英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~古戦場の調査~前篇
~タングラム門~
「ダグラス少尉、お疲れ様です。」
「……よう、お前達か。どうやら、依頼を見て来てくれたようだな?」
自分の仕事部屋に入って来て話しかけてきたロイドにダグラスは頷いた後尋ねた。
「ま、そういうわけだが……ダグラスの兄さん、なんだかビリビリしてんな。」
「門に入ったお前達もひしひしと感じているだろうが……現在、クロスベル警備隊は厳戒態勢にあってな。ちぃっとばかし、気が抜けねえ状態なのさ。」
「なるほど……今回の依頼はそのあたりのことも関係しているわけですね。」
「あぁ、そういうことになるな。さっそく、仕事の内容を説明しようと思うが……お前さん達、依頼を引き受けてくれるか?」
「ええ、よろしくお願いします。」
「うむ、恩に着るぞ。―――依頼にも書いていたことだが、近頃、謎の『黒い魔獣』が出るという目撃情報が寄せられていてな。アルモリカ村の付近などで農作物や家畜などに被害が出てしまっているらしい。」
「黒い魔獣……どこかで聞いたことがあるような印象ね。」
「作物を襲うってのも聞き覚えがあるような。」
ダグラスの話を聞いたエリィは不思議そうな表情をし、ランディは考え込み
「もしかして……以前起こった『狼型魔獣』の事件に似ているんじゃないですかね。あの時の事件の犯人は軍用犬を操るマフィアでしたけど……」
ある事を思い出したノエルは言った。
「……俺もその事件は報告書で読んでいたから、気になっていてな。実際、ルバーチェは解体されたが所有していた軍用犬の多数は行方がわからなくなっている。可能性は決して低くはないだろう。」
「警備隊ではどの程度調査が進んでいるんですか?」
「被害現場の検証と周辺の住民への聞き込みは軽く行ったってところだ。その結果、『黒い魔獣』は古戦場方面から来ているということが判明した。そこでお前達には、古戦場に向かってもらいたい。この魔獣の調査、可能ならば退治をしてもらう。」
「事情はおおむね理解しました。……ですがやはりかなり忙しいようですね?こういった仕事は警備隊の役割だと思っていたのですが……」
説明を聞き終えたリィンは頷いた後戸惑った表情でダグラスを見つめた。
「そうしたいところだが……さっきも言ったように警備隊は厳戒態勢なんだ。クロスベル市襲撃犯と目される”赤い星座”も姿をくらまし、”黒月”や”結社”については市内にいた連中全員殺されちまって、尻尾すらつかめていない。さらに両帝国と共和国が巨大な演習を始めようとしているこの状況……警備隊としては、国境の警備は特に厳重にする必要があるだろう。」
「”不戦条約”締結直前……いえ、そこにメンフィルが加わった事でそれに相当する以上の状況になってしまっているわけですね。」
ダグラスの話を聞いたエリィは複雑そうな表情で言い
「……うむ。いくら魔獣被害といえども、さすがにこの状況では、優先順位が低くなってしまう。そこまで深刻な被害が確認されてるわけじゃないし、人をさくわけにはいかないのさ。」
ダグラスは重々しい様子を纏って答えた。
「……確かに、警備隊に魔獣退治なんかやらせてる場合じゃねえだろうな。」
「……状況は概ねわかりました。それでは、『黒い魔獣』の調査はこちらにお任せください。」
「うむ、すまない。よろしく頼んだぞ、特務支援課。」
その後ロイド達は古戦場に向かった。
~古戦場~
ロイド達が古戦場に到着するとそこにはかつてマフィアが飼っていた軍用犬達が周辺をうろついていた。
「あ、あの魔獣達って……」
軍用犬を見たエリィは驚き
「ルバーチェの軍用犬……どうやら予想は当たってたらしいな。野生化して群れをなしていたのか……」
ロイドは真剣な表情で言った後考え込んだ。
「しかし……作物を襲ったっていうのはどういうことなんだ?こいつらほどの魔獣なら、人里に近づく危険性くらい本能でわかると思うが……」
「なんにせよ、いるからには全て退治しないとな、……しかしこれを全部退治するとなると相当時間がかかりそうだな……」
「う、うーん……そうだなあ……」
ランディの言葉に続くようにリィンは言った後考え込み、リィンの言葉を聞いたロイドは疲れた表情で考え込んだ。
「……………」
ティオちゃん?どうしたの、そんな顔して。」
一方呆けた表情で黙り込んでいるティオに気付いたノエルは尋ねた。
「いえ、その……あの魔獣たちから、なんだか怯えているような感情が伝わってきて……」
「怯えている……?」
ティオの話を聞いたロイドが不思議そうな表情をしたその時
「……グルル……」
なんとツァイトがロイド達に近づいてきた!
