英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第75話
ロイド達が脱線事故が起こった現場に到着すると多くのバスが事故現場から去って行き、クロスベル方面に向かっていた。
~西クロスベル街道~
「今のバスは……」
「共和国方面への行き来に使われている旅客バスですね。」
「多分、列車に乗っていた乗客を振替輸送しているんでしょうね。」
「やれやれ……大変だな。」
ロイドの疑問に答えたノエルとエリィの言葉を聞いたランディは溜息を吐き
「……事故の規模はどの程度なんでしょうか?」
「……後は怪我人の数だな。救急車の数はそんなに見かけなかったから、怪我人は多くないといいんだが……」
ティオとリィンは考え込んでいた。そしてロイド達が乗る車は現場近くに駐車し、ロイド達が現場に向かうと警察官と警備隊員がロイド達に近づいてきた。
「やあ、ロイドたちか。」
「フランツ、お疲れ。」
「ランディ先輩、ノエルさんも。お疲れ様です。」
「そちらこそお疲れ様です。」
「どうやら事故現場ってのはその先で間違いないみてぇだな?」
「はい、既にソーニャ副司令とルイーネ一佐、警察の方が検証に入っています。」
「二課のドノバン警部とレイモンドさんが来てるよ。しかしまあ、見事なまでに脱線しちゃってるみたいだね。ありゃあ、復旧までにちょっとかかりそうだなぁ。」
「その……乗客の人達の被害は?」
話を聞いていたエリィは不安そうな表情で尋ねた。
「幸い、死者は出なかったようですが何人か重傷者が出たみたいですね。治療の必要がありそうな方は先程救急車で搬送されました。」
「ああ、さっき見たよ。」
「他の乗客は、一通りバスで?」
「ああ、市内に行くのとアルタイル市まで行くのの2手にわかれるらしいね。さっきまで大混乱だったよ。」
「……無理もないかと。」
「列車事故なんて、大惨事な事故だしな……」
「やれやれ。厄介な事故が起きたもんだね。」
話を聞いていたティオは疲れた表情で頷き、リィンは真剣な表情で言い、ワジは溜息を吐いた。
「とにかく俺達も事故現場を見てみよう。通してもらってもいいかな?」
「ああ、お前達なら誰も文句は言わないだろ。」
「どうぞ、お通り下さい!」
その後ロイド達は事故現場に向かった。
「いや~、大変な事故が起こってしまいましたね!ズバリ、脱線事故の原因は!?」
ロイド達が事故現場に到着する少し前、グレイスはソーニャ達に尋ねていた。
「見ての通り、現在調査中だ。考えられるとしたら線路への落石で先頭車両が脱線したってトコだろ。」
「申し訳ないけど、ここから先はマスコミにはお引き取り願いするわ。すぐに復旧作業に取り掛かる必要がありますから。」
「ええっ!?」
「司令、それは……」
「あら……」
ソーニャの答えを聞いたグレイスは驚き、ドノバンは複雑そうな表情で目を丸くしているルイーネと共に見つめた。
「警察として、現場検証を優先したいお気持ちはわかります。ですがこの横断鉄道はゼムリア大陸における大動脈……既に鉄道公社、両帝国・共和国方面、更にはディーター市長からも大至急の復旧が要請されています。我々警備隊としてはその要請に応えなくてはなりません。……そうでしょう?ルイーネ一佐。」
「う~ん…………原因もわからずじまいというのはちょっと不安だけど、仕方ないですね。」
ソーニャに視線を向けられたルイーネは考え込んだ後答えた。
「ルイーネ一佐の言う通り、理屈はわかりますがね……」
一方ドノバンは渋い表情で反論し
「でも、事故の原因がわからないと再発の恐れがあるんじゃ……?」
ドノバンに続くようにグレイスも尋ねた。
「それに関しては、復旧と並行するしかないでしょう。とにかく遅くとも、夕方までには片側の路線を空ける必要があります。手配した重機が到着する前に――――」
