英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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第70話
~夕方・クロスベル大聖堂~
「……さあ、こちらへ。あまり他の方々には見られたくありませんから。」
「は、はあ……」
「失礼します。」
その後、ロイド達はシスター・リースの個室に案内され……蒼い花を摘んだ経緯とエラルダ大司教とのやり取りについて彼女に一通り説明した。
「―――なるほど。確かにこれは、大司教ならば口を閉ざすのも無理ありませんね。」
「え……!?」
「わかるのかよ、リースちゃん!?」
リースの言葉を聞いたロイドは驚き、ランディは尋ねた。
「ええ、皆さんが採取された花……確かに、とある聖典に記されている花である可能性は高そうです。といっても正式な聖典ではなくいわゆる”外典にあたりますが。」
「外典……」
「つまり正式なものとは認められていない異書って事だね?」
リースの説明を聞いたノエルは呆け、ワジは真剣な表情で尋ねた。
「ええ、教会内でも限られた者しか閲覧は許されていません。ですが『騎士団』に所属する者はそうした外典の閲覧は許されています。危険なアーティファクトの存在が記されているものが多いからです。」
「なるほど……」
「では、その蒼い花は一体どのように記されて……?」
「外典の一つ『ラダー記』に蒼き花についての描写があります。七耀脈の真上に咲く、吉兆とも凶兆とも取れる神秘の花……その名も『プレロマ草』の記述が。」
「な……!?」
「その名前は……!」
リースの説明を聞いたロイドは声を上げ、エリィは厳しい表情をし
(………”グノーシス”の原料ね。………どうやら、”教団”の事件は真の解決には到っていないみたいね…………)
ルファディエルはは目を細めて考え込んでいた。
「そ、それって確か……」
「『教団』の端末に残されてたっていう、グノーシスの原料になった植物の名前かい?」
一方ノエルは厳しい表情をし、ワジは目を丸くして尋ねた。
「………はい………………」
「まさかこんな場所でその名前を聞くとはな……」
ワジの疑問にティオは不安そうな表情で頷き、ランディは目を細めた。
「……なるほど、そうでしたか。かの教団の残した謎については教会でもほとんど解明されていません。エラルダ大司教の意向もあり、ヨアヒム・ギュンターが起こした事件もほとんど調査されませんでしたが……」
「ちょ、ちょっと待ってください。その花が本当に例のグノーシスという薬物の原料だったとして……それが各地で発見されたことが何を意味してるんでしょう……?」
「そ、そうね……”幻獣”の出現も気になるし。」
「七耀脈の真上に咲く花……しかも吉兆とも凶兆とも取れる花、ですか……」
「ああ、どうもイヤな符号だぜ。」
「……―――とにかく、俺達だけで対処できる問題でも無さそうだ。いったん支援課に戻って詳細な報告書をまとめてみよう。リースさん。教えていただいた情報は警備隊やギルドに伝えても?」
仲間達が話し合っている中、一人考えていたロイドはリースに尋ねた。
「そうですね………なるべく私の名前を出さないで頂けるのであれば。」
「もちろん、そのあたりは極力配慮させていただきます。」
リースの言葉にエリィは頷き
「フフ、大司教にとったらスパイみたいな立場だろうからね。なんせさっきも”星杯騎士団”や”外法狩り”とやらに凄い嫌悪感をさらけ出していたもんねぇ。」
ワジは口元に笑みを浮かべて言った。
「そういやさっき、『外法、滅すべし』とかリースちゃん、言ってたよな。あれは一体どういう意味だ……?」
「……………………………」
目を細めたランディに尋ねられたリースは黙り込み
「『星杯騎士・心得六箇条』とも言ってましたが………まさか”星杯騎士”の規則のようなものなのですか?」
エリィは真剣な表情で尋ねた。
「………はい。『星杯騎士・心得六箇条』と言われています。『その魂は空なる女神に、血肉は七耀に捧げるべし』、『秘蹟の守護者たるべし』、『法なる王への忠誠を誓うべし』、『封聖は威儀をもって行うべし』、『三界の秩序と安寧を保つべし』………そして。『外法、滅すべし』」
尋ねられたリースは頷いた後静かな表情で次々と答えた後真剣な表情になった。
「その『外法、滅すべし』ってどういう意味なんですか……?」
リースの言葉を聞いたノエルは不安そうな表情で尋ねた。
「………”後戻りできない”大罪人………皆さんにわかりやすい例で言えば”教団”や”教団”の”儀式”や”グノーシス”によって理性を亡くし、悪魔化し、正気に戻す事は不可能となった哀れなる者を”狩る”権限が我々、”星杯騎士団”にあるのです。」
「なっ!?」
