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とあるの世界で何をするのか

作者:神代騎龍
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第四十四話  VS木山春生



「超貴方が犯人だったんですね!」

「もう逃げられない。観念して」

 俺や御坂さん、そして初春さんが乗せられたままの車が木山先生から直接攻撃されないような位置取りをしながら、アイテムの二人が木山先生に声を掛ける。まるでついさっき知ったかのような会話をしているが、俺が事前に教えているのでアイテムの二人は木山先生が犯人だと言うことを以前から知っている。

「私にはまだやらなければならないことがあるんだ。こんな所で止まるわけにはいかんよ」

「絶対止めてみせる!」

 少し自嘲気味な木山先生に向かって、最後に御坂さんがビシッと指さす形の決めポーズを取る。厨二病っぽいなぁと思いつつ、御坂さんが現時点でがっつり中学二年生だったことを思い出す。

「君達に出来るかな?」

「やってやろうじゃないの!」

「私達を敵に回したことを超後悔させてやります」

 木山先生の挑発に対して真っ先に答えたのは御坂さんだ。そして、絹旗さんもかなりやる気になっている。

「レベル5とレベル4か、学園都市が誇る高レベル能力者が揃っているようだが、私みたいな人間と戦ったことがある者は居ないだろう」

「アンタがどんな能力を使えるのかは知らないけど、こっちはアンタをさっさと倒すだけよ!」

 木山先生的には挑発の意図など無いのだろうが、御坂さんは挑発と受け取ったようでヒートアップしていく。

「ふっ、どんな能力を……か。そうだな、どんな能力でも……だ!」

「そんな攻撃……なっ!!」

「まるで超何でもあり……ですね」

「確かに、どんな能力でも使えそう。AIM拡散力場が異常すぎる」

 挨拶代わりとでも言うつもりだろうか、木山先生が三人に向かって炎と風と水を使った能力を発動すると、更に別の能力を重ねているのか回避しようとする三人に向かって追尾しはじめた。多少驚きを見せる御坂さんに対して、アイテムの二人は流石に戦闘慣れしているだけあってかなり冷静で、滝壺さんは回避しながらもAIM拡散力場を分析している。そして、戦闘要員としてはカウントされていないのか、戦闘の意思を見せていないからなのか、木山先生が俺に対して攻撃を仕掛けたり何かしらの能力を発動した形跡は無い。

「黒子、どうなってるの?」

『どうやら木山春生は複数の能力を使えるようですの。先ほどから何度も複数の能力を使い分けて戦闘をしていましたわ。同時使用というのは今、初めて見ましたけど……』

『恐らくレベルアッパーの影響でしょうね。今の彼女は事実上デュアルスキルと言って良いと思うわ』

 ただ単にスキルの同時使用で驚いたのか、それともここに到着する前のアンチスキルに対して使っていた複数の能力のことを忘れていたのか、木山先生の攻撃を回避しながら御坂さんが白井さんに尋ねると、白井さんの答えの後に固法さんからほぼ間違ってない予測が返ってくる。

「へぇー。デュアルスキルなんて、楽しませてくれそうじゃないの」

 能力の持続時間が終わったのか、木山先生が意図的に解除したのかは分からないが、攻撃がやむと固法さんからの情報で楽しそうに呟く御坂さん。流石バトルジャンキー、戦闘民族高町家……いや、御坂さんだから御坂家なんだけど。

「デュアルスキル? 違うな。私の能力は理論上不可能とされてきたあれとは全く方式の違うものだ。言うなれば……そうだな、マルチスキルとでも言った方が正しいか」

「呼び方なんてどうでも良いわよ。やることに変わりはないんだから」

 呼称の間違いを訂正する木山先生に御坂さんが構えなおす。アイテムの二人も再び戦闘態勢だ。

「そうか。しかし、さっきからそこの彼はずいぶん静かなようだが?」

「ちょっ、アンタ! 何やってんのよ!?」

 これから戦闘を繰り広げようかという三人を差し置いて、木山先生は俺に話を向けた。それによって御坂さん達も俺に意識を向けてきたので、俺のマルチスキルを披露するには丁度良いタイミングだろう。

