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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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外伝~不審商人の調査~前篇

ロイド達は昨日の村長が出した支援要請の続きである依頼を請ける為に村長がいるヘイワース宅に入った。



~住宅街・ヘイワース宅~



「失礼します、特務支援課です。」

「おお、特務支援課の諸君……昨日に引き続き、来てくれて感謝するぞい。」

「ありがとうございます、皆さん。」

ロイド達を見た村長は明るい表情をし、ハロルドは軽く頭を下げた。

「トルタ村長、一体何があったんですか?どうやら昨日の事件について進展があったみたいですが。」

「うむ……どうやら事態はわしが考えていた以上に深刻になっていたようでな。早速依頼について話したいのだが……構わないかね?」

「ええ、詳しくお聞かせ下さい。」

「昨日から、状況が進展したとのことでしたけど……」

「うむ………そうなのだ。昨夜、宿酒場に泊まっていたデリックのところに行って改めて説得してみたのじゃ。あのミンネスという外国人は怪しい所が多いから、付き合うのはやめろとな。」

「そりゃあ……ストレートに言ったもんッスね。」

(それは悪手ね……今の彼にそんな事を言ったら、逆に意固地になるどころか、焦りによって思いもよらない事態を起こすでしょうしね……)

村長の話を聞いたランディは疲れた表情をし、ルファディエルは静かな表情になっていた。

「ああ、だが……結局デリックは聞き耳をもってはくれなかった。その代わり、ある新しい事実をもたらしおってな。急ぎ、ハロルド君のもとへ相談に来たところだったのだ。」

「新事実……?あのミンネスという人が何かしていたということですか?」

「相談されたときは私も驚いたのですが……ミンネス氏は、どうやら予想以上に村へと食い込んでいたようなのです。」

「えっと……つまり、どういうことなんですか?村人の皆さんに信用を得ていることは昨日の段階でわかりましたけど……」

ハロルドの話を聞いたエリィは不思議そうな表情で尋ねた。

「実はあのミンネスという男は……村の私有地だけでなく、畑や土地の権利書を集めていたようなのじゃ。」

「と、土地の権利書を……!?」

「ふむ……しかしそうなると気になる点があるね。ミンネスさんは一体どうやってそんな大事なものを手に入れていたというのかな?」

村長の話を聞いたロイドは驚き、ワジは真剣な表情で尋ねた。



「ええ、聞くところによると……名目は『レンゲ畑の拡大』ということらしいのです。村人から少しずつ畑の土地を集め、レンゲ畑を拡大する事でその収穫をより効率的にする……さらには、畑の管理をクインシー社が請け負う事で収穫などの労力を軽減できる……」

「そのあたりは……昨日聞いた話にもつながりますね。一見、いい話のように見えますけど……」

「ああ……またも『上手すぎる話』だ。しかも土地の権利書となると……もし悪用されたとしたら取り返しのつかないことになる。」

ハロルドの説明を聞いたノエルとロイドは真剣な表情をし

「それにしても土地の権利書まで集めれたなんて……よほど信用されていたんだな……」

リィンは驚きの表情で呟いた。

「うむ……ミンネスという男の怪しさが全く払拭されていない状況じゃ。私有地だけなら、万が一何があったとしても人的な被害はほとんどないが……村の中の土地にそんな事が起こってるとは思いもよらなかったのじゃ。」

「なるほど、のっぴきならねえ状況とも言えるかもしれねえな。」

村長の言葉を聞いたランディは目を細めて頷いた。

「そこで、あんたたちにはより明確な形であの男の正体を暴いてもらいたいと思っておる。容疑が確定していない今の状況で警察にこういったことを頼めるものじゃろうか……?」

