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Fate/kaleid night order

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第3節:A.D.2015 〜人理継続保障機関フィニス・カルデア② 医務室にて〜

その後、俺はマシュに支えてもらい、そしてさっきまでの会話で俺が気になった単語全てについての説明をしてもらいながら、なんとか医務室の前まで辿り着いた。


「レフ教授が言っていた通りなら此処に遠坂もいるんだよな、マシュ?」

「はい、その筈です。先輩。」


俺は一つ、此処に辿り着くまでずっと気になっていることがあった。
(うーん、やっぱり気になるんだよなあ。俺と桜は同じ高校の2年生と1年生の関係だったから桜に先輩って呼ばれるのは納得がいってたし、その呼び方が当たり前になってた。だけどなんでマシュは赤の他人で、しかも出会って間もない俺のことを最初からずっと先輩って呼ぶんだろう?どうしても気になるし、理由もなく先輩って呼ばれるのはなんかこそばゆいから、此処は一つ思い切って本人に聞いてみるか。)

「なあマシュ、なんで俺のことを先輩って呼ぶんだ?」

「それはですね、衛宮 士郎さんは私が今まで出会ったきた人の中で一番人間らしい人だからです。だから、苗字や名前ではなく先輩と呼ばせてもらっています。」

(成る程、そういうことだったのか。)

「解ったよ。じゃあさ、話は変わるんだがあの不思議な動物にフォウって名前をつけてあげたのも君なのか?」

「はい、その通りです。そこに気づくとは流石先輩、かなりの直感をお持ちとお見受けしました。」

「そ、そうなのか?・・・ってうわっ!」

「フォウフォウ!クー、フォーウ!フォーウ‼︎」

「おや、噂をすればですね。ちょうどフォウさん本人がいらっしゃいました・・・ふむふむ。先輩、どうやらフォウさんは先輩を同類として迎え入れたようですね。しかし、人をライバル視するリスのような不思議な生き物はありなのでしょうか?」

「いや、それを俺に聞かれてもな。というかひょっとして俺、フォウにライバル視されてるのか?」

「はい、どうやらそのようですね。まあ、フォウさんのことですから明日には忘れてしまっていると思うので、あまり気にしなくても大丈夫だと思います。」


その時だった。

「そ、そう「しつこいって言ってんでしょ‼︎」か?」


俺はこの声の持ち主を忘れるはずもなかった。


「まさか今の声って・・・?」

「はい、医務室の中からですね。先輩。」

「あ、いやそういうことじゃないんだ。」

「え、ではどういうことなのですか?」

「医務室に入ったら説明するよ。」
そう言いながら俺は医務室のドアを開けた。するとそこには俺の想像通りの人物、違う言い方だと通称"あかいあくま"が、格好から考えるに恐らくこの部屋の主と思われる人と言い争っていた。

(ああ、やっぱり遠坂だったな、この人と話す、というか揉めてたのか。今すぐあいつに話しかけたいし話しかけるべきなんだけど、なんか話しかけづらそうな空気が2人の周り、というよりあいつ1人から出てるんだよな。仕方ないけど、話しかけるのは頃合いを見計らってやることにするか。)

「頼むから大人しく待っててくれよ!下手にうろついて迷子になりでもしたら君だけじゃなく僕も大変なんだってば!それに聞いたろう、君の知り合いの衛宮士郎君は恐らく今この部屋に向かってる筈だって。だから此処に居たほうがいいんだってば!」

「だ•か•ら、さっきから何回もしつこいって言ってんでしょうが、この見た目ゆるふわ系ドクター‼︎」

「それは今関係ないじゃないかぁ‼︎僕だって気にしてるんだぞそれ!」

(すいませんドクター?、俺も同じようなこと思っちゃいました。)

「それに、君に会ってから何回も同じことを言ってるじゃないか。君の知り合いの子はこのカルデア内にいるし、きっとむこうも君を探してる筈だからいつかは此処に来るだろうって。はあ、なんで解ってくれないのさ〜。」

「貴方に一回目のそれを聞かされてから1時間以上も経ってなければね!というか、なんでそんなに同じことを何回も言うんですか?」

(てことは遠坂、俺より2時間か3時間は早く目覚めてたってことか。というか俺たち結構前にカルデアに着いてたんだな。そして俺は寝すぎだな。)

「だってさ、カルデアは広いしなんか君、これぐらい繰り返して言わないと"うっかり"道に迷っちゃうんじゃないかって思ってね。」

(い、今のはマズいぞ!)

