| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

陸軍兵士が誤って海軍鎮守府に移籍させられてしまったようです

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

海上戦の幕開け

 
前書き
どうも皆さま誠にお久しぶりでございます!夜桜デビルでございます!
皆様の中には逃走したと思われた方もいらっしゃるんじゃないかと思いますがそんなことは全くありませんよ?予想以上に日にちが経っていただけですから
さて、そんなことは置いておくとして今回は庭連続で登校しますのでよろしければ見ていってください
でわでわ 

 
「(…今何時だ…)」

暗転していた意識が浮上し目が覚める。起きようと体を動かすと隣にスヤスヤと電が寝ていることに気が付き昨日一緒に寝たことを思い出す。時刻を確認する為ポケットから端末を取り出し確認すると午前五時を表示している。一度息を吐き電を起こさない様静かにベットから降り、窓際に置いてある椅子に腰掛ける。

「…起きてるか?」

『…ふわぁ…起きてるよ〜』

昨日李悠から分けてあげると渡された葉巻に火を付けながら無線のボタンを一つ押し声をかけると数秒ノイズがはいってから返事が帰ってくる。話し方から分かる通り無線の相手は李悠だ。寝起きなのだろういつも以上にフワフワとした緩い話し方だ

「朝早くに悪いな」

『ううん全然大丈夫だよ~それで要件はなぁに〜?』

「あぁ、〇七〇〇までに優と未浪に作戦の最終確認と装備の最終調整をしておくように伝えてくれ。俺もその時間には部屋に戻る」

『了解~それじゃまた後でね…』

欠伸が聞こえたのを最後に無線からは声が聞こえなくなりノイズが聞こえるだけとなる。李悠はどうも朝に弱い。依頼中はそこまで酷くはないが依頼中以外ではいつもこんな感じでいつも以上に気が抜けている。まぁ、脳に血が回り始めるのが遅い体質なだけだと思うが。伝える要件も伝え終わったが時間までまだ時間があるしな…



-------------------



「んぅ…」

「起きたか。おはよう」

時刻は六時少し前、電が目を覚ました。流石に海軍というだけあって起床時間も早いようだ

「お、おはようございます。えっと…暗闇さんは何をなさっていらしゃるのでしょうか?」

「なにって頭を撫でているんだが?」

時間まで何してようかと考えたところそう言えば電に膝枕された時頭を撫でられていたのを思い出し葉巻片手に電の頭を撫でていた。撫でられている電は寝起きというのもあり今の状況が飲み込めていないようだ

「もしかして頭撫でられんのは嫌か?」

「いえ、そういう訳では無いのですけど」

「なら、そのままじっとしとけ」

「…」

俺の言葉に頷くとそのまま大人しくなった。しかし、綺麗な髪だ。色も綺麗だし艶も髪質も凄く良い。触ってて気持ちがいいな

「…体の調子はどうだ?」

「昨日マッサージしていただいたお陰で大分良くなりました」

「そうか。一応確認させてもらうぞ」

掛け布団を退け電の足の状態を確認すると痛々しい痣は綺麗さっぱり消え白く綺麗な肌に戻っている。これならもう大丈夫だろう

「全く異常なし。俺はそろそろ戻るが無理して動くなよ?」

「分かりました。今日は出撃もないのでもう少し休んでおきます」

「それがいい。それじゃあまたな」

「はい、またなのです」

端末を確認すると七時少し前、そろそろ部屋に戻る時間なのだが無理して動きそうな電に釘だけ刺して部屋を出る。さて、ちゃんと起こしてくれてるといいが



「全員起きてるか?」

「お、暗闇着任そうそう朝帰りとは流石だな」

「優さんまずは挨拶ですよ。おはようございます暗闇さん」

部屋に入るとテーブルを囲むように座っている優と未浪が声をかけてくる。それはいいとして優、一応隊長である俺に対してその言い草は流石にダメだろ

「おはよう。それと朝に帰ってきたが別に何もしちゃいない。それより李悠はどこにいった?」

「流石にまだ早いわな。李悠なら今朝食頼みに行ったはずだが」

「誰か扉開けて〜」

「来たみたいだな」

優たちと話していると扉の前から李悠の声が聞こえてくる。自分で扉を開けられないとなると両手が塞がっているのだろう。ちょうど俺が扉近くにいたので扉を開けてやる

「お待たせ~あ、暗闇も帰って来てたんだね〜」

「ついさっきな。朝食を持ってきたみたいだが二人分しかないぞ?あと二人分はどうした?」

扉を開けると両手にお盆を乗せた李悠が立っていた。しかし両手に乗せているお盆は二人分の朝食だ。これでは二人しか食べられない

「どう頑張っても持っていけないからもう一周しようかなって」

「それなら、優か未浪を連れていけば良かっただろうに…。んならあとの二人分は俺が取りに行ってくる。李悠は先に確認と整備をしておいてくれ」

「了解〜」

李悠が中に入ったのを確認し扉を閉める。朝食を取りに行くんだから取り敢えず食堂に行けばいいだろ。



「(はぁ…やっぱ並んでるよな…)」

食堂に着いたのはいいが受け渡し口と思わしき場所には既に長蛇の列が出来ていた。それを見るや一気に気持ちが落ち込む。俺にとって長々と待つのは正直拷問も同じだ。

「あれ?提督今日はお早いのですね」

「申し訳ありませんが自分は提督ではありませんよ?」

列の長さに脱力していると俺を兄貴と間違えた少女が声をかけてくる。見た目は極々普通の女子高生だが彼女も艦娘なのだろうか?

