英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第151話
~クロスベル大聖堂・入口~
「エイドスよ………一つだけお尋ねしたいのですが、よろしいでしょうか?」
ロイド達が帰ろうとしている中、エラルダ大司教はエイドスに尋ね
「?何でしょうか。」
尋ねられたエイドスは不思議そうな表情をした。
「……貴女は今のこのゼムリア大陸を何とかしようと思わないのでしょうか……?かつては混迷に満ちたゼムリア大陸を平和へと導いたように……」
「それは…………」
エラルダ大司教の言葉を聞いたロイドは複雑そうな表情をし
「「「…………………………」」」
ケビンとリース、ワジは複雑そうな表情で黙り込んでいた。
「―――――特に何も思いません。」
「なっ!?い、一体何故ですか……!?女神ともあろう方の言葉とはとても思えません!我々を見捨てるのですか!?」
エイドスの答えを聞いたエラルダ大司教は信じられない表情で声を上げ
「――――ケビンさん達にも言いましたが……私は自分から”女神”を名乗った事はありませんし、これからも名乗るつもりはありません。あくまで周りの方々が私の事を”空の女神”と称えているだけの話です。私は”人”として生きて行く事を決めたのですから…………空の女神(私)を信仰している貴方達にとっては耳が痛い話になると思いますが、正直な所、信仰の対象になって迷惑しているんです。むしろ七耀教会の規則に色々と文句が言いたい所があるぐらいですよ?」
「なあっ……………!?」
エイドスの話を聞いて口を大きく開けて絶句し
「信仰している側にとってはとんでもない発言でしょうね……」
「よ、容赦ないな、エイドス……」
「フフ……強い子に育って何よりです。」
エラルダ大司教の様子を見たエレナは苦笑し、アドルは冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、フィーナは微笑み
「……やっぱりエステルの先祖だけはあるね。」
「どーいう意味よ!?」
「まあまあ、落ち着いてよ、ママ。」
「空の女神がこんな性格をしているとは、絶対誰も信じんな…………」
呆れた表情で呟いたヨシュアの言葉を聞いたエステルはヨシュアを睨み、ミントはエステルを宥め、ダドリーは呆れた表情で溜息を吐き
「フフ……私も生まれ変わる前にお母さん達みたいな性格だったら、遥か昔にセリカと幸せになれたかもしれないわね……」
「あ、ああ…………(エステル……お前は未来で生まれてきた子供に一体どういう教育をしたんだ……!?)」
(クク、争いを嫌っていたという話だが……やはり完全に変わっているな。さすがはエステル嬢ちゃんだの!ハハハハハハハッ!!」
微笑みながら言ったサティアの言葉を聞いたセリカは表情を冷や汗をかいて引き攣らせながら答え、ハイシェラは大声で笑い
(子孫のエイドスさんがああで、フィーナさんも時々怖かったからな…………まさかクレハもああいう所があるんじゃ……)
ナユタは恐る恐るをクレハを見つめ
「?……ねえ、ナユタ。今何か私にとって物凄く失礼な事を考えていない?」
見つめられたクレハは不思議そうな表情をしたがすぐに威圧を纏った微笑みを浮かべてナユタに尋ね
「な、何でもないよ!?(や、やっぱり似ている……!)」
尋ねられたナユタは慌てた様子で答え
「全く…………」
その様子を見ていたノイは呆れていた。
「―――それと。私はこの時代の者ではありません。本来ならこの時代に存在してはいけない者。この時代の事はこの時代に生きる人々が決める事……それが自然の”理”です。」
「うむ。もはや今の時代は人の子達によって導かれる時代……”神”にすがる時代は終わったのだ。」
「………そう…………ですか…………エイドスがそう仰るなら…………我々は受け入れるしかありませんね…………」
