な笑みを浮かべて答えたレンの説明を聞いたシグムントはレンが姿を消すアーツ―――ホロウスフィアで自らの姿を消して自分の背後に忍び寄った事を察して目を見開いた。
「クク……ハハ……”天使”にこの”戦鬼”が喰われるとはな……とんだ笑い種だ………!」
そして自分が”死”に向かっている事を悟ったシグムントは嘲笑し
「うふふ……ちなみに”血染め”も既にあの世に逝っているわよ?」
「!!!」
凶悪な笑みを浮かべて答えたレンの話を聞いて目を見開いた。
「それじゃあ、さようなら♪」
シグムントの表情を見たレンはシグムントの胸を貫いている大鎌を抜いた後大きく振りかぶり
(兄貴……シャーリィ………今、俺もそっちに逝くぜ…………ランドルフ……死ぬまで必ず貫き通せよ……貴様のその”足場”を…………)
自分の首目掛けて襲い掛かる大鎌をシグムントは静かな笑みを浮かべて見つめ、大鎌はシグムントの首を刈り取り、首が刈り取られて絶命したシグムントの身体は地面に倒れた!
「クスクス♪これで大陸最強の猟兵団は”完全に殲滅”し終えたわね♪――――メルカーナの轟炎!!」
シグムントを殺害したレンは凶悪な笑みを浮かべて呟いた後指を鳴らした。するとシグムントの首と身体は業火に包まれ、灰塵と化した!
「――――さてと。後”一人”ね。そろそろレンもお兄さん達に合流しようかしら?」
そしてレンは不敵な笑みを浮かべて呟いた後転移魔法陣の中に入って、転移した!
こうして…………”赤い星座”の副団長にして”最強の猟兵”の一人として恐れられていた”赤の戦鬼”シグムント・オルランドは孤独な最後を遂げ……”赤い星座”は人知れず完全に滅んだ…………!
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