「え?…あ、ホントだ!す、すみません!」

「いえいえ気にしないで下さい。申し訳ありませんがお名前を聞いても」

「はい!吹雪型一番艦の吹雪と言います」

「吹雪さんですね。私は数日前に移籍した暗闇と言います。これからよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくおねがいします。「吹雪ちゃん~置いてっちゃうよ~?」あ、ちょっと待って、それでは私はこれで失礼します」

ペコリと頭を下げ食堂の入口付近にいた少女の元へと駆けていった。お、そろそろ順番か

「おはようございます」

「…おはようございます」

受け渡し口に立つと太陽のような笑顔を浮かべた女性が挨拶をしてきたのでこちらも挨拶を返す。見た目はまだ二十代より若く見えるがドンと構えた姿勢は子を持つ母のように見えるな

「貴方初めて見る顔ね。新人さん…ではないね」

「いえいえ、まだこちらに来て数日ですから新人の中の新人ですよ」

「私こう見えて人を見る目は確かなの。新米さんと熟練者さんの気迫の違いくらい分かっちゃうのよ」

ニコッと女性は再び笑みを浮かべるが俺は苦笑いしか出ない。鋭い…この言葉がぴったりだ。俺も李悠も何年も汚れ仕事に身を投じてきた事もあり気迫があると言われたことは何度かあるがそれは実際に見た者や戦績を見た奴らだけ、しかしこの女性は気配だけで俺を熟練者と見破った

「残念ながら本当に新米ですよ。それに熟練者なら気迫を隠すことくらい簡単に出来るはずですしね」

「あら、そうなの?なら…この耳につけてるものは何かしら?」

クスッと笑いながら俺の耳に触れ返答する女性にまた苦笑いが漏れる。俺が貸出兵だということに完全に気づいてる。まさか俺が誘導尋問にハメられるとは

「自称するだけはありますね。申し訳ありませんがこれについてはまだ内密にお願いしますね」

「大丈夫誰にも言わないわ。それでここに来たってことは朝ご飯かしら?」

素直に認めたことに満足したのか口元に人差し指を当てて答える彼女は母親というよりも悪戯が成功した子供のようだ。

「はい、二人分お願いします」

「はーい二人分はいりまーす」

彼女の言葉でここに来た理由を思い出し二人分の朝食を注文するとニッコリと笑みを浮かべながら厨房の奥に入っていた。はぁ…少し嘗めすぎてたかな



-----------------



「ってことがあったんだがどう思う?」

「ん〜暗闇が見破られちゃうなら僕達なんて一瞬だよね〜?」

「それは確かにそうだよな」

「あはは…誤魔化せそうに無いですね」

食堂でのことを李悠達に話すと口々に答えを返す。俺も表情を隠すのは完璧とまでは言えないがそこそこ自信があったんだがな…。未浪は案外上手いと思うが李悠と優はお世辞にも上手いとはいえないな

「それより先に頼んでおいたことはやってくれたか?」

「うん、ちゃんと確認しておいたよ〜」

「いきなり作戦変更って聞かされた時は焦ったぜ。ただ今回の作戦は結構やばくないか?俺と未浪は確かにお前達みたいに人間離れした戦場は経験してないが無茶し過ぎだと思うぞ?」

「…それは僕も思いますね。艦隊が相手だと考えるとこの作戦もありだとは思いますけど」

李悠の問いに優たちが今回の作戦について不満を上げるがこれにも理由がある。流石の俺もこんな無茶苦茶な作戦を何も考えずに提案する程馬鹿じゃない

「それは分かっている。本当は前回話した作戦で行こうと思ったんだがこっちの方が簡易的で成功する確率が高いからな」

「それと気づいてたかわからないけど作戦会議中扉の前に誰か居たんだよ~。多分今回の模擬戦にでる艦娘の誰かだとは思うけど〜」

「成程、聞かれていたのがわかっていたのであえて本命のような作戦を話したのですね」

「そういう理由があって変更したのか、てっきり伝える作戦を間違えたかと思ったぜ」

優と未浪は気が付かなかったみたいだが作戦を話していた時扉の前から人の気配が感じられた。息を殺したように全く動かない気配から偵察もしくはこちらの作戦を盗み聞きしに来たと結論づけ本格的な作戦の内容を話したという訳だ。

「流石に伝え間違いはしないさ。それに作戦は本格的なものよりシンプルな方がいい。一々作戦思い出しながらなんて俺と李悠でも出来ない芸当だっての」

「ホントそうだよ~。一々この場所に移動してからとかなんて考えてたら命がいくらあっても足りないよ~」

呆れたように笑う俺に李悠も同感だと相槌を打つ。そもそも作戦とはどのように動くかだけわかればいい。例えば相手の守りが薄い場合はそのまま攻めろでいいし、逆に守りが硬い場合は隙を見ながら前進とこんなものでいい。あとはその場その場の状況でさらに攻めるなり一旦引くなり変更して行けばいいのだ。

「それは言えてっかも知んねぇな。作戦ばっか気にしてたら注意力とか疎かになるし」

「付け加えるならその作戦通りに事が進むとも限らないわけですものね」

「納得してくれたんならそれでいい。んじゃ、これで確認は終わりな」

皆が納得してくれた所で話を打ち切り煙草に火をつける。本当は今話した作戦以外に模擬戦に勝てる確率がある作戦は思いつかなかっただけだ。戦力的にも相手の方が何倍も上だしな。優と未浪が感情に左右されず動けるといいが

