英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~襲撃の爪痕~前篇
支援要請の片付けの途中でロイドの提案により、仲間達はウルスラ病院の状況を見に来ていた。
~ウルスラ病院~
ロイド達がウルスラ病院の敷地内に入ると多くの見舞い客が病院に向かい、看護婦や医者、さらにはイーリュン教やアーライナ教の紋章が刻み込まれてあるシスター服や法衣を身に纏ったイーリュン教やアーライナ教の信者らしき者達が忙しく駆けずり回っていた。
「やっぱり普段よりもお見舞い客が多そうですね……しかもイーリュン教やアーライナ教の信者の人達まで駆り出されているようですし……」
その様子を見ていたティオは呟き
「ええ、重傷を負った人が市内だけでも大勢いるから……患者の数があまりにも多くて、医者や看護婦の手どころか医療物資の数がとても足りなくて、ウルスラ病院の方からイーリュン教会やアーライナ教会に患者の治療の手伝いやそれぞれの教会が販売している治療物資を優先的に病院側に販売してもらう依頼を出したとも聞いているし、さらにその事を知ったディーターおじ様の方からもイーリュン教とアーライナ教に依頼したと聞いているわ。後はティア様やペテレーネ様―――各宗教の”聖女”や大陸各地で活動している治癒魔術の使い手の派遣の依頼の為にわざわざそれぞれの支部になっている小さな教会に出向いてまで頭を下げたとも聞いているわ。」
ティオの言葉にエリィは頷いた。
「……ドノバン警部やイリアさんも入院してるんだよな。」
「ええ………確かドノバン警部はレイモンドさんを庇って重傷を負ったという話らしいですね……」
「……あんな”戦争”といってもおかしくない状況の中、生き残っていただけでもまだ幸運な方だろうな……」
ロイドの言葉にノエルは頷き、リィンは重々しい様子を纏って呟き
「豪快なオッサンだったが……大したもんだよな。できればイリアさん共々、様子を見舞えるといいんだが……」
「そうね……シュリちゃんが今日は来ているみたいだけど。」
ランディとエリィはそれぞれ重々しい様子を纏って呟き
「……2人の病室がどこか受付で聞いてみよう。(……セシル姉も相当、忙しくしてるんだろうな。)」
ロイドは提案をした後受付に向かった。
「あら、支援課の皆さん……どなたのお見舞いにいらっしゃったんですか?」
「はい、ドノバン警部とイリアさんの見舞いにきたのですが……今、大丈夫ですか?」
受付嬢に尋ねられたロイドは頷いた後尋ね
「イリアさんは普通の方達でしたらお断りするところですけど……皆さんでしたら構いませんね。ドノバン警部の病室は302号室でイリアさんは303号室です。」
「ありがとうございます。」
その後ロイド達が病室に向かおうとしたその時
「ロイド……それにみんなも……」
それぞれイーリュン教のシスター服を身に纏ったセシルとシズクがロイド達に近づいてきた。
「セシル姉……それにシズクちゃんも。」
「おおっ!?そのシスター服のおかげでいつもとは雰囲気が全然違うッスね!何て言うかこう……いつも以上に清楚な雰囲気を出しているッスよ!」
「落ち着いて下さい、ランディさん。」
「他の患者や見舞い客に迷惑だぞ……」
「もしかしてイーリュン教のシスター服ですか?」
セシル達を見たロイドは目を丸くし、ランディは興奮し、その様子を見たジト目のティオと呆れた表情のリィンが注意し、エリィは驚きの表情でセシルに尋ねた。
「ええ。ティオちゃんにとっては懐かしい服でしょうね。」
尋ねられたセシルは頷いた後ティオに視線を向け
「―――”影の国”でウィルさん達がティナさん専用に創った法衣……ですね。しかしセシルさんはわかるのですがどうしてシズクさんまでイーリュン教のシスター服を?」
視線を向けられたティオは頷いた後不思議そうな表情でシズクに視線を向けて尋ねた。
「私もイーリュン教の信者の一人ですし……何かできることはないかと思って、セシルさんに無理を言って頼んで手伝わさせてもらっているんです。私も効果は少ないですが治癒魔術が使えますし……………本当なら私なんかが着るのは恐れ多いのですけど……」
「そんな事ないよ。凄く似合っているし可愛いよ。」
