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百人一首

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13部分:第十三首


第十三首

第十三首 陽成院
 最初は見ているだけだったのに。それが何時の間にか大きくなっていって。
 やがて少しずつ流れるようになっていってやがては川になってしまった。
 向こう岸が見えなくなってしまいその底が何処にあるのかさえもわからなくなった。
 果てしなく長く大きな川になってしまったこの想い。想いはじめたその胸の動きが積もりに積もってそうなってしまった。
 今はもうこの気持ちを抑えられず。寝ても覚めても想うのはあの人のことだけ。
 ただひたすら想い歌を詠んでもあの人のことばかり。それは今も同じで筆を取りそこに書いた一首の歌は。

筑波峰の 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる

 川になってしまったこの想い。恋の川は底なしの淵で。もう彼にはどうこうすることもできなくなってしまっていたのであった。
「愛されずにはいられない」
 男と女に分かれている筑波山に自分と想い人を例えそこから流れている男女川に自分の想いを重ねて。その歌を書いてもやはり想いは消えない。
 どうしても消えないこの想いを胸に今も溜息をつく。遂にはどうしても抑えられなくなりこの歌を想い人に贈った。返事を待つのも辛く苦しい。けれどその返事は。
 彼の想いは適った。適ったその想いで今度は川の流れが急になっていく。喜びが今彼の心を満たしていくのであった。


第十三首   完


                   2008・12・11
 
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