「……ツァイト!?」
「あ、相変わらず突然現れるんだから……敵に背後を取られたかと思ってびっくりしたじゃない。」
「グルル……ウォン、ウォン……グルル……」
「『おそらく、野生化した犬たちのボスがいるはずだ。そいつさえ倒せば群れを無力化できるだろう。』……だそうです。」
「ボスか……確かに群れで行動する魔獣ならその可能性は高いだろうな。」
ツァイトの意志を伝えたティオの話を聞いたランディは頷き
「よし、それじゃあそのボスとやらを探してみるとしよう。」
ロイドは仲間達に提案した。その後ロイド達はボスを探して古戦場の奥地―――”太陽の砦”の前まで来た。すると唸り声が聞こえてきた!
「今のは………」
唸り声を聞いたロイドが驚いたその時
「!ま、まずいです!」
何かに気付いたノエルが警告したその時軍用犬達がロイド達を包囲し、さらに太陽の砦から砦内をうろついていた装甲を身に纏った軍用犬が跳躍して現れた!
「チッ、取り囲まれたか……」
状況を見たランディは舌打ちをし
「あ、あの大きな魔獣は……”太陽の砦”をうろついていた!?」
ロイドは装甲を身に纏った一際大きい軍用犬を見て驚き
「どうやら、あの魔獣が軍用犬達を従えているようですね。」
ティオは静かな表情で言った。
「という事はヤツさえ倒せばいいのか………!」
ティオの話を聞いたリィンは呟き
「……!気を付けて、来るわ!」
軍用犬達の様子を見たエリィが警告したその時、軍用犬達が襲い掛かり、ロイド達は迎撃を始めた!その後ロイド達は一際大きい軍用犬を退治し、他の軍用犬達は戦闘不能にまで弱らせた。
「ふう、やったか……」
戦闘を終わらせたロイドは安堵の溜息を吐き
「……彼らも戦意を喪失したようです。もはや、危険はないかと。」
身体を震わせている軍用犬達を見たティオは報告した。
「さてと………どうする?こいつら全ても始末するか?」
そしてリィンはロイド達に尋ねた。
「……そうだな……」
尋ねられたロイドは考え込み
「今後、人を襲わないとも言えないだろうし……」
エリィは複雑そうな表情をし
「やれやれ、そんじゃもう一仕事行くとしますか―――」
溜息を吐いたランディが言いかけたその時
「……ウォン、グルルル……」
ツァイトがロイド達の背後から現れた。
「ツァイト……」
「『その必要はない』……と言ってるみたいです。」
「えっと……どういうことなのかしら?」
ティオの言葉を聞いたエリィは不思議そうな表情をし
「グルル……ウォン………グルルル………ウォン。」
「『彼らは自由となった後、そのまま人里離れた場所で暮らすつもりだったようだ。だが、先程の魔獣が現れて家畜や作物を襲わせるように命令させていたらしい。』……そのように言っているようです。」
「はーっ、なるほどねえ。つーことは、命令するボスがいなくなった今、もう危険はないってことか?どうするよ、ロイド。」
ツァイトの意志を伝えたティオの話を聞いたランディは溜息を吐いた後ロイドに視線を向け
「……そうだな。ここは彼らを信じてみよう。『これからは、きちんと縄張りを守って生きる事。また人里を襲わないと約束できるなら、退治まではしない。それだけ伝えてくれるか?」
視線を向けられたロイドは頷いた後ツァイトを見つめて言い
「……ウォン。グルル……ウォン。グルルル………ウォン、ウォン。」
ロイドの言葉に頷いたツァイトは軍用犬達の前に移動して何度か吠えた。すると
「……ウォン。」
軍用犬の一体が返事をした後、軍用犬達は散らばるように去って行った。
「……わかってくれたのかな。」
「ええ、ツァイトの言葉は通じてるようでしたし……きっと大丈夫だと思います。」
「まさか犬が説得するとはな……この場合報告はどうすればいいんだ?」
軍用犬達が去るとリィンは驚き、そしてロイドに尋ねた。
「ま、まあ……正直に話してみるしかないだろ。ひとまず、これで仕事は終了だ。一度タングラム門のほうに戻るとしようか。」
「了解です!」
そしてロイド達はその場から離れて行き、タングラム門に向かって行った。
「………………………………」
一連の出来事を建物の屋上で”銀”の服装ではない新たな戦闘服を身に纏ったリーシャは複雑そうな表情で見つめていた。
「フフ、まさかロイド達がここに来るとは思わなかったわね。」
その時エルファティシアがネネカやチキと共にリーシャに近づいてきた……………
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