「いや、木山先生のマネが出来ないかなーって思って」

「マネ? 木山先生のモノマネなんかしてどうすんのよ……ってぇっ!?」

 俺の発言で御坂さんが微妙に勘違いをしていそうだったので、一本指を立ててその先から火を出してやると御坂さんは大いに驚いてくれたようだ。

「なるほど、他人(ひと)の能力ってこうやって使うのか」

 俺はうんうんと頷きながら、木山先生にまで聞こえるよう独り言を呟く。

「いやいや! 何でアンタまで他人の能力使えてるのよ!?」

「そこはほら、俺もレベルアッパー使用者だから」

「そういう問題っ!?」

 御坂さんの疑問に答えて驚かせながら木山先生の様子を窺ってみるが、木山先生はそれこそ『面白い物を見つけた』と言わんばかりの表情でこちらを見ていた。

「もしかして、私達も超他人の能力使えたりしますか?」

 絹旗さんが自分たちもデュアルスキルが使えるのかを聞いてくる。事前に『無理をすれば麦野さんみたいになる可能性がある』ということは伝えてあるのだが、後々の事を考えて、ある程度不自然にならないようにこの手の話を俺に聞いてくるよう頼んである。

「やろうと思えば出来るかもしれないけど、今からはそんな余裕が無いと思うよ」

 絹旗さんの疑問に答えていると木山先生がこっちに手を向けたので話を切り上げる。

「そういう事……だ!」

「なぁっ!!」
「なっ!」

 木山先生の手から俺に向かって一筋の光線が襲ってくるが、ある程度の予測が出来ていたので難なく回避する。そして、その能力に驚いたのがアイテムの二人である。

「絹旗さん、滝壺さん! どうしたの!?」

「超今の……麦野の能力です」

 御坂さんに心配されたアイテムの二人が答える。二人の驚きようからだいたい予想はできていたが、やはり今のは麦野さんの原子崩しだったようである。それにしても、木山先生はなかなかあくどいことをしてくるな。

原子崩し(メルトダウナー)……流石レベル5といったところか。なかなか使い勝手が良さそうだな」

 木山先生が自分の手を見つめながら呟く。

「滝壺さん、ちょっと能力借りるよ」

「うん」

 確かに麦野さんの能力は強力なんだろう。しかし、それをアイテムの二人の前で使うというのは流石の俺も頭にきた。ということで、滝壺さんに了解を得て能力を使わせて貰うことにする。滝壺さんも麦野さんの能力が勝手に使われて悔しかったのか、力強く頷いてくれた。

「さて、木山先生。少なくとも俺は貴女と同じ土俵に上がれたようです。元々能力者では無かった貴女と、元々レベル4の能力者だった俺と、どっちが上手く能力を使いこなせるか勝負してみましょうか」

「ちょっ!! 何私を差し置いて勝負しようとしてんのよ!!」

 俺は木山先生に宣戦布告をしたのだが、折角格好良く決めたのに空気を読まない御坂さんに水を差されてしまった。

「だが、君は今年の春から能力者になったのだろう? 私は何年も前から能力開発に携わっているのだよ」

「なるほど。能力に関わっていた期間という意味では木山先生の方が経験が長いですね」

 御坂さんのことは完全無視で木山先生が話を続けるので、俺もそれに答える。

「こらっ! 無視してんじゃ無いわよっ!!」

「それなら数ヶ月の実戦経験が上か、数年の能力開発経験が上か、試してみましょうか」

「ああ、そうだな」

 御坂さんが何やら喚いているが、今回も無視したまま続けると、木山先生も同意する。

「私を無視すんなぁーっ!!」

 俺と木山先生が無視し続けてきたので御坂さんが遂にキレて電撃を飛ばしてくるが、俺も木山先生も難なく防御する。木山先生の方で何をしたかは分からないが、俺の方は学園都市の能力では無く空間盾を使わせて貰った。

