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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百四十一話 ケスラー艦隊

 
前書き
大変お待たせしました。ラインハルトが動いてくれないので、書けなかったんです。

ラインハルトは現在姉上とキルヒアイス邸で和気藹々しているです。

 

 
帝国暦484年10月20日

■銀河帝国オーディン軍務省人事局

この日、憲兵隊総監高級副官ウルリッヒ・フォン・ケスラー中将は軍務省人事局への出頭を命じられた。不思議に思いながらも指定時間に人事局へ向かい受付で来訪を告げる。

「ウルリッヒ・ケスラー中将です。人事局より出頭命令を受けました」
ケスラーも帝国騎士になったとは言え、偶にフォンを付け忘れる事も有る。
「ケスラー中将閣下。人事局長ハウプト中将閣下がお会いになります。局長室は三階の奥に有ります」

受付嬢の笑顔に送られてケスラーは三階の局長室へ向かった。局長前室でハウプト中将の副官が待機してケスラーを迎え入れる。
「ケスラー中将閣下、中でハウプト中将がお待ちです。此方へどうぞ」

副官がハウプト中将にケスラー中将が来たことを伝えると、直ぐさま入室するようにと応答がある。
「閣下、ケスラー中将閣下がいらっしゃいました」
「入っていただくように」
「はっ」
「閣下どうぞ此方へ」

局長室へ入室すると、人事局長ハウプト中将がケスラーを迎えた。
「ケスラー中将、良く来てくれた」
「はっ」

ケスラーにしてみれば、大先輩であるから自然と畏まる。
「憲兵隊では、大活躍だそうだね」
「それほどの事は」

一刻の世間話が終わった所でハウプト中将が本題を話し始める。
「ケスラー中将、卿は今回一時的に憲兵隊を離れ、宇宙艦隊に転属となる」
いきなりの話に流石のケスラーも驚く、情報網にもその様な話が全くかかっていなかったので、何かの陰謀に巻き込まれたのではと考えた。

「一時的と言いますと、その後憲兵隊へ復帰すると言う事と考えて良い訳ですか?」
「そう考えて貰って良い」
益々怪しく感じる、自分の居ない間に何か起こすつもりで自分を遠ざけようとする組織があるのでは無いかと。

「宇宙艦隊へ転属と言う事ですが、小官はいったい何をするのでしょうか?法務士官と言う訳では無いと思うのですが?」
その言葉に、ハウプト中将が辞令を渡してくる。

「これは?」
「ケスラー中将を宇宙艦隊司令官に任ずる」
「小官が宇宙艦隊司令官にですか?」

確かにケスラーにしてみれば宇宙へ行きたいと言う気持ちはあったが、今は皇帝陛下とテレーゼ殿下の為に憲兵隊総監高級副官として日夜頑張っている所で、いきなりの宇宙艦隊司令官への抜擢に嬉しさよりも、益々怪しさが大きく成り、この後直ぐさま背景を探るべく考え始めていた。

「そうだ、詳しい事は軍務省でエーレンベルク元帥に聞いてくれ、元帥がお待ちだ、直ぐ向かって欲しい」
「はっ」
ケスラーは敬礼してハウプト中将の元を退室し、隣にある軍務省へ向かった。

向かいながら、部下達に連絡を行い今回の人事についての背景を探るように命令した。
軍務省へ到着すると、受付まで案内役が迎えに来ており、軍務尚書室へ直ぐさま案内された。
「ケスラー中将閣下でいらっしゃいますね。小官はエーレンベルク元帥の副官フォン・ルーデンドルフ大佐であります。閣下をご案内にまいりました」
「御苦労」


「元帥閣下、ケスラー中将閣下をお連れしました」
「入りたまえ」
その声で、ルーデンドルフ大佐が扉を開き、ケスラーを案内してコーヒーを入れると外へと出て行った。

尚書室に入ると、エーレンベルク元帥が旧式単眼鏡をかけながら椅子に座って待っていた。
「元帥閣下、ケスラー中将であります」
「中将、良く来てくれた。其処に座ってくれ」

エーレンベルク元帥がコーヒーの置かれた応接セットに移動しながら、ケスラーにも対面して座るように言う。
「はっ」

エーレンベルク元帥がコーヒーの香りを楽しみながら、話し始める。
「中将、軍用コーヒーと言う物は、香りは何とか成るが、味が泥臭い感じがするのは、気のせいかな」
「小官には何とも言えない物です」

ケスラーもエーレンベルク元帥の言葉にあまり応えるすべがない。
エーレンベルク元帥は、ケスラーの困惑した顔を見ながら、苦笑いしながら話してくる。
「ハッハ、中将、卿でも苦手な事があるとは、此は傑作だな」

「元帥閣下」
「ハッハ、すまんすまん、卿が困惑しているだろうから少々からかいたくなっただけだ」
なんて根性悪な元帥だと思いながらも、今回の件でエーレンベルク元帥が何か知っていると判ったのでその旨を聞きに入る。

「元帥閣下、今回の人事ですが、いったい何があったのですか?」
ケスラーの問いかけにエーレンベルク元帥が言いにくそうに話し出す。
「皇帝陛下だ」

エーレンベルク元帥の答えにケスラーも驚くの声を上げる。
「皇帝陛下と申しますと」
「最近、ヴァンフリート星域に叛乱軍の艦艇が出入りしていることが確認された。その為に諜報部、フェザーン、叛乱軍内の協力者等に確認をした結果を陛下に言上した結果。『どうやら前線基地を作っているのでは』とのお考えなのだ」

皇帝陛下の言葉と言うよりはテレーゼが原作知識を使って偶然を装ってヴァンフリート星域の哨戒をした結果も含まれているのであるが、エーレンベルク元帥もケスラーもそれはわからない。

