英雄の失態
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
「そうして頂く」
「またしても気が合う、私も同じ考えだ」
「では動くとするか」
「共に手をたずさえてな」
「そうするとしよう、しかし」
タレーランはここで遠くを見る目になった、そうしてフーシェにこうも言った。
「君もわかっている筈だ」
「彼の行く末がか」
「先程言った、さらにおかしくなったと」
「そうだ、我々が動く必要があるがな」
「それならばだ」
「三ヶ月もたない、いや三ヶ月もとうともだ」
フーシェは考える目になってタレーランに己の読みを話した。
「四ヶ月はない」
「そういうことだな」
「自分で自分の墓穴を掘る、ましてやだ」
「もう彼の周りにはかつての人材がいない」
「優れた兵、そして優れた将帥がな」
「彼は戦争が好きだが」
「さて、どういった勝利になるかだ」
二人はこう話してだ、共に嫌い合いながらも政治的理由から手を結んだ。そのうえでことにあたることにした。
ナポレオンはまずは欧州諸国に友好を促したがだ、それを聞く国はなかった。それで結局戦争を選ぶしかなかった。
諸国は大挙してフランスに来ていた、その諸国にだ。
ナポレオンは自ら軍を率いて向かった、さしあたってのそして最大の敵であるイギリスはプロイセン軍と共にだった。
フランスに攻め入ってきた、ナポレオンはその連合軍をフランス領の外で迎え撃った、緒戦はフランス軍が勝ち。
ナポレオンはプロイセン軍を退けた、その状況を見てだった。
彼は諸将にだ、こう言った。
「明日イギリス軍を叩く」
「ウェリントン将軍が率いる」
「あの軍を叩きますか」
「そして勝利を掴む」
「そうさせるのですね」
「その通りだ、イギリス軍を叩くが」
しかしと言うのだった。
「問題は退けたプロイセン軍だ」
「若し彼等がイギリス軍との戦いの時にプロイセン軍が戻れば」
「我が軍にとっては厄介なことですね」
「挟撃されます」
「そうなっては敗れますね」
「だからだ、プロイセン軍を追撃してだ」
撤退した彼等をだ。
「捕捉、そして彼等を撃破する方法がある」
「では軍を割いてですか」
「そのうえでプロイセン軍を追いますか」
「そして捕捉し撃破する」
「その軍を差し向けますか」
「若し見失えばだ」
ナポレオンはその時のことも頭に入れてさらに話した。
「戻り合流してだ」
「共にイギリス軍を倒す」
「そしてまたプロイセン軍と戦う」
「そうした戦術ですか」
「それでいかれますか」
「そうだ、そしてそのプロイセン軍に向ける軍勢の指揮はだ」
ナポレオンはここで将軍達を見回した、そして。
一人の痩せた男を見てだ、彼に言った。
「ド=グルーシー元帥」
「はい」
その男エマニュエル=ド=グルーシーはナポレオンに姿勢を正して応えた。
その彼にだ、ナポレオンは命じた。
「君にその軍を任せる」
「プロイセン軍を追撃する軍のですか」
「そうだ、そうする」
「皇帝、それはです」
グルーシーはすぐにだ、ナポレオンに言葉を返した。
「私ではです」
「適任ではないか」
「はい」
こう言うのだった、自ら。
ページ上へ戻る