百人一首
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15部分:第十五首
第十五首
第十五首 光孝天皇
一年がはじまった。これまでの一年は過ぎ去って新しい一年がはじまった。
その早春の日に想い人の為に若菜を摘みに外に出られた帝は。その衣に雪を受けられた。
七草を摘みに外に出るとそこで出会ったのはその雪。早春の初雪が帝の手を濡らされる。
「帝、雪ですので中に」
「そうです。我々が摘みましょう」
「よいのですよ」
帝は周りの者達に笑顔で言葉を返された。雪を受けつつの御言葉だ。
「この雪がいいのではありませんか」
「この雪がですか」
「御覧なさい」
そしてその周りの者達に対して告げられる。
「この野雪を。袖の上で楽しそうに遊んでいる雪達を」
見ればその雪は一つ、また一つと帝の袖の上に降ってきている。帝はその様を御覧になられて目を細められておられるのだ。
「緑だけでなく白もあります。はじまりから美しいではありませんか」
「はじまりからですか」
「確かに」
「だからです。このままでいいのです」
また供の者達に対して述べられた。
「この一年がこのように美しいものであって欲しいものですね」
そう仰られ一首詠まれた。その歌は。
君が為 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ
「この緑と白とあの方の為に」
微笑んで詠まれたのであった。緑の中で帝の袖の上で遊ぶ雪達を御覧になられながら。
第十五首 完
2008・12・13
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