普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
163 〝“賢者の石”防衛戦〟
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
〝変身術〟の試験でネズミを純金製の宝石が散りばめられた〝嗅ぎたばこ入れ〟に変えたり、〝妖精の呪文〟の実技試験では、パイナップルにタップダンスをさせたりしていると、期末試験は問題無く消化できていて、気が付けば最終日で──残すはあと数教科のみに。
同室のネビル、シェーマス、ディーンに請われ、勉強を教えていた俺の知識が逆に深まったのだ。
……アニーとハーマイオニーの反応を見る限り、二人もまた、余裕綽々だったらしい。
「あ、アルビオンだ──っと、手紙…?」
朝食のオートミールを無心に掻き込んでいると、アルビオン──アニーの梟がやってきてアニーに手紙を落とし、アニーがそれを慣れた動作でキャッチ。
……ちなみに〝アルビオン〟は白い梟で──その名前はアニーに俺が≪赤龍帝≫だと申告する前から名付けられていた。……ぶっちゃけ〝ヘドウィグ〟なのだが、何故かアニーは〝ヘドウィグ〟と名付けるのは憚かられたらしい。
閑話休題。
アルビオンが落としていった手紙を、アニーは俺とハーマイオニーに見える様に置く。名前の欄には[A・P・W・B・D]と書かれているだけ。しかし、どうやらアニーとハーマイオニーからしたら〝その略称〟には馴染みが無かったらしく、首を傾げている。
「……A・P・W・B・D…。誰かしら?」
「さぁ、略称なのかも──っ」
アニーがそこまで言って、止まる。……ダンブルドア校長のフルネームに思い至った様だ。
「……もしかして、〝A・P・W・B・D〟──〝アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア〟だったり…?」
「それだわっ!」
ハーマイオニーの髪が弾けたように巻き上がる。その後に、〝開けてみましょう〟と云う運びとなり──そうな時にハーマイオニーが手紙の端に[〝人の居ない所〟で開く事]といった一文を発見する。
……三人での協議の結果、今日の夕食後の魔法の訓練の時に読む事に。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
試験も全部終わり、夕食も済ませた俺達は、いつもの様に【レーベンスシュルト城】に直行。……そして、直ちに例の手紙はアニーが開き──三人仲良く覗きこんだ。
――――――――――――――
君達がこの手紙を読んでいる頃には、私はホグワーツに居ない事でしょう。
恐らくクィリナスの謀でホグワーツから離れているはずです。
……この手紙を見て君達が起こす行動で咎められる違反は、〝深夜徘徊〟のみとします。……私は君達三人でなら、きっと乗り越えられると信じています。
A・P・W・B・D
――――――――――――――
「行かなきゃ」
「そうね」
「行くなら深夜だな。……じゃないとクィレル──もとい、リドルに“賢者の石”が渡っちまう」
何やら〝訊きにくい訊きたい〟事があるのか、そこでアニーがおずおずと手を挙げながら…
「ところで、ロン。リドルって誰なの」
「アニー、気付いてなかったのか? ……って、ハーマイオニーもか」
そこで俺は
[TOM MARVOLO RIDDLE(トム・マールヴォロ・リドル)]──と、虚空に杖で文字を記しては、二人がその文字を見たのを確認したら杖を振り…
[IAM LORD VOLDEMORT(俺様はヴォルデモート卿だ)]──と、そう文字を並び替える。
「……ガキ染みた、ただの言葉遊び(アナグラム)だよ」
「“賢者の石”が〝命の水〟が作れちゃう──絶対行かなきゃ」
「うん。決行は深夜だね」
ハーマイオニーとアニーは一瞬だけ顔を蒼白させるが、直ぐに意思を固めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「行くぞ」
「判ったわ」
「開けるのはロンに任せる」
深夜。漢気を見せたネビルをハーマイオニーの〝全身金縛り〟で振り切って、フラッフィーの居る部屋の前に辿り着き、一気に扉を開く。……するとそこには鼾をかくフラッフィーの姿が。
「見て、あのハープ」
「多分クィレルだよ」
眠りこけているフラッフィー。部屋の隅には勝手に演奏するように魔法が掛けられているハープを発見。既にクィレル──と〝寄生虫〟があの扉のずっと向こうに居るのは“忍びの地図”でも確認済みだ。
「……大体クィレルもクィレルだよ。大きいなら〝小さく〟すれば良いのにな──“縮め(レデュシオ)”」
………。
……。
…。
フラッフィーをファングくらいまで縮めてやり、第一関門クリア──は良かったが扉を降りたら、蔓に絡まれる。
「……蔓──これは多分スプラウト先生の罠だわ!」
「で──どうすれば、いいの…っ!?」
「動かないで! 動けば動くほどこの蔓は締まるの…!」
俺が助言を入れる前にハーマイオニーが攻略。
………。
……。
…。
「……これは…」
「多分フリットウィック先生の罠だな…」
ハーマイオニーの助言によってスプラウト先生の罠を突破し──流れに沿うように進んでいくと拓けた空間にでる。……その空間には翅の生えた、夥しい数の鍵が飛んでいた。
