提督がワンピースの世界に着任しました
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第19話 騒乱
オハラを取り囲む海軍の船。それらの船は主にオハラの西側にある海岸に集中して停泊していたので、その逆側は監視の目が薄くなっていた。その隙を突いて、吹雪に舞風、そして俺の三人は、海兵達に気づかれる事なく無事に上陸できた。
それから走りながら急いで、オハラの町を通って図書館へと一直線で向かっていた。
いつもは西の海岸から上陸して図書館がある道を進むので、こちら側にはあまり来たことが無かった。だから普段のソレを知らないけれど、それでも町の現状から違和感というか尋常ではない様子を感じて取っていた。
ソレを感じたのは走っている最中、町のあちこちで何人かで集まって輪を作り、ヒソヒソと小さな声で話し合っている、という様子を見たからだった。
その普段の様子とは違っているであろう今の状況は、島を囲む海軍と何か関係があるのだろうか。そう考えながら、更に図書館に向かって走って進んでいく。ただ、町の様子を見ただけでは、何が起こっているのかまでは検討もつかなかった。
「……一体、この島に何が起こっているんだ?」
図書館に到着するまであと少しと近づいた時、道の真ん中で町人達と黒服の人間たちが言い争っている場面に出くわした。争っていると言ったけれど、銃を武装する黒服の方は至極冷静に町人達に何か一方的に指示を出しているだけで、その黒服たちに町民たちが理由を説明しろと詰め寄っている感じだったが。
「町民は直ちに、避難船へと退避せよ!」
「だから、何故俺達は避難船に乗らないといけないんだ!?」
何やら黒服達は、町人を島から出そうと避難船に誘導しているようだ。
黒服達は何者だろうか。黒色のスーツでピシっと決めている彼等。前に見た海軍達とは、着ているものが違うみたいだが、しかし海軍とは無関係では無いと思うんだけれど……。
「この島に居る考古学者達は、世界を滅亡させる計画を企てているという容疑がかけられている! その容疑者達を確保するため、島全域は捜査対象に指定した! 考古学者と関係が無いという者は、直ちに避難船へと向かわれよ!」
あの人達が世界の滅亡を企てている、だって!? 黒服たちの言葉を聞いて、あり得ないと心の中で叫ぶように思った。
考古学者というのは、クローバーさん達の事を指しているんだと思うけれど、彼等がその様な計画を立てている、という情報は信じられなかった。
「あの学者達が、何故そんな容疑を? 彼等は、俺達の島の誇りなんだ! 世界一と言われている図書館に、世界的に見ても優秀な学者達なんだぞ! 彼等に突然そんな容疑をかけるなんて言われたって……!」
「避難船に向かわない者は、学者達の関係者と見なす!」
「だから、俺達が避難船に」
「この助言を無視した場合、その身に何が起きたとしても我々は一切関知しない」
黒服の静かな宣言に、町人たちの声がピタリと止まる。そして、次の瞬間。
「うわぁぁぁ! 早く、早くみんな! 町から離れろ! 何かヤバイ気がする!」
「お前ら、走って西の海岸にある避難船へ向かえ!」
「奴ら、何か始める気だぞ! 皆、巻き込まれる前に早く走れ!」
黒服に詰め寄っていた町人たちが黒服たちの様子に何かを察して、一気に逃げの体制に入った。黒服と詰め寄る町人たちの状況を遠目から見ていた人達も、逃げるように言った町人の指示に従って走って、西の海岸を目指し走っていった。
「俺達は、とにかく図書館に向かおう」
「分かりました、提督」「行きましょう!」
町人たちが逃げる出している方向に逆らって、俺達は図書館へ向かって進んでいく。だから、俺達は黒服たちの目にすぐ目についてしまった。
「貴様ら、避難船がある海岸はそっちではない!」
「………」
見つかってしまったけれど、黒服の警告を無視して突き進む。制止する声を聞いても、俺達は速度を上げて走るだけだった。
その直後にパーンという甲高い破裂音が、後ろ側から聞こえてきた。思わず後ろを振り返ると、黒服の男たちが手に持っていた銃が俺達へと向けられていた。
警告するために撃った様子ではなく、確実に当てるために狙いを定めているようだった。
「くそっ、撃ってきやがった! 吹雪に舞風、足を止めるなッ!」
「提督も気を付けて!」
「あっ、提督。また撃ってきたよ!」
更に速度を上げて、発砲する音をいくつか背中に受けながら一気に走り抜ける。
もう声も発砲音も聞こえない距離まで来て、一息つく。
「提督、大丈夫ですか? 弾は当たっていませんか!?」
「あぁ。なんとか、当たらず無事に済んだ」
しかし、避難船が有る方向とは違うという警告を一度だけして、間髪を入れず撃ってくるなんて肝を冷やした。幸いにも、彼等の銃の命中精度が低かったからか、俺達の走りが速かったからなのか、弾は一発も当たらなかったけれど、彼等は躊躇もなく確実に当てようとして狙いを俺達に定めて撃ってきた様子を見ていた。
一度の警告だけで、次の手は銃で撃って止めようとする強引さに、黒服への不信感を抱きながら、最初の目的である状況を確かめるために図書館へ向かって走る。
***
ようやく図書館前に到着した俺達は、その図書館を見てまた驚く。
「提督、コレってヤバイんじゃ……」
「図書館が燃えている……!?」
「お主ら!」
図書館の実情に唖然として目を取られていると、後ろから声を掛けられた。振り返るとそこにはクローバーさんと、見知らぬ女性が立っていた。
そして二人共が、顔や腕が血塗れになっていて酷い怪我を負っている様子だった。
「大丈夫ですか!? 一体、怪我を負っているなんて何が起こって」
「話せば長くなる。だから、要点だけ伝えるぞ。オハラは、もうすぐ海軍の船による一斉射撃によって焦土と化す。その前に、お主達は直ぐに島から脱出するんだ」
「島から脱出? クローバーさん達はどうするんですか?」
「儂らは、彼処にある資料達が燃えて消えてしまわない様にしないといけない」
「クローバー博士、時間が有りません急がなければ!」
「わかった。お主達は、一刻も早く島から脱出するんだ!」
それだけ言って、燃えている図書館へと走って向かおうとする二人。少ない情報で判断してみると、海軍達がオハラの学者達を捕まえようとしている事だけが分かった。しかし、何故いきなり? しかも、図書館へ火を放ったのは海軍のようだし、この後も島に向けて一斉射撃を行うという過激な方法。
とにかく、このまま何も知らずにクローバーと別れるなんて選択肢はあり得なかった。それに、先に図書館に向かわせた天龍と夕立の二人とも合流しなければ。
「待ってください。俺達も、本を外へ運び出す手伝いをします」
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