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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第76話

その後現場検証を終えたロイドはルイーネ達を集めて自分の推理を話し始めた。



~西クロスベル街道~



「さてと……何か判明した事はあるかしら?」

「ええ、まず最初に落石などが線路に落ちた可能性ですが……それは真っ先に否定できると言ってもいいと思います。」

「そ、そりゃまたどうして?」

「つまり、それを裏付ける証拠があるってんだな?」

ソーニャに尋ねられ、答えたロイドの話を聞いたレイモンドは戸惑い、ドノバンは尋ねた。

「はい、それは――――機関車先端の傷の少なさです。」

「ああ、それは僕も思ったよ。」

ロイドの答えを聞いたワジは頷き

「どういう事かしら?」

「確かに、機関車の先端には特に傷がなかったけど……」

「そうね。説明してもらえるかしら?」

ソーニャは不思議そうな表情をし、ミレイユが呟いた言葉に頷いたルイーネはロイドを促した。

「普通、落石で脱線する場合、線路上に落ちた岩が先頭車両とぶつかった場合だと思います。その結果、スピードに乗った巨大な質量がバランスを崩し、線路から外れて脱線する……それ以外に、ここかまで派手に脱線する事は考えにくいはずです。」

「おお、なるほど……!」

「なのに機関車の先端には傷らしい傷が見当たらない。一番ありそうな可能性が真っ先に消えたってわけか!」

ロイドの説明を聞いたグレイスとドノバンは頷いた。

「……なるほど。確かに見過ごせない事実ね。それじゃあ、他に考えられる脱線の可能性はあるのかしら?」

「はい……最初は、何らかの爆発物が使われたかと思ったんですが。」

「そ、それって!?」

「何らかの武装集団がテロ工作をしたとか……!?」

ソーニャに尋ねられ答えたロイドの言葉を聞いたエリィとノエルは厳しい表情をし

「通商会議の件でクロスベルは二大国から睨まれている存在だからな……二大国の仕業ということも否めないな……」

リィンは真剣な表情で考え込んでいた。



「―――いや、その可能性は俺も真っ先に思い当たってな。一通り見渡してみたんだがどうやら爆発物が使われた形跡は全くねぇな。」

するとその時ランディが意見をし

「そうね、今のところこちらも見つけていないわ。」

ランディの意見にミレイユも頷いた。

「そうなると他に考えられるとしたら……”何か”に機関車の右側から体当たりされた可能性でしょう。」

「な、なにィッ!?」

「た、体当たりって、そんなムチャクチャな……!」

そしてロイドの推理を聞いたドノバンとレイモンドは声を上げ

「車のレースのデットヒートならそういう事はありそうだけど……」

グレイスは呆けた表情で呟いた。

「なるほど……機関車の右側にあった大きく凹んだ部分ですね。」

するとその時何かに気付いたティオが言った。

「ああ、多分こういう事が起きたんじゃないかと思う。その”何か”は、走行中の列車の機関車の真横に降り立った。運転士さんが上げた叫び声というのは多分、その時のものだろう。”何か”はそのまま併走しながら機関車の右側から体当たりをして……横からのベクトルを加えられた機関車は左側に脱線してしまう。そして”何か”は機関車を左の岩壁に押し続けて……永い傷跡を岩壁に残した挙句にようやく停車させた。そして後続の客車はこんな風にバラバラな形に脱線する事になった。……とりあえずこれが現時点での仮設なんですが。」

「はああっ……!」

ロイドの説明を聞いたレイモンドは感嘆の声を上げ

「……見事だわ。」

「ええ……私達ではそこまで気付けなかったわ。」

ミレイユとルイーネは口元に笑みを浮かべて呟き

「いやはや、推理にかけちゃ兄貴を越えて、ルファディエルと並んだんじゃねえか?」

ドノバンは感心した様子でロイドを見つめ

「確かに……ガイさんはもっと直感で捜査するタイプで、ルファディエルさんは集められた情報と自分の知識を合わせて分析し、捜査するタイプですもんね。」

(フフ………)

グレイスは口元に笑みを浮かべて頷き、ルファディエルは微笑んでいた。

「おいおい、大好評じゃねえか。」

「ふふっ……何だか誇らしいわね。」

「やれやれ、僕もそこまではまとめ切れなかったかな。」

「よくそこまで推理できたな……」

「ふふ、大したものね。―――それでロイド君、そこまでした”何か”というのはやはり魔獣なのかしら?それも最近現れた”幻獣”とか?」

「そうですね……確かに、走行する列車を脱線させることが出来るほどの力の持ち主です。大型の幻獣と考えるのが自然だとは思いますが……」

ソーニャに尋ねられたロイドは考え込んだ後答え

「ですが、幻獣が出現した割には上位属性の気配は感じません……」

「あの”蒼い花”もここらでは咲いてなさそうだよね。」

ティオとワジが説明を続けた。

「確かにそうね………それでは一体、どんな生物が?」

(他に考えられるとしたら”結社”の人形兵器だろうけど……こんな風に直接、動く連中なのか?)

そしてソーニャに尋ねられたロイドが考え込んだその時!



オオオオオォォォォォォォォ――――――――――――ッ!!



何かの叫び声が聞こえてきた!

「い、今のは……!?」

「ま、魔獣の吠え声……!?」

声を聞いたミレイユとレイモンドは驚き

「そ、それにしては不気味すぎる感じが……」

「それに叫び声のようにも感じられるわね……」

エリィとルイーネは戸惑っていた。

「センサーを起動します……!アクセス……!」

その時ティオは魔導杖を掲げて周囲の様子を探り

「どこ、どこにいるの!?レインズ君、何とかカメラに収めなさい!」

「無茶言わないで下さいよ~!」

グレイスは周囲を見回した後部下に無茶を言った。

「―――距離10セルジュ!西へ遠ざかっています……!」

その時周囲の状況を調べ終えたティオがロイド達に報告した。

「くっ……みんな、追いかけるぞ!」

「ああ、合点承知だ!」

「了解しました!」

ティオの言葉を聞いたロイドの号令にランディとノエルは頷き

「おいおい、無茶すんなよ!?」

ドノバンは驚き

「警備隊からも増援を!」

ミレイユは申し出たが

「いえ、そちらは復旧作業に専念してください!まずは俺達で追ってみます!」

「くっ……そうだったわね。」

ロイドの言葉を聞いて悔しそうな表情で唸った。

「……そろそろ重機も到着する。お言葉に甘えるしかなさそうね。何かあったらかけつけるから必ず連絡してきなさい!」

「いざとなれば私やギュランドロス様達も出るから、決して無理はしないように。」

「了解しました!」

ソーニャとルイーネの言葉にノエルは頷き

「……………………」

ワジは複雑そうな表情で黙り込んでいた。



その後声が聞こえた方向をロイド達は追って行った………………… 
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