そしてソーニャが答えかけたその時
「待ってください!」
ロイド達がソーニャ達に近づいてきた。
「あら……」
「あなたたち……」
「あら、ロイド君達!?」
「おお、来たのかよ。」
ロイド達を見たルイーネ達は驚いた。
「あの、副司令……現場検証もしないで復旧作業に入るんですか?」
ノエルは不安そうな表情で尋ねたが
「あなたも警備隊の所属ならばこの路線の重要性はわかるでしょう。それに言いたくはないけれど……復旧が遅れれば、それだけでエレボニアとカルバードの横槍を招くことに繋がりかねないわ。」
「そ、それは……」
「……十分に考えられますね。」
「フフ、この間の通商会議で痛い目にあったから、こちらの隙を突くきっかけを淡々と狙っているでしょうしね。」
ソーニャの答えを聞いて答えを濁し、エリィは疲れた表情で頷き、ルイーネは微笑み
「……その原因の一端を担う一人の貴女がいいますか?」
ルイーネの言葉を聞いたソーニャはルイーネを真剣な表情で見つめ
「あらあら。どうして私達が責められるのですか?私達のおかげでクロスベルの防衛能力の高さは他国から高評価をもらえたのだし、第一痛い目にあわせたのはメンフィルですよ?私達は自治州法に則ってメンフィルに頼まれて動いただけなのですし。それに例えあの件を二大国が気にしてないくても、その件とは別にクロスベルを手に入れるきっかけを狙っている事は事実でしょう?」
「……………………………」
微笑みながら答えたルイーネの言葉を聞いたソーニャは黙り込み
「ふ、副司令……?」
「………………………」
ソーニャの様子を見たノエルは戸惑い、ランディは重々しい様子を纏って黙り込み
(どうやらあの件以降、警備隊内で派閥争いのような事が起こっているみたいね……………)
ルファディエルは真剣な表情で考え込んでいた。
「ふう、それを言われますとこちらも強くは出れませんなぁ。」
「うーん、でもこちらには真実を追求するという使命が……」
一方ドノバンは溜息を吐き、グレイスは考え込んでいた。
「――――ソーニャ副司令。30分、いえ重機が来るまで俺達に時間をもらえませんか。」
その時考え込んでいたロイドは申し出
「貴方達に……?」
ロイドの申し出を聞いたソーニャは目を丸くした。
「ええ、現在のクロスベルで今回の事故が起こったこと……自分にはとても、単なる偶然とは思えません。本当に”必然性”は無いのか見極めるべきではないでしょうか?」
「……………………………………」
「フフ、確かにその通りね。」
ロイドの説明を聞いたソーニャは真剣な表情で黙り込み、ルイーネは微笑み
「例の”幻獣”による被害の可能性もありますし……」
「ま、気休め程度に任せてくれてもいいんじゃないッスか?」
ティオとランディもそれぞれ意見を言った。
「……そうね、私としたことが少しばかり焦っていたようだわ。――――ドノバン警部、ルイーネ一佐。まずは現場検証を優先しましょう。代わりに復旧作業が始まればそちらに集中させていただきます。」
ロイド達の意見を聞いたソーニャは溜息を吐いた後ドノバン達に視線を向けて意見し
「ええ、こちらも異存はありません。」
「勿論、私も異存はありませんわ。」
ソーニャの意見を聞いた二人は頷き
「あのー、できればあたしたちの取材も……」
グレイスは笑顔で申し出
「復旧作業が始まるまではどうぞご自由に。ただし……現場検証の邪魔はしないように。」
「ええ、それは勿論。」
ソーニャの言葉を聞いて頷いた。
「さてと………私はギュランドロス様に現在の流れを報告した後、検証を始めます。」
「……本来でしたら私が司令に報告すべき事なのに、お手数をかけてすみません。」
「フフ、気にしないで下さい。………もしもし、ルイーネです。……………脱線事故の件ですが……………」
そしてルイーネは懐からエニグマを出して、通信をしながらロイド達から去って行った。
