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Society Unusual talent

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code8 本番

 
前書き
「報告だ」
「日本武尊、建御雷、天照、月詠が敗北、須佐之男と櫛名田は異能警察と交戦中、赤玉が死亡。咲木耶姫花と弦巻吹河の暗殺は失敗」

『…赤玉がやられただと?…チッ、木花咲耶姫の手腕か。しかしどうやって…』

「悩んでいても仕方ないさ。弦巻吹河はともかく、咲木耶姫花は僕の異能で殺せるんだ」
「もとより、赤玉は合図。弦巻吹河にもとっておきの足止めをしている、こちらの兵士も増えて戦果は上々だ」

『ふん、元より弦巻吹河は俺でも殺せる身、警戒などない』

「…そうかい、いいさ。これで那美が幸せになれるなら僕は君に生命を託そう、ゼロ。僕は先に行く」



『奴にとっては、正義。貴様は利用されていることにもわからずに最後まで全う死てもらおう、伊邪那岐』 

 
「…なるほど、『ゼロの世界』、彼はナンバーエイト…なのですね」

「…ああ」
Dはペストマスク越しながらも鋭い眼光で神玉を黙視する。
完全に治癒し、くっついた腕に違和感でもあるのか右腕を抑えながら座る雄大の表情は暗い。

「…もうここに痛みはない。…しかし、この痛みが引いてからか…胸の痛みを今になって感じてきた」

「彼の肉体に所々損傷があります、どこも綺麗に取り除かれている…異能を行使したのは間違いありませんね」

スサノオの言葉を思い出す、『虐殺マシーン』、と
彼の異能の本質を知っている彼らはその行為、彼の心中の非道さが身に染みてわかっていた。

「ヤツはこの異能で人間の命を…」
そこで雄大の表情が変わる、何かに気がついたように。

「…虐殺…殺人だと?」
雄大は手を頭に当てて記憶を探り、唸る。
「たしか…奴は、自分のことを歯向かってきた者を屈服させる『戦闘員』と言っていた…だが、同時にヤツは『異能者の世界』を作るとも言っていた。それならば何故異能者を殺す必要がある?」

「そもそもの噂…いや、ゼロの世界は実際し、正確にその実証がある。無能力者を異能者に変えられると言う実証が」
「そして再びこの世界に現れる時、その元無能力者は狂っている…それはゼロの手駒になったことに等しい…だが、洗脳異能を併せ持っている訳ではないとすると元の異能者は邪魔な存在…」

Dは雄大に視線を向け、手話のように掌を向け説明のように淡々と語る。
「…つまりゼロの手駒にはならない。と、いう訳ですか。なるほど…だから神玉くんは使われていたのですね。
他の者では異能者と断定してから殺すまでにボロが出てしまうかも知れないが、彼は暗殺に最も向いている。騒ぎの前からしっかりとやっかいになるであろう異能者を断定して殺していた…」

Dが立ち上がり、雄大もゆっくりと腰をあげる。


「つまり奴らの目的はーー

ーーーこの街を大きな騒ぎでかき回し、異能者に危機を感じ逃げた者を無能力者と断定して自分の兵に変え、逃げ出さない者は警察機構や異能会社のような異能を扱う戦闘員と断定して屈服させる。最終的には狂った異能者の集団を率いてこの街の全てを制圧する。


この街は中央街、異能福祉会社『Unusual talent』の本社があり異能者への支援が大きいため、世界で最も多くの異能者が存在する場所だ。


「奴らは今まで、ここまでの大事をせず都市伝説として噂を定着させ、『狙われるのは無能力者のみ』という噂を定着させた、同時に着々と少しずつ兵を蓄え、この街を制圧する絶対の可能性を持ってきたのだろう」

「おそらく神玉くんは(スサノオ)が言ってたようにスイッチ、彼が殺されたことで兵を放つ可能性は充分に出てきました」

雄大はくっついた右手を握りしめ、Dに目を据える

「D、俺を今すぐ外に送る事は可能か?」

「えぇ、目を閉じてください」

Dの忠告通り雄大が目を閉じる。

三秒経過と共に「目を開いてください」と言う声のままに、目を開くと眼前には大きな扉が現れていた。

「私は他に調べ物があるので、また後で。…幸運を祈りますよ」

「…あぁ、また会おう、…大丞」
一瞬のDの動揺を尻目に、雄大は扉を開く。







眼前に広がるは、この街の景色。
壊れた時計塔、無数の人影、崩壊していくビル、多くの破損した建物。



ドゴォ、と大きな擬音と共に着地した雄大は対峙する人々に目を配る。
異能者達は音に反応し、振り向く。

全員目は赤く、自我が無いのか唸っている。
雄大はため息を吐きながらもその目はしっかりと異能者達を捉える。

「加減はしよう、覚悟はしてもらおう」
姿を確認するや、三人の無能力者が一斉に襲ってくる。

突撃と共に砂煙が上がったと思うと、突然内側から風と共にアッパーが繰り出される。
周りの無能力者達はあまりの風圧に身構え、襲ってきた無能力者達は大きく吹き飛ばされる。