「いえ……もともと俺達は警察の規律からは外れた存在です。ミンネスという男に少しでも怪しい点がある今の状況……謹んで捜査に当たらせてもらいます。」

「すまない……あんたたちには本当に世話になるのう。」

「それじゃあ、どこから手をつけるのがいいかしら?正直、今の所何の手掛かりもないけど……」

「確かに、根拠と言えるものは何にもない状況だよね。」

「そうなんだよな……」

エリィとワジの意見を聞いたロイドは考え込んだ。

「それでは皆さん……まずはイアン先生に相談してみるのはどうでしょう?」

するとその時ハロルドは提案した。

「イアン先生に……?」

「ええ、今はミンネスという男が”怪しい”という事しかわかっていませんが……イアン先生に状況を説明すれば、なんらかの犯罪への兆候を読み取ってもらえるかもしれません。」

「なるほど……いい考えかもしれませんね。彼がやろうとしている事に少しでも近付けば、捜査の取っ掛かりになるかも……」

「ただ、イアン先生は最近、例の独立宣言に関連して相当忙しくしているようです。もしかしたら、いらっしゃらない可能性はあるかもしれませんが……」

「ま、なんにしろ法律事務所に行くとしようぜ。いないならいないでそのとき考えりゃいいさ。」

「ああ……早速訪ねてみよう。」

「では、そちらはよろしくお願いします。私も商売仲間などにクインシー社やミンネス氏の噂を当たってみようと思います。」

「それは……助かりますね。よろしくお願いします。」

「すまぬな……あんたたちだけが頼りじゃ。何もできない自分が不甲斐ないが……」

ロイド達の会話を聞いていた村長は申し訳なさそうな表情をした。

「いえ……俺達にお任せください。」

「ま、村長はここで待ってるといいさ。いい報告が出来ることを女神に祈っておいてよ。」

「うむ…………よろしく頼んだぞ。」

その後ロイド達は法律事務所を訪ねた。



~グリムウッド法律事務所~



「おや……?」

「イアン先生!」

「よかった……事務所にいてくれましたか。」

「ああ、今はちょうど休憩している所なのだが……ふむ、なにか私に相談事でもあるのかね?」

「わかりますか……さすが先生ですね。」

「ふふ、依頼がある人の顔はそれこそ何百何千と見て来ているからね。どれ、そっちに腰かけなさい。私も忙しい身の上だが、話を聞こうじゃないか。」

「すみません……助かります。」

ロイド達は、前日に調べたミンネスのプロフィールと行動……そして、本日判明した土地の権利書を集めていたという事実をイアンに伝えた。

「ふむ……なるほどね。大方の事情はわかったよ。本来なら私がこの件を引き受けたいところなのだが……君達も知っての通り、今の私は憲法草案の作成という重要な仕事があってね。申し訳ないが、私が引き受けて調査をする時間は作れそうにない。」

「残念ですが……仕方ないかと。」

「こうして相談に乗っていただけただけでも助かります。」

「すまないな……代わりに今、出来る限りのアドバイスをさせてもらうよ。」

「ありがとうございます。それで……どうでしょう?ここまでのミンネス氏の行動……そこから、何らかの犯罪の兆候を読み取ることはできるのでしょうか?」

「……一つだけ、思い当たるフシがある。」

ロイドに尋ねられたイアンは考え込んだ後答えた。

「ヒュウ、マジッすか!?」

イアンの答えを聞いたランディは明るい表情をした。

「ああ……エレボニアの知り合いから参考資料としてもらったケースによく似たものがあるんだ。とはいえ、全く同様の事件だと断定する事はできないが……」

「……今はとにかく、捜査の取っ掛かりがほしい状況なんです。その思い当たるフシについて、お話していただけないでしょうか?」

「……うむ、いいだろう。他でもない君達の頼みだ。こほん、では……」

ロイドの言葉に頷いたイアンは咳払いをした後考え込み、話し出した。



「―――数年前……エレボニア帝国のある男爵家に一人の男が訪れた。男の名は『リドナー』……ある有名な酒造会社に勤める凄腕のビジネスマンを名乗る男だ。そしてリドナーは男爵にある儲け話を持ちかけた。代々、男爵家の領地に受け継がれてきた広大な麦畑……それを利用した酒造会社の起業だ。ビール工場を領内に建造し、その経営を男爵家に任せる……概ねそういった内容だったらしい。」

「……!この話って……」

「フフ……どこかで聞いた話によく似ているみたいだね。」

(……エレボニアの男爵家………一体どこだ……?)

