Fate/LylicalLiner
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無印編
第1話 変わらない日常/変わっていた非日常
Side 真優
おいしそうな匂いに誘われて目が覚める。
朝が来た、ここ数日の夜更かしはひ弱なわたしの体には結構堪える。
ベッドから抜け出して、別に視力が悪い訳ではないが眼鏡をかけて、机の上の5色の錠剤を1錠ずつ入れ物から取り出して飲み込む。
「んー・・・相変わらずおいしくない・・・。」
そんな事をぼやきながら廊下を歩き、妹の部屋に入り、幸せそうな顔で寝ている妹の肩をゆする。
「イリヤ、朝よーおきなさーい。」
「んぅ・・・。」
このところイリヤも夜更かし気味なのか、反応が鈍い。
「・・・兄様の夢でも見てるのかしら・・・。」
イリヤの想い人でもあるわたし達の兄、士郎兄様の顔を思い浮かべる。
居間の方から聞こえる物音からして、どうやら早めに鍛錬を終えた兄様がセラの仕事を取ってしまったようだ。
「・・・兄に恋して、ライバルは幼馴染3人と自分の家のメイドさんかぁ・・・。」
前途多難にも程がある・・・。
「イリヤー今日はサッカーの応援に行くんでしょー?」
「んーおにーちゃん・・・。」
わたしの声を兄様と聞き間違えますかこの妹は・・・。
「ん・・・おはようのちゅー・・・して・・・。」
と、わたしの首に腕を回し
「イリヤ・・・!?」
そのまま抱き寄せられて、押し倒される。
「ちょっと・・・!?」
ただでさえイリヤより力は無いのだ、抑え込まれた腕はイリヤの手を振り払えない。
「んぅ・・・。」
「いり・・・や・・・。」
って
「母様!リズ!見てないで助けてください!!」
イリヤのあごに頭を押し付けて辛うじて避けつつ、楽しそうに見ている母様、アイリスフィールとメイドのリズに抗議の声を上げる。
「あらー、姉妹の仲が良いのは良い事だわ。」
「うんうん。」
「寝ぼけて兄様と勘違いしてるの聞いてましたよね!?」
そう、二人ともいた、前途多難にも程があるって思った時にはもういた。
「おにーちゃん・・・。」
「ちょ、んんっ・・・。」
「ふぇ・・・?」
イリヤの右手がわたしの胸をしっかり握ったところでようやくイリヤが目を覚ました。
「その・・・イリヤ、わたし達姉妹だし、子どもなんだからこういうのは良くないと思うの・・・。」
「――――――っ!?!!??」
流石に小学5年生にもなると、少しは膨らんでいるのだ、それを思いっきり握っている事を認識したイリヤの声にならない悲鳴が屋敷に響いた。
なぜか寝間着にしている作務衣が半分くらいはだけてたし。
Side 士郎
鍛錬を終え、今日はイリヤが隣の高町さんちのお父さん、高町士郎さんがオーナー兼コーチをしているサッカーチーム、翠屋JFCの試合をいつもの4人で応援しに行くらしい、と言う事を考えながらぼんやりしていると、セラが凄い怒ってる。
原因は手元の料理だろう。
・・・今日の朝食当番セラだったな・・・。
「――!聞いていますか!?シロウ!」
「あぁ・・・聞いてるって・・・。」
そんなやり取りをしていると、イリヤの部屋から悲鳴が聞こえた。
「イリヤ!?」
「イリヤさん!?」
急いでイリヤの部屋まで行くと、入り口でニヤニヤしている母さんと無表情なのはいつも通りだがちょっと楽しそうなリズ。
「一体どうし・・・!?」
「シロウ?――っ!?」
長女が次女に押し倒されてる。
「・・・なんでさ・・・。」
「いつものねぼすけー。」
「あ、うん、だよな・・・ほどほどになー。」
脱力しながら居間に戻ると親父、切嗣が起きてきていた。
「あ、士郎、おはよう。」
「おはよう、親父・・・。」
「どうしたんだい?さっきの悲鳴。」
「イリヤが真優を押し倒してた。」
「!?」
普段は割とぼんやりしている親父の顔が驚愕に歪む。
「・・・動揺が顔に出てるぞ。」
「っ・・・あぁ、すまない・・・。」
「別に良いんだけどなー、そのほうが、普通の父親らしいだろ。」
「うん、そう、だね。」
