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101番目の哿物語

作者:コバトン
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第十七話。予兆の魔女

「あははははは」

俺の言葉に、スナオちゃんとかなめは不服そうな、理亜とジャンヌは呆れたような顔をしていた。
そんな中で、ただ一人高笑いをした奴がいた。
それはやはり。

「いや、なるほどな! これはいい。その返答は予想しなかったぜ。ルーキーにしちゃ、いい覚悟を持ってるじゃないか。うん、それは『私達』が一番恐れる資質だ!」

高笑いしながら、俺を見つめるアリサ。その笑いにはどこか、薄ら寒いものを感じてしまう。

「リア、お前さんの兄さんはなるほど。お前さんが大事に思うことあって、かなり面白くて、楽しい存在だな。うん、こいつは面白い。お前さんの物語にするのは諦めるんだな」

「え、あ、アリサさん……?」

アリサの言葉に、理亜は戸惑うような視線を向けた。

「だけど、悪いな。私は口先だけの覚悟ってのは信じないことにしているんだ。いや、結構いいことを言ってるとは思うぜ? 苦しいとか、悲しいとか、そういうのを受け入れて戦う覚悟……大変結構な覚悟だ。だけど、悪いな。私は正直、お前さんが言う覚悟が正しい、それをやり遂げられる、なんて、思えないんだよ。だから______」

アリサが自分の頭に手をかざすと、白くて大きなとんがり帽子が現れた。とんがり帽子と同時に真っ白なマントも現れ、アリサは一瞬のうちにそれらを身に纏う。

「お前さんが本当に不可能を可能に変えられると思っているのなら……理亜ですら絶望しそうになった、私の得意技。『予兆』と戦って貰おうか」

そして、俺に向けて人差し指を突きつけた。

「お前さん、もうすぐ死ぬぜ?」

不敵な笑みを浮かべながらまるで決め台詞のように、そう告げた。
アリサに人差し指を突きつけられただけというのに、俺は目眩に似た感覚を味わっていた。
『もうすぐ死ぬ』と言われた瞬間、言いようのない胸騒ぎに似た、何か胸の奥からじわじわと溢れ出してきたような。強いて言えば、銃撃された時や水の中に沈めらた時に感じる、死の恐怖。『俺はこのまま死ぬのか』という不安感に近い。
理亜やかなめ、音央もアリサの声を聞いて黙りこんでしまっている。それだけアリサの声には威圧感があり、有無を言わさない強さがあるのだ。

「それは『ノストラダムスの大予言(アンゴルモア・プロフィット)』が復活したら死ぬ、という意味かな?」

「いんや。私は『予兆の魔女』だからな? 私に会ったってだけでその人間の寿命は一気に縮むこともあるのさ。もっとも、そうじゃない場合もあるわけだが……お前さんからは撲殺、刺殺、斬殺、銃殺……脳の病による突然死とかの死の予兆を感じたぜ? まあ、いずれにしてもあれだ……私程度の死の運命、乗り越えられないことにはラスボスには勝てないぜ?」

「なるほどね、『予言』の前に『予兆』と戦えってことか」

「話が解るじゃないか、さて……出せる本気があるなら出してみろよ?」

『本気を出されても、どうとでもなる』……といった感じに腕を組み、俺が行動を起こすのをアリサは待っている。

「解った。とりあえず、大切な妹を巻き込んだ責任はとって貰うからな?」

「おお、いいぜ。どーんと胸を貸してやるよ」

胸を叩いて得意げに語るアリサだが……いや、あの。
そのスレンダーな体のどこに借りる胸があるんだ?
そんなことを考えていると、様子を見守っていた理亜が意を決したように一歩前に進み出た。

