英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)
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外伝~不審人物の調査~前篇
~アルモリカ村~
「ふう……デリックのやつめ、一体何をやっておるのか……」
ロイド達が村長の家に入ると村長は溜息を吐き
「心配ですね……もしかすると、彼は……」
ハロルドは考え込んでいた。
「トルタ村長、こんにちは。特務支援課の者です……って、ハロルドさん?」
そこにロイドが話しかけた後ハロルドに視線を向けて不思議そうな表情をした。
「おお、君達か……待っていたぞ。」
「依頼を見て来てくれたんですね。ありがとうございます。」
「え、ええ……でも、ハロルドさんまでなぜここに?」
「ああ、実は……今回の件については彼も関係あってな。」
「村長さんと話し合った末、皆さんに相談することにしたのです。なにせ、事情が事情です。ここは捜査のプロの方に頼んだ方がいいと思いまして。」
「とても深刻そうな事情みたいですね。村長さんの息子さんに関係する話みたいですけど……」
村長とハロルドの話を聞いたエリィは真剣な表情で2人を見つめた。
「うむ、少々込み入っておってな。引き受けてもらえるなら詳しく話をさせてもらうが……時間は大丈夫かね?」
「ええ、大丈夫です。ぜひお聞かせください。」
「ああ、恩に着るぞ。―――実は近頃、息子のデリックの様子が変でな。裏でなにやらよからぬことを目論んでいる様子なのじゃ。」
「よからぬことッスか?」
村長の話を聞いたランディは不思議そうな表情をした。
「詳しくはわからないんだが……とにかく考えが読めんのじゃ。この間など、勝手にハロルド君に『今後の取引を遠慮したい』などと申し出おったらしい。」
「取引を……なぜそんな事を急に?確か、ハロルドさんはアルモリカ村と友好的な関係だったはずじゃあ……」
(……ルバーチェの軍用犬の件で彼ほどの善良な取引相手は村長どころか村人全員に信用されているはず……そんな彼との取引を止めたいというリスクを犯すという事は……大方誰かに上手い話があるからと、その話に乗って、その人物の言う通りに動いているのでしょうね。典型的な詐欺に合うパターンね。)
村長の説明を聞いたロイドは不思議そうな表情をした後考え込み、ルファディエルは考え込んだ後呆れた表情で溜息を吐いた。
「ええ、以前から懇意にさせていただいていたつもりだったのですが……それで、何かしら自分に非があったのだろうと思って理由を村長を尋ねたんです。」
「聞いてみれば、村長にもまったく持って身に覚えのない話だった……つまりそういうことかな?」
ハロルドの話を聞いたワジは考え込んだ後村長に視線を向けて尋ねた。
「さよう……ハロルド君には大変な失礼を働いてしまった。彼という良い取引先を失うのは村にとってかなりの痛手……それがわからん息子ではないはずなのだがな。」
「確かに不可解ですね……息子さんに何かあったのでしょうか?」
「うむ、わしもそう思ってハロルド君と共に色々と調べておったんじゃ。すると……得体の知れない人物が浮かべあがってな。どうも最近、あやつは不審な外国人と会っているようなんじゃ。」
「外国人……ですか?」
村長の説明を聞いたノエルは不思議そうな表情をした。
「あまり詳しいことはわからないのですが……ただ、どうもデリックさんと内々に何かを話し合ったりしているらしいのです。」
「ふうん……密談とは、確かにただならぬ臭いがするね。」
「そこで、あんたたちにはその外国人について詳しく調べてもらいたんじゃ。何か悪い企みがあるなら、早急に対処せねばならんからな。」
「失礼ですが……今回の件、わざわざ私達に依頼するまでもないのでは?直接息子さんに話されるのが一番合理的なはずですが……」
依頼内容を聞き終えたティオは疑問に思った事を口にした。
「おいおい、ティオすけ……」
(クク、はっきり言うじゃないか。)
ティオの疑問を聞いたランディは疲れた表情をし、エルンストは口元に笑みを浮かべた。
「……いや、恥ずかしながらお嬢さんの言う通りじゃ。実は、以前からわしと息子は村の在り方を巡って衝突を繰り返しておってな……この事についても事情を聞いたが、結局何も答えてくれなんだ。父親としては情けない話だがな。」
「そんなことは……」
