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歌集「春雪花」

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 愛しくも

  逢ふも遠けき

   君なれば

 呼びてや返らぬ

     声ぞ虚しき



 どれほど愛しくとも…会いたくても会うことも儘ならない…。

 不意に街角ですれ違うこともなく…どこかの店で鉢合わせすることもなく…。

 彼は遠く…その姿を垣間見ることはないのだ…。

 会いたくて…声が聞きたくて…ふと彼の名前を呼んでみた…。

 私の声はただ霧散し…より一層虚しさが込み上げ…哀しくなった…。



 蝉時雨

  想い届かず

    空に散り

 眺むは侘し

     文月の雨



 蝉はあんなに鳴いているのに…私は恋しいと泣きわめくことも出来ない…。

 この想いは届くはずもなく、口にしたとて空へと散り行くだけ…。

 眺めれば夏の雨…私の代わりに泣いてくれているのか…音を立てて落ちる雨…。

 それが無性に侘しく…彼への想いを強くさせた…。


 会いたい…ただ、それだけ…。



 
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