「それより時間まで何してようか〜?」

「あと二時間くらいあるが工廠行くにしても微妙な時間だしな…」

「適当に雑談でもしてれば時間なんてあっという間だ。未浪悪いが珈琲入れてもらえるか?」

「あとはお湯が湧くまで待つだけなので少しお待ちくださいね」

雑談するなら珈琲でも飲みながらと思い未浪に頼むと既に準備をしていた様であとはお湯が湧くのを待つだけのようだ。ホント俺の部下達は仕事が早いよな

「そう言えば優頼んでたものは配置しておいてくれたか?」

「ん?おぉアレな、心配しなくても出来上がってすぐ配置してきたぞ」

「それって作戦にあったやつの事だよね?ちゃんと扱えるかな〜」

「自分も自信はないですが扱えなければ作戦の意味が無くなってしまいますしね」

煙草を吸っているとふと優に頼んでおいたことを思い出したので聞いてみると既に配置場所へ置いてくれていたようま

「主に使うのは俺と李悠だから心配しなくてもいい。全員分用意してもらったのはもしものとき用だ」

「そうなのか?てっきり全員使うのかと思ったが」

「それは状況によってだね~無理に使う必要も無いし〜」

「それもそうですね。無理に慣れないものを使うのはリスクになりますし」

一応全員分用意してもらったが作戦上使うのは俺と李悠だけだ。攻撃で故障した際の替えにもなるし優たちが陸から離れると後方が疎かになるしな



----------------------



『貸出兵-暗闇、李悠、牧田 優、松谷 未浪、以上四名は今から三十分以内に作戦位置に移動しろ。時間経過後模擬戦を開始する。繰り返す…』

「来たみたいだな」

銃の手入れをしていると部屋に搭載されたスピーカーから兄貴の声が聞こえてくる。

「…全員準備はできてんな」

手入れしていた銃にマガジンを差し込みながら立ち上がり李悠達に声をかけると皆確認をとる必要は無いと言った真剣な顔付きで頷く。

「よし。こっからはおふざけ無しの命懸けの戦闘になっから先に隊長命令を伝えておく。…弾丸でどこ撃ち抜かれようが体のどこ吹き飛ばされようが一向に構わねぇが、絶対に死ぬな!這いずってでも生き残れ!わかったな」

「了解」

「おう」

「はい」

最後に隊長命令だけを伝え部屋を出る。新生貸出兵の初陣だ負ける訳にはいかない



----------------------



「こちら暗闇。全員ポイントにはついたな?」

『大丈夫だ』

『僕も到着しました』

鎮守府から一番近い岩陰に身を隠しながら無線に連絡を入れる。残り時間も一分を切ったが何とか全員ポイントにたどり着いたようだ。さて、あとは相手さんの数とここまでくるタイミングなんだが…

「約二百m前方に敵影。駆逐艦一、空母二、軽巡洋艦二、戦艦三の計八」

「了解。全員射撃体制で待機していてくれ。李悠距離二十mでカウントダウン頼む」

「オッケー。カウントダウン、十秒前」

李悠がいち早く敵の姿を見つけ距離と方向、数に艦種を伝えてくれる。二百mも離れているというのにここまで事細かく捉えられるのは李悠だけだ。優と未浪には射撃体制で待機してもらってるし思う存分暴れられそうだ

「五秒前、四、三、二、一」

「開戦だ!行くぞ!!」

ゼロが聞こえるか聞こえないかのタイミングで岩陰から飛び出し一気に前方へ駆け出す。艦娘達はいきなり飛び出してきた俺に驚き速度を落とした。もらった!

「…ふふ、甘いわよ」

奇襲の成功を確信したその時俺と攻撃を加える筈だった艦娘の一人との間に別の誰かが割り込み切り上げたナイフを何か硬い棒のようなもので受け止められてしまった。

「バレてましたか」

「敵が潜んでいる場所なら警戒するのは当たり前でしょ〜?」

ギリギリと対峙するなかニッコリと笑顔を浮かべる女性-確か龍田だったか?それより頭の輪っかみたいのが気になって仕方がないんだが…

「ま、これも作戦の内ですけどね」

「うぉわ!」

「天龍ちゃん!?」

そんなことを思いながら龍田と競り合うなか龍田が庇った艦娘-天龍が声を上げながら吹き飛んでいくのが視界に映る。

「ん~流石船だけあって硬いね」

「完璧なタイミングだ。取り敢えず戦力を分断するぞ。こっちの二人は俺が抑える。後方の敵は任せるな」

吹き飛ばされた艦娘がいた場所から李悠の声が聞こえてくる。俺はもともとフェイクで本命は李悠の攻撃、奇襲を警戒してるのは元々分かってたからその裏をかかせてもらった。龍田と李悠が吹き飛ばした天龍は近距離型と判断し俺がこの二人を、後方の艦娘六人は李悠たちに任せる。

「OK任せて。優 未浪援護射撃よろしく」

『了解』

『了解です』

李悠も俺の判断に賛成、随時通話状態にしてある無線からも優と未浪の了承の声が聞こえてくる。分断したとしても数的に負けているが見えないところからの援護射撃があればその優勢差も幾分か無くなる筈だ。

