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101番目の哿物語

作者:コバトン
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第十八話。死の予兆

「ひぅっ⁉︎」

理亜の口から『対抗神話』が語られた瞬間、俺の横を飛ぶ音央が悲鳴をあげた。
音央が悲鳴をあげたのと同時に、俺の胸の中心に激痛が走る。まるで胸の内側を鋭利な刃物で切り裂かれたかのような鋭い痛み。心臓や肺といった内蔵を痛みつけるような違和感と苦しみが襲ってきた。

『ですが、夜ご飯を食べた時。そこにあるのが強い愛であり、そしてその愛は自分に向けられたものではないと知った彼女は、自分の正体を______自分という存在が消えてしまうことも厭わずに告げようとしたのです。「すみません、私は______」』

その『声』を聞いた音央の身体は薄くなり、今にも存在が消えようとしていた。
同時に俺の身に宿る『妖精の神隠し(チェンジリング)』の力も消えていく。
これが……『対抗神話』。
千の夜話(アルフ・ライラ)』を語られた『物語』が辿る末路。
このままでは飛行を維持するのは不可能だ。
そう判断した俺は、すぐさま音央の手を引いて、さらに空高く舞い上がる。
そのままでは回避できるか五分五分だったから右手に持つスクラマサクスを振るい、瞬間的に刀身を超音速に加速させて自身の足元に向けて『桜花』を放ち、その時に発生した衝撃波を利用して上昇した。
『ロアの知識』により、『ロアの視点』で理亜の能力を把握した俺は理解していた。『千の夜話(アルフ・ライラ)』を発動させるには相手に『声』を聞かせなければならない、と。
それも、理亜の声は静かに語る『朗読』口調だった。大声で読み上げるタイプではない以上、おそらく『千の夜話(アルフ・ライラ)』の有効範囲は『雑音で邪魔されない範囲』、ようは近距離だと判断した俺は音央を連れて『声』が届かないギリギリの高さまで退避したのだ。
『声』が届かない位置に逃げることで回避する、この方法。
これはさっきラインに会った時に思いついた防衛手段だ。ラインは一之江との戦闘時に、一之江の声よりも速く移動することで回避していたからな。ラインが出来たんだ、だったらヒステリアモードの俺にも出来るだろうと思い、実践してみた。
まあ、まさかそれを空中でやることになるとは思わなかったけどな。
そして、『ロアの知識』でわかったことだが音央が放つ蔦は______。

「音央、あのアゾット剣が追ってこれないように、茨で縛るよ!」

「わ、解ったわ‼︎」

無数に放つことが出来るし、どこまでも伸びるのだ。

茨姫の檻(スリーピングビューティー)‼︎』

俺と音央は同時に両手から茨を放ち、理亜達の乗るアゾット剣を縛りあげた。
これであの飛行するビームライフルが俺達に追いつくことはない。

「これで一安心だな……」

と、安心しそうになった瞬間にそれは起きた。
眼下にいる理亜がアゾット剣に手を付くと、アゾット剣の銃身が怪しく水色に光輝き始めたのだ。

「『千の夜話(アルフ・ライラ)』こそ、ロアにとっての『死の予兆』! さあ、ハンドレッドワン(エネイブル)、ロアの死をたっぷり詰め込んだ一撃をお見舞いしてやるぜ‼︎」

アリサが高らかに宣言した。離れていてもその声が聞こえるのはアリサ達との距離が大声を出せば届く距離というのもあるが、離れていてもアリサの声がよく通るからだ。
理亜の声を届かせることが出来る、とかじゃなくて安心したが……『千の夜話(アルフ・ライラ)』を一撃として放つ、だと?
そんなこと可能なのか!
俺達が見ているうちに、茨の蔦で縛られたアゾット剣の先端に青白く光る魔法陣が生まれていた。

