| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ五十二 島津四兄弟その五

「噂通りの方々ですな」
「我等がですか」
「そう言われますか」
「左様、天下の豪傑」 
 十一人共というのだ。
「その相がお顔にも出ていますな」
「確かに。気が違いまする」 
 歳久も言う。
「武勇はまさに水滸伝の好漢の如し」
「ははは、味方であって欲しいですな」
 家久は笑ってこう言った。
「是非」
「今は敵でないにしても」
 ここでだ、義久は言った。
「すぐに敵同士になるのが残念ですな」
「そのことですが」 
 幸村は飲みつつだ、義久に話した。
「関白様は降られ」
「薩摩、大隅、日向の三国でですな」
「満足されればよしと言われています」
「左様ですな、しかし」
「それでもですか」
「はい、それは出来ませぬ」
 どうしてもという返事だった。
「我等にしても」
「そう言われますか」
「はい」
 とてもという返事だった。
「それはおわかりですな」
「やはりそうですか」
「九州一統は我等の悲願を」
「その悲願を適え」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「関白様に」
「あくまでそうお考えですか」
「そうです」
 義久は幸村に揺ぎのない声で答えた。
「それが島津家の決断です」
「戦いですか」
「そうです、九州を一つにしてからです」
「では」
「はい、若し関白様が来られても」
 それでもというのだ。
「当家は戦います」
「あくまで、ですか」
「意地もありますし」
「武門の意地ですか」
「もっともその意地で家を潰すのは愚の骨頂」
 このこともだ、義久はわかっていた。
 それでだ、こう幸村達に言ったのである。
「意地で戦はしませぬ」
「勝てぬ戦は」
「九州統一は目指しますし」
「関白様とも戦うとなれば」
「戦います、むしろここで降ればどうなりますか」
 秀吉、即ち天下と戦わずにというのだ。彼が攻めてきた時に。
「そうした者に関白様はどう断を下されますか」
「武門に相応しい行いではないので」
 一戦も交えずに降る、武士として奮迅の戦いを見せずにだ。
「それでは」
「左様ですな」
「はい、どうしても」
「だからです」
「家を守る為にも」
「戦い当家の意地を見せます」
「そうされますか」
「島津家の戦とくとご覧あれ」
 義久は笑って言った、そして。 
 彼の弟達もだ、笑って言った。
「我等も同じです」
「兄上と同じ考えです」
「あくまで戦います」
 家を守る為にというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