「そう言う訳でお二人の相手は自分がさせてもらいますね」

「ふふ、貴方一人で私達二人を相手するの~?いくら貸出兵の隊長さんでも、それは無理だと思うわよ〜?」

「うらぁ!」

「…もう復帰しましたか」

ギリギリと競り合っていると龍田のすぐ後ろから李悠が蹴り飛ばした筈の天龍が龍田と同じ薙刀のような刃物を大きく構えながらこちらに飛び掛ってきているのが視界に入る。このままでは切られかねないのでナイフに力を込め龍田と距離を離す

「あらら~逃げられちゃったわね〜」

「ちっ、外したか。龍田次は逃げられねぇ様ちゃんと押さえ込んどけよ」

「ふふ、分かったわ~」

先程まで俺が立っていた場所には一寸の狂いもなく刃が振り下ろされており回避が遅ければ真っ二つにされていた。一瞬龍田たちの顔を見るとまるで強者がこれから弱者をいたぶるかのような楽しそうでそれで言って気味の悪い笑みを浮かべている。

「(成程、力は負けるが速度と機動性は俺の方が上…なら、スピードでゴリ押しする!)」

ホルスターからベレッタを引き抜き龍田をベレッタで牽制しながら天龍に切り掛る。手榴弾グレネード等も多めに持ってきているし何とかなるだろう

「二人を相手してたら片方に意識が行くものよね~?」

「…いや、そんなことは無いさ!」

一人に攻撃しているとやはりバラつきが出てしまうようで牽制していた龍田に至近距離まで近づかれてしまった。しかし慌てることはない。機動性を活かしナイフを擦らせるようにして天龍との競り合いから抜け出し、その勢いのまま後ろに下がりC4を二つ投げ起爆させる

「追加ですよ!」

間髪入れず手榴弾グレネード二つと起爆剤にC4を投げ入れC4を起爆させて手榴弾グレネードに誘爆させる。この方法なら手榴弾が起爆するまでの時間を短縮できる。確か軽巡洋艦は装甲があまり厚くなかった筈、少なからず一部の武装は破壊できたと思うが。

「くっは〜今のは効いたぜ」

「流石容赦ないわね~」

煙が晴れ天龍と龍田が姿を現す。先程と違うのは服が破れていたり肌に火傷の跡が所々に見てとれることか。武装にも少なからずダメージは入ってるみたいだがまだ笑えるくらいの余裕はあるみたいだ

「躊躇してしまえばこちらが殺られてしまいますからね」

「ふふ、それもそうね。…天龍ちゃんここは私が抑えるから天龍ちゃんは長門の所に回ってあげて」

「はぁ!?おま、いきなり何言って「この人には私達二人いてもきっと勝てないわ。でも、長門たち全員でなら勝機があると思うの。だから天龍ちゃんは長門たちと合流して先にあっちを終わらせてきて…出来るだけ時間は稼ぐから!」」

「それを聞いて行かせると思いますか?」

龍田は捲し立てるように伝えると戸惑いながらも天龍は李悠が戦闘している場所に向かっていく。しかし俺がそれを許す訳はなく、背を向け隙だらけになった天龍目掛けナイフを投げる

「ふふ、邪魔はさせないわよ〜?」

「ちっ」

投げたナイフは天龍に届く前に弾かれ海の中に沈んでいく。一人逃してしまったが逆に一対一にしてくれたのは狙いを絞ぼることができるので好都合だ。早く大破させて李悠の援護に回らないとな


said change-李悠

「流石に六対一はキツいね~」

降り注ぐ砲弾を掻い潜りながら的確に銃弾を当てていく。移動しながらだから一人に集中して当てることは出来ていないが全員に多少のダメージは追わせている筈だ。当たらないと踏んだ優と未浪の威嚇遠距離射撃は優達の腕がいいからか予想以上に命中しており想像以上に戦いやすい

『暗闇から全員に通達。戦闘中の軽巡洋艦が一人李悠の元に向かってる。優と未浪の位置からなら狙い撃ちできる筈だ。一時援護射撃を止め迅速に始末しろ。李悠は一時的に戦闘から離脱し身を隠せ、こちらが終わり次第合流する以上だ』

後退しながら応戦していると無線から声が聞こえてくる。予想して無かった訳では無いが意外な行動だ。相手は軽巡洋艦ではあるが二人いても暗闇を抑えるのは難しい。その中で不利となる選択をするのは相当な実力者なんだろうね

『了解した任せとけ!』

『了解しました。きっちり始末します』

暗闇の声が聞こえなくなるとほぼ同時に優と未浪の了解の声が聞こえてくる。遠距離で命中してたから中距離なら簡単に始末してくれそうだ

「予定が変わっちゃったから一回逃げさせてもらうね~」

左腰にぶら下げておいた煙玉スモークグレネードを二つばら撒き発生した煙に紛れて一気に後退する。あとは連絡が来るまで隠れてよ


said change-暗闇

「中々しぶといですね。そろそろ沈んでくれてもいいんですよ?」

「ふふ…そうね。そろそろ限界だわ〜」

天龍が李悠の元に向かってから少し経った頃龍田が口元を少し緩め自分が限界に近いことを告げる。やはり天龍がいなくなったのが大きいだろう。先程は二人に意識を向けなければならなかったが今は龍田一人だけになりかなり戦いやすい