そしてエイドスとツァイトの話を聞いたエラルダ大司教は肩を落として頷いた。
「法皇猊下たちが聞いたらショック死しそうな言葉やな……まあ総長やったら笑い飛ばすかもしれんけど…………」
「……確かに。総長の場合はその様子が目に浮かぶくらい………………」
「フフ、是非エイドスの意志を聞いた時の反応を見たいものだねえ?」
ケビンとリースは疲れた表情で溜息を吐き、ワジは口元に笑みを浮かべて言った。
「――――そうだ。ワジさん、約束通りお父様達と一緒に今日と明日の間だけで構いませんので街案内をしてくれませんか?決戦は明後日なのですから時間がありますし。」
その時エイドスは軽く手を叩いて微笑みながらワジを見つめ
「そう言えばそんな話を朝にしていたねえ?…………喜んでエスコートさせてもらうよ。」
見つめられたワジは目を丸くした後、すぐに静かな笑みを浮かべて答えて紳士がするように恭しく一礼をし
「なっ!?」
「ええっ!?」
「ほ、本気で今からクロスベルを観光するつもりなんですか……?」
ダドリーとロイドは驚き、エリィは表情を引き攣らせ
「ええ。せっかく空き時間があるのですから有効活用しませんと♪」
エイドスは嬉しそうな表情で言った。
「なあっ!?」
「ちょ、ちょっとタイム!そいつに観光案内させるのはいくらなんでも色々とヤバイですって!」
「……どうかここは私達にお任せ下さい。」
一方エラルダ大司教は口を大きく開けて絶句し、ケビンは慌てた様子でエイドスに忠告し、リースは冷や汗をかいてエイドスを見つめて言った。
「駄目です♪貴方達が信仰している空の女神(私)の”命令”です♪」
「「う”………………」」
「………………………」
笑顔で言ったエイドスの言葉を聞いたケビンとリースは唸り、エラルダ大司教は石化したかのように固まった。
「ま、そう言う訳だから”星杯騎士”として今からエイドスとそのご両親達にクロスベル市の案内をしてくるよ。……あ、泊まる場所とかどうする?さすがにメルカバは窮屈だから嫌だろう?」
「そうですね…………お父様達はどんな所がいいですか?」
「僕達か?僕はどこでもいいよ。フィーナたちと相談して決めてくれ。」
「……だ、そうですけど…………どうします、エレナさん?」
「うーん……私もアドルさんとずっと旅をしていますから、正直ベッドがある場所ならどこでもいいんですよね……」
「あ、それならいっそ”トリニティ”に泊まっていくかい?ベッドくらいならあるけど。」
そしてワジやエイドス達はその場から会話しながら去って行き
「それじゃあナユタ君達はあたし達が案内してあげるわ!」
「僕達もしばらくクロスベルに住んでいたから観光案内ぐらいはしてあげられるよ。」
「勿論休む所の手配もミント達に任せて!ご飯が美味しい所の部屋を取ってあげるね♪」
「お願いします。行こう、クレハ、ノイ。」
「ええ。お願いね、エステル、ヨシュア、ミント。」
「どんな町なのか楽しみなの♪」
ワジ達に続くようにエステル達やナユタ達もその場を去り
「あ!待って、ノイちゃん!!ようやく貴女を可愛がってあげる時間ができたんだからっ!!」
「ヒッ!?その目はアネラスと同じ…………!いやあああああああ…………!?もう勘弁してなの――――――!!」
「ノ、ノイ!?どこに行くの!?」
「アハハ…………本当にアネラスさんそっくりの人ですね…………」
エオリアは血相を変えてエステル達の後を追った。
「やれやれ…………相変わらずエオリアの趣味は理解できん…………」
「全く…………全て終わったら本当に色々と教育する部分があるわね……」
「改めて思ったけど、今までの”使徒”の中でも一番ユニークな娘だわね……」
「え、えっと……マリーニャさん?まさか私達にも変な所があるのですか?」