「『夜話』の装填完了!」

アリサの声が聞こえたその時。
その砲口に青白い光の粒子が集まっていき______。

「行くぜ______『終結砲撃(クロージュアー・カノン)』‼︎」

「てーっ!」

スナオちゃんの大声と共に人差し指を振り下ろすと、青白い光が砲口から放たれ、俺と音央に襲いかかった。その砲弾は魔法陣によって増幅され、巨大な光の渦になったものだった。

「うおっ」

「きゃっ!」

その砲撃は一瞬で俺達のもとへ達し、音央の背中に生えていた羽に直撃した。
直撃された片羽は一瞬のうちに撃ち抜かれ、音央はぐらっ、とバランスを崩して落下し……そうになったのを間一髪のところで音央の手を取り防いだ。そして、そのまま音央を抱き寄せる。
抱き寄せた音央の体は恐怖で震えている。
震える音央を強く抱き締めてやり、安心させるように声をかける。

「大丈夫だよ、音央。君は俺が守るから」

「あ……あんがと。でもへんなとこ触ったら殺すわよ」

「へんなこと? それはどこかな?」

「ばっ、バカ! 変態、変態、変態ー! あんまりジロジロ見んな!」

「やれやれ。助けたのに……姫はご立腹か。女心は難しいね」

強く抱き締めたせいか、間近で音央の匂いを嗅いだり、柔らかい感触を確かめたせいもあり、俺はまたなっちまったようだな。
タイミングがいいのか、悪いのか。早速アリサに告げられた女難の予兆が当たった気がするよ。
なーんて思いながら、今された攻撃を思い出しゾッとする。
今のは……間違いない。『対抗神話』の力を込めた超遠距離精密狙撃。
それで狙撃してきやがった。しかも、ワザと羽だけを狙って。
かなり精密な射撃が出来るみたいだな。さすがに今の一撃だけじゃ、絶対半径(キリングレンジ)……必ず狙撃出来る正確な距離までは解らないが。
いや、今の砲撃はそんな距離なんか関係ないくらい圧倒的な飛距離だった。
空の彼方まで飛んでいったように見えたからな。
そもそも、実弾じゃなくて、ビームという時点で反則だ!

「リアの弱点に気づいたのは流石だな、ハンドレッドワン(エネイブル)! こいつの『千の夜話』は近い相手にしか聞かせられないからなっ。空の上じゃスナオがこっそり運んで聞かせるってのも無理だ。だが、だからこそ私がいるんだぜ?」

アリサが不敵に微笑みながら告げる。

「アリサさんは『千の夜話』を、すっごい遠くまで撃てるってこと⁉︎」

音央が俺の左腕の中に抱かれたまま、青ざめた顔をしながら尋ねる。

「ああ! ピンポイントに超遠距離まで精密に届かせることができるぜ! だからお前らがどこに逃げようが、確実に撃ち抜いてやる!」

音央の疑問に対して、アリサは肯定した。

「そして、撃ち抜かれたら音央の羽みたいに『ロアの能力』をかき消される。もしくは、直撃すればロア自身を消滅させることも出来る______というわけだね?」

「ご名答。その通りだぜ?」

俺の疑問もアリサは肯定した。
そっか。やはり、簡単に勝たせてはくれないか。
飛行すれば理亜の『千の夜話(アルフ・ライラ)』とスナオちゃんの『赤マント』の空間転移能力は封じられる、なんて思ったけど。破天荒な『魔女』の存在でそれも意味がなくなってしまった。

「よーし、茨も解き終わったわ!」

スナオちゃんの方を見れば、無数の白い手によりアゾット剣に巻きついていた茨の蔦が解かれていた。そして、茨の拘束から解き放たれたアゾット剣は……。
フォォォン、と青白い光の尾を引きながら俺達の近くまで上昇してくる。
この距離だと理亜の『千の夜話(アルフ・ライラ)』が届くが……既に『語り始めたら逃げる』を実践した以上、再び使ってくるとは思えない。
そして、どんなに遠くに逃げても精密射撃で撃ち抜かれるなら、近かろうが、遠かろうが……その距離に意味などない。近距離では『対抗神話』。遠距離では『死の予兆を込めた一撃』が放たれるのだから。