「ハア⁈なんですって、こんのぉ〜!!!!」

「ちょ⁈待って待って、そこでなんでガンドが出てくるのさ⁈というか僕、なんか君が怒るようなこと言った⁈」

「うっさい‼︎黙って喰らってなさい‼︎」

「ひえー⁈誰か助けてくれー!」
と、Dr.ロマンという名の人物が在り来たりな悲鳴をあげたところでとうとう俺は仲裁?に入った。


「やめとけって、遠坂。そうやって怒った時はなんでもかんでも最後には暴力で解決しようとするのは遠坂のいけないところだと俺は思うぞ。」

「アンタ誰よ⁈言われなくてもそんなの自分でも解ってるっての!・・・・・って、え、えええええ衛宮君⁈」

「そうだよ、俺だぞ遠坂。元気そうで安心したよ。」

「ほんとに、ほんとに衛宮君なのね?」

「なんだよ疑ってるのか?ほんとに俺は衛宮 士郎19歳だぞ。」

「そ、そうよね。良かった。っと私、貴方に最初に言わなきゃいけないことがあるんだったわ。」

「ん、何を言わなきゃいけないんだ?遠坂?」

「それはね・・・」

「ゴメン‼︎」
ガバッ。
遠坂はそう言いながら俺を抱きしめた

「えっ、なんで謝るんだ遠坂?」

「だって、今回も私のうっかりに衛宮君を巻き込んじゃったじゃない。しかもそのせいで9年も先の全然知らない場所に飛ばされるなんていうことになっちゃったし・・・」

「なんだ、そんなことか。俺は全然気にしてないし遠坂が反省してるならそれでいいと思うぞ。」

「そんなこと、ってねえ。衛宮君、幾ら貴方が他人に優しいといっても、今回貴方は私の今までの人生の中で一番ひどいミスに巻き込まれたのよ?それに、このロマ二って人に聞いたところだと今のカルデアの技術でも私たちがもともといた正しい時間に寸分の狂いもなく帰れる方法はないらしいのよ。だから絶対私を怒っていいのに、それを貴方はそんなことって・・・・・」

「いや。だってさ、起きちゃったことはもうどうしようもないし、それに俺は、遠坂が無事だったから今はそれでいいよ。それで、元の時代に戻る方法は此処に居させてもらう間に探していこう。だから、ほらそんな辛そうな顔しないでくれ。遠坂が辛そうにしてるのを見るのは俺も辛いから。」

「も、もう。そんな顔されたらなにも言えないじゃない。仕方ないわね。わかったわ、こうなったらどれだけ時間が掛かっても必ず2人で元の時代に戻ってみせるわよ、いいわね!」

「ああ、そうだな!」

ここでマシュがいきなり、少し怒った様子で俺に話しかけてきた。

「あの、先輩。もしかして、話すのに夢中で私の存在をお忘れになっていませんか?」

「まさか。そんなわけないに決まってるじゃないか、マシュ。だから、な?そんな怒った顔をしないでくれ。」

「いえ、私は怒ってなどいません。ええ、無視されたから怒ってるなんてことはないんです。決して。」

「いや、怒ってるじゃないか。」

「怒ってません。」

「いーや怒ってるぞ。」

「怒ってないです。」
このような言い争いが数分続いたところで、
「はーい2人とも、くだらないことで言い争いをするのは止しなさい。解った?」

「そうだな。確かに遠坂の言う通りだ。ごめんな、マシュ。わざとじゃないとはいえ、無視するようなことしちゃって。」

「いえ。先輩、私の方こそ申し訳ありませんでした。それと、遠坂さんでよろしかったでしょうか?先輩と私の言い争いの仲裁に入ってくれて本当に有難うございました。あのままだと、私たちは些細でつまらないことでずっと言い争っているところでした。」

