普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
162 ノルウェー・リッジバック種のノーバート
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
“みぞの鏡”の在る部屋でダンブルドア校長と出会って──クディッチでスリザリンが活躍しているのを三寮で臍を噛むような思いで見たりしているうちに数ヶ月が経過していた。
学年末の試験も視野に見えていて、まだ10週間も前だと云うのにハーマイオニーなんかは、もう既に試験の勉強に取り掛かっている。……斯く云う俺とアニーもそんなハーマイオニーに触発されてぼちぼちと試験に対しての勉強に勤しんでいる最中だ。
……あの夜のダンブルドアとの会談は俺達──もとい、アニーとハーマイオニーの心から痼を取り払い、今となっては試験に対する集中力も高まっていた。
そして今朝、朝食を腹の中に掻きこみながらハーマイオニーと〝魔法史〟の効率の良い勉強方法を議論している時、ハグリッドから俺やアニー、ハーマイオニーの元に梟便が届いた。
[こんにちは。今日は休講日でしたよね? 面白い物を手に入れたので、よかったら見に来ませんか?]と云う──実にハグリッドらしい簡素なメッセージで、俺達も試験勉強で湯だった頭を冷ますと云う意味も含めて、ハグリッドの元へ向かうことに。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「二人はハグリッドの云う〝面白いもの〟って、何だと思う?」
城から【禁じられたの森】の近くにあるハグリッドの小屋への道。アニーは沈黙が支配していたそんな雰囲気に耐えきれなかったのか、ふとそんな事を俺とハーマイオニーに投げ掛ける。
「……コカトリスの幼体でも手に入れたとか?」
「さすがにハグリッドでも、コカトリスを飼うなんてことはしないはずよ」
時期的にハグリッドの云う〝面白いもの〟がドラゴンの卵──〝ノルウェー・リッジバック種〟で、後の〝ノーバート〟だと云うのは何となく予想はついているが、一応惚けておく。
「ハグリッドー?」
軈てハグリッドの小屋に辿り着いき、最早慣れた動作でアニーが小屋をノックする。……するとハグリッドはよほどその──〝面白いもの〟を俺達に見せたかったのか、すぐに小屋から顔を出す。
「お、待っとったぞ、入れ入れ」
中に入りハグリッドがドアを閉める。
「……何だかこの小屋暑いわね」
ハーマイオニーは苦言を呈する。 3月中旬──もう春はすぐそこまで見えているというのに、ハグリッドの小屋は窓すらも閉めきられていた上に、もうもう、と熱が込もっていた。
〝ドラゴンタイプ〟よろしく熱に強くなっている俺と、〝炎術士〟で〝火〟に強いアニーはともかく、ハーマイオニーは〝ガリ勉〟な面は最近の訓練でそこそこ緩和されているが、11歳の少女には変わりないのだ。
「ハグリッド、窓を開けていい? このままじゃ、ハーマイオニーが干からびちゃう」
「悪ぃが、そりゃあなんねぇ」
しかしハグリッドは、アニーのハーマイオニーを慮る提案を悪びれながらも拒否する。……あまり俺達からの頼みを断った事がないハグリッドである。
そんなハグリッドの態度にふと違和感を覚えた俺達三人は熱源を探す。
「っ!?」「っ!?」
……二人のリアクションとタイミングからして、同時に発見したらしい。
「ハグリッドェ…」
「これは…」
「ハグリッド、説明してくれるよね?」
上から俺の〝呆然〟、ハーマイオニーの〝考察〟、最後にアニーの〝詰問〟。……熱源と思しき暖炉を見ると、もう3月になっていて──更には日中なので、火を入れる必要が無いだろうに、暖炉には火が点いていた。
……それだけならハグリッドが実はかなりの冷え症だったと云う一面を知る事となる一幕だったのだが、もちろんそんな単純な事でも無く──暖炉の中でぱちぱち、と燃える薪と一緒に横たわっている鴕の〝ソレ〟と同じくらいの大きさの卵を見付けた。
「……これはドラゴンの卵で間違いないかな、ハグリッド」
「おうとも」
ハグリッドは得意気に頷く。……大きさこそは鴕の卵と同じくらいだが、中に居るモノを俺が見間違えるべくもない。
「どんな種類?」
「〝ノルウェー・リッジバック種〟だ」
取り敢えずそこまで訊いて、小屋の天井を仰いで仰天しておく。……〝またハグリッドの悪癖が始まったのだ〟──と。
ハグリッドは学生時代に〝アクロマンチュラ〟──蜘蛛のアラゴグを秘密裏にホグワーツで飼育していて、誤解ではあったが──アズカバンにぶちこまれて痛い目に遭っていると云うのに、喉元を過ぎたと同時にその後悔も忘れてしまっているらしい。
……云うまでもなく、ドラゴンの飼育も違法だ。
「かなりの値段がしたんじゃないか?」
チャーリーからドラゴンの卵の闇相場は聞いた事がある。ピンキリだが、100ガリオンを優に超えていたはずである。
「バーで会ったよく判らん、黒いローブの男に賭けで勝ってな…」