「さて、降参するかい、エネイブル?」

「まさか。『主人公』は窮地に陥ってからが本番だからね!」

「ハハッ、違いない!」

逃げ場が無い状況。無いなら作れ、と昔、強襲科(アサルト)で習ったが、現状だと逃げ場を作る為に行動する余裕もない。あの砲撃を一撃喰らっただけでアウトというのと、音央の能力では茨と羽くらいしか使えないからな。
だが、俺にはまだ切れる手札が残っている。
それは……『(エネイブル)』の『消去』と『干渉』の能力。
さっき、閃いたが。
かなめの『ロアの世界』に『干渉』出来た『(エネイブル)』の能力なら、『対抗神話』やアリサの『死の予兆』にも対抗出来るんじゃないか。
確証なんてないが。思えば今まで思いついた技が必ず出来るなんて思ったことは一度もなかったのに、なんとかなってきたから……きっと出来る。
出来るはずなんだ。俺は『不可能を可能にする男』なんだから。
だから俺は試すことにする。自分のロアの力を。

「なあ、音央」

「何よ?」

「俺のこと信じられるか?」

俺の問いかけに一瞬、言葉を詰まらせた音央だが、俺の顔をジロリと睨むように見つめると。

「はぁ……あんた、やっぱりバカでしょ?」

呆れたように溜息を吐きながら呟いた。

「え?」

「あたしを信じられる、モンジ?」

「うん? そりゃあ可愛い音央の言うことなら全力で信じるさ。その方が楽だしな?」

ヒステリアモードだから、女性を疑いたくないってのもあるが、何より……疑ったり、心配したりするよりも、信じる方が俺には楽だ。それに武偵憲章にもあるしな。『仲間を信じ、仲間を助けよ』と。

「そうね。じゃあ、あたしにも楽させなさいよ」

音央はニッコリ笑うと、俺の腕に身を寄せてきた。

「あたしはあんたを信じる方が楽なの。疑ったり、不安になったり、心配したりなんて、正直美容に悪いからしたくないのよ。だから、あたしが危ないかもしれないと思うなら、必ずなんとか出来るように、あたしにあんたを信じさせなさい」

あくまで強気に語る音央を見て笑ってしまう。その言葉の意味は一つ。『俺を信じたい』ということなのだから。

「解った。何があっても俺を信じてくれ、音央」

「解ったわ。生涯何があってもあんたを信じるわ。だから……ちゃんと楽させなさいよね」

音央がポンっと俺の胸を叩くと、叩かれたところから熱い気持ちが生まれた。
こいつを何がなんでも守ってみせる。こいつと共に勝利してみせる!
そんな決心をさせてくれた。

「よし、もう飛べるか?」

「ん? OKよ。どこに行けばいい?」

「俺の後ろで、俺を支えてくれ! 俺の勇姿を見守っていてくれ」

音央の背に再び妖精の羽が生えた。それと同時に音央は俺の手を離れて背後に回ってくれた。
俺は背後にいる音央の存在を感じながら、そのまま、アリサが構える砲口の前までふわりと移動した。
そんな俺の行動に、スナオちゃんは驚いた顔をするのと、理亜が息を飲む姿が目に入る。
だが、かなめとジャンヌは『やっぱりね』と言った瞳を向けてきた。
今からやることを察してるみたいだ。

「へえ、なんだ。殺る気に満ちた顔してるじゃないか、ハンドレッドワン(エネイブル)

「殺る気はないさ。これでも元武偵だからね。不殺を信条にして戦うことには変わりはないよ。ただ……」

「ただ?」

「もう後には引けないからね。例え負ける戦でも男には戦わないといけない時がある。
それは______今だ。女を守る時だからね。それにここで引いたら、死の運命を覆すことやら、理亜の信用とか、そういうのは得られないからな」

だから……ひたすら前へ進む。進むんだ!

