英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第91話
クロスベル市に到着したロイド達は出入口付近に到る所に倒れている多くの猟兵達の死体に驚きながらミレイユたちが乗る警備隊の装甲車達と別れた後、市内を走っていると信じられない光景――――警備隊や警官が猟兵達と殺し合いをしている場面を見かけた。
~クロスベル市~
「こ、これは……」
殺し合いをしている警備隊員や警官、猟兵達を見たノエルは厳しい表情をし
「信じられない…………こんなのもはや”戦争”としか言いようがないじゃない………」
エリィは身体を震わせながら表情を青褪めさせ
「………………………」
ランディは目を細めて黙り込み
「くっ、とにかく状況がどうなっているか確かめないと……」
ロイドは唇を噛みしめた。
「―――セルゲイだ。聞こえるか。」
その時セルゲイの声が車内に聞こえてきた。
「課長……!?」
「ご無事ですか!?」
「おお、何とかな。警察本部が襲われたんで支援課の方で本部と分担して各方面の連絡を受け持っている状況だ。」
「警察本部が……!?」
「い、急いで行かないと……!」
セルゲイの情報を聞いたロイドとノエルは厳しい表情をした。
「いや、そっちは既に局長達や戦闘中に乱入した局長達の”協力者”達が襲撃者全員を殲滅し、さらにエルミナ大尉の部隊が到着して援軍として現れた敵の部隊の迎撃を開始し始めた上、そこにソーニャの部隊も向かっている所だ。できればお前達は港湾区の方に向かってくれ。」
「港湾区……ですか?」
「つい先ほど、猟兵の一部がラギール商会の店舗を爆破したそうだ。そしてそのまま港湾区に向かった後、IBCビルに乗り込んで行ったらしい。現在、敵の主力部隊はオルキスタワーと行政区を攻めている。アリオスやダドリー、ギュランドロス司令達が持ちこたえている上、先程ルイーネ一佐達の部隊や局長の”協力者達”も到着したと聞いたから、そっちの助けは必要ないだろう。他の遊撃士達は………市街地に放たれた軍用魔獣や人形兵器を片付けるので手一杯なようだ。駆けつけられるとしたらお前達しかいない。既に局長達も警官隊を率いて港湾区に向かい、戦闘を繰り広げているらしい。」
「で、ですが……」
セルゲイの情報を聞いたエリィは心配そうな表情をし
「……支援課の方は大丈夫なんですか?」
ティオは真剣な表情で尋ねた。
「通行人は可能な限り支援課の中に避難させた。ツァイトが番をしているから軍用魔獣も近寄ってこないしな。人形兵器は近寄ってくるが……そっちの方は支援課に残っているセティ達が対処している。ちゃんとキーアもいるし、まあ心配するな。」
「……そうですか。」
「予め襲撃を予想して、戦力を置いて行くように言った局長のおかげで、なんとか大丈夫そうだね。」
セルゲイの話を聞いたティオは安堵の溜息を吐き、ワジは真剣な表情で呟いた。
「――――わかりました。これより港湾区に向かいます。」
「ああ……くれぐれも気を付けろ。」
そしてロイドの返事を聞いたセルゲイは通信を中断した。
「IBCビル……ミラ目当てってことかな?」
「わからないけど……とにかく急いだ方がよさそうだ。本当は襲撃されたっていう警察本部も気になるけど………」
ワジの疑問にロイドは考え込みながら呟き
「………そっちの方は多分、大丈夫ですよ……局長達がいますから。色々と滅茶苦茶な人ですが、戦闘になれば一騎当千の強さを奮う人ですし………」
「そうですね。それにヴァイスさんは”戦争”の経験者の上、襲撃も予想していましたから大丈夫かと。」
複雑そうな表情で言ったノエルの言葉にティオは静かな表情で頷いた。
「そういえば……局長達の”協力者”って一体誰だろう?」
「わからないけど……とにかくその人達は今は味方と考えていいでしょうね。」
そして不思議そうな表情で言ったロイドの言葉にエリィは真剣な表情で答えた。
「それより……IBCビルにも皆さんの知り合いがいましたよね?」
「そうね……ベルがいる可能性は高いわ。」
「ヨナや主任も……財団の事務所にいると思います。」
ノエルに尋ねられたエリィやティオは頷き
「……とりあえず港湾区に着いたところで車は停めた方がいいだろう。既に戦場となっているからどこから銃弾が飛んで来るかわからねぇし、対戦車ミサイル(ハンヴァーファウスト)をぶっ放されるかもしれねえ。」
ランディはノエル達に警告した。
「そんな危険なものまであるのか……」
「了解しました。港湾区の入口まで急ぎます。」
その後ロイド達を乗せた導力車は戦闘を避けつつ、東通りを経由して港湾区に到着した。そして港湾区に到着すると港湾区は戦場と化していた!
