歌集「春雪花」
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
253
現し世に
想いぞ虚し
夏翳り
逢いたき君の
心求めし
この世界…私には侘しく、想いを紡いでも虚しいだけ…。
どれだけ晴れ渡った夏の空を眺めようと、心は決して晴れることはなく…不意に彼を探している自分に嫌気が差す…。
彼に会いたい…ずっとそう想い続け…彼の心の全てを欲してしまい…。
私なぞ死ねば良いと…幾度思ったことか…。
恋し影を
追いてや流る
雨雲の
溜め息つかば
雨ぞ降るなり
彼のことばかり考えながら…風に流されるだけの雨雲を見ていた…。
いつかは私もあの雨雲のように…何処かへと流されて…もう彼には会えないのではないか…。
この先のことなぞ、誰にも分かりはしないもの…。
ただ会いたいと溜め息をつけば…空からはポツリポツリと雨が落ちてくる…。
ページ上へ戻る