「……こりゃ鍵を取りにいくしかないか」
「ここはボクがいくよ」
次の場所に進めるであろう扉の近くにある箒を指しながら言ってみる。……目を逸らしているハーマイオニーを生暖かく見守っていると、アニーが立候補。
……しかし、アニーが箒を握った瞬間、部屋の中に在った鍵がアニー目掛けて襲い掛かる。アニーはあっちへ行ったりこっちへ行ったりで鍵を振り切ろうとするものの、鍵はどこまでもアニーを追跡する。
「アニー!」
叫ぶハーマイオニー。しかし俺は心配していない。……何故ならば杖を構えていたのを見ていたから。
――“万全の護り(プロテゴ・トタラム)”
アニーを狙う鍵は、アニーの〝盾〟に触れた瞬間砂塵となってきえる。……軈てアニーを狙っていた鍵が消えると残ったのは、鈍臭く飛ぶ──片方の翅が折れている様な、ぼろぼろの鍵だけで…
………。
……。
…。
次の場所に進んでみれば巨大なチェス盤があり──はしたが、ハルケギニア時代、たまにジョゼフからチェスの手解きを受けていた俺からしたら、突破はそうそう難しいことでもなかった。
……今でもジョゼフに勝てると思えないのは、俺の想像が勝手にジョゼフを持ち上げすぎているからか。
閑話休題。
その次の部屋はトロールだったが何故か気絶させられていた。そのまま三人で通過。
次の関門であろう場所には、7つの大小様々な並べられた瓶と巻物が置かれているだけだった。
(流れからするなら、スネイプ先生の罠──か)
〝〝原作〟じゃあったのかね?〟──などと考えながら最後尾を歩いていた俺が部屋の敷居を跨ぎきると、ごうっ、と紫炎が吹き上がり来た道を──黒炎が前方の道を塞ぐ。……有り体に云わば閉じ込められた。
「すごいわ、これ! 論理パズルよ」
ハーマイオニーはそんな状況下で、巻物を読みながら喜色を含めた声を上げては、ハーマイオニー曰くの〝論理パズル〟に没頭しだす。
「解ったわ!」
……数分してハーマイオニーはにらめっこしていた巻物から顔を離すと、並べられていた瓶の中から一番小さな瓶を取る。
「これが私達をあの黒い炎から護ってくれるわ」
「……でも、誰が行くの?」
瓶は1つ。それも一口あるかどうか。……アニーのその疑問は尤もである。
「いや、殖やそうぜ──“そっくり(ジェミニオ)”」
俺が掛けた〝双子の呪文〟によって、瓶は三つに増える。これで三人で通れる様に。しかしハーマイオニーの肩は震えていて──
「私──」
「ハーマイオニー、ここまで知恵を貸してくれてありがとう」
「……っ! 私…っ!」
「ハーマイオニーはダンブルドア校長へと直ぐに梟を飛ばしてくれ。……現状を論理的にダンブルドア校長へと説明出来る、ハーマイオニーにしか頼めない事だ」
「判った…。……私、行ってくる。……だからお願い、二人共──絶対に生きてて…っ!」
ハーマイオニーはしゃがれた声でテーブルから一本の瓶を取るとそれを一気に飲み干し、来た道──紫の炎の向こうに消えていった。
「……行こうか、アニー」
「……うん。……ところで──作戦とか決まってたりするの?」
「……理想的な流れとしては〝武装解除〟で杖を奪い、〝固め〟た後に、〝粉々〟にしてやる事だな」
「死ぬんじゃない…?」
「ヴォルデモートが憑いている以上は、出来ればだが、壊しきっておきたい」
「……そっか…」
アニーは〝選ぶ〟事が出来るのか、食い下がらない。……それからアニーに〝もう1つの作戦〟を説明して、二人で小瓶の中の液体を飲み干した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
黒炎の向こうには“忍びの地図”が示していた通り、クィリナス・クィレルが居た。
「貴方はクィレル先生…?」
“みぞの鏡”で棒立ちになっているクィレルに、俺は問い掛ける。……〝思いもよらなかった〟と云う情感を籠めるのがミソ。
「……馬鹿なっ! なぜアニー・ポッターが二人居る!」
クィレルは鏡で俺とアニーの存在に気付き──“己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)”でアニーに変身した俺と、アニーを見て甚く狼狽する。……そしてそれは何よりも判りやすい隙であり、これを好機とみた俺は…
――“麻痺せよ(ステューピファイ)”
「っ! “護れ(プロテゴ)”! ……“縛れ(インカーセラス)”!」
――“護れ(プロテゴ)”…“妨害せよ(インペディメンタ)”
――“武器よ去れ(エクスペリアームス)”
「……っ! しまった!」
まず俺の〝失神呪文〟は防がれ──お返しとばかりに〝捕縛呪文〟が飛んでくるが、それを防御してクィレルの動きを〝妨害呪文〟を掛けて遅らせる。……そしてアニーの〝武装解除〟がクィレルの杖を奪う。
――“固まれ(デューロ)”
アニーからのアイコンタクトに1つ頷く。……〝〝トドメ〟は俺が〟──と云うことなのだろう。
……〝固形化〟しているクィレルに向けてとある呪文を使う。
――“粉々”
粉々になるクィレルの肉体。
――<この恨み忘れんぞ、アニー・ポッター!>
そんな絶叫は聞こえなかった事にして、ダンブルドアが戻ってくるまではアニーと談笑する事にした。
SIDE END
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