「アリサさん、兄さん」

その口から出た声は震えていて、今にも泣き出しそうなくらいか弱く、儚さそうな感じに聞こえるが理亜はなんとか声を張り詰めて、俺とアリサの名を呼ぶ。

「正直、私は迷っています。兄さんの先ほどの言葉に対する返事がまだ出来ていません」

その目からはまだ涙の跡が残っていて、戸惑いを残しているように感じるが。

「だから、私も戦います、アリサさん。私も戦って、兄さんの意志が本当なのか……確かめます」

すぐに強い視線になって、俺を見据えたのを俺は見過ごさなかった。

「私は構わないぜ。だが、その兄さんは妹に手を上げられないんじゃないか?」

確かにその通りだ。切れかけているとはいえ、ヒステリア性の血流が残っている俺には、妹を攻撃することなんかできやしない。いや……例え、ヒステリアモードじゃない普段の俺でも、妹に攻撃なんかできない。
……返り討ちに遭いそうだしな。
だが、それでもやらなければならないのなら俺は。

「俺も構わん。それで理亜が納得するのなら、俺は理亜に覚悟を示す。『千の夜話(アルフ・ライラ)』を攻略してやるよ」

そんなことが出来る確証なんかない。
勝てるかどうかなんか、解らない。
多分、出来ない可能性の方が高いだろう。分が悪い賭けをしてるのは重々承知だ。
だが、それが何だ!
分が悪いなんて、いつものことだ。

「だとよ。そんな自分を攻撃出来ない兄相手に、非情になって本気で戦えるのか?」

アリサが意地の悪い質問を、意地の悪そうな顔で理亜にした。。

「戦えます」

そんなことを言われた理亜の答えは即答だった。
理亜のその態度に満足そうに、アリサは微笑む。
きっとアリサは悪い奴ではない。
だが、やはり『魔女』だけあって、油断できない。
そこには人間のような情や常識、倫理観なんかないのだから。
それに、どんな理由があろうと、大切な妹達を誑かし、苛酷な運命を選ばせたこの『魔女』を俺は許せそうにない。例え、それが理亜の命を救う為であっても。
俺はこの魔女を許しはしない。だから、躊躇わずに自分のロアとしての『力』を使うことにする。

「も、モンジっ」

「ん?」

振り返ると、音央が真剣な顔をして俺を見つめていた。何故か口元を引き締めて、俺を睨んでいる。

「あたしだって、覚悟、決めてるんだから」

それは、俺が先ほど理亜に対して告げたことに対する言葉だった。

「だから、あんた、一人には戦わせない。あたしだって戦える、あたしだって、役に立てる。あんただけを苦しませない」

「……だったら、もう一人で戦おうとするな。お前は俺の腐れ縁な友達なんだから」

「ん……そうね。あんたなんかに気を使ったあたしがバカだったわ。むしろ、あんたに全部押し付けて楽にすれば良かったわ」

音央言葉に、俺達は笑い合う。
一之江やキリカとは違う、音央だからこその言葉。
その言葉や、態度に安心感を感じる。

「よし、行くぜ音央。お前の力貸して貰うからな」

「いいわよ。上手く使いこなしなさいよね!」

音央の言葉に頷いてから、俺は右手に持ったDフォンを強く握り締める。途端、右手の甲が熱くなり、その熱をアリサに向けて一気に真横に振り抜いた。
そこに一筋の赤い軌跡が生まれる。

俺は出来るだけ、厳かな雰囲気になるように真剣な口調で語り始める。

「さあ、不可能を可能に変える『百物語』を始めよう______」

直後、Dフォンが勝手に動作し、俺自身を写真に写す!
不思議な和音のメロディーが動作音として鳴り響き、辺りの雪景色が黒と金色のモノトーンカラーに包まれた。
俺の周囲を蝋燭の炎に似た無数の緋色の光が回転していく。
その炎が立ち込める中、俺は俺が思い描く『物語の主人公』の姿を取り始める。
俺が思い描いた姿は、全身は黒い背広姿で、その上から白のロングコートを羽織り、頭に黒いシルクハットを被っている。
『百物語』用のDフォンはモノクルに変化した。
右眼にそのモノクルを装着している。
見た目はかなり怪しい人物だが、一応学者や賢者っぽくも見えなくはない。
百もの物語を集めるならば、学者や賢者っぽい感じで。
不可能を可能に変えるなら……それはきっと探偵っぽい感じだろう、と思ってイメージした姿がこれだ!
ただ、普通の学者にはない……胸の内ポケットにホルスターを付けていて。
左右のホルスターには俺の愛銃、ベレッタM92Fsと黒いデザートイーグルが収められている。
さらに右手に握っていた『(エネイブル)』用のDフォンは緋色に光り、今や細身の刀。
直刀に近い形状の……スクラマ・サクスに変化している。