「オイオイオイ……七耀教会にそんな部分があったのかよ!?」
「フム……”星杯騎士団”はさしずめ、七耀教会の暗部って訳か。」
「そ、そんな………七耀教会が殺害を認めているなんて…………」
「……………………………」
リースの説明を聞いたロイドは厳しい表情で声を上げ、ランディは目を細め、ワジは真剣な表情になり、ノエルは信じられない表情になり、ティオは真剣な表情で黙り込み
「そ、そんな………―――!まさか、リースさんも!?」
エリィは信じられない表情をした後、ある事に気付いてリースを見つめ
「――――いえ。まだ私は”外法”を”狩った”事はありません。……ですが、私の前に”後戻りできない”大罪人―――――”外法”が現れれば、”狩る”事になるでしょう。それが私達”星杯騎士”の使命ですので。」
「そう……ですか…………」
リースの答えを聞いて疲れた表情で溜息を吐いた。
「………………………ちなみにその”外法狩り”というのは?」
一方ロイドは複雑そうな表情で黙り込んだ後、真剣な表情で尋ねた。
「”守護騎士”第五位――――”外法狩り”は率先して”外法”を狩り続けてきたのです。―――リベールの”異変”を引き起こした張本人である背信者――――”身喰らう蛇”の”使徒”の一柱、”白面”ワイスマンを”狩った”のも彼なのです。」
「なっ!?」
「リベールの”異変”の裏にそんな事実が………」
真剣な表情で答えたリースの話を聞いたロイドは驚き、エリィは信じられない表情で呟いた。
「……エラルダ大司教はそういった闇の部分を嫌い、”星杯騎士団”―――”封聖省”への態度を硬化されたのですが……決め手となったのは汚職で追放され、その逆恨みから猟兵団を雇い、七耀教会が運営する福音施設を襲わせた典礼省の元司教を”外法狩り”が”狩った”事によりエラルダ大司教はお怒りになり、”封聖省”への態度をますます硬化させ、”星杯騎士団”のクロスベル入りを禁じられたのです。」
「―――なるほど。だからクロスベルには”星杯騎士”が来れないのですね。」
リースの説明を聞いたティオは静かな表情で呟いた。
「はい。………ですがその”外法狩り”は何か心境の変化があったのか異名を変えたのです。」
「え……そ、そうなんですか?」
「一体どんな異名に?」
口元に笑みを浮かべて言ったリースの話を聞いたティオは戸惑い、ノエルは不思議そうな表情で尋ねた。
「――――”千の護手”………それが今の”外法狩り”の異名です。」
「”千の護手”……………」
「異名からして真反対の意味に聞こえるよな……?」
リースの言葉を聞いたロイドは呆け、ランディは不思議そうな表情をし
「”誰もが幸せになれる世界”……………彼の恩師がかつて目指し、辿り着けなかった世界を作る事を目指す事を決意をする意味で、彼はその異名を名乗っているのです。」
「”誰もが幸せになれる世界”………」
「そんな世界は存在し得なく、遠く、果てしない世界ですね………でも、そんな世界ができるといいですね。」
静かな笑みを浮かべて言ったリースの説明を聞いたノエルは呆け、エリィは複雑そうな表情で呟いた後微笑み
「ええ。―――”千の護手”の事はギルドや警備隊、警察内部にも秘密でお願いします。”守護騎士”は教会内でも最高機密の存在ですので。」
「……わかりました。」
そしてリースの言葉にロイドは重々しい様子を纏って頷いた。
「ありがとうございます。―――私の方も、騎士団に連絡してから調査に入ってみるつもりです。お互い、何か進展があったら情報交換するのは如何ですか?」
「ええ、喜んで。」
「よろしくお願いします。」
その後、ロイド達は支援課に戻ってから幻獣と蒼き花―――”プレロマ草”についての詳細な報告書を大急ぎでまとめた。警備隊の司令部と副司令部、ギルドの受付に導力ネットを通じて報告書を送った後……各地を回って疲れていたロイド達は課長やキーア、ヴァイス達やリィン達と遅めの夕食をとってから部屋に戻って早めに休むことにした。
~???~
「……こりゃあいい………コイツは最高だ………クク……これなら絶対に………絶対に”ヤツ”を――――!」
ある場所である人物は凶悪な笑みを浮かべていた。するとその時エニグマが鳴りはじめ
「チッ……」
鳴りはじめたエニグマに気付いたある人物は舌打ちをした後通信を始めた。
「ああ……アンタか……」
「………………………」
「……ああ……ああ………問題ねぇ……クク……いつでも行ける……」
通信相手に答えたその時、ある人物の身体は異変を起こし、異形な姿になった!
「……ただし……やり方は俺に任せてもらうぜ?」
その後通信を終えたある人物は行動を開始した……………………………
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