「あの……副司令。事故とは関係ないのですが少し気になる事が……」
ルイーネが去るとノエルは不安そうな表情で尋ね
「ルイーネ一佐……というよりもなんだか”六銃士”に対して、厳しい目で見ているような言い方だったねぇ。」
「ええっ!?」
「……そうなんですか?」
口元に笑みを浮かべて言ったワジの言葉にリィンは驚き、ティオは呆けた表情で尋ねた。
「………………………」
尋ねられたソーニャは複雑そうな表情で黙り込み
「そっか、お前らは知らないのか……」
ドノバンは重々しい様子を纏って呟き
「あら、ロイド君達は知らなかったんだ?――――現在、警備隊、警察共にヴァイスハイト局長やギュランドロス司令達――――”六銃士派”が増え始めている事に。」
グレイスは意外そうな表情で尋ねた後真剣な表情で答えた。
「なっ……!?」
「”六銃士派”……ですか?」
グレイスの言葉を聞いたロイドは驚き、エリィは戸惑いの表情で尋ねた。
「ええ。……元々ヴァイスハイト局長達は今までの功績や活躍、後は普段の行動もあって市民、部下共々から支持は高かったのだけれど………この間の通商会議で二大国に大反撃して、クロスベルを守ったでしょう?その事から、”六銃士”達やルファディエルさんを”個人的”に慕う人達が急増し始めているのよ。」
「ルファ姉まで!?」
「……まあ、確かにあの作戦を考えたのはルファディエルさんだしな……」
「あの……それのどこがいけないのですか?局長や司令達が支持されているという事は結果的にクロスベル政府の支持を高める事にもなりますし……」
グレイスの話を聞いたロイドは驚き、リィンは苦笑し、エリィは戸惑いの表情で尋ねた。
「―――言い換えれば、ギュランドロスのオッサンや局長達がクロスベル政府に対してクーデターを起こせば成功する可能性が非常に高いって事だろ?」
その時ランディは真剣な表情で尋ね
「なっ!?」
「ク、クーデター!?そんな噂まであるのですか!?」
ランディの疑問の聞いたロイドは驚き、エリィは信じられない表情をした後厳しい表情でソーニャ達に尋ねた。
「……いえ。そういった動きや噂は今の所、一切感じられないわ。……でもね、市民もそうだけどタングラム門の警備隊員達の間からもちらほらと噂されはじめているのよ。――――いっそ”六銃士”達がクロスベルの政治に関われば、ディーター市長やマクダエル議長よりもクロスベルをより良い方向へと導けるんじゃないかって。」
「警察の方も同じだ。局長達――――”六銃士”がクロスベルにいる限り、自分達の勝利や正義は揺るがないって感じでな。」
「そ、それって………」
「まるで軍隊や”王”を慕う民のような考え方ですね……」
ソーニャとドノバンの説明を聞いたノエルは信じられない表情をし、リィンは真剣な表情で呟き
「ランディさんは気付いていたんですか?」
ある事が気になったティオはランディに視線を向け
「……俺がベルガード門の連中のリハビリの為に警備隊に出向していた時から、そんな兆候はあったからな。ギュランドロスのオッサン達がいる限り、警備隊は永遠に誇り高くいられるだろうってな。ミレイユの奴もオッサン達の滅茶苦茶な行動に文句は言いつつも、最終的にはオッサン達だから仕方ないみたいな言い方で苦笑いしながら受け入れていたからな。……ま、あの阿保司令にさんざん苦労させられた時に比べれば、そう思うのも仕方ないと思うがな。実際あいつも”六銃士派”だと思うぜ?オッサン達の中でも特にエルミナ大尉とは色々話があって仲が良好な上、エルミナ大尉直々に何度も戦術を含めたさまざまな事に対して個人的に相談していた場面を何度か見た事あるし、エルミナ大尉直々から戦術を習っている所を考えるとエルミナ大尉の弟子みたいな立場といってもおかしくないだろうな。」