「へえ、それがお前さんが描いた『百物語』の主人公の姿か。人間を捨ててバケモノの側へのシフトチェンジってわけだな。ふむ……」

アリサが俺の状態を的確に指摘してくる。
どうやら『魔女』というのは好奇心旺盛で研究熱心なところがあるのはキリカもアリサも変わらず、同じらしい。

「一番興味深いのは……お前さんの『死の予兆』が塗り変わったことだ。さっきまで、いつ死んでもおかしくないくらいだったのに、ロアになった途端、いつ死ぬのか解らないくらいになりやがった。お前さんは自分の運命、物語を自分で創り上げる『主人公』ってことみたいだな」

俺の変化をあくまで余裕な表情で指摘して、把握するアリサ。
確かにアリサの言う通り『人間』一文字疾風の生命力は死ぬ確率が高かったのかもしれない。
だが、『101番目の百物語(ハンドレッドワン)』であり、『不可能を可能にする男』である『(エネイブル)』遠山金次の生命がどうなるのかは、どんな予兆も予言も解らないということなるのかもしれない。
だったら……俺は俺のすべきことをしてやる。
そして、アリサが把握出来るように、俺の脳も今は『ロアの知識』によって理解していた。
今まで謎だった『魔女』アリサの正体が把握出来る!

「人々が不安に思ったり、ジンクスを信じたりする気持ち。そういったものを操る存在が何処かにいるのかもしれない……そんな想いが生んだ『魔女』。それがアリサなんだな」

「ご名答。興味深いな、その姿になった途端に人の認識ではなく、『ロアの認識』で物事を把握出来るようになったってことか。『百物語』とか『哿』とか『千夜一夜』ってのは本当に厄介なロアみたいだなあ」

厄介と言いつつ、その瞳は嬉しそうに輝いてるのはなんでだ?

「リアよ、お前さんの兄さんは、我々の予想を超えるバケモノに進化してしまってるかもしれないぜ?」

理亜はそんな俺の変化を______無表情に、ただ真剣な目で見つめている。
本当はこんな姿は見せたくないが、それでも俺は彼女に伝えたい『想い』があるのだ。
それに、ロアの視点から見ることが出来る俺は、理亜がどんな存在なのかも解ってしまった。
最強の『主人公』として名高い『終わらない(エンドレス・)千夜一夜(シェラザード)』。
だが、そんな最強のはずな彼女には凄い身体能力も、その身を守る能力も実は存在しない。
あくまで理亜が使えるのは『話すこと』だけ、だ。

「モンジ、あたしもいけるわ」

音央に頷き返し、頭の中にある『書庫』のイメージに意識を向ける。
そこには大きな『書物』がいくつもの蝋燭に照らされて大量に浮かんでいた。
その中の一冊に手を伸ばすと、それは『妖精の神隠し(チェンジリング)』の物語だった。
脳の中に『妖精の神隠し(チェンジリング)』の物語が浮かび上がる。『神隠し』ではない、妖精側から見た物語。人に悪戯したり、人を導いたりすることもある身近な存在。そう、俺にとっても身近な少女がその物語のヒロインとして重なった。
その瞬間、この物語が『可能性』に満ちている物語であることを把握する。
______そうか。音央はまだまだ駆け出しのロア。その物語はまだ完成していない、多くの『可能性』を秘めたロアなのか。
彼女がどんな物語になるのかは、音央自身と『主人公』であり、『書き手』でもある俺が作っていくのか。