~港湾区~
「クッ………まさか港湾区までこんな状況になっているなんて……!」
「しかも”黒月”の構成員達までグルになっていたとはね。」
「多分、通商会議の件で同じ憎しみを持つ者同士として、手を組んだのでしょうね……」
「………………………」
状況を見たロイドは唇を噛みしめ、ワジとエリィは厳しい表情で呟き、猟兵や警備隊員、警官が傷ついたり、死んでいったりする光景を見たティオは辛そうな表情で黙り込んだ。
「!!ボーッとすんな!こっちにも来やがったぞ!!」
一方ある気配に気付いたランディが叫ぶとロイド達に気付いて猟兵や構成員達がロイド達に向かってき
「クッ………!」
それを見たロイドは唇を噛みしめ
「迎撃を開始します!」
ノエルがサブマシンガンを構えたその時!
「発射!!」
「そこですっ!!」
「うおっ!?」
「ぐがっ!?」
女性とアルの声が聞こえた後、無数の砲弾が猟兵達の上空から強襲し、さらに猟兵達の背後からは銃撃が放たれて猟兵達を怯ませ
「リセル!行くぞ!」
「はい、ヴァイス様!」
「「ロードストライク!!」」
「ぐあっ!?」
「があっ!?」
そこにヴァイスとリセルが猟兵達の背後から強襲して絶命させた!
「っ!!」
それを見たロイドは目を見開いて息を呑み
「きょ、局長……………」
「…………………」
エリィは表情を青褪めさせ、ランディは目を細め
「………え。リ、リセルさんっ!?どうして貴女までこの時代に………!」
猟兵が殺された瞬間一瞬目をつぶったティオは恐る恐る目を開けてリセルに気付いて驚きの表情で叫び
「……あれ……その名前って…………………」
「確か局長の奥さんだった人の名前じゃなかったっけ?」
ティオの言葉を聞いたノエルは呆け、ワジは不思議そうな表情でリセルを見つめた。
「フフ、お久しぶりですね、ティオさん。今はこのような状況なので詳しい説明は省かさせてもらいますが……とりあえず私を含めたヴァイス様の”戦友”の方達が全員クロスベルに到着し、既に各地区にそれぞれ向かって敵軍の迎撃にあたっています。」
見つめられたリセルは微笑んだ後説明し
「ええっ!?」
説明を聞いたエリィは驚き
「……もしかしてさっき課長が言ってた局長達の”協力者”って………」
ロイドは呆けた表情でリセルに視線を向けた後ヴァイスに視線を向け
「ああ、リセル達だ。」
視線を向けられたヴァイスは口元に笑みを浮かべて答えた。
「こぉぉらぁぁぁ――――ッ!アルやエイダ様が戦っているのに、一人だけ休憩しやがるなぁぁっですの―――ッ!!」
その時、リューンが声を上げながらヴァイス達に近づき
「に、人形!?」
「しかも宙に浮いてるし、喋っています………!」
「お、おいおいおい……!一体どういう事だ、こりゃ!?」
「か、可愛い!人形工房で見たのとは比べものになりません!」
リューンを見たエリィやティオ、ランディは驚き、ノエルは嬉しそうな表情で声を上げた。
「今は細かい事は気にするな!セルゲイに連絡をもらって、ここに来たのか?」
エリィ達の様子を見たヴァイスは一喝した後ロイドに尋ね
「は、はい!」
尋ねられたロイドは頷いた。
「そうか。ならばお前達は先行してIBCビルに向かって、既にビルに向かっていった俺の”協力者”――――ガルムス元帥とベルの援護をしてくれ。市街地の連中は俺達が片付けておく!」
「わかりました!」
「ちなみにその”協力者”って人はどんな特徴の人だい?」
そしてヴァイスの指示にロイドは頷き、ワジは尋ねた。
「2本の槍を扱っている老人だから、すぐにわかる。後、その老人の側にはその人形―――リューンのような小さな人形がいるはずだ。」
「……老人だなんて………ガルムス元帥が聞いたら、絶対怒ると思いますよ………?」
尋ねられたヴァイスは答え、ヴァイスの言葉を聞いたリセルは苦笑していた。
「リューン。こっちに来たついでにロイド達を回復してやってくれ。」
そしてヴァイスはリューンに視線を向けて指示をし
「ふふーん、任せやがれですのっ!………さぁて、皆さんお待ちかねのわたくしの出番ですの♪ブラウルナミス!!」
指示をされたリューンは自慢げに胸をはって答えた後、指先から巨大な魔法陣を展開し、魔法陣から聖なる光を放ってロイド達の傷や体力を完全回復させた!