「そろそろ天竜ちゃんは長門たちの所についてる筈だし、私の役目は果たせたわ~」

「それはどうでしょうかね」

直後俺の言葉をかき消すように後方から爆音と突風が吹き荒れた。爆発音が聞こえたのは優達が居る孤島の方向。しっかり始末してくれたみたいだな

「…何で」

「天龍さんを向かわせたのはいい判断だったと思いますがタイミングが悪かったですね。天龍さんが向かった方向には射撃待機中の仲間が二人隠れてたんですよ」

龍田の判断は悪くない選択だった。二人で俺の相手をしても勝てる見込みは決して高くはなかった。そこで一人を李悠の方に向かわせ李悠の方を先に終わらせ残った艦娘で俺と優達を相手する予定であったんだろうが優達が隠れている孤島近くを通ってしまったのが仇になった。気がついていない場所からの奇襲程成功する確率が高いものは無い。

「さて、お話はここまでにして続きを始めましょうか」


----------------------


「まだやりますか?」

「はぁ…はぁ…」

数分の撃ち合いの末、龍田を大破寸前まで追い詰めた。天龍が攻撃を受け動揺しているようで砲撃に穴が多くなり全くと言って当たらない。これ以上やっても時間の無駄だ

「この辺りで諦めて貰いたいのですが?これ以上やっても貴女に勝ち目はありませんし」

「…それでも私は諦められないのよ」

俺の提案に即答する龍田に少しだけ口元が緩む。それでこそ軍人、いや軍艦だ。戦いを放棄し逃げるのも勇気だが戦い続けることを選ぶのもまた勇気。それに龍田はただ大破する為に残ったのではないのだろう。考えつく限りでは俺を李悠の元に向かわせるのを少しでも遅らせる為。それが分かった上で相手の思惑に乗ってやることは無い

「…申し訳ありませんが貴女の思惑に態々付き合うつもりはありませんので…これで倒れてください」

右腰にぶら下げてあるC4を一つ手に取り龍田に向かって放り投げる。俺と龍田の距離は約五メートル程、この距離で疲労している龍田が避けることは不可能。もし使用できる単装砲と連装高角砲のどちらかで撃ち落としたとしてもその隙をついてグレネードを追加して投げれば問題ない。結果から言えば龍田の思惑である時間稼ぎはできないと言うことだ

「っ!?」

「無駄ですゲームオーバーですよ」

投げられたものが先程の爆弾に気づいたのか必死に回避しようとする龍田だがもう遅い。その間にも投げたC4は龍田を巻き込める範囲まで近づいていた。最後に少しだけ笑みを浮かべ、C4を起爆させると爆音と共に黒煙が広がり龍田の姿は見えなくなった

「(やっと終わったな。弾も手榴弾グレネードも結構消費してしまった)」

黒煙が立ち上るすぐ横を通り抜け李悠の元に向かいながら消費した個数と現在の個数を計算する。HGの弾はマガジン二つを消費して残り二つ、まだ一度も使っていないSMGは装填してあるマガジンと予備マガジン合わせて三つフルで残っている。しかし手榴弾グレネードは計六つ。持ち込んだ個数の約二分の一。大分消費してしまったが取り敢えずこちらが終わったことを知らせるとしよう

「伝達。こちらの軽巡洋艦は始末し終わった。これから戦艦の始末に向かう。優と未浪は次に備え射撃のしやすいポイントに早急に移動。李悠はそのまま待機し俺からの指示を待ってくれ」

伝えることだけ伝えすぐさま李悠の元に向かう。李悠も長年このような環境で戦ってきてはいるがそれは遮蔽物の多い地上での戦闘、もちろん海面や海中で戦うこともなかったわけではないが大きく動きが制限される。その中で六人もの敵を一人で相手するのは酷なものだ。しかも海はその六人全員の適正環境下である。いくら戦闘に長けていたとしてもこれだけの悪条件がそろってしまっては一人で抑えるにもすぐ限界が来る。その為できるだけ早く合流し援護する必要があるのだ。

『李悠から暗闇へ。敵艦からの爆撃で隠れていた孤島が半壊、やむなく戦闘に移行中。このペースだと限界は近いよ』

「(一人ずつ潰しに来たか)了解。そのまま戦闘を続行し時間稼ぎを頼む。優、未浪聞こえた通り李悠は長く持たない。早急にポイントまで移動しろ。俺も全速力で李悠の元に向かう」

返答を聞きそれぞれに指示を出す。まだ視界には李悠や艦娘たちの姿は見えない。戦力を分断する為天龍たちを引き離し過ぎたのがこんなところで仇となるとはな

『ポイントに着き次第早急に援護射撃を行います』

『もう少しで到着する何とか持ちこたえてくれ』

『了解。頑張ってみるよ』

無線からは息絶え絶えな声が聞こえてくる。優も未浪も全力でポイントに向かっているみたいだが李悠の方も苦戦しているのだろう少し息が乱れてきている。

「(急がなきゃな)」

部下が頑張っているのに隊長である俺がこんな所でとろとろしている訳にはいかない。更にスピードを上げ李悠の元に向かう。



----------------------



「(やっと視界に入った)」

数分走り続けようやく李悠と艦娘たちが視界に入る。悠長に眺めている時間はない。そのまま速度を落とさず走る

「李悠、今視界に入るまで近づいてる。そのまま後退し一旦戦闘から離脱してくれ」

『了解!』

数十メートルまで近づいた所で無線を入れ李悠に戦線から離脱するよう伝えると李悠を中心に灰色の煙が発生し始めた。煙に紛れて離脱してくるであろう李悠を待つ。

「大丈夫か?」

「…今回のはちょっと危なかったかな」

「そりゃそうだろうな」

戦線から離脱してきた李悠に声をかける。余裕がありそうな口調で笑う李悠だが見て取れる程に息が荒い。額から汗が流れ、呼吸する度に肩も大きく上下している。やはり一人で砲弾の雨を躱し続けるのに相当体力を使ったようだ。