「ふぁ、あぁっ!」

俺の横にいる音央が声を上げ、自分の両腕で体を抱きしめた。
その体がほのかに光輝くのを見て、俺はかつてアリアが見せた現象を思い出す。

(これは『共鳴現象(コンソナ)』?
いや、違う。この力は……)

アリアが見せた緋弾による共鳴現象とは違い、その力は俺にも流れ混んでくるのが解る。
それは『物語』の記録。すでに完成されている一之江やキリカ、鳴央ちゃんと違って、これから成長していく『妖精物語』の全て。まだ完成されてないからこそ、未知の力に音央は震えているのだ。
だから、俺はその物語を自身の本として共に歩むことを選択する。
その一冊が自身の物語として、共に成長していくことを許容する。

「一緒に成長するぞ、音央。俺もお前も、自分の進む道で!」

「うん!」

俺達がそう誓いあった途端に『妖精の神隠し(チェンジリング)』の物語が、俺の中に溢れ始めた。
可能性に満ち溢れる妖精の物語が今、俺と共に進化していく。

「『妖精の神隠し(チェンジリング)』!」

俺が口にした瞬間、イメージの中で手にした本が実体化した。
直後、俺は跳躍______いや、飛行していた。

「『妖精の羽(ティンカーベル)』!」

『ロアの知識』に触れている俺にはそれがどんな技なのか、瞬時に理解した。
風の流れ、空気の流れを操作して、自由自在に空を飛ぶ能力。
背中に小さな透明な『羽』が生えているのが解る。
ああ、ついに俺は……空を飛べるようになっちまったのか。
なんだか、越えてはいけない一線を越えてしまった気がするな。。
自分が人間を本格的に辞めたようで、素直に喜ぶ気にはなれない。

「……人類の夢。『飛行』をこんな形で実現してしまうなんて……これ、夢だよな?」

ついつい、現実逃避をしてしまう。

「モンジ、現実逃避してないで戦うわよっ」

すぐ真横に浮かび上がってきた音央が、強気な視線を送ってきた。
俺達は地上から3mほど、浮かんでいる。

「ふはー、空を飛べるロアってのは結構少ないんだぜ。ま、『魔女』は箒さえあれば飛べるんだけどな。ってなわけで______」

アリサは空に浮かぶ俺達を見上げながら、自身のマントに手を突っ込み。

「行くぜ『アゾット剣』」

マントの中から______どう見てもマントに入らねえだろう、という突っ込みどころ満載な巨大な銃器(・・)を取り出した。昔、理子に無理矢理見せられたロボットものアニメに登場する銃器で戦うロボットが使うような巨大なライフル。メカメカしい未来的なデザインは男心をくすぐり、絶対ビームとか出るだろう、って確信が持てるそんなライフル銃だった。

「って、剣じゃないわよね⁉︎」

隣で音央が突っ込みを入れていたが、うん……それは俺も気になってたところだ。
だが、その返答は予想通りだったのだろう。

「わはは、まあ、気にするなよ。私の箒みたいなもんさ。ほら、理亜、かなめ。乗るぜ?」

「はい」

その巨大ビームライフルには何故か背もたれのあるシートが付属されており、アリサはそこにちょこんと座った。理亜はそのシートの後ろに、横座りで乗る。かなめはそんな理亜に背を向けて同じく横座りで乗った。
直後、ブオォォォン! と水色の光を発しながら『アゾット剣』は浮き上がり始めた。
なんともデタラメな物体だな。

「ってか、アゾット剣って何よ⁉︎」

「……ロアの知識にはないな。あれが『魔女の魔術』で生み出されたもの、ってのは解るんだが」

フォォォォン、と浮かび上がってきたアリサ達を見ながら俺は思案する。
(あれがなんなのかは解らないが、少なくとも魔術で生み出されたものなら、キリカの魔術のように代償が必要なはず。つまり、そこに勝つ為の勝機がある!)