「私はそんな大したことしてないし、礼なんて言わなくていいわよ。あと、私のことは名前で呼んでくれると嬉しいわ。」

「わかりました、では私のことはマシュと呼んでください。」

「わかったわ。それじゃあ此処に居させてもらう間よろしくね、マシュ。」

「はい。此方こそよろしくお願いします、凛さん。」

「うんうん、見ず知らずの他人同士が手を取り合って仲良くなるっていうのは見ていてやっぱり感動するねぇ。もしゃもしゃ。」
先ほど遠坂相手に在り来たりな悲鳴をあげていた人が呑気にお菓子を頬張りながら、勝手に感動していた。

「笑っていないで早く先輩に自己紹介をしてください、Dr.ロマン。」

「ああ、ごめんごめん。そうだったね、じゃあ僕も改めて名乗らせてもらおうかな。僕はロマ二・アーキマン。此処、人理保障機関フィニス・カルデアの医療部門の最高責任者だ。何故だかわからないんだけど皆からはDr.ロマンという略称で呼ばれててね。でも言いやすいし、君も遠慮なくロマンと呼んでくれて構わないよ、衛宮士郎君。」

「それにさ、さっき凛君にも言ったんだけど、実際ロマンって響きはいいと思わない?かっこよくて、どことなく甘くていい加減な感じがするしね。あと、この髪型は時間がなくていつも適当にセットしてるんだ。」

「そ、そうですか。」
(さっきからこの人の話を聞いてて思うけど、さっき遠坂が言ってた通り、どこかゆるゆるふわふわとした感じのする人だな。)

そう思いながら遠坂を見ると、表情から察するにどうやら俺と似たようなことを思っているようだった。一方でマシュは、怒るような顔つきでDr.ロマンを見ていた。というより、少し睨んでいた。何故だろう?と思ったが、その理由は数分後、Dr.ロマンが美味しそうに饅頭を食べている時に判明した。

「もしゃもしゃ、やっぱり美味しいな〜これ。士郎君と凛君も食べるかい?」

「俺は遠慮しておきます。」

「私も結構です。」

「そうかい?じゃあマシュはどうする?」

「私もいりません。というかドクターロマン、先ほどから言おう言おうと思っていたのですが貴方が食べているそのお饅頭、私が自分のおやつにととっておいたものなのですが?」

「え、そうだったのかい?気づかなくてごめんよマシュ。でもやっぱり美味しいねえこのお饅頭、もしゃもしゃ。」

ドクターはそう言われてもあまり気にせず饅頭を頬張っていた。それを見たマシュはどうやら堪忍袋の緒が切れたようで、

「・・・・・ドクター、少しお話しがあります。」
と言いながら、Dr.ロマンに近づいていった。その足取りは重く、その一歩一歩からズン!やドォン!といった類の効果音が聞こえてきそうなくらいだった。


「え、ど、どうしたのさマシュ。なんで僕をそんな冷たい目で見るんだい?そしてなんで僕の首根っこを掴もうとしてるのかな⁈あ、もしかして今さっきのお饅頭の件かい?だったらほら、この通り謝るからさ。今回は見逃してくれないかな?」