「流石は陛下でいらっしゃいます」
「左様、この所の陛下のお考えは真に素晴らしき事ばかりだからな」
エーレンベルク元帥もケスラーも頷く。

「しかし、何故小官に宇宙艦隊司令官を?」
「それも、陛下のお考えでな」
「陛下の」

ケスラーにしてみれば、皇帝陛下の御側に仕えているのにもかかわらず、何も教えてくれなかった陛下やグリンメルスハウゼン上級大将に遊ばれているのかという気がしていたが、実際はテレーゼの策略であった。

「叛乱軍が、あの様な何も無いヴァンフリート星域に前線基地を作る理由は、イゼルローン要塞攻撃の後方拠点として利用するためだろうと言うのが、軍務省、統帥本部、宇宙艦隊総司令本部の統一見解だ」
「その旨を陛下にお伝えしたところ、意外な事をおっしゃったのだ」

「それは?」
「叛乱軍がイゼルローンを攻めるのであれば、その陸戦兵力の先頭はローゼンリッターで有ろうと」
「確かに、叛乱軍の此までのパターンから言えば、そうなります」

「其処で、シュタインホフがクロプシュトックの件も有り、陛下に基地ごとローゼンリッターを消し去るべしと言上したのだが」
「如何為さったのですか?」

「陛下が、基地ごと降伏させよと命じたのだ」
その言葉に、クロプシュトック事件の事情を知るケスラーにしてみれば、普通であろうが、事情を知らない三長官達には危険きわまりない行為と思われただろうと。

「それは、中々難しいのでは?」
「そうだ、それを聞いた、エッシェンバッハが『恐れながら陛下それは、ローゼンリッターを公開処刑にすると言うことでしょうか?』と聞いたのだがな」

確かにそう思うだろうと、ケスラーは考えた。
「しかし、陛下はおっしゃったのだ『怨むべきはあの様な卑劣な行為を命じた叛乱軍の首魁であり、ローゼンリッターは利用されているだけに過ぎない哀れな赤子達じゃ。例えば、そち達が暴漢に襲われナイフで刺されそうになったとして、そのナイフを罰するのか?』と、此を聞いた我々は陛下の御心に何としても答えようと言うことになったのだ」

なるほどと、ケスラーも感じる。陛下はローゼンリッターを丸ごと引き抜く気だと、そしてこんな事を考えつくのが、テレーゼで有ることも判り、段々とシナリオが読めてきた。

「元帥閣下、陛下の思し召しは尤もですが、小官が何故艦隊を?」
「それなのだが、我が軍がヴァンフリート星域へ向かえば、間違い無くフェザーンが叛徒共に知らせるだろう。その場合叛乱軍も迎撃に来るはずだ。その際正規艦隊を動かした場合、叛乱軍はそれ以上の艦隊をくり出してくるだろう。無論エッシェンバッハも言ったが、我が軍が叛乱軍に劣ることはないが、問題は、ヴァンフリート星域基地の攻撃を悟らせない事が必要になった訳だ」

「なるほど、正規艦隊であれば、移動等も逐次書類決裁が必要になると」
「そう言う訳だ、其処で卿には、独立艦隊を纏めた15000隻を指揮して貰いたい」
さしものケスラーもエーレンベルク元帥の言葉に驚きを隠せない。

「小官が、15000隻をですか」
「そうだ、ヴァンフリート星域にある叛乱軍の基地を探し、それを降伏させる。無論敵の妨害があるやも知れん、叛乱軍艦隊はエッシェンバッハが対処するが、別働隊が居ないとも限らない為に15000隻を引き連れて貰う」

「なるほど、それにしても、出撃はいつ頃なのですか?」
「それは、明年2月から3月頃にオーディンを出撃させる予定だ」
「なんと、あと正味4ヶ月ほどではないですか、些か早すぎる気がしますが」

ケスラーにしても皇帝陛下とテレーゼの考えであれば、吝かではないが、初めて指揮する寄せ集めの艦隊を僅か4ヶ月で手足の様に動かさねばならないとはと驚愕していた。

ケスラーの問にエーレンベルク元帥が苦笑いしながらも、机から資料を持って来て、ケスラーに渡す。
「中将の心配も尤もだが、その資料を見れば納得できるはずだ」
エーレンベルク元帥から受け取った資料を見ながら、幕下に入る将官を見た結果、ケスラーも納得した。

「なるほど、参謀長にメックリンガー少将、副参謀長にミュラー准将、参謀にベルゲングリューン大佐、ビューロー大佐、ジンツァー大佐、副艦隊司令官にミッターマイヤー少将、分艦隊司令官にビッテンフェルト少将、ロイエンタール准将、ワーレン准将、ルッツ准将、ファーレンハイト准将、ケンプ准将、アイゼナッハ准将とは」

ケスラーも知っている連中であるが、皆が皆優秀な人材である。
ケスラーの表情を見たエーレンベルク元帥が笑い始める。
「どうかな、中将、此だけの人材は帝国軍としても中々集まらんぞ」

「元帥閣下、確かにこの陣容であれば、4ヶ月もあれば平気でしょう」
「では、中将、頼むぞ。便宜上卿の艦隊は単なる最近の混乱により、小規模艦隊が訓練の為に集まったと言う事になる。その為宇宙艦隊の正規の作戦会議には参加せず、エッシェンバッハ元帥に報告は明年2月のイゼルローン要塞による作戦会議までは不要だ」

「はっ」

この日からケスラー中将の艦隊編成が始まった。  
 

 
後書き
いよいよヴァンフリート星域会戦へケスラー艦隊が参加。

陛下の台詞はラインハルトのパクリ。 
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