「さて、そんじゃバトルをおっ始めるとすっか!」

俺達がいる高さまで上がってきたアリサがニヤリと笑う。理亜も風に靡く髪を抑えながら頷き、かなめも「よーし、やっちゃおう!」と楽しそうに笑っている。ジャンヌは自分で出した箒に跨って空を飛んでいる。
よかった。ジャンヌはマトモそうだ。などと安心していた。
ところが。

「ちょっと待ったー!」

「うん?」

元気な、ちょっと待ったコールに目を向けると、スナオちゃんが俺達を見上げているのが解る。
あれ? 乗ってなかったのか。

「いくらアリサがそんじょそこらのロアよりも遥かに強くて、マスターのリアがさいきょーで、かなめもめちゃくちゃずるいロアだからって、わたしが置いてけぼりなのは納得いかないわ!」

と、大声で叫んだかと思えば、次の瞬間。その姿は赤いマントの中に包まれ、消えたかと思ったら、タンッと、着地の音が聞こえ、気づいた時にはアゾット剣の先。『砲身』と思われるところに静かに立っていた。

「わはは、まあ確かに。お前さんがいると戦いは盛り上がるよな」

「ふふーん、わたしがいると心強いでしょ? 空の上じゃなんも出来ないけどね」

「確かにな。ついでに言うと、そこに立たれると私は照準をつけられないんだ」

「あ、ごめん。しゃがめばいい?」

「おお、それならバッチリだぜ。そんじゃ行こうか、リア、カナメ、スナオ」

「うん、マスターの為にこいつらをやっつけちゃうね!」

「本当は兄さんの覚悟を示して貰うのが一番なのですが、似たようなものなので構いません」

「うん、お兄ちゃんに近づく女は皆殺しだよ〜」

「……カナメのそれは何か違うが、よし、構わん。やっつけちゃうおう」

「OKよ!」

あっちはチームワークがあるんだからないんだか解らない雰囲気だが。

「ねえモンジ。あの銃からビームとか出たら、防げる?」

「ただのレーザーなら多分なんとかなると思うが……正直、解らん」

「あんた、そんな痛々しい格好してるくらいならなんとかしなさいよ!」

「痛々しいとか言うな! これでも一応、探偵とか刑事とか、学者っぽくイメージしたんだぞ! ってか、パートナーならせめて本名で呼べ!」

「うっさいハゲ!」

「ハゲてねぇよ⁉︎」

急造なチームだけあり、こっちのチームワークはあまり良くない。

「気をつけろスナオ。あれは痴話喧嘩って言って、腐れ縁的な幼馴染みと主人公ぐらいしか使えないチームワークだぜ」

「え、そうなの⁉︎ わたし、てっきりチームワークはガタガタでラクショーなのかと思っちゃたわっ!」

なんだか妙な評価で警戒させてしまっていた。
スナオちゃん、いくら素直だからって、『魔女』であるアリサの言葉を鵜呑みにするのは感心しないよ?
まあ、その素直さで警戒してくれたから助かってるけどさ。
しかし、確かに遮蔽物すら存在しない雪だらけの世界で、あの砲撃から身を守るのは困難だよな。
うーん、一つだけ可能性が思い浮かんだが……本当に出来るのか、そんなこと。

「よそ見してるわよ!」

「よし、早速発射しちまおう」

『アゾット剣』にアリサが両手をつくと、その砲身の前に巨大な魔法陣が浮かんだ。

「なんだ、あれ?」

「知らないわよ! 早く避けないと撃たれるわよ!」

アリサがチラッと背後の理亜を見た。理亜は躊躇いもなくコクンと頷く。
そして、『朗読』を始めた。

『______妖精の森に攫われた少女が帰ってきた時、そこには暖かな食事と、優しい両親がいました。だから、その少女は______自分が妖精であることを伏せようと思ったのです』

マズイ。あれは『対抗神話』⁉︎ 
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