逢魔
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第六章
「この話は内密にな」
「はい、そうしたお話ですね」
「妖怪のお話ですから」
「それで、ですね」
「誰にもですね」
「噂になっておるのは知っておるが」
街中でだ、源田も知っている。
「しかしな」
「それでもですね」
「事実は内緒」
「こうした話は噂のまま」
「そうしないといけないですね」
「それで頼む」
笑っての言葉だった。
「そうな」
「わかりました」
「それじゃあそうします」
「そのことは約束します」
「私達も」
「嘘吐いたら針千本というかな」
老人は二人に今度は冗談で応えた。
「言われるとわしも妖怪達も困るからのう」
「ですね、私達もそんな趣味はないですし」
「人を困らせることとかは」
美稀も晴香も底意地の悪い性格ではないので約束した、もっといえば約束を守る主義でもある。このことも二人共だ。
「約束します」
「絶対に」
「そうしてくれると何よりじゃ、噂のままで頼むぞ」
要するに聞いた話でと誰かに話すのならいいというのだ。
「噂は噂じゃ」
「事実はどうかは内緒」
「そういうことですね」
「そうじゃ、信じられん話なら信じないでいいしな」
こうも言った源田だった。
「内緒か聞いた話で頼むぞ」
「はい、わかりました」
「じゃあ最悪でも直接見たとは言わないです」
「何か随分ハードル下がりましたけれど」
「それじゃあ」
「そういうことでな、では皆で宴会か遊びじゃ」
源田は二人ににこにことして返した、そしてだった。
彼が言う通りにすぐにだった、家のチャイムが鳴り。
源田がうきうきとして応対に出るとだ、居間にだった。
妖怪達がぞろぞろと案内された、その妖怪達は。
「一つ目小僧さん」
「ろくろ首さんに朱の盆さん」
「座敷童子さんもいるし」
「狐さん達に狸さん達」
「天狗さんも鬼さんもいるわ」
小豆洗いに河童、子泣き爺に一反木綿、塗り壁にから傘、砂かけ婆といった馴染みの顔触れであった。彼等がだ。
居間に案内されてだ、源田に言った。
「じゃあ今日も遊ぼうね」
「はじめて見る女の子が二人いるけれど」
「一人は奇麗で一人は可愛い」
「いい感じじゃない」
「うむ、お客さん達じゃ」
源田は妖怪達に二人のことをこう説明した。
「家がいつも賑やかなのはどうしてかと聞いてきた」
「あっ、そうなんだ」
「それで来てくれたんだ」
「そうなんだね」
「そうなのじゃ、それで今日はこの娘達も入れてな」
そのうえでとだ、源田は自分から妖怪達に話した。
「楽しくやろうぞ」
「じゃあね」
「そうしようか」
妖怪達も応じてだった、そして。
源田は美稀と晴香にだ、こう言った。
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