「後日引き渡しだったろうに、よくバックレられなかったな。……俺だったらウン百ガリオンもする代物なら、絶対に渡したくない」
「その場でくれたんだ。……どうにも処分に困っとったらしい」
「「えっ?」」
ハグリッドのそんな答えにアニーとハーマイオニーが驚く。……どうやら二人はその状況がどれだけ〝異状〟だったかが判ったらしい。
「ハグリッド、その時おかしいとは…?」
「何しろ、次から次に酒を奢ってくれてな、その──な…?」
言い訳がましく語るハグリッドに、勝手に天井と水平になろうとする顔を、顎を引いて必死に抑える。
「……で、余り急かす様な事は言いたくないんだが──ハグリッドはこのドラゴンの卵を孵してどうするつもり?」
「ロン、違法なのは充分に理解しとるが判っておくれ、ドラゴンを飼うのがガキん頃からの夢だったんだよ」
「……取り敢えず、火にくべてしまった以上は孵すしかないんだろうけど…」
「あっ」
そんなこんなで皆して頭を捻って、そろそろチャーリーにぶん投げる案を出そうとした時、アニーがいきなり〝手のひらポン〟をして、妙案が浮かんだのか──明るい声を発した。俺、ハーマイオニー、ハグリッドはいきなり声を発したアニーに顔を向ける。
「なんか思いついたの、アニー?」
「チャーリー──チャーリー・ウィーズリーだよ。……ロン、確かロンのお兄さんのチャーリーは確かルーマニアで〝竜使い(ドラゴン・キーパー)〟をしてるって言ってたよね?」
「ああ、言ったな。……もしかして──」
「その〝もしかして〟だよ。……これはもう、その道のプロに頼るしかないと思う」
豈図らんや、アニーの口から〝チャーリーに頼る〟と云う俺と同じ提案がでるとは。……俺も出そうとしていた案だったので、アニーの提案に俺も承諾。ふと横のハーマイオニーを見てみれば、乗り気なのが判る。
「だがなぁ…」
「ハグリッド、ダンブルドアに迷惑を掛けたくないでしょう?」
「それは、もちろんだとも…」
ハグリッドはごねるが、ハーマイオニーが追い討ちを掛けるかの様にダンブルドアの名前を出してハグリッドを諌める。
……結局のところ、これから孵るだろうドラゴンはチャーリーに任せる事になり、その日は時間も時間だったので一旦解散となった。
SIDE END
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
SIDE アニー・リリー・ポッター
「……アニー、ハーマイオニー、どう思った?」
日も傾きはじめた、ハグリッドの小屋からホグワーツの城への──もはや歩き馴れた道程で、いきなりロンが口を開く。……ロンのその〝どう思うのか?〟と云う──ざっくばらんな質問だったが、ロンがボクとハーマイオニーに訊きたい事は大体理解している。
……つまり、ロンの問い掛けは〝誰がハグリッドにドラゴンの卵なんか渡したのか〟──と云う事。
「ボクは十中八九〝彼〟だと思ってるよ。……それに、ハグリッドの事だからフラッフィーの宥め方を、そいつにうっかり洩らしててもおかしくないかな」
「私もそう思うわ。……だってハグリッドがドラゴンに興味津々だなんて、ホグワーツの誰でも知ってると思うの──それにハグリッドの話では〝お酒の席〟での話だって云うし…」
「……俺も二人に賛成かな。今はダンブルドア校長が居るとはいえ──ちょっと拙いかもな」
ロンのその不安も尤もで、ダンブルドア先生は教職にあり──公人なので、〝魔法省──お上からの召喚状〟などと謀られたりしたら割りとどうしようもない。
「……ダンブルドアが居なくなったら…っ!」
ボクの隣でロンの言葉に首を傾げていたハーマイオニーも、軈て顔を蒼くさせる。……どうやらハーマイオニーもまた、ボクとロンが懐いた──〝杞憂〟と割りきるには可能性が高すぎる〝不安事項〟に辿り着いたらしい。
……尤も、あの──老獪然としたダンブルドア先生なら、それを見越していて──〝“賢者の石”の防衛〟をボク達にぶん投げる可能性も無きにしも非ずだが。
閑話休題。
その後三人で〝あったりなかったり部屋〟──もとい〝別荘〟を十全に活用しながら宿題を次々にやっつけているとハグリッドから〝ドラゴンが孵った〟といメッセージが届く。
卵から孵った〝ノルウェー・リッジバック種〟はハグリッドによりノーバートと名付けられ──ロンが〝竜語使い(ドラコニカ)〟だと判明したりと色々あったが、ノーバートは無事チャーリーに引き渡される。
〝違法飼育のドラゴンの引き渡し〟なんて、さすがに日中からやるわけにもいかず、またもや──最早、数回は経験している深夜徘徊をする事となったが、特に問題は無かった。
……〝お邪魔虫〟も、当然のごとくロン謹製の〝霊退散符〟によって絡まれることも無し。
閑話休題。
そして、人に依っては永遠に来てほしくないであろう試験のシーズンになる。
SIDE END
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