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Blue Rose

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第十九話 療養所その五

「百人斬りとかいい加減な記事を書いて人の家庭を崩壊させた奴がまだ平気な顔をして大手を振って歩いていてしかも信者さえいるしね」
「家庭が崩壊ですか」
「そうだよ、そうした話もあるんだ」
「いい加減な記事だったんですね」
「写真を明らかに何の検証もしないで載せてね」
 某クオリティーペーパーで実際に行われたことだ、アメリカのイエローペーパーであるハーストでの所業ではない。
「そうしたことになったんだ」
「それって」
「もう犯罪に近いね」
「少なくとも新聞記者がやったら」
「普通の国ならそれで終わりだよ」 
 岡島は吐き捨てる様にして言った。
「ジャーナリストとしてね」
「そうですよね」
「けれど日本は違うんだ」
「そんなことをしても責任を問われないんですね」
「少なくとも業界で生きていけるよ」
 記者生命を絶たれるところまで責任は問われないのだ、それどころか信者までつくまでに尊敬されたりする。
「こうした人間の信者がね」
「どんな人達ですか?」
「僕は会ったよ、日本の皇室は駄目でも北朝鮮の独裁はいい」
「あの世襲のですか」
「世襲の共産主義国家がね」
 これ以上はないまでの軽蔑を込めての言葉だった。
「いいというんだよ」
「どっちが酷いかなんてもう」
「言うまでもないね」
「その人大丈夫ですか?」
「君以外の若い子に話したら真顔でその人はアホですかと言われたよ」
「やっぱりそうなりますね」
「実際に僕も馬鹿だと思ったよ」
 そのことを確信したというのだ。
「そんな奴とそんな奴の信者がね」
「日本にはいるんですね」
「そしてマスコミはそんな世界だから」
「気をつけないといけないんですね」
「相手は特権を持った餓鬼だからね」
 岡島はまたこの言葉を出した。
「気をつけるんだよ」
「僕自身の為に」
「僕達も気をつけるからね」
 だからだというのだ。
「君自身も。いいね」
「わかりました」
 優花は岡島のその問いに頷いた、そうした話をしている間に彼は療養所の奥に案内されていった。そこはというと。
 離れだった、そこに来るとだった。
 一軒家に近いがそこまで大きくはない部屋があった、その白い部屋を見てだった。
 優花は自分の隣にいる岡島にだ、こう尋ねた。
「このお部屋がですね」
「うん、君のお部屋だよ」
「そうですか」
 白い清潔な部屋だった、ベッドとテレビそれに本棚がある。テレビの前には一人用のソファーが二つそれにテーブルもある。
 壁の方にはクローゼットもある、そして部屋はその部屋だけでなく。
「お風呂場もありますね」
「トイレもね」
「別々になってるんですね」
「うん、ユニットじゃないよ」
 バスルームとトイレは同じ部屋にはないというのだ。
「完全に別々だよ」
「脱衣場もあって」
「そこに洗面所もあるから」
 見ればそうなっていた、実際に。 
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