「こ、これは………」
「治癒魔術…………」
「しかもとてつもない魔力を感じました……………」
「あんな小さな人形がこんな凄い魔術を使うなんて……し、信じられません。」
「お、おいおいおい……!マジで一体何なんだ、その人形モドキは!?」
リューンのSクラフトにして最高治癒魔術―――ブラウルナミスを受けたロイドとエリィは呆け、ティオとノエルは信じられない表情をし、ランディは混乱した様子でリューンを見つめ
「………………………もしかして異世界の”古代遺物”のような存在かい?」
ワジは真剣な表情でリューンを見つめた後、ヴァイスに視線を向けて尋ね
「ああ、そのような存在と認識してもらっていい。」
尋ねられたヴァイスは肯定し
「”古代遺物”………!」
「す、凄すぎるわね………魔術を使うどころか、意志や感情まであるなんて………」
ヴァイスの答えを聞いたロイドとエリィは驚いた。
「さっきから人形、人形と………わたくしは”魔導功殻”ですのっ!よぉぉっく、覚えておきやがれですのっ!!」
そして顔に青筋を立てたリューンはロイド達を睨んで叫び、睨まれたロイド達全員は冷や汗をかき
「ロイド達が”魔導功殻”を理解できるとはとても思えんが……」
「確かにそうですね……」
リューンの言葉を聞いたヴァイスとリセルは苦笑し
「可愛い顔をしているわりに微妙に口が悪いな……」
「フフ、そうですか?何だか微笑ましくて可愛いいと思いますよ?」
(やれやれ…………”僕達”からしたらとんでもないレベルの”古代遺物”なんだけどね………)
ランディは疲れた表情で溜息を吐き、ノエルは微笑み、ワジは心の中で溜息を吐き
「エオリアさんが見たら、目の色を変えそうね。」
「というか、絶対に自分の物にしようとするんじゃないですか?」
苦笑しながら言ったエリィの言葉に続くようにティオはジト目で言った。
「と、とにかく俺達は先を急ぎます。―――そうだ。ルファ姉、ギレゼル!!」
気を取り直したロイドは苦笑しながら言った後ルファディエルとギレゼルを召喚し
「……二人は局長達の援護を頼む。」
「わかったわ。」
「おうよ!任せておけ!」
召喚した2人にそれぞれ指示をし
「―――メヒーシャ!!」
「―――ラグタス!!」
「出番だ、エルンスト!!」
それを見たエリィ達もそれぞれ契約している者達を召喚し
「お願い、メヒーシャ。少しでも早く戦いを終わらせるために貴女も局長達と共に戦って!」
「ああ!」
「……今こそ貴方の力をクロスベルを守る為に振るってあげてください、ラグタス。」
「うむ。」
「派手に暴れまくれっ、エルンスト!敵は一人残らず殺せっ!!」
「あっはははははは!その言葉、待っていたよ!」
そしてそれぞれの契約している者達に指示をした。
「よし!みんな、IBCビルに急ぐぞっ!」
それを見たロイドは仲間達を見回して号令をかけ
「おおっ!!」
ロイドの号令に仲間達は頷いた後IBCビルに向かい
「さあさあさあっ!楽しい楽しい戦争の始まりだっ!!」
エルンストの号令と共にルファディエル達はヴァイス達と共に戦闘を開始した!
~IBC~
「うわああああああああああ――――ッ!!」
ロイド達がIBCに向かったその頃、IBCの職員達は悲鳴を上げながら建物から逃げ出し
「げっ、あの赤毛は!?なんで連中のボスがこんなとこを攻めるんだよ!?」
「とにかく逃げるよ、ヨナ君!!」
ヨナは口元に笑みを浮かべて悲鳴を上げて逃げている職員達を見つめているシグムントを信じられない表情で見つめ、それを見たロバーツはヨナの手を引いてその場から走り去って行った。するとその時
「―――フフ。この状況でここに来るとは……その様子だと貴様らがこの”戦鬼”を相手してくれるのか?」
シグムントは好戦的な笑みを浮かべて避難する職員達と入れ違いに走って来たガルムスと側にいるベルを見つめた。
「……貴様が”赤の戦鬼”とやらか?」
シグムントに見つめられたガルムスは真剣な表情でシグムントを見つめて尋ねた。
「いかにも。」
「この街の襲撃を計画した主犯は貴様か?」
「フフ………それを聞いたところでどうする?」
「フン、知れた事―――――」
そして不敵な笑みを浮かべたシグムントに尋ねられたガルムスは鼻を鳴らした後武器を構え
「―――この世に”戦鬼”は二人もいらぬ。それも何の罪もない民達を襲うような狼藉者……”戦鬼”を名乗る者として見過ごせん。」
膨大な闘気を纏ってシグムントを睨んだ!
「ほう……?クク、まさか俺以外に”戦鬼”がいるとはな?”時間が来るまでは”楽しませてもらおうかっ!!」
ガルムスの言葉を聞いたシグムントは目を丸くした後好戦的な笑みを浮かべて膨大な闘気を纏いながら叫んで武器を構えた!
「ベル、お前は下がっていろ。これは”戦鬼”を名乗る者同士の戦いだ。」
「ハッ!ご武運を!」
ガルムスの指示にベルは答えた後ガルムスから距離を取った。
「クク、この”赤の戦鬼”、退けられるものなら退けてみろっ!」
そして膨大な闘気を纏い続けているシグムントは叫び
「――――”戦鬼”ガルムス・グリズラー………参るっ!!」
対するガルムスも膨大な闘気を纏い続けながら叫び、シグムントとの一騎打ちの戦闘を開始した!
今ここに!真の”戦鬼”を決める戦いが始まった……………!
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