「フフ、そうね。……けどその様子ですと、もしかしてセシルさんがイーリュン教の方達を指示しているのですか?」
苦笑しながら言ったシズクの言葉にノエルは微笑み、エリィも微笑んだ後尋ねた。
「ええ……私が治癒魔術を使えると知った他の信者の方達がどうしてもって言うから。後は病院側からも看護師としての仕事はいいから、イーリュン教の信者として患者の方達の治療をしてくれって頼まれているのよ。」
エリィに尋ねられたセシルは頷いた後説明し
「……二人には本当に申し訳ない事を頼んでいると病院側の方でも思っています。本来の仕事とはかけ離れている事をさせてしまっている上、患者のシズクちゃんにまで働かせてしまって……」
受付嬢は申し訳なさそうな表情で二人を見つめて言った。
「そんな……こちらこそ看護師としての仕事を手伝えなくて本当に申し訳ないですよ。」
「あ、あの……私の方は完全な私の我儘ですし、お父さんからも許可をもらっているので気にしないで下さい。」
受付嬢の言葉を聞いた二人はそれぞれ謙遜した。
「それでみんなは今日は誰のお見舞いに来たのかしら?」
「あ……うん。ドノバン警部とイリアさんだよ。」
セシルに尋ねられたロイドは答え
「そう……………その二人もちょうど私の方からも状況を確認しに行こうと思っているから付き添うわ。」
「ありがとうございます。」
セシルの答えを聞いたエリィは軽く会釈をした。その後ロイド達はセシルとシズクと共に病室に向かい、まずドノバンの病室に向かった。
「―――レイモンドさん?入りますよ。」
セシルは扉をノックした後病室に入り
「セシルさんにシズクちゃん……それに君達かぁ……」
セシル達に視線を向けたレイモンドは呟いた。
「レイモンドさん……どうもお疲れ様です。」
「看病にいらしたんですね。」
「あはは……たまたま警部の奥さんの代わりにね。警部が目を覚ましたら『なに油売ってやがる!』って怒鳴られちゃいそうだけど……」
ロイドとエリィの言葉にレイモンドは寂しげな笑みを浮かべて答えた。
「そうか……」
「………いかにも言いそうな感じですね。」
レイモンドの言葉にランディとティオは頷き
「その装置はまさか……人口呼吸器か?」
リィンはドノバンに繋がれてある装置に視線を向けて尋ねた。
「うん……呼吸器系にかなりのダメージを受けたみたいでね。何とか意識が戻ってくれれば回復も早まると思うんだけど………………………………………警部はさ。自分達の負けが濃厚になってきた事に気付いた猟兵がヤケになって僕の方に投げてきた爆弾が爆発する時、僕をかばってくれたんだ。あの大変な時、警察でも警備隊でも、ましてや遊撃士でもないのに勇敢に戦っていた局長の協力者達とは違ってオロオロしてるだけだった不甲斐ない僕なんかを………そのお蔭で僕はカスリ傷くらいですんで…………自分の運の良さと図々しさが情けなくなるよ。」
尋ねられたレイモンドは答えた後悔しそうな表情で言った後肩を落とした。
「レイモンドさん………」
「……アンタのせいじゃないだろ。」
「ああ……これも全て襲撃をかけてきた武装集団が原因だ。」
レイモンドの様子をロイドは複雑そうな表情で見つめ、ランディとリィンは慰めの言葉を言った。
「……レイモンドさん。休憩してきたらどうですか?今は容態も安定していますし、私達も巡回していますから。少しは休まないと気が落ち着きませんよ?」
「あ、あの……外に出て風に当たるだけでもかなり気持ちが落ち着くと思います。私も落ち込んだ時、よく外に出て風に当たっていましたし……」
「あはは……すいません。でも、もうちょっとしたら警部の奥さんが来るので、それまでは………」
セシルとシズクの言葉を聞いたレイモンドは苦笑しながら答えた。
「ふう……わかりました。」
「あの……絶対に無理はしないで下さいね?」
レイモンドの言葉を聞いたセシルは溜息を吐いて言い、シズクは心配そうな表情で言った。
「どうかお大事に……」
「またお見舞いに来ます。」
「うん……警部も喜ぶと思うよ。」
その後ロイド達はイリアの病室に向かった………
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