「煙が消えるまではあっちも動かねぇだろうし今のうちに休憩しとけよ」

「ん…分かったよ」

優たちからはまだポイントに到着したという連絡がない。俺が加わり先程よりも避ける砲弾の数は減るが疲労している李悠を連れ前線に出るのは危険と考えその場に待機させる。

「…それで敵艦の情報はなにか分かったか?」

「一応ね。敵艦は開戦前岩陰で確認した通り駆逐艦一隻と空母が二隻、戦艦が三隻の計六隻。その中で僕が知っているのは島風ちゃんと金剛さんに長門さん、それと赤城ちゃん。あと二人はまだあったことない子だったけど一人は戦艦、もう一人は空母だよ。あっちの作戦についてはまだ確定はできないけど攻撃は小柄で素早い島風ちゃんと赤城ちゃん達の爆撃が中心で戦艦三人はその援護を中心に動いてるみたいに見えたよ」

「ん?戦艦三隻はお前を狙わなかったのか?」

懐から取り出した煙草に火をつけ敵戦力の中心で戦っていた李悠の話を聞いているとふと疑問が浮かび、それについて李悠に訪ねる

「うん。殆どが島風ちゃんと爆撃だけだったけどそれがどうかしたの?」

「…もしかして…李悠、六隻全員の動きを詳しく教えてくれ」

俺の質問に答えた李悠の言葉に一つの考えが浮かび、端末を取り出す。画面を何度か触りこの海域全体が映る写真を表示させ李悠に見せる

「えっと島風ちゃんがここで空母の子達がここ、戦艦の子達はこことこことここだよ」

「…成程、これで確信出来たな」

表示していた写真に書かれた線を見て俺の考えが確信に変わる。これで勝つ確率が格段に上がった。

「暗闇だけ納得してないで僕にも教えてよ」

「あぁ、悪い。煙も長く持たないし手短に説明するが、この写真を見て何か思うことはあるか?」

ぶぅ~と音がしそうな程口を尖らせている李悠に苦笑い混じりに謝りながら説明する為、新しく線を加えた写真をもう一度見せる

「ん〜常に僕を囲むようにして追いかけてきてる事くらいじゃないかな?」

「そう、追いかけているんだ。何故完全に囲まずそのまま追いかけてたんだ?六人で囲んで進路を制限すれば格段に戦いやすいのに態々逃げられるように囲まずしかも直接的な攻撃は島風と空母二隻の艦上攻撃機(艦攻機)だけ。どう考えても戦艦の一撃の方が俺達を戦闘不能にすることは容易な筈なのにだ」

「…もしかして追いつけないのかな?」

少し考える仕草のあと呟くように答える李悠にそうだと頷き説明をしていく

「あの三隻は俺達の速度について行くので精一杯で追い抜くことが出来ない。島風は駆逐艦でありその中でもトップクラスの速度があるから追いつけるし空母も艦上機での攻撃なら自身の速度は殆ど関係ない。この事から言えるのは」

「戦艦三人は幾分か驚異にならず島風ちゃんと空母の艦載機を全部始末すれば勝機は格段に上がるってことだね」

俺の考えを全て理解したのか口角を少し上げながら答える李悠にもう一度頷く。しかし、追いつけないと言っても戦艦は戦艦であるのに変わりない。一撃でも貰えばその絶大な威力を生身で受けることとなり大怪我は確実、運が悪ければそのまま戦闘不能となる可能性も大いに考えられる

「…艦攻機だ。相手さんもしびれを切らしたみたいだな」

「呼吸も整ったしそろそろ行こうか」

少し薄れてきた煙の中から数機の艦攻機が飛び出してきた。数は十数機程だがその中の数機が辺りに散らばっていく。偵察機か…隠れている優たちを探し出そうという考えだろうがそうはいかない

「李悠、散らばった奴から狙え偵察機だ。俺は向かってきてる艦攻機を落とす」

「OK任せて」

俺の命令に背負っていたライフルを構える。俺の手持ちの武器では長距離を飛んでいる偵察機は撃ち落とせない為偵察機は李悠に任せ、こっちに向かってきている艦攻機を撃ち落とすべく腰に差してあるもう一丁のハンドガンを取り出した



「李悠後ろから砲弾が来てるぞ」

「了解」

艦攻機を撃ち落としていると砲弾が李悠目掛け飛んできているのが視界の端に見えた。即座に李悠に伝えるといつもより速く回避行動をとった。いつもはギリギリまで避けない李悠の行動に疑問を持ったがその疑問はすぐ様消し飛ぶ

「はは、笑えねぇ」

「ホントだよね…」

砲弾が着弾した瞬間巨大な水柱が立ちお構い無しに俺達に海水を浴びせたがそんなことを気にして入られない。たった一発だ。たった一発であれ程の水柱が立ち海面が地震の如く揺れる。大怪我なんてもので済まない、戦闘不能になるなんて当たり前、四肢のどこに当たっても確実にその部分は無くなる、胴体になんて当たったら本当に木っ端微塵に吹き飛ばされる。