「味方にまで電撃を放つのはどうかと思うのだが……」

「敵であるはずの木山先生の方がなぜか超まともな意見を言ってますね」

 御坂さんに対する木山先生の言葉に絹旗さんが同意している。まあ、俺も同感ではある。

「アンタらが私を無視するのが悪いんでしょーがっ!!」

「御坂さんがいちいち話の腰を折ってくるから無視せざるを得なかったんだよ」

 御坂さんの無茶苦茶な理論に俺が反論する。こういう所が御坂クオリティーなのだろうか。

「そもそも私をのけ者にしてアンタ達だけで戦おうとしてるのがいけないんでしょーがっ!!」

 御坂さんが更に怒ってくるが、そもそも俺は木山先生と勝負する話をしていただけで、その勝負に御坂さんが入ってこれないようにしていたわけでは無い。いや、御坂さんの性格から、『勝負』という言葉からは一対一の勝負しか頭に浮かばなかったのかもしれないが……。

「バトルジャンキーここに極まれり!」

「バトルジャンキーじゃないわよっ!!」

 俺がぽつりと呟いた言葉に間髪を入れず御坂さんが反論してくる。

「ええっ!? マジでっ!?」

 いくらなんでもそこまで自覚が無いとは思わなかったので、かなり盛大に驚いてしまった。

「いや、どう見てもバトルジャンキーにしか見えないのだが……」

「悔しいですが、木山先生に超同意です」

「今のみさかをバトルジャンキーと呼ばないなら、バトルジャンキーという存在が居ないことになる」

 御坂さんのことをバトルジャンキーだと思っていたのは俺だけじゃ無かったようで、木山先生を始めとして、絹旗さんも滝壺さんも俺の思っていることを代弁してくれている。

「そこまでっ!?」

 全員からのバトルジャンキー認定に御坂さんが驚いているが、俺からしてみればそこで驚いている方に驚きである。

「それで、結局どちらが私と戦うのかな?」

「私に決まってるでしょうがっ!!」

 ここで一段落付いたと思ったのか、木山先生が話を戻すと速攻で御坂さんが名乗りを上げる。

「じゃ、俺たちは見学って事で」

「それなら、その間にマルチスキルについて超教えて貰っても良いですか?」

「私も知りたい」

 御坂さんの性格を考えると一対一で戦わせた方が良いのかと思い、俺はアイテムの二人を巻き込んで見学をすることにした。アイテムの二人もマルチスキルについての話が聞ける時間が取れるということで、戦闘はレベル5の御坂さんに任せても良いだろうと考えたようだ。

「ちょっ!! 私一人で戦わせる気!?」

「いやいや、御坂さん。一人で戦いたいんでしょ?」

 一対一で戦いたいのだとばかり思っていた御坂さんの言葉に、俺は驚きつつ返す。

「超頑張ってください」

「たとえ敵味方関係なく攻撃するような人でも、私はそんなみさかを応援してる」

 アイテムの二人は既に観戦モードで、御坂さんの応援に回っている……というか、滝壺さんの毒舌が炸裂している。

「いいわよ! 私一人でやってやろうじゃないの!」

『お姉様……』

 御坂さんが戦闘モードに入った所で、今まで空気を読んで発言を控えてくれていたと思われる白井さんの声がレシーバーから聞こえてきたが、既に御坂さんには届いていないだろう。

 御坂さん対木山先生の戦闘が始まった所でしばらく様子を窺ってみるが、御坂さんが電撃や周囲に散乱している金属片を使った攻撃を仕掛けて、それを木山先生が様々な能力で防御するという展開になっている。確かアニメではもう少し御坂さんが防戦に回る展開だったと思うのだが、御坂さんのやる気が違っているからなのだろうか……。

