DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)
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打倒 中間管理職!
敵が強い…
中間管理職の居城のクセに、敵の強さがハンパない!
それともこのパーティーが弱いのか?
少し離れた場所でアルルさんが『ライオンヘッド』と戦っている。
その隣ではハツキさんが大きなオッパイを揺らしながら『エビルマージ』と戦っている。
さっさとそっちを片付けて、此方の加勢をお願いしたい…
なんせこっちは『動く石像』が2体も相手なのだ!
カンダタとモニカさんが頑張って攻撃してるけど、ちょっと苦戦気味…
私とウルフも魔法援護してますけど、やっぱり強いのですわ、ここの敵は…
なんとか戦いを終え、お父さん達の下へ戻ると、ラーミアとミニモンが喧嘩をしている。
こっちは疲れてるのだから止めてもらいたい…
戦闘してないのだから年長者として喧嘩を止めろよ。
「今度は何の騒ぎを起こしてるんですリュカさん!?」
アルルさんも同じ気持ちなのだろうか、ジト目でお父さんを睨み付ける。
「何で僕を睨むの?どう見たって僕は関わってないよね?」
「ラーミアの事はリュカさんに一任してあるんですから、全責任はリュカさんにあります」
そうだそうだ!
「2人とも喧嘩は止めなさい…」
皆に睨まれ“やれやれ”と言った表情で苦笑いすると、ラーミアを抱き上げ喧嘩を止めるお父さん。
もっと早く行え!
「ラーミア悪くない!ミニモン、ラーミアをバカにした…それが悪い!」
そりゃ怒るわ…アホの子を馬鹿にしたらダメだよ…アホなんだから。
「あぁそうだよ!全部俺が悪いんだよ!…くそー、お前等全員死んじまえ!」
そう叫ぶと、ミニモンは泣きながらあらぬ方向へと逃げ出してしまう。
「あ、こら!勝手に行動するんじゃない!」
普段ミニモンは、幼いラーミアに気を使ってか、結構我慢しているところがある。
にもかかわらず、アホの子に一方的に悪者にされ、心が折れたのかもしれない。
ラーミアを甘やかしすぎたのかなぁ…子育てって難しい…
私達は急いでミニモンを追いかけます。
すると奥からミニモンの悲鳴が…
ガチ慌てて駆け付けると、3体もの『動く石像』に囲まれ震え上がっているミニモンを発見する。
流石に拙いと思った瞬間、カンダタが驚異的なスピードで動く石像に襲いかかり、ミニモンを救出しようと試みる。
しかしカンダタのバトルアックスは敢えなく砕け、動く石像を少し押し戻しただけだった。
するとカンダタはミニモンに覆い被さり、自らの身体を盾にして守り庇う。
私達も慌てて2人を助けようと身構えるが、突風の様に現れたお父さんが動く石像全てを破壊し、彼等を救出した。
やっぱかっけーわ、この男…
何事もなく身形を整えると、さりげない仕草でカンダタ・ミニモンを立たせ笑顔で語りかける…
「ミニモン…勝手な行動をしてはダメだ!もうお前は、僕等の仲間なんだから、他のモンスターには攻撃されるんだぞ!」
コツンと頭を軽く叩くと、優しく抱き上げ頭を撫でる。
「………ごめんなさい」
恐怖…そして安堵なのだろう。
お父さんの胸に顔を埋め、声を出さずに泣いている。
お父さんはカンダタに目でお礼をし、素直に感謝を表した。
カンダタも予想外だったのだろう…
凄く照れくさそうだ。
だが、そんな照れくさそうな男の向こうに、大事そうに置いてある宝箱を発見する。
袋小路に置いてある三連宝箱…アレだ!
「でもカンダタの武器が無くなっちゃったね」
「そうだな…ま、しょうがねぇさ!体は丈夫だし、みんなの盾代わりにはなれるだろうから、気にすんなよ!」
お前の心配などしとらんわ!
“武器が必要だね!”って事だよ!
「で、でも…」
「大丈夫だって…拳でだって戦えるんだしよ!」
斧が必要だろ…斧が!
えぇい、もどかしい!
「見て!あそこに宝箱があるわ!お父さん、あの宝箱は危険ですかね!?」
パパなら分かるわよね、この意味が。
「ん!?………あぁ!アレね…うん…凄いアイテムの臭いがするね!うん!」
そうよ!流石パパ!
「またですか…父さん、そんなに凄いアイテムが入ってるのなら、アナタが開けてくれればいいじゃないですか!このパーティー内で、最強のリュカ様が開けて下さいよ!」
「え!?ヤダよ…モンスターだったら怖いじゃん!」
ちょっと…大丈夫よ!私を信じなさいよ!!
「ちょ…安全なんでしょ!?そう言いましたよね?」
「そんな事は言ってない!凄いアイテムの臭いがすると言ったんだ!安全とは一言も言ってない!」
うん。確かに言ってない。でも安全だって言え!
「こ、この野郎…危険かも知れない宝箱を開けさせようと言うのか!」
だから安全なんだってば!