「お前よく躱し続けれたな」

「威力は凄いけど当たらなければどうってことないしね。怖気づいちゃった?」

「バカ言うな。あんなの四方から飛んでくるミサイルの嵐に比べりゃ可愛いもんだ」

「あ〜あれも凄かったよね」

目にかかった髪を掻き上げながら昔あった話を出すと思い出したのか李悠は苦笑いを浮かべる。あれはほんとに死ぬかと思ったな

「あと数機飛んでるがあれは優たちに任せるぞ。俺達はあっちだ」

「うん、行こうか」

指さす方向には薄まった煙玉スモークグレネードの煙。未だに動きはないが的確に砲弾を撃ってきたという事は探知機で見つけられる程煙が薄くなっているということだ。それなのに何故動かないのかは明白、俺達を誘い込む為だ。だが、それは俺達にとっても都合がいい



「…こりゃまた凄いな」

「待ち構えてますって感じだよね」

煙草を咥えながらゆっくりと近づいていくと先程の倍以上の艦上機が空を縦横無尽に飛び回りその下では堂々と待ち構える六人の姿が見えてくる

「戦艦が三人ですか。随分と高く見られてるみたいですが所詮人間数人。それに対して戦力を使いすぎでは?」

「貸出兵にはそれだけの戦力があるという事だ。もしかしたらこれでは足りないかも知れんがな」

約十m程の距離を空け止まる。ざっと辺りを見渡してみただけでも圧倒的にこちらが不利だ。そんな悪態をつくと長門はふっと口元を緩める。いやいや、あの威力の砲弾を撃てる戦艦が三人もいたら十分過ぎる以前にオーバーキル待った無しだぞ?

「oh!暗闇。まさかこんな形でまた会うとは思いませんでしたネ」

「自分もそう思いますよ。まさか今回の模擬戦に金剛さんもいるなんて思いもしませんでした」

「ねぇ、あれが前に暗闇が言ってた金剛さん?何か凄いフレンドリーと言うかノリの良さそうな人だね〜」

「あぁ。良すぎるとは思うが、あれでも高速戦艦の一人だからな油断するなよ?」

俺に気がついた金剛が全力で手を振っている様子に苦笑いが零れる。李悠も金剛のノリに少し困惑気味のようだ。しかしあんな感じの金剛だが戦艦には違いない為油断はできない

「…これより敵主力部隊との戦闘に入る。各自自身の役割を全力で果たせ以上だ。…行くぞ!」

全員に向けた言葉を伝え、咥えていた煙草を吐き出す。そのまま一度小さく息を吸い込み駆け出す

「来たぞ!迎え撃て!」

「遅いよ?」

長門の主砲が俺に標準を合わせ終わる前に砲身の一つが吹き飛ぶ。弾道が後ろから来たところを見ると後ろからついてきている李悠がライフルで撃ち抜いたのだろう

「援護は任せたぞ李悠。俺はこのまま突っ込む」

「OK」

指示を出すと後ろから波をきる音が消える。それを耳で確認し俺はそのまま突っ込んでいく

「赤城と加賀、島風は李悠を、金剛と榛名は私と暗闇を狙うぞ!」

「李悠!上からの爆撃に注意しろ!艦攻機が向かってるぞ」

「分かってるよ~…これは遠距離武器は不利だね」

視界内に入っていた艦攻機が李悠の元に向かって飛んでいくなかそれに続くよう島風も李悠の方に向かっていく。これじゃ李悠の援護は期待出来ないか

「…」

視線を長門たちに戻そうとした瞬間後ろから発泡音と共に俺の顔スレスレを何かが高速で通り過ぎていき少し離れた海面に水柱を立てる。

「Hey!暗闇余所見しちゃno!デスよ?」

視線を動かし長門たちを視界に入れると金剛の主砲の一つから黒煙が立ち上っているのが見える。

「…威嚇射撃とは余裕ですね。今の一撃で始末しなかったこと後悔しますよ?」

「ビックセブンは奇襲などしない。正々堂々正面から叩き潰す!」

一瞬思考が途切れたが何とか言葉を口にする。挑発的に言ったが正直威嚇射撃であった事に感謝している。全くの無防備だったあの状況で直撃していたら致命傷は確実だった。

「(もう手加減も油断もしない…全力で始末する)」

気持ちを切り替える為小さく息を吐きながら二丁のHGをホルスターに戻し腰に差してあるSMGに持ち替える。正面戦闘なら圧倒的に連射性能の高いSMGの十八番、ここからは俺の時間だ


----------------------



「堂々と正面から戦う事には敬意を評しますが…相手と武器が悪かったですね」

「くそ…当たらん」

「速過ぎて狙いが定まらないデース」

「榛名の攻撃も全く当たりません」

正面戦闘において最も必要なものは機動性と連射性能の二つ。如何に速く弾が撃て如何に俊敏に動ける武器であるかで戦闘に天と地程の差ができる。その証拠に長門たちには小破程度の傷があるのに対し俺には天龍達に付けられた傷しかない。

「戦艦は確かに驚異ですが弾が当たらないのならただの動く的、勝ち目はありませんよ?」

「本当にあの威嚇射撃を後悔してきたぞ」

「oh…長門、榛名Sorryデス」

あの決定的なチャンスを自ら潰してしまったことを後悔するように長門たちは苦虫を噛み潰したような苦い微笑を浮かべる。本当にもったいないことをした。あの攻撃を当てていれば少なからずこんな一方的な展開にはならなかったのだからな

「後悔後に立たずです。今更悔やんだ所で状況は変わりません。それよりも次にどう行動するかを考えるのが得策ですよ?」

「…は!金剛お姉様少し耳を貸してください」

「why?どうしました榛名?」

金剛の姉妹の一人-榛名が俺の忠告で何かに気づいたようで金剛になにか伝え始める。少しお節介が過ぎたか?