雄大は煙草を取り出し火をつけ、口に含み、一度大きく吸って吐き出す。
「全員気絶、怪我は適度に」
「異能は…」

雄大の発言の途中、両手が異常に肥大化した無能力者が飛びかかる。
尚も巨大な拳を揮灑な右手で難無く防ぎ、腕一本で持ち上げて地面に叩きつける。

雄大は無表情で煙草を吸い、煙を言葉と共に吐き出した。
「必要ねぇな」

言葉と共に静止していた無能力者達が雄大目掛けて一斉に走り出す。

周り全て、空中もしかり、全ての包囲から無能力者達の攻撃が飛び交う。
雄大は目を閉じ、咥えた煙草を空へと投げる。
自我を残さぬ、戦闘のことしか頭にない無能力者達は気にもとめず、
各々が拳や蹴り、属性の異能や武器を作り出す異能を振るうなど攻撃を仕掛ける。
一人の拳が雄大に当たる、同時に。雄大は目を拓く。

一度、脚を踏み込むと地盤が砕け、バランスを失った雑兵達の攻撃の照準が狂う。
二度、来た蹴りを弾くとバランスを失って倒れた一人によって、ドミノのように人達は崩れる。
三度、武器の一つであった大鉈を掴み返し横薙ぎに一回転させると空中に留まっていた者達は被弾し、背後へと吹き飛ぶ。

雄大はその場から前へ歩き、五歩目と共に後ろで無能力者全て地面に平伏す。
空へ上げた煙草は空中に停滞していた炎の異能を浴び、地面に落ちると力無く燃え尽きる。

周りに無能力者達の姿は見当たらず、やけに煩い音が空から聞こえる。
段々近づいてくるようなその音に、上空を見ると頭上に在するのはヘリコプター。

『Unusual talent』の文字が機体にあるそのヘリコプターは、ゆっくりと下へと降りてくる。
着陸が完了し、ヘリコプターの扉が開く、何人もの重装備をした男達が現れ、最後に姿を現した男は上司の松寺颯希。
雄大は立ち止まり、敬礼をする。
「霊遥葵、ご苦労だった」

「俺はここにいるこいつらを全員回収。また、近隣の異能者の無力化を行う。
お前はこの男の捜索を頼む」
颯希は懐から一枚の写真を雄大に手渡す。

「…この青年は?」

光臨(こうりん)那岐(なぎ)、無能者を異能者にした張本人だ」
雄大は顔をしかませて颯希の顔を見る。

「この青年がゼロの世界を統べる、『ゼロ』なのですか?」

「いや、ナンバーズワン、『ゼロ』の協力者だ」

「…俺が『ゼロ』なら、そんな貴重な異能を持ったものを表へは出しませんが?」

「…『ゼロ』はこの街を乗っ取ろうとしている。その為には兵が必要だ。狂った奴らを操れるのは、その異能の当事者ただ一人だ」
「Sランク能力者、すなわち『世界保持者』でも『ゼロの世界』からは現界に干渉は出来ない」

雄大は合点が行ったように「なるほど」と相槌をうち、中央街の方面を睨む。

「…それともう一つ、黒い炎の異能を振るう少女に出会ったら、逃してはならない、そして傷つけてもならない」

雄大は疑問の言葉を飲み込み、颯希の目を見る。
珍しいもので、いつも気だるそうに下を向いた目が、真っ直ぐと向いている。

「…そうだ、こいつもな」

颯希は雄大へと黒いスマートフォンを投げる。
「社長からだ。前の携帯のデーターくらいはそっちに全部入ってるだろう」

「了解しました、ではそちらも、お気を付けて」
雄大は中央街の方面へと走っていく。


颯希はそれを見おくり、ゆっくりと周りを見回す。
いつの間にか無能力者達に囲まれていたようだ。
颯希は肩に手を当てて腕を回し、無能力者達を睨みつけた。

「めんどくせぇ…」 
 

 
後書き
松寺(まつでら) 颯希(そうき)
性別:男
年齢:25
髪:赤
目の色:黄
身長179cm
カヴァー:会社員
ワークス:Unusual talent 本部長
『肉体硬質』
ランク:C
肉体の一部を硬質化できる。
硬質化に制限はなく、雄大が殴っても壊れないレベルまで上げることも可能。
しかし、その分他の部位が柔らかくなり、体重が大幅に増える。
霊遥葵の上司で自分で意識していないが毒舌が酷い
かなりのめんどくさがりで会社以外では喋るのも億劫。
かなり酒に強い 
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