Three Roses
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第九話 若過ぎる死その十一
「心までが洗われます」
「身体だけでなく」
「心もですね」
「まさにそうなりますね」
「神のお力で」
「常に潔白であれ」
司教はこうも言った。
「神の僕として」
「ですね、まさに」
「我々は常に清廉潔白でなくてはなりません」
「あらゆる贅沢もしなし」
「華美は嫌しむべきものです」
同志達も口々に言うのだった。
「では」
「神の御心のままに」
「僕として働いていきましょう」
こう話してだ、彼等は彼等で動いていた。そして実際にだった、
太子そしてロートリンゲン家の動きは司教達に隠されていることもあり大公からも中々気付けないものだった。
それはマリーも同じでだ、彼女は彼女の周りの者達にこんなことを言った。
「太子ですが」
「はい、近頃ですね」
「色々な方とお話をされていますね」
「新教旧教問わず」
「様々な方と」
「何のお話をされているのでしょうか」
こうデューダー卿達に問うのだった、無論ロドネイ公、キャスリング卿、グラッドソン大司教といった者達もいる。
「あの方は」
「わかりません、ただ」
ここでだ、グラッドソン司教がマリーに言った。
「近頃オズバルト公がです」
「あの方がですか」
「はい、マイラ様と親しくされています」
「太子が間に入られて」
「その様です」
「そうなのですか」
「はい、オズバルト公は旧教の諸侯の中でもです」
とりわけ、というのだ。
「力のある方」
「その方がですか」
「マイラ様と親しくされるということは」
「これはです」
今度はロドネイ公が言って来た。
「警戒すべきことかと」
「国内で最も力のある旧教諸侯のあの方がマイラ様につかれるとです」
デューダー卿も言う。
「用心すべきかと」
「若しや」
マリーはデューダー卿の話も聞いてだ、顔を曇らせて言った。
「姉様は王位を」
「お言葉ですが」
キャスリング卿もマリーに言う。
「そうかと」
「だからですか」
「はい、太子もです」
彼もまた、というのだ。
「マイラ様に王位に就いて頂く為に」
「動いておられるのですか」
「そうかも知れないです」
「そうなのですか、ですが」
側近達からその話を聞いた、だが。
マリーは落ち着いた顔でだ、こう彼等に言ったのだった。
「姉様です」
「姉上だからですか」
「それ故にですか」
「マイラ様が王位に就かれても構わない」
「そう言われますか」
「この国の王は新教徒であるべきですが」
それでもというのだ。
「しかし姉様は私の姉様なので」
「だからですか」
「マイラ様が王位に就かれてもですか」
「それでもですか」
「はい、構わないとも思っています」
王は新教徒でなければならないと思いつつというのだ。
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