「……そういう意味ではベルガード門の警備隊員全員は”六銃士派”といってもいいでしょうね。ベルガード門の警備隊員全員は”六銃士”直々から訓練を受けた影響なのか、タングラム門の警備隊員達と比べると練度が圧倒的に違うのよ。」
視線を向けられたランディは重々しい様子を纏って呟き、ランディに続くようにソーニャは答え
「確かに前司令と前局長はあまりにも酷すぎたもんねぇ?」
ワジは口元に笑みを浮かべて言い
「そんな中、現れた市民の間で”英雄”扱いされて、健全な性格をしているヴァイスさん達は今まで上層部の汚職によってさんざん苦労させられた人達にとってはまさに市民の皆さんが慕っているアリオスさんのような”英雄”や”正義”のような存在なんでしょうね。」
ティオは静かな表情で呟いた。
「…………………もしかして”六銃士派”でない人達との派閥争いとかも起こっているのでしょうか?」
一方ロイドは複雑そうな表情で黙り込んだ後真剣な表情で尋ねた。
「……いいえ。今のところはそういった傾向は一切見られないし、仕事にも影響は出ていないわ。ただ”六銃士派”の人達が司令達を強く慕っているだけよ。」
尋ねられたソーニャは答え
「そういう意味ではノエル。お前にとっても他人事じゃねえぞ。フランは”六銃士派”の筆頭の中の一人と思われる人物で、局長達の事を心酔している傾向があるしな。」
「そ、それは………」
「フランさんは局長の恋人の一人で局長の好色家な部分や猟兵達を皆殺しにしたという事実も受け入れていますものね……………」
「確かにそうだったな……………そう言えば彼女、局長との結婚も真剣に考えているんだろう?」
ドノバンに言われたノエルは言いよどみ、エリィは疲れた表情で溜息を吐き、リィンはノエルに視線を向け
「はい………『結婚したらヴァイスさんとの子供を最低2人は産む!』って言ってるほどですよ……」
視線を向けられたノエルは複雑そうな表情をした後、疲れた表情で溜息を吐いた。
「まあ、前局長達との比較もそうだけどみんな、アリオスさんやルファディエルさんのようにインパクトが強すぎる上、ほとんどの人達が容姿端麗な人達ばかりだから仕方ないわよ。ギュランドロス司令だってまさに”漢”を表現するような男性だから、そういう男性が好みの女性の市民達に人気があったり、一部の男性の市民達も彼を目標にしたりしているのよ?それにヴァイスハイト局長なんか好色家として有名だから、『恋人にはなれなくても一度は抱かれてみたい!』や、『ヴァイスハイト局長なら初めてを捧げてもいい!』なんて言う女性の市民達の声を結構聞いた事があるわ。」
「何!?クッ……あのリア充王局長め!クロスベルの綺麗所を全て喰う気かっ!?まさか弟王のロイドを超えるほどとは……!」
「なんでそこで俺が出てくるんだよ……」
「ハーレムや酒池肉林を公言しているヴァイスさんなら、実行してもおかしくないところが洒落になっていませんね。」
そしてグレイスの話を聞いたランディは驚いた後悔しそうな表情をし、ランディの言葉を聞いたロイドは呆れ、ティオはジト目で言った。
「IBCでのギュランドロス司令の発言が本当に実現しそうになってきたわね………」
「ああ……………―――だけど、今はクロスベルの未来を心配するより目の前の事件を解決する事が重要だ。警部、自分達の方も現場検証に入らせてもらっても?」
不安そうな表情で呟いたエリィの言葉に頷いたロイドは気を取り直してドノバンに尋ねた。
「おお、手分けするとしよう。そうそう、向こうの方に列車に乗っていた車掌が休んでいる。運転士は病院に運ばれちまったがそいつから事故当時の話は聞けるだろ。」
「了解しました。」
「それじゃあ捜査開始だね。」
その後ロイド達は現場検証を始めた……………
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