魔界転生(幕末編)
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第62話 鋼鉄
前書き
申し訳ありませんでした。
体調不良にて更新ができませんでした。
ウイルス性胃腸炎でもうやせ細りました。
みなさんも気をつけてください。
近藤と土方の距離はじわじわと縮まって行った。
相変わらず、近藤は刀の刃先を地面に向け、土方は正眼に刀を構えていた。
(未だ!!)
土方は一気に地面を蹴り、自分の間合いへと詰めようとした。
新撰組の剣の神髄は、付きにあって、一気に間合いを詰める速さはまさに疾風。
(やばい!!)
土方は、自分の間合いに達する前に後ろへ飛び去った。その刹那、自分の法被が切られていたことに驚愕した。もし、そのまま突っ込んでいたら、土方の体は、真っ二つにされていただろう。
土方が後ろへ飛び去ることが出来たのは、彼の今まで潜り抜けた修羅場の数が経験となったことと彼の本能によって成し得る技であった。
「さすがだな、トシ。よくぞ、かわした」
近藤はにやりと微笑んだ。
(間合いがかなり長いな。しかも、虎鉄から感じる禍々しい気のせいか)
土方は再度間合いをとり、斜め右に構える変形正眼で構えた。
「それは柳生新陰流正眼の型!!」
近藤は土方の構えに驚いて目を見開いた。何故なら、新陰流なぞ使えるはずがないのだから。
(さて、どう攻めるか)
近藤の声など気にするほど土方には余裕がなかった。何故なら、間合いは広く、しかも剛剣。たとえ、典太であったとしても受ければ吹っ飛ばされるは必定。
(なんとか受け流し、懐に入るしかないか)
土方は覚悟を決めて一気に走り出した。
天然理心流の神髄は神速。その素早さである。
一気に間合いを詰めて突き入れる。それは示現流よりも居合流よりも早いときく。
土方は近藤が薙ぎ払う前に自分の間合いに入り、近藤の胴を巻いた。が、しかし、信じがたい事に、がきんという鈍い音がしただけで近藤を斬ることが出来なかった。
「ふふふふ、きかぬなぁ」
近藤は歯を剥きだしにして笑った。
(馬鹿な。典太で斬れないのか)
まさかの光景に土方は焦りを感じた。が、それを近藤に悟られないように再び構えた。
「なぁ、トシ。わしは反撃せぬから、もう一度攻撃してみろ」
近藤は虎鉄を鞘にしまった。
「ほぉ、余裕だな、近藤さん」
そうは言ったものの土方には信じられない事だった。典太の一撃が全く効いていないのだから。
(さて、どうしたものか)
土方は再度間合いを取った。
「来いよ、トシ。わしは手を出さないと言っているのだが」
近藤は低い声で土方を威嚇した。
(えぇい、ままよ。こうしていても埒があかない)
土方は再び自らの間合いに飛び込み、近藤を突き、斬り、凪いだ。が、鈍く乾いた金属音が残るだけであった。
「はぁー」
近藤は深くため息をついた。
「おいおい、それだけか?つまらん、全く持ってつまらん。お前の誠はそんなもんか?えぇ、としよ」
近藤は土方の肩へ突きを入れた。その衝撃に土方は後方へと吹っ飛んだ。
軽く突かれただけなのに肩の皮膚は裂けた。
(なんて力だ)
皮一枚斬られたという状態ではあるのに衝撃は物凄いものだった。
(まったく厄介な化け物になったものだ)
土方は小さく舌打ちをした。が、すでに土方は頭をフル回転させてこの化け物を退治するための計画を考え初めていた。
剣を構えてはいるが、辺りを目だけで見渡し何か利用出来る物はないかと観察した。そして、近藤に対してはどこか弱点はないかと様子を覗った。
「わはははは。典太を以てしてもわしは倒せん。わしの体はこの地面と同じよ。剣でも、拳銃でもわしは貫けぬ」
近藤は自慢げに大口を開けて笑った。
(あっ、口の中は人そのままじゃないか)
土方に一筋の光明が見えたような気がした。もし、あそこに典太をぶっさすことができれば勝てる可能性もある。
「まさに化け物だな、近藤さん。そんな姿にまでなって生きながらえるのあんたの誠ってやつかい?」
土方は近藤を挑発するかのように言った。
「ふん、俺の誠はなぁ、とし。お前や総司と戦ってみたいという事だけよ。隊を作り、俺は局長になった。一介の農民だった俺は武士にもなった。が、そんなことは、本当はどうでもいいことだったんだよ」
近藤は金色に輝く瞳を土方に向けた。
(何かないか。何か)
土方は近藤の口上など聞く暇もないように必死に周りの様子を覗っていた。
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