英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第139話
ロイド達と共に市内を廻っていたティオはある場所で立ち止まった。
~東通り~
「………………」
「………ティオ?」
「気になる事でもあった?」
立ち止まったティオを見たロイドとエリィは不思議そうな表情で尋ねた。
「こちらの方角からちょっとした気配を感じたのですが……すみません、おそらく気にするほどの事ではないかと。」
ティオは静かな表情で答えたが
「………いや、ティオの言う通り、そちらの方面にわずかだが”人”の気配がする。」
「何っ!?」
「一体誰がこんな所に……」
「ええ………外は魔導兵で危険なのに。」
厳しい表情で言ったツァイトの言葉を聞いたランディは声を上げ、エオリアは驚き、セシルは不安そうな表情で考え
「………とにかくこの辺りを詳しく探索してみよう。」
ロイドは真剣な表情で提案した後仲間達と共に周囲を調べると壁に立てかけられた木の板を調べるとそこにいは隙間から暗闇が見えた。
「これは……どこかに通じているみたいだな。」
「場所的にジオフロントかしら?」
「どうやら、板を動かせそうだけど……」
「もしかして、さっきティオすけとツァイトが反応したのは……?」
「ええ、この場所だと思います。」
「うむ、そこから気配が強くするな。」
「……誰かさんが迷い込んだのかな?」
「入って確かめますか?」
「そうだな……念のため確認しておくか。」
「では、早速入りましょう。」
そしてロイド達は木の板をどけて、そこから先へ空いている空間へと入って行った。
「やはり、ジオフロントに通じているみたいだな……」
「まさかこんな所にもジオフロントに通じる道があったなんて……」
「どうやら、D区画の一角には間違いないみたいだけど……」
通路を歩いているロイドとエオリア、エリィは真剣な表情で呟き
「……気配が強くなってきました。数は一つですが……誰かがいるのは確実みたいです。」
ティオはロイド達に忠告した。
(この扉の奥ですね。)
(ええ、間違いありません。)
リーシャの小声の言葉にティオは頷いた。
(ここは、倉庫か何かかな?扉に窓が付いているみたいだけど。)
(わからないけど……とりあえず好都合だな。ここから少し、中の様子を窺ってみよう。)
そしてロイド達は扉についている窓から様子を窺い始めた。
「そうです、大佐……はい、はい………」
ロイド達が窺い始めた場所では一人の青年が何かの装置で誰かと通信していた。
「え、そう言いましたっけ?あはは………すみません、所長。」
(あの後ろ姿は……)
(もしかして………クロスベルタイムズのレインズさん?)
(こんな所で一体何を……)
自分達にとっても見覚えのある青年――――レインズだと判断したロイド達が不思議そうな表情をしたその時
「あの………そこにいるのは支援課の皆さんですよね?もしよければ、軽くお話をして行きませんか?」
レインズが振り向いて言った。
「やれやれ……既に気付いてたってわけか。」
「油断はできないけど、とりあえず言う通りにするか。」
そしてロイド達は扉を開けてレインズに近づいた。
「はは、やっぱり皆さんだ。でもまさか、こんな所でお会いするとは思いもよりませんでした。」
「ええ、それは俺達もです。」
「クロスベルタイムズの新人記者で、カメラマンで、グレイスさんのパートナー………」
「しかも私達の気配にも気付くのだから只者ではないわ。」
苦笑しているレインズをロイドやエリィ、エオリアは警戒した様子で答えながら見つめ
「ま、こんな所で会う以上、それだけじゃねえのは確かだな。とりあえず、猫被ってないでさっさと正体を吐いたらどうだ?俺達に気付いていながら隠れなかったってことは、アンタもそのつもりだったんだろ?」
ランディは目を細めて尋ねた。
「ええ、といっても性格はこれが素なんですけどね。実は僕は――――民間の調査会社の人間なんです。」
「民間の調査会社……?」
レインズの話を聞いたロイドは不思議そうな表情をし
「ええ、リベールにある『R&Aリサーチ』という名前の会社でして。」
「え………」
「『R&Aリサーチ』………聞いた事があるような気はしますけど……」
レインズの話を聞いたセシルは驚き、エリィは不思議そうな表情をし
「確か……リシャールさんが経営している会社ですよね?」
セシルが不思議そうな表情で尋ね
「あ………そういえば、そんな名前の会社でしたね。」
ティオは目を丸くして呟き
「二人とも知っているのか?」
二人の反応を見たロイドは尋ねた。
「ええ………」
「”影の国”で出会った人――――リシャールさんです。リシャールさんでしたらそれなりに世間に知られていると思いますが……」
(リベールでクーデターを起こした張本人ね。)
ロイドの疑問にセシルは頷き、ティオはロイド達を見回して呟き、ティオの言葉を聞いたルファディエルは静かな表情になり