「いいえ、今日という今日は今までの件も含めてはっきりと注意させてもらいます。覚悟してください、Dr.ロマン。」

「そんなーーー⁈神様仏様マシュ様どうか、どうか、ご慈悲をーーーーー!」

「フォウ・・・・・」

「フォウさんも諦めろと言っています。今更何を言っても後の祭りです。大人しく私に叱られてください。」

「うわーん、酷いよーーー!マシュの鬼!悪魔!」

「全てドクターの自業自得ではないですか。それでは先輩、凛さん、申し訳ありませんが部屋を留守にさせてもらいます。」

マシュはそう言いながら、Dr.ロマンの首根っこを掴み、その小柄な体躯からは考えられない膂力で、子供のように駄々をこねて嫌がる彼を医務室の外に引きずっていった。


「なあ遠坂、あれで良かったんだよな?」

「構わないでしょ、あれは誰がどう見てもマシュの言ってた通りDr.ロマンが悪いとしか言えないだろうし。」

「そ、そうだよな。」

「それよりも私ねちょっと迷ってることがあって私個人としては"ファーストミッション"には参加してみたいと思ってるけど士郎はどうするの?」

「いや、しないぞ。それに遠坂だってこの時代の魔術師界隈じゃ有名な筈だけど、それはあくまでこの時代に生きてる遠坂の話であって、この件に関しては完全に俺たちは2人とも過去から来たイレギュラーで部外者じゃないか。勝手なことをしてカルデアのスタッフさんに迷惑をかけちゃいけないだろ。だから遠坂も参加はしないほうがいいと思うぞ。」

「うーんそっかー、ちょっと残念な気もするけど士郎がそう言うなら私もやめとこっかな。士郎はほんとのことしか言わないしね。」

ウィーン。
遠坂とそんなことを話していると医務室のドアが開いたどうやらマシュのドクターに対する説教が終わったらしい。だが戻ってきたのは何故かDr.ロマンだけだけだった。そしてそれから数分経っても戻ってくる気配がないことが俺は気になった。なので彼にその訳を聞こうとしたが、どうやらかなりきつく叱られたらしく、酷く落ち込みながら何回も「へっぽこ、ダメダメ・・・」と繰り返し呟いていた。だが早く解決するに越したことはないので、
「あの、Dr.ロマン、どうして貴方だけしか戻って来なかったんですか。マシュは何処に行ったんですか?」
と、訊いてみた。すると頃合いが良かったのか、ちょうど落ち込むのを終えた彼は
「ああマシュならファーストミッションの開始時刻がもうすぐだから中央管制室の方に向かったよ。君たち2人にそのことを伝えるようにって僕に強く念押ししてからね。あ、中央管制室っていうのはファーストミッションが取り行われる部屋のことだよ。」
と説明してくれた。尚それでもわからないことがあったのだが、そのことについては俺より早く遠坂が訊いてくれた。

「ドクター、そもそもマシュはファーストミッションに参加することになってたんですか?」

「ああ、そうだけどそれがどうかしたのかい?」

「どうかしたのかいじゃないですよ、まずそれを言うべきじゃないですか。まったく、そんなミスしちゃうからマシュや大方あの所長からもでしょうけどへっぽこドクターって呼ばれたりしてるんじゃないですか?」

ミスを指摘するのはいいがさすがにダメダメドクターっていうあだ名は言い過ぎだと思ったので、俺は遠坂を注意した。

「おい、遠坂。Dr.ロマンにミスを教えるのは
いいけどダメダメドクターは言い過ぎだぞ。」

「わかってるわよ、というか後半はふざけてただけだし。」

「なら早く謝れ。それとな、遠坂は後半を冗談のつもりで言ったんだろうけどうっかりドクターの心を傷つけてるかもしれない。これからはそんなことを軽々しく言ったりしちゃ駄目だ。これは俺との約束だぞ、いいな?」

遠坂は俺が言ったことの意味を完全に理解したのか、俺に「わ、わかったわよ」と一言だけ言ってから彼に謝っていた。

「あの、すいませんでしたドクター。さっきはダメダメドクターなんて言っちゃって。」

だが、
「・・・・・あの、ドクター?」

「どうせ僕はダメダメでへっぽこで役立たずなドクターですよ。どうせ僕なんか(以下略)」

Dr.ロマンは先ほど部屋に戻ってきた時と同じくらいまた落ち込んでいた。だがこんな時に失礼かもしれないが、なぜか彼の周りから癒しのオーラが漂っていた。しかしそれは正直どうでもいいことだ。