「……とにかく、話はわかりました。早速調査にあたらせていただきます。手始めに、村の人達に聞き込みをしたいと思いますが……」
「ああ、是非お願いしよう。ただ、デリックは今エルキンという青年と共に街に作物の納入へ行っておる。本人への聞き込みは後回しにしたほうがいいじゃろう。」
「皆さん、ぜひとも有益な情報を手に入れてきてください。」
「ええ、お任せください。」
その後手分けして村中の人々から聞いた後、それぞれ合流して互いの手に入れた情報を報告して、話し合いを始めた。
「一通り聞き込みしてみたけど……色々と情報が得られたな。」
「名前は『ミンネス』………どうやらなにかの商売人と見られているみたいね。それになんというか、意外にも好印象な人物だったわ。」
「礼儀正しく、子供に優しい……そんな印象だったね。フフ、ここまでくると逆に怪しくなってくるけど。」
ロイドとエリィの話に頷いて答えたワジは口元に笑みを浮かべ
「た、確かに……」
「実際、目的がいまいち見えてきませんしね。」
ワジの言葉にノエルは頷き、ティオは静かな表情で言った。
「村長の息子と、何を話しているかも気になるところだよな。」
「ああ……もう少し聞き込みを続けた方がよさそうだな。えっと………」
ランディの意見に頷いたロイドが周囲を見回したその時、村の出入口付近に駐車し、嬉しそうな様子で小型のトラックを水で磨いている青年が目に入った。
「あの人……もしかしてデリックさんと一緒に街に行っていたっていう人かな。ついさっき村に戻ってきたみたいだし……話を聞いてみるか。」
そしてロイド達は青年に近づいた。
「フンフフ~ン………♪」
ロイド達が青年に近づくと青年は鼻歌を歌いながら小型のトラックを磨いていた。
「あの、すみません。エルキンさんですね?ちょっとお聞きしたいことがあるんですが……………」
「お、何だい?もしかして、この新型導力トラックについて聞きたいことがあるのかな?」
「い、いやいや……そういうわけじゃないんですけど。」
「ちぇっ、違うのか。せっかくミンネスさんに安く譲ってもらったヴェルヌの最新型なのに……」
「えっ……?ミンネスさんっていうのはこの村に最近来ている外国人の……?」
青年の説明を聞いたエリィは不思議そうな表情をした後真剣な表情で尋ね
「や、安く譲ってもらったって……いくらくらいなんですか!?」
ノエルは戸惑った表情で尋ねた。
「んふふ、それがね……なんと、たったの5万ミラ程度で譲ってもらえたんだよ!」
「ご、5万!?」
胸を張って答えた青年の話を聞いたロイドは驚き
「そんな値段で新車が買えちゃうなんて……い、いいなあ……」
ノエルはうらやましそうな表情をしていた。
「おいおい、うらやましがるトコじゃねえだろうよ。」
その時ランディが呆れた表情で指摘し
「そ、そうでした……つい。」
指摘されたノエルは苦笑した。
「コホン……ともかく。新車ともなると50万ミラ相当はするはずですし、破格の値段といえますね。」
「なんせ9割引だからね。いやはや、相当に太っ腹な人物みたいだ。」
「俺達の仕事がスムーズになるようにって、安く譲ってくれたのさ。色々とデリックと計画を進めているらしいし……ふふ、ミンネスさんには頭があがらないよ。」
「計画……?」
(…………………)
青年の話を聞いたランディは不思議そうな表情をし、ルファディエルは真剣な表情で考え込んでいた。
「お、おっと。これはデリックに口止めされてるんだった。まあとにかく……ミンネスさんっていう人は信用できる人だと思うよ。」
「なるほど……あれ、そうしえば。エルキンさんは一人なんですか?村長からは、デリックさんと一緒に街に向かったと聞いたんですが……」
「ああ、デリックなら後でバスで帰るんだってさ。なんでも、歓楽街のホテルに用があるらしくてね。どうやら、そのミンネスさんと会う約束をしてるみたいなんだ。」
「ねえロイド、これって……」
青年の説明を聞いたエリィは真剣な表情でロイドに視線を向け
「ああ、もしかしたら直接話が聞けるかもしれない。行ってみる価値はあるだろう。」
視線を向けられたロイドは頷いた。
「ご協力ありがとうございました。おかげで色々参考になりました。」
「いえいえ、どういたしまして。なんだかよくわからないけどがんばってくれよ。」
その後ロイド達は車でクロスベル市に戻り、歓楽街のホテルに向かった……………
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