「Wow!それはいい作戦デス!長門にも伝えるデース」

「わかりました。長門さん少しお耳を借りますね。」

「む?」

榛名は金剛に伝え終わると次に長門にも何かを耳打ちし始める。本当はこの隙にと思ったが先程の威嚇射撃のこともあるのでここは話し終わるのを待つことにする。

「……というのはどうでしょう?」

「なるほど…やってみる価値はありそうだな」

「話し合いは終わりですか?待つのはもうこれっきりですがよろしいですね?」

「あぁ。今度は貴様が後悔する番だ」

元々待つのが苦手な俺だ、これ以上待つのは億劫だという意味を込めた言葉に何を感じたのか三人とも先程とは違った微笑を浮かべている。それ程榛名の話した事に自信があるのだろうか

「それでは…行きます」

「迎え撃つぞ!」

グッとナイフを握り直しそのまま突っ込んでいく。それに合わせるよう長門たちの主砲が全てこちらに向けられる。砲弾は銃弾より遅いし目視もできる

「もらいました!」

「今だ!足元に全門斉射!」

「なっ!?」

懐に入る寸前ナイフが当たる距離に到達する前に砲弾が俺の足元に着弾し爆風で数m程吹き飛ばされる。何故俺の攻撃より先に砲弾が…

「(なるほどな…)」

勢いを殺し海面に片膝をつきながら周囲を見渡してみると先程の砲撃が何故当たったのか納得できた。長門を挟みながらちょうど俺の視界に入らないギリギリのラインに金剛と榛名が移動していやがる。人の定めとして見える範囲というのはどうしても限られてしまう。いくら砲弾を目視できるといってもそれは視界に入ったものだけで見えない死角からではどうにもできない

「(被弾したのは仕方ないがよりによって足をやられたのは流石にマズイな…)」

足元に視線を移すと足からは黒い煙を出しながらバチバチと音を立てている。もちろん俺の足からではなく装着している機械からだ。電の奪還依頼の時優に頼んでいたもので艦娘が着けているものを少し改良した靴のようなものだ。人間である以上水上に立つことは不可能だからな。そしてその機械は先程の砲撃が直撃し機能が低下、水面に立つことはまだできるが砲弾を避けられる程の速度はもう出せないだろう

「これで簡単には避けられませんね?」

してやったといった笑みを浮かべる榛名に苦笑い気味に微笑を返す。確かにこの状況はまずい。生憎速度を下げないよう防具等は着けてきていない。そんな耐性のない状態で更に避けにくくされてしまってはこのまま戦闘を続けるのは厳しい

「…確かに難しそうです。なので、逃げさせてもらいます!」

「なっ!?」

「海の中に!?」

足元に取り付けている機械を取り外すと浮く力を失った俺の体は呑み込まれる様に飛沫を上げ海の中に落ちる。予想していない俺の行動に長門たちが声を上げるが水中ではよく聞こえない。取り敢えずこの場から離れなければ


----------------------


「(…孤島付近でよかった)」

海水が滴る重い髪を掻き上げ濡れた煙草に火を着ける。取り敢えず近場の孤島に上陸できたのは良かったがそう長くは持たない。今は海中を探している長門たちは近い内にこの孤島に目をつけ砲撃を開始し始めるだろう。それよりも早くこの場から離れなければ孤島と共に海の塵になりかねない

「…優聞こえるか?」

『…おぉ、聞こえてるぞ』

口に咥えている煙草を手に持ち無線に声をかける。数秒ノイズ音が響き優の声が聞こえ始める。

「戦況が少し変わった。今どこにいる?」

『今ちょうど艦娘達が見える孤島についたんだがその艦娘達の様子が少し可笑しくてな、海の中を探してるみてぇなんだ』

「艦娘の様子についてはまた後で話す。それより大分遅かったな」

『ちっと李悠の方に回っててな遅くなって悪かった。それで俺と未浪はどうすればいい?』

遅いと思ったら李悠の方に回っていたのか。それでは責めることはできない。

「理由があるなら気にしなくていい。取り敢えず優お前はそのまま艦娘の動きを監視していてくれ。未浪には装備のおいてある岩陰に向かってくれと伝えてくれ。俺の足の機械が壊されたから取りに行かなきゃならない」

『わかった伝えておくぜ。機械を取り付けたらまた連絡してくれ』

了解と返し無線を切る。取りに行くと言ってもこの孤島から置いてある岩陰までは少しばかり離れてる為時間がかかる。その間に李悠の方に回られないよう祈るしかない

「(…いつ砲弾が飛んでくるかもわからないし早めにここを離れなきゃな)」

危険な場所は早々と離れるのに越したことは無い。それに李悠の方に向かわれては更に戦況が悪くなるしな。そんな事を思いながら吸い切れた煙草を地面に押し付け早足で岩陰へと歩き出した

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