準備しておいた朝食をテーブルに並べる。
「うーん・・・士郎、おいしいのは良いんだけど、こう、もっと・・・。」
「朝からジャンクフードはダメだっての・・・もう爺さんに片足突っ込んでるんだから。」
「うぐっ・・・。」
8年だ、8年もたってジャンク舌が治ってない・・・。
「ったく、もう34なんだから一層健康には気をつけなきゃいけないんだっての・・・。」
「全くその通りで・・・。」
そこへ、4人が居間へ入ってくる。
「おはようございます、兄様、朝からはしたない所を・・・。」
「うぐっ・・・おはよう・・・おにいちゃん・・・。」
「あ、あはは・・・おはよう、っと母さんとリズも、おはよう。」
「おはー。」
「えぇ、おはよう、シロウ。」
おはよう、って言い合える家族がいる、その家族にはそれぞれ友達がいて、そのまた家族がいる。
少なくともこの街の人々にとって、戦いは遠い世界の出来事だ。
朝食を食べ終え、セラに片づけを任せ、親父と、母さんと、一息つく。
イリヤと真優は出かける準備をしに部屋へ戻った。
「・・・なんか、平和だな・・・アレさえなければ。」
「昨夜で5つだっけ?」
「あぁ、誰かはわかってないけど、真優の感知結界に引っかかったあと、それほど間をおかずに何者かによって回収されてる。」
「にしたって不用心ね・・・遮断結界も張らずに戦闘なんて・・・。」
「・・・次以降は、街に張ってあるもう一方の結界も使う、ってさ。」
「鏡を?でもあれは・・・。」
「霊脈から引っ張ってくるそうだけど・・・。」
と、イリヤが戻ってくる気配がしたので口をつぐむ。
「じゃ、いってきまーす!」
花が咲くような笑顔を残して、イリヤが駆けだす。
「「「「いってらっしゃい。」」」」
「てらー。」
イリヤがバタバタと出かけて行って、真優が居間に戻ってくる。
「・・・兄様・・・。」
「ん?どうした?」
さっきまでの優しい少女の面影は何処へやら、魔術師・衛宮真優がそこには居た。
「結界の反応パターンを精査してみたんですが・・・魔力を使っているのは3人、うち2人は知らないモノを使っています。」
「ん?待って、真優、2人は?」
「はい、父様・・・3人目は・・・《カレイドライナー》です。」
「カレイドライナー!?カレイドステッキは《宝石翁》に渡したんじゃ・・・!?」
「えぇ・・・でも、現にこっちにあります《ムーン》は未完成、《キャスター》と《アーチャー》はわたしと兄様が持っていますから・・・。」
「《ルビー》か《サファイア》・・・下手すれば2本とも、か。」
「正直、あの愉快型魔術礼装なら宝石翁の所を勝手に抜け出してきても不思議じゃないですが・・・。」
「そうだな・・・俺の方で夜間の見回りは強化しておこう。」
「そうね・・・私とキリツグ、セラで使い魔もだしましょう、マユは結界走査でかなり負担がかかっているし・・・。」
「はい、奥様。」
「そうだね・・・魔術が関わる以上、恭也くん達の手は借りるわけには行かない・・・。」
「ありがとうございます、母様。」
そう言ってから、真優は土蔵の脇、石ころが集めて置いてある場所に行くと。
「■■■■―!」
理解不能の言葉を唱える。
すると、石は宝石のようなものに変化し、真優はそれをポケットに入れる。
「では、いってきます。」
「ん、いってらっしゃい。」
いつもの雰囲気に戻った真優は外へ出る。
それを見送り、土蔵に入り、その奥の隠し戸から工房へ入った俺は、嫌な予感がしていた。
カレイドライナー、《万華鏡の礼装》の契約者を示す言葉、そして、その万華鏡の礼装、カレイドステッキ。
――イリヤとか、ルビーの大好物じゃなかろうか。
後書き
作者です。
リリカルなのは的には第3話に当たります。
基本的に、真優と士郎の視点で進むので、原作での話数が数行で片づけられたりもしますし、かかわる場合は1話分がすごい長かったりします。
キャラクターに関する設定などはおいおいまとめていこうと思っています。
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