イアンの話を聞いたロイドは驚き、ワジは口元に笑みを浮かべ、リィンは考え込んでいた。

「―――男爵はその儲け話に快諾し、リドナ―が持ってきた契約書にサインをした。そして、管理の名目で麦畑全域がそして工場建造の名目で一部の土地がリドナ―に一時、譲渡された。また、会社の資本金として男爵家の資産の一部が回され、起業の準備は着々と整っていった……だが……リドナ―は、土地の権利書と資産の一部、それらを持ったまま姿をくらました。」

「なっ……!?」

「まさか……!」

(………なるほど。やはり、その手口ね。)

イアンの説明を聞いていたランディは驚き、リィンは厳しい表情をし、ルファディエルは静かな表情になっていた。

「突然リドナ―との連絡が途絶え、男爵家の者達は焦ったらしいが……そのとき重大な事態が進行している事に気付いていなかった。あろうことか、リドナ―は預かり受けた土地の権利書を第三者に売り渡してしまっていたのだ。高級別荘地に最適な土地としてな。――――結局、男爵家には莫大な借金だけが残ってしまい……程なく領地全てを手放す羽目になる。領地を失ったことで爵位も剥奪され……以後、彼らは行方知らずとなってしまった……」

「なんっつう……とんでもねえ話だよ。」

「勝手に他人の土地を売り払うなんて……いくらなんでもひどすぎます!」

話を聞き続けたランディは溜息を吐き、ノエルは怒りの表情になった。

「……イアン先生。その男爵家の名前とかはわかりますでしょうか?」

「ちょっと待ってくれ………ああ、思い出した。確か”カプア”家だ。」

リィンに尋ねられたイアンは考え込んだ後言い

「え………”カプア”、ですか?」

イアンの言葉を聞いたティオは驚いた。

「ティオちゃん?」

「もしかして知っているのか?その男爵家の人達の事を。」

ティオの様子を見たエリィは不思議そうな表情をし、ロイドは尋ねた。

「え、ええ、その男爵家の人かどうか知りませんが”影の国”で共に戦った人達の中にいたんです。”ジョゼット・カプア”というロイドさんやエリィさん、リィンさんと同年代くらいのエレボニア帝国出身で、兄妹で”カプア特急便”という運送会社を経営している女性の方が。確か、今日の支援要請にその運送会社から来ていたはずです。」

「あ、ああ。そういえばあったな。『誤配荷物の再配達』の依頼が。」

「確かセティちゃん達が受けている依頼だったわよね?」

ティオに促されたロイドは頷き、エリィは戸惑いの表情で言い

「……エレボニア帝国出身に名前は”カプア”……その元男爵家の関係者じゃないのかい?」

「さあ……?私はジョゼットさんとはあまり話した事がありませんから、彼女の詳しい事情は知らないんです。」

ワジに尋ねられたティオは考え込みながら言い

「―――――あ。思い出した。確か昔まだ俺やエリゼがエレボニア貴族だった時、その男爵家―――カプア家は3人兄妹なんだけど……その兄妹の末の妹の誕生パーティーに招かれた事があるんだ。その妹さんの名前は”ジョゼット”っていう名前で確か歳は俺やロイド、エリィと同じくらいだったはずだ。」

ある事を思い出したリィンは声を上げた後説明した。

「そ、それって……!」

「モロにビンゴじゃねえか………」

リィンの説明を聞いたノエルは驚き、ランディは目を細め

「……私もそう思うよ。―――これが、君達の話を聞いて真っ先に思い浮かんだ事件だ。身分を偽って信用を勝ち取り、最終的に莫大な財団を騙し取る……いわゆる『詐欺』の手口の一つといえるだろうね。」