「フフ、ちなみに未来のエオリアもずっとあの調子よ。」
「ふえ??」
「………?………」
「ハア…………嬉しくない情報じゃの…………」
「ま、まあエオリアさんらしくていいと思うし、遥か未来でも主の”使徒”として元気でやっている証拠を聞けて何よりだと思うよ。」
その様子を見たセリカとエクリアは呆れた表情で溜息を吐き、マリーニャは苦笑し、シュリは表情を引き攣らせ、サティアは微笑み、マリーニャとサティアの言葉を聞いたサリアとナベリウスは首を傾げ、レシェンテは呆れた表情で溜息を吐き、リタは大量の冷や汗をかきながら言った。
「リース!追いかけるでっ!エステルちゃん達はともかくワジに観光案内なんて任せたらとんでもない所ばかり案内させられるで!?」
「わかってるっ!まずは宿泊場所の確保をしないと……!後はマーカスさんやセサルさんにも連絡してエイドス並びにアドルさん達、ナユタさん達の警護に当たってもらわないと……!」
「アッバスにも連絡して事情を話した後アッバス達と連携して今クロスベルにいる”星杯騎士”全員でエイドスさん並びにそのご家族や家系の方達――――ナユタ君達やアドルさん達の警護に当たるでっ!!ただし、エイドスさん達のご気分を害さない為に影から見守りつつの警護や!」
「それもわかってる!―――こちら、リースです!マーカスさんですか!?至急セサルさんと一緒に動いてもらいたい事がありまして………!」
「おい、アッバス!大変や!ワジのド阿保がとんでもない事を仕出かし始めたでっ!?」
その時我に返ったケビンとリースは血相を変えた後慌ててエニグマで誰かと通信しながらその場から走り去り
「雰囲気ぶち壊しだよな…………」
「アハハ…………」
「本当に普通の女性と変わらないな……」
「え、ええ……ゼムリア大陸中の人達が知ったらきっと驚くでしょうね……」
「ええい、この非常時にまた頭が痛くなるような事を……!”空の女神”の一族の話を聞いた時は最初は驚いたが、あれでは一般市民達と変わらんではないか!?あれらのどこが女神とその一族なんだ!?」
ランディは疲れた表情で溜息を吐き、ノエルは苦笑し、リィンとエリゼは表情を引き攣らせ、ダドリーは表情を顰めながら呟き
「いや~、まさかあんな女神がいるとはね♪」
「とっても親しみやすくていいよね♪」
「そうだよねー♪」
「まあ、あまり親しみやすいのも”神”としてどうかと思いますが……」
「フフ、いいではないですか。本人は”神”扱いされる事を嫌がっているのですし。」
「後で病院のみんなに顔を見せてくれないかしら?そうしたらみんなも喜ぶと思うけど♪」
「…………あの娘だと本当にやりかねないから、冗談になっていないな……」
カーリアンとシャマーラ、キーアは口元に笑みを浮かべ、エリナは苦笑し、セティは微笑みながら言い、笑顔で言ったセシルの言葉を聞いたツァイトは表情を引き攣らせて呟き
「そ、それより…………私達も後を追った方がいいのでは……?」
「空の女神達に何かあればクロスベルどころかゼムリア大陸にとって一大事だぞ!?」
リーシャは苦笑しながらロイドに尋ね、ダドリーは真剣な表情で怒鳴った。
「あ、ああ……!行くぞ、みんな……!手分けしてエイドスさん達を探すぞ……!」
尋ねられたロイドは頷いた後その場から去って行き
「う……………うーん……………」
ロイド達が去ると固まっていたエラルダ大司教は地面に倒れて気絶し
「大司教様!?」
「しっかりなさって下さい!!」
エラルダ大司教の様子に気付いたシスターや神父は慌ててエラルダ大司教に駆け寄った。
「いや~、さすがはエステルの家系ねえ~。全員楽しませてくれるじゃない♪」
その様子を見守っていたカーリアンは口元に笑みを浮かべていた………………
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