Blue Rose
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第二十一話 海と坂道の中でその四
「あそこがね」
「一番広いですね」
「その次が神戸だね」
優花が生まれ育ったその街だというのだ。
「そうなるね」
「そして長崎ですか」
「そうなるよ、まあそれでもね」
「この長崎の中華街もですね」
「いい場所だと思うよ」
「そうですよね、僕もここの中華街好きです」
優花は優しい微笑みで岡島に答えた。
「ここもまた」
「そうなんだね」
「はい、とても」
「それは何よりだよ」
岡島も優花のその言葉に微笑んだ。
「じゃあちゃんぽん食べに行こうか」
「今から」
「やっぱり長崎に来たらね」
何といってもという言葉だった。
「これを食べないとね」
「長崎ちゃんぽんをですね」
「名物だし美味しいしね」
それ故にというのだ。
「長崎では食べないと」
「療養所でも作ってくれますしね」
「療養所のちゃんぽんも美味しいね」
「はい、とても」
「あそこ料理いいんだよね」
療養所は、というのだ。
「ちゃんぽんだけじゃなくて」
「他のお料理もいいですよね」
「うん、調理の人がいいからね」
「だからですね」
「何でも美味しいんだ」
「そうなんですね」
「料理がいいとそれだけで楽しくなるよ」
岡島は優花を案内しながら笑顔でこうも言った。
「もうね」
「本当にそうですね」
「うん、イギリスに行った時はね」
ここでは残念な顔になっていた。
「悲しかったよ」
「美味しくなかったんですね」
「もう何もかもがね」
「紅茶もですか?」
「日本の紅茶の方がよかったよ」
イギリスの代名詞となっているこの飲みものもというのだ。
「勿論ティーセットもね」
「日本のティーセットの方が美味しいんですか」
「僕はそう思ったよ、ローストビーフもフィッシュアンドチップスもね」
そうしたイギリスの名物料理もとだ、岡島は話した。
「そっちもね」
「イギリスよりも日本ですか」
「そっちの方がよかったね」
「そうだったんですか」
「有名だけれどね」
イギリスの料理の味はお世辞にもいいとは言えないことは確かに世界的に有名である。
「僕もそう思ったよ」
「ううん、じゃあ」
「君がイギリスに行ったらね」
その時はというのだ。
「覚悟していてね、食べられるものは」
「美味しいものは、ですか」
「紅茶は日本の方が美味しくても」
それでもという前提の言葉だった。
「紅茶に」
「何だかんだで美味しいんですか」
「まだね」
「まだ、ですか」
「喫茶店の紅茶は大抵ティーパックって話もあるけれど」
「それ本当ですか?」
「食べものにはお金と時間と手間をかけない国とされてるからね」
かなり言う岡島だった。
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