「だから、その砲撃を攻略する。全力で撃ってこいよ、アリサ!」

「おおう、マジでか!」

「マジさ。だから容赦なく最大出力で撃ってくるといいぜ?」

「ふむ。そこの姉さんもそれでいいのかい? 失敗したら一緒に消し炭になるわけだが」

「いいに決まってるじゃない。あたしはこいつの物語だもの」

音央は誰よりも偉そうに堂々と告げた。
そして、音央のその言葉に理亜の眉がピクリと動いたのが解る。

「おーっ。でかいのは胸だけじゃなく、肝っ玉もだったんだなぁ。ま、肝っ玉の場合は据わっている、ってのが正しい用法だが」

「へー」

スナオちゃんはあきらかに解ってなさそうな感じに返答していた。

「頑張ればこれくらいは大きくなるわよ?」

音央は余裕を見せるかのように、後輩達に向かってレクチャーしていたが……頑張ればでかくなるものなのか。だったら、一之江やアリアの胸も頑張ればでかくなるのかな?
……想像してごらん。胸がでかくなった一之江やアリアの姿を。
……ダメだ。想像できん。
胸がある一之江やアリアとか、そんな奴らがいたらまず変装を疑うからな!

「ま、ハンドレッドワン(エネイブル)がいいならいいぜ。その決断のせいで自分ばかりか、自分の大切な物語までもが消えてしまう可能性があるんだからな?」

そんな中でもアリサはいつもの不敵な笑みの中に、深い意味を込めた視線で俺を見つめてきた。

「どんな手があるのか知らないが、今あんたとそのボインちゃんの『死』はかなり強まっている。それこそ、あともう少しで命、存在が消えるんじゃないかってくらいに」

アリサのその言葉で確信した。アリサは『人の死』までの時間が見えるのではないか、と。

「その作戦はあんたの思い込みに過ぎず、大失敗する。そんな『予兆』が見えているんだが、本当にいいのかい? ボインちゃんも本当にいいのか?」

それは俺を試す言葉だった。あくまで今、アリサが俺達と戦っているのは俺の力や覚悟を試す為のもの。口先だけではない、本当に俺が理亜と一緒に戦える覚悟をしたかを見る為の。
アリサの杞憂も解らなくはない。それは俺も散々考えて、悩んで……そして決めたこと。
だからこそ俺はアリサに告げる。

「多分、今の俺とボインちゃんだったら死ぬだろうな」

「ほほう?」

「ってか、変なあだ名であたしを呼ぶな!」

音央に頭をべしっと叩かれた。
言い出したのアリサなのに理不尽だ。まあ、理不尽な扱いには慣れてるからいいけどさ。

「コホン。ともあれ今の俺と音央だったら死ぬだろうな。なんせハンドレッドワンの能力(この力)を手に入れて解ったんだが『妖精の神隠し(チェンジリング)』には茨の蔦発射と空を飛ぶくらいしか能力はないんだ」