「ティミー…大丈夫だ!あの宝箱は安全で凄いアイテムが入ってる!」
めっちゃんこ怒ってるお兄ちゃんに、カンダタは優しく言うと宝箱へ近付いて行く。
「カ、カンダタさん!危ないですって…そんな確信は無いんですよ!」
あるのよ…言えないだけであるんだって!
「自分の父親を信じろよ!お前の親父は信頼出来る凄い人だぜ。そんな人が宝箱を開けろと促すのなら、大丈夫って事だよ」
「し、しかし…」
腹を据えたカンダタに、不安げな声で呟くお兄ちゃん。
だがカンダタはそれを無視して宝箱を開け放つ。
そして中に入ってたのはゴツイ斧…
「それは『魔神の斧』ですわ!以前に図鑑で見た事がありますぅ!」
「魔神の斧…」
図鑑など見たこと無いが、取り敢えずは説明を付け足しておく。
「うん。カンダタにお似合いの武器だね!丁度良かったじゃん…武器が無くなったところだったし!」
『臭いがする』など、勝手なことを言っていたお父さんが、最後は綺麗に纏めて終わらせた…
ずるい!!
中間管理職の邸宅で半日以上スパーキングした為、1人以外お疲れモード。
丁度良い袋小路だし、ここで一家団欒タイムとしけ込みます。
お母さんが食事の容易をし、お父さんが子供達をからかい団欒する…
「父さん…本当は安全だと確信してたんですよね!?」
「確信は無い!何事も結果を見なきゃ分からないじゃん!?でも大丈夫なんじゃないかなぁ~…とは思ってたよ」
こう言う時こそ嘘でも『当然だよ』って言えば良いのに…
お兄ちゃんは頭を押さえ首を振ってる。
本当は信じたいんだと思う…尊敬したいんだと思う…
でも、それをさせないのが私達のお父さん。
「父さん…」
お兄ちゃんも黙ってシカトすれば楽なのに、何かを言おうと言葉を探す。
「ティミーこれで良いんだ!」
だが、今日は何となくダンディーなカンダタが、お兄ちゃんを諭す様に言葉を遮った。
「俺は戦力外になっていた…武器を無くした俺には何も期待出来ないだろ!だから盾として使われても良いと本気で思ったんだ…此処まで来て一旦町へ戻る事は出来ない。俺の事など使い捨ての盾と思い先に進むべきだと!」
「「そんな事出来る訳無い!」」
イチャラブ真面目バカップルが声を揃えて反論する。
「フッ…ありがとう2人とも。そうなんだ…お前もアルルも優しいから、俺の事を使い捨てにはしないだろう!そうなると武器のない俺はトコトン役立たずだ…町に戻れば、バラモス討伐を遅らせる役立たず…強行すれば、戦力にならない上、守らなければならない役立たず…だが偶然なのか必然なのか、直ぐ側に宝箱が!しかも旦那が中身は凄いアイテムだと言い切った!」
しみじみ語るカンダタ…
ガツガツ食事をする幼女…コイツうざい!
「俺はアルル達と共にバラモスを倒し世界を平和にすると誓った。だったら宝箱は俺が責任もって開けなければならないんだ!何故なら、このままでは役立たず…そんな役立たずからの脱却に尽力せねば、俺は何時まで経っても役立たずのままだから!」
何だかんだ言っても漢ね…モニカさんが惚れたのも頷けるわ。
「でも今の俺は違うぜ!勇者一行の仲間として活躍してやるからな!」
「カンダタさんは最初からずっと活躍してましたよ!役立たずじゃ無い!」
…なんか良いわね、こう言うの。
「そうだよ、カンダタは役立たずなんかじゃ無いよ。身を呈してミニモンを守ってくれたお前は重要な戦力だよ」
うん。私達は良い家族だ!
仲間という素晴らしい家族なのだ!
ミニモンもそれが分かったのだろう…
お父さんに抱き上げられ、幸せそうに膝の上で落ち着く。
しかし…
突然、口の周りに食べ物を付けたアホの子が、お父さんの膝に座るミニモンを突き飛ばし、自らが膝の上に君臨する。
「痛ー!な、何しやがる、このアホウドリ!!」
「ミニモン生意気!リュカに抱っこされて生意気!リュカに抱っこされるのはラーミアなの!」
大爆笑する一同…
苦笑いのお父さん…
ラーミア…どうでもいいけど口の周りを拭け!
翌朝…
新たに手に入れた強力な武器で、大幅に戦力アップしたカンダタの勢いに乗って爆進する私達。
そして遂に中間管理職の居る部屋の前まで辿り着いた。
「ま、間違いなく…この向こうにバラモスが居るわ…」
強烈な妖気が漏れ出す部屋…
緊張気味に呟くアルルさん…
どうしよう…私まで緊張して来ちゃった…
堪らずギュッとウルフの手を握る。
彼が側に居るのだから怖くない…そう自分に言い聞かせ。
すると彼は私にだけ聞こえる声で囁いてきた。
「やばい………昨晩はシてないから溜まっててムラムラして来ちゃった………みんなバラモスに集中してるし、人気のない場所にしけ込んでヌかない?」
…………………………
お兄ちゃんやアルルさんに聞かれたら、大激怒しそうな台詞を言う私の彼…
思わず周りを警戒する私。
アルルさんはお兄ちゃんと寄り添い、2人だけの世界に酔いしれている。
取り敢えずセーフの様だ…
安全を確認できたところで、すかさずウルフを睨む!