「しろぉーーー⁈どうしようコレ、完全に図星だったってことじゃない⁉︎」

「ほら言わんこっちゃない!だからさっきも言ったろう、遠坂は大事なところでうっかりを起こすって!」

「うう、ごめんなさい。」

「ハア、仕方ない。ドクターは俺がなんとかするから、遠坂は俺が指示するまで余計なことはしちゃ駄目だぞ。」

「うん、わかったわ。」


***約五分後***


「この通り、遠坂も反省してるので。」

「ほんとに、ほんっとにすみませんでした。Dr.ロマン!!」

「いやまあ、僕もちょっと無神経だったし凛君が申し訳ないって思ってくれてることがわかったからもういいよ。」

「有難うございます!」
どうにか、俺はDr.ロマンの気を落ち着かせた。
そして俺はファーストミッションについて気になっていたことがあったので彼に訊くことにした。


「Dr.ロマン、ファーストミッションについてマシュに教えてもらってた時に気になったことがあったんですけど何故過去の時代に特異点が出現したんですか?」

「うん、それはだね・・・・・」
彼はそう言うと急に自身が纏っている空気を冷たくした。恐らく今から真面目な話をするということの表れなのだろう。

しかし、

「失礼かもしれませんけどその雰囲気、ドクターに合ってないですよ。」

「うん、自覚はあるよ・・・でも今それは置いておくとして、何故過去の時代に特異点が発生したのかだったね。その答えを簡単に言うと、"わからない"かな。」

「それはつまり現在のカルデアの技術では解明できていないってことですか?」

「そういうこと。いやほんとにあれは神様の悪戯とでも言いたくなるようなものだよね。まあ、もしほんとにそうだったらたまったものじゃないけど。」

「確かにそうですね。」
これには俺も賛成だった。だが遠坂はまた首をかしげていた。

「でもほんとに何故なのかしら。」

「遠坂は魔術師だからやっぱりこういうのは気になるのか?」

「ええそりゃね。それに、聖杯が関わってるんだから尚更よ。」

遠坂がまだ悩んでいるのは、どうやら聖杯が関係しているということもあるかららしい。

(でも聖杯が関わっているとしたら、その聖杯は何故、どうやって出現したんだ?)
遠坂につられて俺も頭を悩ませていると、ドクターがいる辺りからヴヴヴッという何かが振動するような音が聞こえたので彼の方を見ると彼が薄い板のようなものを取り出していた。

「ドクター、それはなんですか?」

「ああこれはね、アイフォンっていう携帯電話の一種だよ。君たちのいた時代じゃまだ存在してない物だから不思議かもしれないね。どうだい、気になるならちょっと触ってみるかい?」

「いえ、なんかちょっと力を込めただけで壊れちゃいそうですし遠慮しときます。遠坂もそれでいいよな?」

一応遠坂にも確認を取ってみた。すると自分が機械オンチであることを自覚しているのか「え、ええ。構わないわ。」と、少し動揺しながら返事を返してきた。やはりこれに関しては彼女が自身に課している"優雅たれ"という教訓も形無しらしい。

するとDr.ロマンは「そうかい?そんなことないんだけどなあ。」と、ちょっと残念がりながら
アイフォン?を使い始めた。後ろから見るにどうやらメール画面を開いているらしい。そしてメールを見始めた。

「これはレフからか。何々・・・・・なるほど、よしわかった。」
メールを見終えたDr.ロマンは部屋の隅に走っていきそこに置かれていた箱から何かを取り出しそれらを持って今度は俺たちのところに走ってきた。

「どうしたんですか?」

「えっとね、急で悪いんだけどどうやら君たちにもファーストミッションに参加してもらうことになったから、それに必要な物を君たちに渡してくれってことらしい。それでこれらがそうなんだけど。」

