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九尾猫

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第二章

「何や、富美男喋るんか」
「それやったらはよ言って欲しいわ」
「よお見たら尻尾二本あるわ」
「猫又やったんかいな」
「そや、わしはもう七十六歳や」
 富美男は自分から言った。
「自分等よりよっぽど爺さんやで」
「そやってんな」
「それで普通に喋ってか」
「猫も長生きするもんやな」
「喋られる様になるなんてな」
「そや、それで自分等の言うたことやが」
 富美男は感心している二人にさらに言った。
「泳げる様になりたいんやな」
「そや、ほんまにな」
「うち等カナヅチのままなんて嫌や」
「もう六年やで」
「中学になってそれもあかんやろ」
「そやからな」
「今年の夏にはって思うてるんやけど」
 それがというのだ。
「スイミングスクール行っても学校の子多いし」
「正直どないしよ思うてるねん」
「そやったら長老さんに頼もか」
 富美男は何時の間には後ろ足で立っていた、そして前足を人間の腕の様に組んでそのうえで二人に言った。
「ここは」
「長老さん?」
「誰やそれ」
「大阪の猫の長老さんや」
 そうした存在だというのだ。
「千年生きてる方でや」
「ふうん、千年生きてる猫か」
「百万回やなくてか」
「それも凄いな」
「七十六年どころやないな」
「丁度住之江区、この近くの藤本さんの家に住んではる」
 その長老がというのだ。
「その人の所に案内するわ」
「藤本さんってあの?」
「もう八十のお爺ちゃんの」
 藤本さんと聞いてだ、紅愛も美海も言った。
「時々お孫さん達が遊びに来てる」
「奥さんと二人の人やない」
「その藤本さんの家の飼い猫やねん」
 その長老はというのだ。
「その人のところに行くで」
「わかった、ほな案内してや」
「頼むわ」
「じゃあ水着とかタオルとか持って来るんや」
 富美男は二人にこうも言った。
「水泳やさかいな」
「そやそや、そういうの忘れたらあかん」
「泳ぐんやさかいな」
 二人も言う。
「ほなすぐに家に戻って水着とタオル持って来る」
「ちょっと待ってや」
「三分待つ、四十秒で帰って来るんや」
「アホ、そんなにはよ戻って来れるか」
「ワープせな無理や」
 二人はこう言い返しながらもだ、すぐに家に帰って水着やタオル、水泳の道具一式を持って公園に戻った。
 富美男はその二人を藤本さんの家に案内した、そこは古い一軒家でその家の前にだった。一匹の虎猫がいた。
 虎猫は富美男に案内されて来た二人にだ、すぐに言った。
「話は聞いてるわ」
「あっ、そうなん」
「妖力で会話してたんかいな」
「最近の言葉ではテレパシーでや」
 それでというのだ。 
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