「初春さんは超無事ですか?」

「確かに気を失ってるだけで大丈夫っぽいね」

「少し安全な所へ移動させた方が良いかもしれない」

 観戦組に回っている絹旗さんが聞いてくるので、初春さんの生体データを確認してみるが、現在気を失っているだけで他に身体の異常は見当たらない。だが、この位置だと御坂さんと木山先生の戦闘に巻き込まれる可能性があるので、滝壺さんの言うとおり車を移動させた方が良いだろう。

 俺が木山先生のランボルギーニを移動させている時、高速道路の一部と一緒に御坂さんと木山先生が落下していった。

「御坂達が超落下しました!」

「ああ、分かってる」

 丁度橋脚の真上でランボルギーニを停車させ、車から降りた所で絹旗さんが駆け寄って声を掛けてきた。車を運転中だったとはいえ、俺も見ていたし気配からも状況は分かっている。

「初春さん、初春さん」

 取り敢えず一度だけ初春さんを起こそうとしてみるが、初春さんが起きてくる気配は無い。

「初春さんはまだ気づかないみたいだし、俺たちは下に降りてみよう」

 俺は絹旗さんと滝壺さんに声を掛けて車から離れると、車を周辺の空間ごと完全隔離する。いわゆる結界という物に近いだろうか、よくアニメなどで見かけるガラスに囲まれたような境界面が見えると言うことは無いが、基本的に物質が通過することは出来ないので、中に人間を入れて隔離する場合には酸素供給を考えなければならない。なので周辺の空間ごと、そこそこの広さを取って隔離したのである。

「ここから超降りれますね」

 絹旗さんが階段を見つけて降りていく。鍵の掛かった扉があったようだが、能力で破壊したようだ。俺も階段を降りていると御坂さんが放電して周囲にあった何かを爆発させていた。

「そろそろ超加勢したほうが良いんじゃ無いですか?」

 流石に今の攻撃を見て御坂さん一人に戦わせるのは問題があると思ったのか、絹旗さんが聞いてくる。

「そうだね」

 絹旗さんの言葉に俺が応えると、滝壺さんも頷く。丁度その時、御坂さんが木山先生と戦っている場所辺りで大きな爆発が起きた。

「超のんびりしすぎましたか!」

「みさか、生きてて!」

「まだ気配はあるから大丈夫」

 走る速度を上げながらも御坂さんを心配する二人に俺が答える。確かに爆発は凄かったが、御坂さんはそれをちゃんと防いだようである。

「ぐあぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 御坂さんと木山先生が戦っていた場所に俺たち三人がようやく到着すると、御坂さんに抱きつかれた木山先生が電撃で倒される所だった。落下後はどんな戦い方をしていたか見ていないのだが、取り敢えずの決着はアニメ通りと言うことで良いのだろう。

「一応、手加減はしといたからね」

 崩れ落ちる木山先生を支えつつ、多分俺たちには聞こえないように呟いたつもりなのだろう御坂さんの言葉は、聴力の良い俺にだけ聞こえたようだ。

「超無事だったようですね」

「あ、絹旗さ……え?」

 声を掛けた絹旗さんに御坂さんが答えようとするが、その瞬間に御坂さんの動きが止まる。続く御坂さんの言葉からもアニメ通りに進んでいることがうかがえる。

「これは、木山先生の……記憶?」

「超どうしたんですか? あっ!」

 御坂さんを心配して絹旗さんが御坂さんに触れる。するとその瞬間に絹旗さんも動きを止めた。

「きぬはた、どうしたの? えっ?」

 絹旗さんを心配した滝壺さんが絹旗さんに触れると、同様に滝壺さんも動きを止めたので何となく予想が付いた。

「もしかして……あー」

 俺の予想が正しいかどうか確認するために御坂さんに触れてみると、予想通り頭の中に木山先生の記憶が流れ込んできたのである。

 
 

 
後書き
お読みいただいている皆様、大変長らくお待たせいたしました。
ようやくやってきた山場ですが、結局御坂さんに持って行かれました。
どうしてこうなった orz

2017/02/15 改行がおかしかった場所の修正
言い回しをちょっとだけ追加
 
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