「あっさりバラしちゃっていいのか。ロアにとっては弱点の暴露は致命的だぜ?」

「だから致命的に死にそうな予兆なんだろう?」

不敵なアリサに対して不敵に返す。

「だから、その致命的ってのを打ち破ってやる。まずは『不可能を可能にする男(エネイブル)』がどれだけチートな『主人公』なのかを見せてあげるよ」

まだ駆け出しの『主人公』である俺だが、『実戦経験』という意味では他の人に引けを取らないと思う。
だからまずは『俺』が真正面から『死の予兆』を打ち破ってやるよ。

「ハハハ! OK、お前さんの覚悟の片鱗は見せて貰った。んじゃ、遠慮なくぶっ放すから、死んでも恨まないでくれよ!」

「散らせるものなら、散らしてごらん?」

アリサは大笑いしながら両手を広げた。その手のひらに小さな青白い魔法陣が浮かび上がり、同時に砲身の前にはさっきの倍くらいでかい光の魔法陣が現れる。

「リア、『夜話』を頼む!」

「……了解しました。完全に『妖精の神隠し(チェンジリング)』を消し去るキーワードを乗せます」

理亜がアリサの耳元でボソボソ語ると、アゾット剣全体が強い光に包まれた。
その光と対峙してるだけで、もの凄い力が集まっていることが解る。

「おおー、アリサとマスターの本気だ!」

「ああ、本気を見せるさ。あいつらも本気を見せるらしいからな!」

「はい。兄さんが本気である以上、私も本気を出すのは当然です」

「うん、本気のお兄ちゃんもカッコイイからね〜。『妹』の私も本気で応援するよ!」

「あはは! アリサとマスターとカナメのそういったとこ好きだよわたし! 」

「なるほど、ラブラブだな私達四人は!」

「……大丈夫だろうか、こいつら」

その魔法陣の光が強まる中、四人の少女達は笑いあっていた。
ただ一人ジャンヌは呆れていたが、その頬は緩んでいた。
彼女達には彼女達で絆が存在している。それが微笑ましく映る。

「俺達もラブラブなところ見せつけようか?」

「ば、バカなこと言ってないで、準備はいいのよね?」

「ああ、姫は後ろでのんびりご鑑賞を。ああいうのを相手するのは……俺だけでいいからね」

「ちょっと、あんた本当に大丈夫? 頭打った?」

ヒステリアモード的な言い回しで俺は音央を安心させる。

「っしゃ、行くぜ‼︎ 私とリアの、最大出力の『死の予兆』……!」

青白い光の粒子が砲身に集まっていく。その様子はまるで昔テレビ(アニメ)で観た宇宙戦艦の主砲みたいだ。波◯砲だっけ?
戦車やミサイルとやりやったことはあったが、今度の相手は戦艦の主砲クラスそのものとは……なんか、本格的に人間辞めた感がするのは何でだろうな。

「来るわよ、モンジ!」

「解ってる‼︎」

俺は真っ直ぐその主砲を見つめた。
敵が銃器を使ってくるなら俺にとってはアドバンテージがある。
なぜなら銃技や銃弾を返す技は俺の十八番だからな。
まあ、今回はビームだけど。
光学兵器を相手にするのは初めてじゃない。
シャーロックの『緋天』、孫の『レーザービーム』……ビーム系の攻撃を攻略する仕方の復習と予習はとうの昔に済ませてある。
だから、あとは技を出すタイミングさえ、間違わなければいけるはずだ。

「さあ、来い!」

(この桜吹雪……散らせるものなら)

「いっけえー!」

俺の台詞とスナオちゃんの号令が同時に発せられると、アリサは魔法陣の浮かんだ両手を思いっきり前に突き出し。

「全ての可能性を塗り潰せ‼︎ 『絶死の結末(デッドエンド)』ーっ‼︎」

さっきの比ではない、巨大な砲撃を解き放った。
放たれた一撃は真っ直ぐ、俺達に向かって突き進む。
眩い光が視界を埋め尽くし。飛行する程度では避けられないほどの範囲を正に「塗り潰す」かのように埋めて封じるような一撃。
俺達はその光を真正面から見据えて、全身に力を込めた。

(散らしてみやがれー!!!)

「モンジ‼︎」

音央の叫び声が聞こえるのと同時に、俺が突き出した右手にその光が直撃する‼︎

「うおおおぉぉぉぉぉぉ‼︎」

俺はその光を突き出した右手の掌で受け止める!

(もし、この世界の認識が大きな歪みによって乱れてるっていうのなら……もし、歪みのせいで不幸な奴らが生まれてるだとしたら。もし、歪みによって『破滅』に向かうのを止められないなら______そして、そんな奴らを助けられる可能性を。全ての可能性を塗り潰そうとするのなら______『世界』の『破滅』。それを止めるのが不可能っていうのなら______)

「だったら、俺は……全ての不可能を消し去ってやるー!」

俺が叫び声をあげた瞬間、バリーンとガラスが破れたような音と共に。
放たれた光は『消滅』した。 
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