イアンは頷いた後説明を終えた。



「詐欺……!」

「つまり、あのミンネスという人はクインシー社の役員などではなく……ただの詐欺師の可能性があると?」

説明を聞き終えたエリィは驚き、ティオは尋ねた。

「うむ……断定はできないが可能性は高いと言えるだろう。」

「実際、共通する部分はいくつも確認できた……ひとまずこの件を詐欺事件として捜査するのがいいかもしれないな。」

「だとすると……おのずと、調査すべき部分が見えてきますね。」

「ああ、そうだな。ミンネスという男には大きく分けて2つ、疑わしい部分がある。まずはその計画……『アルモリカ・ハニーカンパニー』が本当に存在するのかどうか、という点だ。」

「それに関しては、ミラの動きがわかればつかめるかもしれないね。クロスベルで起業する以上、IBCで融資を受ける必要性があるはずだ。もし、計画にウソがあるならIBCに証拠が残っている可能性は高いんじゃない?」

ロイドの話を聞いたワジは頷いた後意見を言った。

「それともう一つ、当然確認したいのがミンネスが本当に『クインシー社』の役員なのかどうかだ。……これに関しては外国の会社だし、裏を取るのは苦労しそうだけど……」

そしてロイドはもう一つの話を言った後考え込んだ。

「あまり役に立たないかもしれないけど……私の家になら、もしかしたら参考になるものがあるかも。」

するとその時エリィが提案をした。

「参考になるもの……?」

「実は、私の家にクインシー社のパンフレットがあるの。あれになら、会社の概要とかが書かれていたから、もしかしたら参考になるかもしれないわ。」

「クインシー社のパンフレット……なんでお嬢がンなもんを持ってんだ?」

「えっと、実は私……お菓子作りとか結構好きなんだけど……この前、クインシー社についてすごく興味がわいてしまって、ついパンフレットを取り寄せたのよね。実家の私の部屋の本棚に置いてあるはずだけど……って、ダメよね。流石にそんなパンフレットなんかじゃ……」

ランディに尋ねられたエリィは顔を赤らめた後気を取り直して答え、そしてある事に気付いて溜息を吐いた。



「いや、もしかしたらと言うこともありうる。会社の正式な資料となれば、何かしら、ミンネスという男の言葉と矛盾する内容が見つかるかもしれない。念の為調べてみるといいんじゃないかね?」

するとその時イアンが提案した。

「そうですね……一応エリィの家にも行ってみます。後はそのジョゼットさんにもできれば話を聞きたいけど……ティオかリィン、頼めるか?」

イアンの提案に頷いたロイドはティオやリィンに尋ね

「俺は正直、難しいと思うぞ?会ったのは1回きりだし。ティオの方がまだ、可能性はあると思うが。」

尋ねられたリィンは疲れた表情で答えた後ティオに視線を向け

「ふう……わかりました。一応、頼んでみます。」

視線を向けられたティオは溜息を吐いた後言った。

「……イアン先生、貴重なお話をありがとうございました。おかげで捜査方針がまとまりそうです。」

「うむ、少しは役に立てたようで何よりだ。……確か、君達は今ハロルド君の家を拠点に捜査をしているんだったね?」

「ええ、そうですけど……」

「なに、今回の事件……時間の許す限りは手伝わせてもらおうと思ってね。なにぶん忙しい身なので、そこまで役には立てないだろうが。」

「いいえ、そんな……とっても心強いです!」

「プロフェッショナルがいるなら百人力だねえ。」

イアンの申し出を聞いたエリィは笑顔で答え、ワジは口元に笑みを浮かべて言った。

「ふふ、あとで顔を出すから君達も捜査のほうをがんばってくれたまえ。」

「ええ、ありがとうございます。……それじゃあ、早速捜査に当たるとしよう。IBCで資金繰りを調べ、ミンネスの計画の裏を取る……そして、参考程度にマクダエル邸にある資料を調べて、彼の言葉との齟齬を探してみる……調査するのは以上の2つのポイントだ。……後は可能なら空港にいる”カプア特急便”の人に何とか頼んでジョゼットさんに話が聞ければいいな。」

「了解です……なんとしても証拠を挙げましょう!」

その後法律事務所を出たロイド達は行動を開始した………………… 
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