「それってもしかして………王国軍に所属されていた、リシャール元大佐の事かしら?」
エリィは不思議そうな表情でティオに尋ねた。
「エリィも知っているのか?」
「ええ………アラン・リシャール――――………2年前、リベールでクーデター事件を引き起こした元・情報将校よ。」
「あ………!思い出したわ……!確かにそんな名前だったわね………」
「あのクーデター事件を……?」
エリィの話を聞いたエオリアは目を見開き、ロイドは不思議そうな表情で尋ねた。
「そう、だけどリベールの異変時には国難を救う大活躍を見せて………その後、女王陛下から正式に恩赦をもらったという話しなの。」
「恩赦を………なるほど、それで自身の経歴を活かしつつ調査会社を立ち上げたわけか。」
「なんというか………相当な切れ者のようですね。」
エリィの情報を聞いたロイドとリーシャは考え込んだ。
「ふむ、流石は支援課の皆さん、こういった話題にもお詳しいですね。――――そういうことで僕の立場は少しはわかって頂けたでしょうか?」
ロイド達の会話を感心したように見つめていたレインズはロイド達を見つめて尋ねた。
「ええ、大体のところは。」
「ですが、どうしてまた私達に身分を明かす気に?」
「ええ、いずれ皆さんともお仕事をさせて頂く機会があるかと思いましたので。そうなれば、今明かすのも後で明かすのも同じですからね。ちなみに通信社のみんなにはグレイスさんを始め、誰にも話していないんです。ずうずうしいお願いですが。内密にしておいて頂けますか?」
「ええ、話を聞く限りあなたたちはあくまで第3者でしょうし。敢えて秘密を漏らしたりするつもりはありませんよ。」
レインズの頼みにロイドは頷いて答え
「ありがとうございます。そう言って頂けると思いました。」
レインズは明るい表情でロイド達を見つめた。
「そういえば、モヤの影響で導力通信がつながりにくいと聞いていたのですが………そちらの通信器は、問題なく使えるんですね?」
「ああ、これのことですか。モヤの影響は勿論ありますが、この通信器は単純に強力な導力波を出すことが可能なんです。ただそれでも、範囲はギリギリクロスベルを越える程度でしてね。ちなみに今は所長自らがアルタイル市に出張って来ていて通信を中継してもらっているんですよ。」
「なるほど……この状況下で大した連携だね。」
「フフ、さすがはリシャールさんね。」
「リベールも惜しい人材を手放してしまったものだな……」
「ええ……その事についてはカシウスさんも嘆いていたそうよ。自分が後継者として認めた一人である彼が王国軍にいれば自分は遊撃士を続けられたのにって言ってたほどよ。」
レインズの説明を聞いたワジは感心し、セシルは微笑み、ツァイトとエオリアは静かな笑みを浮かべて呟き
「あの”剣聖”が……」
「”剣聖”に後継者として認められているなんて、よっぽど能力が高かったようですね。」
エオリアの話を聞いたロイドは驚き、リーシャは真剣な表情で言った。
「その通信器……見た所、暗号化通信まで使えるタイプのようだな。中々どうして、軍も顔負けなんじゃねえか?」
ランディは目を伏せた後口元に笑みを浮かべて尋ねた。
「はは、軍も顔負けというのは流石に過大評価ですが………よくご存知ですね。まあとりあえず、国防軍に通信を解析されるわけにもいきませんからね。そうそう、ちなみにこの通信器は高性能なだけあって、その分ミラも相当かかっていましてね。副所長からどんなことがあっても壊すなと釘を刺されているので、持ち運びには相当気を遣うんです。なので僕がここにいるのは他の方にはくれぐれも秘密にしておいてくださいね。」
レインズの説明を聞いたロイド達は脱力し
「……いかにも民間らしい発言ですね。」
リーシャは目を伏せて言った。
「はは、そうなんです。ほんと苦労も絶えませんよ。………それはともかく、随分と話し込んでしまいましたね。僕は引き続き、この場所で外の人間と連絡を取る予定ですが……皆さんもオルキスタワーに突入される際は、くれぐれも気を付けて下さいね。」
「ええ―――ってその話はしていなかったと思いますが。まあとにかく、時間もないので俺達はこの辺で失礼します。レインズさんもここでの活動には十分気を付けて下さいね。」
「ええ、もちろんですよ。」
そしてロイド達は外に出た。
「それにしてもR&Aリサーチ、ですか…………さすがはリシャールさんが指揮をしているだけあって凄いです。」
「ああ、なんつうか相当優秀な組織みたいだな。」
「ええ、何といってもあのリシャール元大佐の会社だから。」
ティオの言葉にランディとエリィは頷き
「まあ、とりあえず必要以上に勘ぐっても仕方ない。とにかく今はタワー突入の準備を進めよう。」
ロイドは真剣な表情でエリィ達を見回して言った。
その後ロイド達は街の徘徊に戻った…………………
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