だが彼は優しい笑顔で微笑むばかり。
…もう、緊張が無くなっちゃったわ!
そんな所も師匠に似てきたわね!
「魔王バラモス!お前の悪行もこれまでよ!アリアハンの勇者アルル…お前を成敗しに参上!」
私と彼のイチャイチャを余所に、勢い良く乗り込む勇者カップル。
恐怖心を取り去る最高の薬はイチャラブだ!
「遂に此処まで来たかアルルよ…この魔王バラモス様に逆らおうなど、身の程をわきまえぬ者達じゃな」
だけど、そんなイチャラブを吹き飛ばしそうな低い声で、侵入者を威嚇するのは中間管理職。
「此処に来た事を悔やむが良い!再び生き返らぬ様に、そなたらのハラワタを喰らい尽くしてくれるわっ!!」
すんごい威圧感に漏らしそうになった瞬間…
「何かアレ可愛いね…アレだアレ、動物の『獏』みたい!何か凄んでるけど、それがちょ~かわいい!」
「「「……………」」」
あの威圧感を一気に吹き飛ばしてくれるお父さんの一言。
「な…ば、獏…だと…!?」
い、言われてみれば…そう見えなくも…ないかな?
「ちょっとリュカ…もうダメよ!これ以上は飼えないからね!」
お、お母さんまで!?
「か…飼う…?ワ、ワシを!?」
「お父さん…お母さん…みんな真面目に戦おうとしてるんだから、ダメだよ…邪魔をしちゃ」
やばい楽しい!
自分より強いと分かっている相手を馬鹿にするのって楽しい!
「お、おのれバカにしおって!!き、キサマら全員、滅ぼしてくれるわ!!」
「それ、さっき聞いた!」
ボキャブラリーが乏しいのよ。
だって獏だもん!(笑)
しかし怒った獏は猛然と攻撃を仕掛けてきた!
だが狙いはお父さん…
馬鹿にした人間を躍起になって狙ってる。
しかし全然当たりはしない。
素人が見ても分かる…実力が違いすぎるのだ。
何だあの男は?
思わず戦うのを忘れてしまった私達…
少し間を置いてアルルさんが思い出す…そして慌てて攻撃を開始するのだ。
それでも獏はお父さんだけを攻撃する。
余程頭にきたのだろう。
「おのれ…チョコマカと動きおって!」
だがヤツも馬鹿じゃない。
広範囲魔法を唱え纏めて吹き飛ばすつもりのようだ。
いち早く気が付いたお母さんが速攻でマホカンタを唱える。
私も細波の杖でマホカンタを作り出し、ウルフにマホカンタを唱える様目で合図する。
数瞬遅れたが、獏のイオナズンより前にマホカンタを張る事が出来た。
「イオナズン!」
強烈な爆発が周囲を吹き飛ばす。
マホカンタを張った私達は問題なく無事だった…
しかしマホカンタを張ってない方々は無事ではすまない……ハズなのに、軽やかなステップでアルルさんやハツキさん・モニカさん・ラーミア・ミニモンを爆心地から救い出すお父さん!
被害にあったのはお兄ちゃんとカンダタだけ。
しかもお兄ちゃんは掠り傷程度だし…
大被害はカンダタだけだし…
そのカンダタも、直ぐ様お兄ちゃんに回復してもらってるし…
中間管理職は中間管理職で、跳ね返ってきたイオナズンで満身創痍。
ちょっと中間管理職が哀れに感じてきたわ…
トドメにゃ背後からアルルさんにグサリとやられ、
「ぐはぁぁぁ………!!」
と叫んで崩れ落ちた。
「終わりよ、魔王バラモス!」
「ぐぅ………お、おのれ…アルル……ワ、ワシは諦めぬぞ………」
そうね…ホネホネになって復活するわよね…しぶとい。
「…や、やったの…?私達…バラモスを倒したの?」
禍々しい妖気が少し緩み、アルルさんが呆然と呟く。
「あぁ…そうだよアルル、君はバラモスを倒したんだ!おめでとう勇者アルル。遂に悲願を達成したんだよ!」
お兄ちゃんはここぞとばかりにイチャつき、熱いキスでポイントを稼ぐ。
カンダタもモニカさんと共に抱き合い喜び叫んでる。
勿論ウルフもハツキさん達と共に喜んでおります…
しかし私は喜べない。
ヤツが中間管理職であることを知っているから…
「あ、あの…リュカさんは何故嬉しそうじゃ無いんですか?」
何故か喜んでいないお父さんへ、一緒になって喜びたいハツキさんが問いかける。
きっとお父さんも気付いてるのだろう。
これが中間地点である事に…
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