そう言ってDr.ロマンが俺と遠坂それぞれに渡した物は食料•Dr.ロマンが持っているアイフォンの色違い•何かが入った袋の3種類の物資だった。


「ドクター、食料とアイフォンはわかったんですけどこの袋は何ですか?中に何が入ってるんです?」

「ああそれはね、聖晶石っていう石が入ってるんだよ。」

「石、ですか?」

「ただの石じゃないぞ。簡単に言うと、これの用途はサーヴァント召喚だけに限定されるけど4個同時に使えば、なんとどんな英霊でも召喚できるんだ!」

「「ええっっっ?!!!」」
俺と遠坂は揃って驚きの声を上げた。

「どんな英霊もって、な、何それ。めちゃくちゃ便利な道具じゃない!いったいどんな魔術が使われてるのかしら?」
そう言って遠坂は聖晶石を一個、袋から取り出し睨むようにして眺め始めた。
「おいおい遠坂、ただ見るだけでそんな怖い顔しないでくれよ。まあ気持ちはわからないわけじゃないけど。確かにこれは凄いですね、ドクター」

「ふふん、そうだろうそうだろう?」
Dr.ロマンはとても嬉しそうにしていた。その間、俺は聖晶石を見ながら自分の胸に手を当てあることを思い出していた。

(どんな英霊でも召喚可能なら、あいつにまた会えるかもしれないってことだよな。そう、俺がきっとどんな時でも何処にいても絶対に忘れることのない輝きを放っていたあの騎士王にも。だとすると凄く嬉しいとしか言えないな。)

一方、遠坂はある質問をしていた。
「ドクター、一応確認しときたいんですけど、やっぱりこれだけで召喚を行う場合は召喚される英霊やそのクラスをこっちで指定することはできないんですよね?」

「あ、やっぱり君はそこに気づいたか。流石、一度聖杯戦争を経験していただけはあるね。そう、聖晶石は一見すると万能触媒に思えるんだけどその性質故の欠点が一つ存在するんだ。その欠点とはどんな英霊でも呼び出せるけどその代償として呼び出される英霊とそのクラスはどうしてもランダムになってしまうってことなんだ。」

「やっぱりですか・・・」

「でもね、英霊を特定して呼び出したいなら君たちが知っているように、その英霊に関する物、例えば、その英霊が生前所持していた物を聖晶石と一緒に使えばいいと思うよ。なんでかわかるよね?」

「あっ、なるほどそういうことですか。」

「そう、これは聖晶石自体に、あらかじめ英霊を召喚しろって座に命令する意思みたいなものが組み込まれてるからなんだ。でもこれは1個だとあまり効果がない、だけど4個使うことで普通の触媒と同等くらいになるんだ。それが、英霊の生きた証と言える物であり英霊の生涯を本人に代わって死後も示し続ける物である英霊の所持品を一緒に使えばどうなるか、あとは言わなくてもわかるよね?」

「はい、有難うございます!」

「うん、君が満足できる答えを示せたなら何よりだよ。それでなんだけどこの際だから聖晶を使った英霊の召喚方法について具体的に説明しようと思うんだ。だから士郎君を呼んでくれるかな?彼、何か考え事してるみたいだし。」

「はい、わかりました。」

遠坂はそうDr.ロマンに返事した後、俺に向かって「ちょっと衛宮君、考え事してる時に悪いんだけどこっちに来てくれない?今からドクターが聖晶石を使ったサーヴァントの召喚方法について私たちに具体的に説明してくれるみたいだから。」と叫んだ。

「ああわかったよ遠坂。今そっちに行く。」
なので俺も彼女のことについて考えるのを一旦やめ、Dr.ロマンの説明を聞くことにした。


******


「それじゃ、これで聖晶石を使った具体的な英霊の召喚方法の説明は終わりだよ。2人とも現地での召喚の際に役立ててくれ。」

「「はい!」」

Dr.ロマンの説明を聞き終え、俺と遠坂がそう返事をした時だった。

ドォォン!!!!

世界が、視界が、音を立てて大きく揺れた







 
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